最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第165話 過去のアレルバレル3
「ソフィ様に認められた私はその後『アレルバレル』の世界から元の世界に戻ったのだけど、その世界は様変わりしていた」
…………
フルーフ様と私という存在が居なくなったその世界には、魔王『レインドリヒ』が魔王軍の主として君臨していた。
「私はもう元の世界に興味を失っていた為に、誰が大魔王になろうと関係がないという気持ちを持っていたからどうでもよかったんだけど、レインドリヒの方はそうではなかったようでね。私が戻ってきた事を知った瞬間に、私個人に対して多くの軍勢を差し向けてきたのよ」
淡々とその時の出来事を『シス』に向けて口にする大魔王『ユファ』だった。
「大方私が反旗を翻すとでも考えたのだろうね。今更世界征服など興味がなかったけど、流石に攻撃されては別である。あの方に鍛えられた『力』を使って、次々とレインドリヒの軍勢を撃破してやった。レインドリヒとしても、配下だけではどうにもならないと気づいたのでしょうね。私は『レインドリヒ』と直接戦う事となった。流石に『大魔王』となっていただけあって『レインドリヒ』には『災厄の大魔法使い』と呼ばれていた私でさえも苦戦したわ。ソフィ様に鍛えられた私と『レインドリヒ』は全くといっていい程に互角だった。もしソフィ様が同じ世界に居れば、契約の紋章の有無の問題で私が勝っていたでしょうけどね」
――そして、三日三晩と戦いは続き『レインドリヒ』とは相討ちとなった。
「互いに仮の身体がある為に、死ぬ事も意識がなくなる事もなく、活動は続けられたのだけど、私はその時にこの『リラリオ』に『概念跳躍』を使って移動した」
…………
「ふふ、その時に貴方にあったのよ?」
レイズ魔国の城下で初めて出会った時に『ヴェルトマー』の服がボロボロだったその理由をようやくシスはここで理解したのだった。
「そしてここからが本当に問題なのよ……」
そう言うとユファは大きく溜息を吐いた。
「私と入れ替わるようにフルーフの配下だった魔王『レア』が、元の世界に戻ったみたいなんだけどね。それが厄介な事に力をつけたレアは、私と戦った事で相当に魔力が消耗して戦いにすらならなかった『大魔王』レインドリヒの配下達を吸収して、新たに『魔王レア』の軍勢に作り替えたみたいなの」
それがどうやら数千前の出来事らしく、ちょうどユファがヴェルトマーとして『リラリオ』の世界に姿を見せた辺りの事だったらしい。
「その後の事は詳しくはまだ分からない。でも『魔王』レアは、フルーフの事を知ってから、私やソフィ様。そして何故か『ヌー』の事を調べているらしいの」
どうやらそれが、この前にシスを襲撃した真相だったらしい。
「あの時は私が間に合ったからよかったけど、あのままだったら貴方かなりやばかったのよ?」
昔のレアの性格を知るユファは、まさに間一髪だったと教えてくれた。
「あの幼女にしか見えない子が……?」
シスには幼い人間の子供にしか見えない『魔王』レアが、そんなに残虐だったのかと疑問に思う。
「まぁ、見た目は確かにね」
苦笑いを浮かべてユファはそう言った。
フルーフが居た頃のレアはそれこそ、最上位魔族の最上位程の力しかなかったが、この『世界』で戦った時のレアは、それこそ『魔王』に相応しい力を持っていた。
何より普通の魔王と違うところは、古の大魔王『フルーフ』の魔法や呪文を使えることであろう。
『呪縛の血』などが例に挙げられるが、あれも私が介入しなければシスは完全に支配されてしまい、最悪の場合はあやつり人形じみた扱いをされていた可能性があった。
「私が焦っている理由が分かったでしょう? あいつが本格的に動き出す前に止めなければ、大変な事になるのは間違いないわ」
「……ねぇ、それならソフィさんに相談するのが一番じゃないかな?」
シスの言葉に、ユファは動きを止める。
「え……?」
そしてソフィの事を語る事に夢中だったユファは、ようやく違和感に気づいた。
――先程からシスが何故、ソフィさんと呼んでいるのかを。
――『ヴェルはソフィさんと、会った事があるの?』
――『ソフィさんって、そこまで凄かったの?』
――『ソフィさんって、昔から本当に優しい人なのね』。
…………
何故、この世界出身の筈のシスが、別世界に居るソフィ様を優しいと知っている――?
