最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第177話 首都シティアス
ソフィはシティアスに入る前に、配下の『ロード』や魔物の軍勢を街の外で待機させるのだった。
ソフィが何か情報を得る事が出来ればここに一度戻ると説明すると、ソフィの軍勢の直轄司令であるベアは大きく頷くのだった。
…………
首都シティアスもやはり戦争の爪痕が残り廃墟と化していた。しかし町の外れの方に最近建てられたのだろう簡素な墓がいくつもたっていた。
「ソフィ様……」
同じように立てられている墓を見たであろうラルフが、ソフィに声を掛けてきた。
「うむ。どうやら思った通り生存者がいるようだ」
そう言ってソフィが一歩墓の方へと近づくと、その周囲から魔力の余波を感じた。
「それ以上近寄るんじゃねぇっ!」
バチバチと音を立てながら雷の魔法が、連続してソフィに向けて放たれた。
――最上位魔法、『雷撃閃光』。
――最上位魔法、『雷撃閃光』。
――最上位魔法、『雷撃閃光』。
「『絶対防御』」
本来発動に必要な筈の魔法詠唱を省いて、ソフィが使用する『魔法』の名だけを告げると、ソフィに向けられていた雷の『魔法』が雲散霧消していく。
「な、何で! ボク達の魔法が……」
「っく、こいつらは最上位魔族か!」
突如、周囲の物陰から隠れていたであろう子供の声が飛び交った。
そして更に追い打ちをかけようと子供達の方から『魔力』の奔流を感じたソフィは声を出す。
「待て……。我らは敵ではない」
ソフィがそう告げると、この場に数秒程の沈黙が流れた。
「お主達は『レイズ』魔国とやらの生き残りであろう? 我に姿を見せてくれぬか?」
同じくらいの年齢のソフィの優し気な言葉に、物陰からガサガサと音を立てて、数人の子供達が出てきた。
「……ほ、本当に敵じゃない?」
子供の一人がそう言うとソフィは頷いた。
「うむ。我はシスやユファ、いやヴェルトマーとも知り合いだ」
その言葉に子供達の目が驚愕の色に染まった。
「それで、お主達以外にはもう誰もおらんのか?」
「皆、隠れて暮らしてるよ」
子供の一人が素直にそう答えると、他の子供達が声をあげた。
「おい! 本当に女王様達の知り合いかも分からないのに言うなよ!」
「そうだ!! お前の所為で皆が危ない目にあったらどうするつもりだよ!」
素直に答えた子供は近くに居た子供達にまくし立てるように咎められた。
「ご、ごめん……」
子供が素直に謝ると溜息を吐いて他の子達がソフィに視線を移した。
「我々は嘘はついてはいませんよ」
横にいたラルフが責められている子供を庇うように口を挟むと、責めていた子供の一人が声をあげた。
「え? お兄さんもしかして人間?」
漏出か魔力感知か分からないが、子供の一人が目ざとくラルフが人間だと気づいた。
「う、うそ! 本当? は、初めて見た……!」
「俺も俺も!」
「後ろにいる女の人も人間だよ!」
リーネを指さしてまたも子供達は驚いている。
「これで分かっただろう? 我らは『ミールガルド』大陸から来たばかりなのだ。お主らの考えている『ラルグ』魔族の者でもないし、当然お主らの敵でもないぞ」
ソフィがそう言うと子供達は、再度ラルフやリーネを見た後に納得するように頷いた。
余程ソフィ達の中に人間が居るという事が、子供達にとっては信用に値するような事だったのだろう。
「お主達の仲間とやらの所に案内してくれぬか? 出来れば大人が居ればいいのだが」
ソフィがそう言うと、先程まで敵対心を持っていた子供の一人が大きく頷いた。
どうやら根は素直でいい子ばかりのようだった。
子供達の案内で『シティアス』の入り組んだ道を進んでいくと、立てかけられている看板から読み取るに酒場であっただろう建物があった。
