最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

第134話 ベアの森の魔物たちの集結

 ソフィはレルバノンの屋敷に出ると直ぐに『念話テレパシー』でアウルベアの『ベア』に声を送る。

(聞こえるか、ベアよ)

 ……
 ……
 ……

 ソフィの屋敷の庭でベアは主人の帰りを待ちながら寝そべっていた。

 そこに突如ソフィの声が脳内に聞こえてくると、慌てて体を起こしてソフィの『念話テレパシー』に応えた。

(ソフィ様! どうされましたか!)

(うむ、すまぬが大事な話がある。お主の森の縄張りで集められるだけ同胞や配下を集めてくれぬか?)

 主であるソフィが『念話テレパシー』で話しかけてくるなど、出会ったばかりの頃以来であり余程の緊急の話だとベアは察した。

(分かりました、すぐに屋敷の前に集めておきます)

(うむ。頼んだぞ)

 そこでソフィからの『念話テレパシー』が切れた。そこからのベアの行動は迅速だった。

「グオオオオッッ!!」

 ベアは森中に響き渡る程の咆哮をあげる。

「!!」

 その瞬間、アウルベアの同胞達がベアの咆哮に次々と姿を見せ始めた。

 次に剣歯虎『グランドサーベルタイガー』の群れ、更には死蜂『キラービー』の群れ、猟犬『ハウンドドッグ』の群れ、蛇『クラウザーワーム』の群れ、怪鳥『デスバード』の群れなどが、続々と森の主である『ベア』の元に集まるのであった。

 アウルベアの縄張りの森に生息する魔物達で特に最近は、よくソフィの屋敷の庭で寛いでいる者達である。

 火急の用事でベアの主人であるソフィが、森の魔物達を集める様にと伝令があったと同胞や配下達に話す。

 ……
 ……
 ……

 念話テレパシーを終えたソフィは、一度屋敷に戻る事をその場にいる者達に伝えた。

 ラルフの目が自分を連れていって下さいと告げていたので、ソフィは転移魔法でラルフを連れて自らの屋敷へと飛ぶのであった。

 ソフィとラルフの前に数多くの魔物達が集結していた。

 ソフィが姿を見せると、隊列を組んでいるところからベアが一歩前に出た。

「ソフィ様! お待ちしておりました」

 ベアが頭を下げると同胞のアウルベアや、配下の魔物達も頭を下げる。

「突然集まってもらってすまぬな。頼みがあるのだが聞いてもらえぬか」

 ソフィが頼みを申し出る事など出会ってから初めての事であり、ベアや森の魔物達は顔を見合わせる。

「もうすぐ大勢の魔族達が、この大陸に攻め込んでくるらしいのだ」

 その言葉に魔物達の間でざわつきが見られたが、直ぐ様『ベア』が騒いでる者達を一瞥する。

 視線を向けられて騒がしくしていた魔物達は、慌てて背筋を伸ばしながら態度を改める。

 その後も『ベア』が執拗に睨みつけた事で、その魔物達は如何にソフィという存在が『絶対者』であるかを理解した。

 これ程までに『ベア』が他者に対して厳しい視線を送る事はこれまでにはなかった為である。

「すまぬな。そこでお主達の力を借りたいと思っているのだ」

 ソフィがそこまで言ってようやくベアが代表して口を開いた。

「我々はソフィ様に忠誠を誓っております。命令をしていただいて構いませんよ」

 ベアがそう言うと同胞のアウルベアは勿論の事、この場に集まっている森の魔物達も一様に頷く。

 人間達に煙たがられていた魔物達を庇うように自らの屋敷に招き入れて、可愛がってくれているソフィの事を既に信頼しており、魔物達は感謝をしている。

 そんなソフィが困っていると、手を借りたいというのであれば手を貸す事に何の躊躇いがあるだろうか。

 グランドサーベルタイガーの一体が、ソフィの近くにいき撫でてとばかりにソフィの手の下に体を持っていく。

 ソフィは嬉しそうに、サーベルタイガーの頭を撫でながら声を発した。

「すまぬな、ありがとう」

 他の魔物たちもソフィの元に近寄り、十歳程のソフィの体を自らの体の上にのせて嬉しそうな鳴き声をあげた。

 ――ベアとラルフが顔を合わせて笑い合う。

 すでにソフィはこの森の中で、自らの居場所を見つけていたのだった。

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