「ね、ねぇ、何で貴方、ソフィ様を知ってるの?」
「え?」
何を今更言っているのと言いたそうな表情で、シスは可愛く首を傾げた。
「ヴェルがあの時、ソフィさんの所へ送ってくれたんじゃない」
あの時ってそれは何時の事だろう。
――そしてそこでようやくユファはピンときた。
「待って! ま、まさか! ラルグ魔国の連中が攻めてきた時に、私が貴方に魔法で送ったあの時の事!?」
そうだよとばかりにシスは、何度も首を縦に振ってコクコクと頷いて見せるのだった。
…………
フルーフ様と私という存在が居なくなったその世界には、魔王『レインドリヒ』が魔王軍の主として君臨していた。
「私はもう元の世界に興味を失っていた為に、誰が大魔王になろうと関係がないという気持ちを持っていたからどうでもよかったんだけど、レインドリヒの方はそうではなかったようでね。私が戻ってきた事を知った瞬間に、私個人に対して多くの軍勢を差し向けてきたのよ」
淡々とその時の出来事を『シス』に向けて口にする大魔王『ユファ』だった。
「大方私が反旗を翻すとでも考えたのだろうね。今更世界征服など興味がなかったけど、流石に攻撃されては別である。あの方に鍛えられた『力』を使って、次々とレインドリヒの軍勢を撃破してやった。レインドリヒとしても、配下だけではどうにもならないと気づいたのでしょうね。私は『レインドリヒ』と直接戦う事となった。流石に『大魔王』となっていただけあって『レインドリヒ』には『災厄の大魔法使い』と呼ばれていた私でさえも苦戦したわ。ソフィ様に鍛えられた私と『レインドリヒ』は全くといっていい程に互角だった。もしソフィ様が同じ世界に居れば、契約の紋章の有無の問題で私が勝っていたでしょうけどね」
――そして、三日三晩と戦いは続き『レインドリヒ』とは相討ちとなった。
「互いに仮の身体がある為に、死ぬ事も意識がなくなる事もなく、活動は続けられたのだけど、私はその時にこの『リラリオ』に『概念跳躍』を使って移動した」
…………
「ふふ、その時に貴方にあったのよ?」
レイズ魔国の城下で初めて出会った時に『ヴェルトマー』の服がボロボロだったその理由をようやくシスはここで理解したのだった。
「そしてここからが本当に問題なのよ……」
そう言うとユファは大きく溜息を吐いた。
「私と入れ替わるようにフルーフの配下だった魔王『レア』が、元の世界に戻ったみたいなんだけどね。それが厄介な事に力をつけたレアは、私と戦った事で相当に魔力が消耗して戦いにすらならなかった『大魔王』レインドリヒの配下達を吸収して、新たに『魔王レア』の軍勢に作り替えたみたいなの」
それがどうやら数千前の出来事らしく、ちょうどユファがヴェルトマーとして『リラリオ』の世界に姿を見せた辺りの事だったらしい。
「その後の事は詳しくはまだ分からない。でも『魔王』レアは、フルーフの事を知ってから、私やソフィ様。そして何故か『ヌー』の事を調べているらしいの」
どうやらそれが、この前にシスを襲撃した真相だったらしい。
「あの時は私が間に合ったからよかったけど、あのままだったら貴方かなりやばかったのよ?」
昔のレアの性格を知るユファは、まさに間一髪だったと教えてくれた。
「あの幼女にしか見えない子が……?」
シスには幼い人間の子供にしか見えない『魔王』レアが、そんなに残虐だったのかと疑問に思う。
「まぁ、見た目は確かにね」
苦笑いを浮かべてユファはそう言った。
フルーフが居た頃のレアはそれこそ、最上位魔族の最上位程の力しかなかったが、この『世界』で戦った時のレアは、それこそ『魔王』に相応しい力を持っていた。
何より普通の魔王と違うところは、古の大魔王『フルーフ』の魔法や呪文を使えることであろう。
『呪縛の血』などが例に挙げられるが、あれも私が介入しなければシスは完全に支配されてしまい、最悪の場合はあやつり人形じみた扱いをされていた可能性があった。
「私が焦っている理由が分かったでしょう? あいつが本格的に動き出す前に止めなければ、大変な事になるのは間違いないわ」
「……ねぇ、それならソフィさんに相談するのが一番じゃないかな?」
シスの言葉に、ユファは動きを止める。
「え……?」
そしてソフィの事を語る事に夢中だったユファは、ようやく違和感に気づいた。
――先程からシスが何故、ソフィさんと呼んでいるのかを。
――『ヴェルはソフィさんと、会った事があるの?』
――『ソフィさんって、そこまで凄かったの?』
――『ソフィさんって、昔から本当に優しい人なのね』。
…………
何故、この世界出身の筈のシスが、別世界に居るソフィ様を優しいと知っている――?
「ね、ねぇ、何で貴方、ソフィ様を知ってるの?」
「え?」
何を今更言っているのと言いたそうな表情で、シスは可愛く首を傾げた。
「ヴェルがあの時、ソフィさんの所へ送ってくれたんじゃない」
あの時ってそれは何時の事だろう。
――そしてそこでようやくユファはピンときた。
「待って! ま、まさか! ラルグ魔国の連中が攻めてきた時に、私が貴方に魔法で送ったあの時の事!?」
そうだよとばかりにシスは、何度も首を縦に振ってコクコクと頷いて見せるのだった。
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