そこに子供達が入っていくのでソフィ達も入っていく事にした。
…………
建物の中は薄暗く至る所の窓が割れていて、ビュウビュウと風の音が聞こえる。そして室内のテーブルやら椅子が乱雑に並んでいた。
「こっちだよ!」
最初に素直に応えてくれた子供が指を差す方向に、小さな物置部屋みたいなのがあった。
何もないように見えるが、ソフィには微かな魔力の残滓を感じる。
そして子供の一人が魔法を唱えると、何も無かった部屋に地下へと通じる階段が現れた。
「ほう……。隠蔽魔法か」
ソフィでも意識して見なければ、パッと見て気づかない程の精密性な隠し階段だった。
「凄いでしょ? リーゼお姉ちゃんの魔法なんだよ!」
どうやら『レイズ』魔国の魔族の名前らしい。ソフィは子供達に向けて感心するように頷いて見せた。
ソフィ達は地下へと通じる階段を下りていく。余程深く掘ってあったのか、時間をかけて階段を下りていくと空洞が広がっていた。
地盤沈下を不安するような規模の大きさだったが、魔力の残滓を感じるので最初からある程度計算されて作られていたのだろう。防空壕のような役割を担ったのかもしれない。
ソフィ達が地下空洞を歩いていくと、やがて明かりが見え始めた。
「貴方達、そこで止まりなさい!」
ローブに身を包んだ小柄な女性が、空洞を歩いてくるソフィ達を呼び止めた。
「お姉ちゃん!」
その女性に子供達が嬉しそうに駆け寄っていく。
「ルキ……? お前たちも!」
一番最初にソフィの前に姿を見せてくれた、あの素直だった子供はルキという名前らしい。
「唐突に入ってきてすまぬな。お主がここの責任者か?」
ソフィがそう言うと『ラルグ』魔国の者達ではないと悟ったのだろう。
ローブに身を包んだ小柄な女性は、淡く紅いオーラを消して頷いて見せた。
「私は『リーゼ』という者だ。お前達は何者だ?」
そこに居たのは数千年前、この国のNo.2として『フィクス』を務めた魔法部隊長。
――『リーゼ・フィクス』であった。
ソフィが何か情報を得る事が出来ればここに一度戻ると説明すると、ソフィの軍勢の直轄司令であるベアは大きく頷くのだった。
…………
首都シティアスもやはり戦争の爪痕が残り廃墟と化していた。しかし町の外れの方に最近建てられたのだろう簡素な墓がいくつもたっていた。
「ソフィ様……」
同じように立てられている墓を見たであろうラルフが、ソフィに声を掛けてきた。
「うむ。どうやら思った通り生存者がいるようだ」
そう言ってソフィが一歩墓の方へと近づくと、その周囲から魔力の余波を感じた。
「それ以上近寄るんじゃねぇっ!」
バチバチと音を立てながら雷の魔法が、連続してソフィに向けて放たれた。
――最上位魔法、『雷撃閃光』。
――最上位魔法、『雷撃閃光』。
――最上位魔法、『雷撃閃光』。
「『絶対防御』」
本来発動に必要な筈の魔法詠唱を省いて、ソフィが使用する『魔法』の名だけを告げると、ソフィに向けられていた雷の『魔法』が雲散霧消していく。
「な、何で! ボク達の魔法が……」
「っく、こいつらは最上位魔族か!」
突如、周囲の物陰から隠れていたであろう子供の声が飛び交った。
そして更に追い打ちをかけようと子供達の方から『魔力』の奔流を感じたソフィは声を出す。
「待て……。我らは敵ではない」
ソフィがそう告げると、この場に数秒程の沈黙が流れた。
「お主達は『レイズ』魔国とやらの生き残りであろう? 我に姿を見せてくれぬか?」
同じくらいの年齢のソフィの優し気な言葉に、物陰からガサガサと音を立てて、数人の子供達が出てきた。
「……ほ、本当に敵じゃない?」
子供の一人がそう言うとソフィは頷いた。
「うむ。我はシスやユファ、いやヴェルトマーとも知り合いだ」
その言葉に子供達の目が驚愕の色に染まった。
「それで、お主達以外にはもう誰もおらんのか?」
「皆、隠れて暮らしてるよ」
子供の一人が素直にそう答えると、他の子供達が声をあげた。
「おい! 本当に女王様達の知り合いかも分からないのに言うなよ!」
「そうだ!! お前の所為で皆が危ない目にあったらどうするつもりだよ!」
素直に答えた子供は近くに居た子供達にまくし立てるように咎められた。
「ご、ごめん……」
子供が素直に謝ると溜息を吐いて他の子達がソフィに視線を移した。
「我々は嘘はついてはいませんよ」
横にいたラルフが責められている子供を庇うように口を挟むと、責めていた子供の一人が声をあげた。
「え? お兄さんもしかして人間?」
漏出か魔力感知か分からないが、子供の一人が目ざとくラルフが人間だと気づいた。
「う、うそ! 本当? は、初めて見た……!」
「俺も俺も!」
「後ろにいる女の人も人間だよ!」
リーネを指さしてまたも子供達は驚いている。
「これで分かっただろう? 我らは『ミールガルド』大陸から来たばかりなのだ。お主らの考えている『ラルグ』魔族の者でもないし、当然お主らの敵でもないぞ」
ソフィがそう言うと子供達は、再度ラルフやリーネを見た後に納得するように頷いた。
余程ソフィ達の中に人間が居るという事が、子供達にとっては信用に値するような事だったのだろう。
「お主達の仲間とやらの所に案内してくれぬか? 出来れば大人が居ればいいのだが」
ソフィがそう言うと、先程まで敵対心を持っていた子供の一人が大きく頷いた。
どうやら根は素直でいい子ばかりのようだった。
子供達の案内で『シティアス』の入り組んだ道を進んでいくと、立てかけられている看板から読み取るに酒場であっただろう建物があった。
そこに子供達が入っていくのでソフィ達も入っていく事にした。
…………
建物の中は薄暗く至る所の窓が割れていて、ビュウビュウと風の音が聞こえる。そして室内のテーブルやら椅子が乱雑に並んでいた。
「こっちだよ!」
最初に素直に応えてくれた子供が指を差す方向に、小さな物置部屋みたいなのがあった。
何もないように見えるが、ソフィには微かな魔力の残滓を感じる。
そして子供の一人が魔法を唱えると、何も無かった部屋に地下へと通じる階段が現れた。
「ほう……。隠蔽魔法か」
ソフィでも意識して見なければ、パッと見て気づかない程の精密性な隠し階段だった。
「凄いでしょ? リーゼお姉ちゃんの魔法なんだよ!」
どうやら『レイズ』魔国の魔族の名前らしい。ソフィは子供達に向けて感心するように頷いて見せた。
ソフィ達は地下へと通じる階段を下りていく。余程深く掘ってあったのか、時間をかけて階段を下りていくと空洞が広がっていた。
地盤沈下を不安するような規模の大きさだったが、魔力の残滓を感じるので最初からある程度計算されて作られていたのだろう。防空壕のような役割を担ったのかもしれない。
ソフィ達が地下空洞を歩いていくと、やがて明かりが見え始めた。
「貴方達、そこで止まりなさい!」
ローブに身を包んだ小柄な女性が、空洞を歩いてくるソフィ達を呼び止めた。
「お姉ちゃん!」
その女性に子供達が嬉しそうに駆け寄っていく。
「ルキ……? お前たちも!」
一番最初にソフィの前に姿を見せてくれた、あの素直だった子供はルキという名前らしい。
「唐突に入ってきてすまぬな。お主がここの責任者か?」
ソフィがそう言うと『ラルグ』魔国の者達ではないと悟ったのだろう。
ローブに身を包んだ小柄な女性は、淡く紅いオーラを消して頷いて見せた。
「私は『リーゼ』という者だ。お前達は何者だ?」
そこに居たのは数千年前、この国のNo.2として『フィクス』を務めた魔法部隊長。
――『リーゼ・フィクス』であった。
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