最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第121話 大商人ギルド・ウェルザード
ラルグ魔国にある塔の最上階に居るラルグ魔国王の『シーマ』は、この国の主だった重鎮達を集めていた。
「レルバノンとシスは『ミールガルド』大陸に居るという話だ。シュライダーよ、貴様の兵団と三軍に属する連中共を連れて奴らの首を刎ねてこい」
シーマ王に直接任命された事でシュライダーは、気分が高揚しながらも頭を下げて命令を受託した。
「御意! 奴らの抹殺の邪魔をする人間共がいれば、その者達も手にかけて宜しいのでしょうか?」
シーマ王は笑みを浮かべて頷く。
「もちろんだ。我々の邪魔をする輩は皆殺しにしろ」
その言葉にシュライダーは、シーマ王に劣らぬ邪悪な笑みを浮かべるのだった。
……
……
……
そしてシチョウが『レルバノン』の屋敷へ降り立った頃、ラルグ魔国から総勢7500体の『魔族』の大群を引き連れてラルグ統括軍事副司令『シュライダー・クーティア』が『ミールガルド』大陸へ飛び立つのだった。
7000体を越える『魔族』達が一斉に飛び上がっていく姿は実に壮観であり、その様子を見ていたシーマ王は満足気に頷きを見せるのであった。
――遂に『ヴェルマー』大陸の『魔王軍』が『ミールガルド』大陸との戦争の火蓋を切るのであった。
……
……
……
「うふふ、ついにヴェルマーの魔族が動いたわねぇ?」
『魔王』レアは楽しそうに椅子の上で足をパタパタさせる。
「人間なんかを守りながら戦おうとするなんて、ソフィちゃんも変わってるわぁ。だからこそどうなるのかが楽しみなんだけどぉ」
くすくすと両手を口元に持っていって、心底楽しいといった表情を見せる幼女の姿をしているレアだった。
……
……
……
ケビン王国領ではすでに戦争の噂が飛び交い、あらゆるところで話題に上がっていた。
「聞いたか? 魔物達を束ねる偉い魔族達が俺達人間たちを狙って、この『ミールガルド』大陸に向かってきているらしいぞ?」
「ああ。ここ最近の王国軍がせわしなく動きを見せているところをみるに、その噂は本当かもしれないな」
「俺も冒険者ギルドの奴らが慌てていたところを見たぞ」
酒場や至る所でこういった会話が繰り広げられており、徐々に他人事でなくなっていく様は、人々を恐怖に陥れていった。
そしてケビン王国だけではなく『魔族』達との戦争が始まるかもしれないというこの状況下は『ルードリヒ』王国にも伝播していき、ルードリヒの民達や貴族、それに王族達も『ケビン』王国の動向を逐一確認するようになっていった。
……
……
……
ルードリヒ王国に数多くの支店を持つ大商人ギルド『ウェルザード』でも多くの人材を使い、戦争の情報を仕入れていた。
そして『ケビン』王国でレルバノン達が会議をした日『ウェルザード』の本部がある『クッケ』の街で、ウェルザード商会長『クラウリー・ショアド・ヴァイス』は『ルードリヒ』王国の各町の支店長達を集めて会議を行っていた。
「本日は忙しい中、よくぞ集まってくれた」
クラウリーが話始めると、各町の商会員達は一語一句聞き逃すまいと耳を傾け始めた。
彼ら一人一人が一流の商人であり、商売に命をかけている者達である。
そんな彼らがここ一番の商売の好機を見逃す筈もなく、情報を少しでも仕入れようと必死であった。
いつものような支店の報告会や、業務の進捗等を確認するような会議ではないというのは、商会長クラウリーの態度で分かり、この場に居る商人達は密かに心を躍らせていた。
「同士諸君の働きのおかげで『ヴェルマー』大陸の連中が、我々の住む『ミールガルド』大陸に戦争を仕掛けようとしているという情報を入手出来た」
部屋の中にいる者達は、やはりその話かという様子を態度で示しながら互いに顔を見て頷く。
「何故今になってこちらを狙ってきたのかは分からぬが、我々商人にとっては非常事態の時こそ商売の好機だと考えて上手く立ち回らなければならない」
クラウリーの言葉に多くの商会メンバーたちが頷く。
「ヴェルマー大陸の戦力がどの程度の者かは分からないが、戦争自体は国や冒険者ギルドに任せて、我らは我らの戦いを始めたいと思う」
「つまり王国や、冒険者に物資を売れという事でしょうか?」
この大商会『ウェルザード』の副長『バーテン・ダグラス』が口を開いた。
この人物は主に『ルードリヒ』王国相手に取引を行っている、ウェルザードの重要な交渉役を担う人物であった。
「そういう事になるが我々商人としては、今後の事も考えなければならぬ。我々が協力し合って集めたとしても、戦争までに集められる物資は限られる。しかしそうであるならば、どこの派閥に協力する事が、一番の益になるかを考えねばなるまい?」
彼らは戦争で『ミールガルド』大陸側が負ける事など、僅かであっても考える事などしていなかった。
それだけ『ケビン』王国や『ルードリヒ』王国の王族や貴族たちの持つ軍事力が、巨大であった為である。
つまり彼らにとっては、どこの派閥に協力する事が一番『ウェルザード』大商会の利益になるか。そして自分達の立場を組織内で大きく出来るのか。まさにそれだけを考えていた。
「それでは、他の商人ギルド達に先を越されるのでは?」
「いや……、まだ今の段階で戦争の情報は、そこまで広まってはいないでしょう」
各町の支店長達がそれぞれの意見を交わし合う。
その様子を見て静かに頷いていた『クラウリー』が口を開いた。
「もう一つ大事な事は何処の派閥が動くかを待ちながら、事前に物資を各町で集めておく事が先決だ」
そしてそのクラウリーの言葉で、これまで黙っていた恰幅のいい商人の一人が口を開いた。
「私の持つ情報だと冒険者ギルドに所属する冒険者達も、此度の戦争に参戦するらしいとの事ですぞ」
意見を交換し合っていた商人達は、その男の言葉に一様に押し黙る。
「冒険者ギルドですか。王国に比べれば、そこまで益は見込めないと思われますが」
この組織の副長である『バーテン』が、その恰幅のいい商人に対して返答をする。
「勲章ランクAのスイレン程の猛者はそんなに多くはないですしね。やはり王国と比べると………」
しかし恰幅のいい男『シティ・タークス』は、その言葉を聞いてとある冒険者達の名前を出す。
「表立って戦争に立つのはかの有名な『リディア』殿と『微笑』の二つ名を持つ元Aランクの殺し屋『ラルフ』。そしてその殺し屋をを配下にしたと言われる『破壊神』ソフィ殿らしいですぞ!」
――その瞬間、ざわざわと部屋の中が今までの中で一番と呼べる程に騒がしくなるのであった。
「そ、それは本当なのか?」
「あの『破壊神』が動くのであれば冒険者ギルドに協力も、決して悪くはないのでは?」
『魔法一つで陸一つを消し飛ばすという噂が本当であれば、王国よりも余程にいい商売相手ですね」
大商会である『ウェルザード』に属する支店長達は、そう言って互いに頷き合う。
「確かにその話が本当であれば、冒険者ギルドに投資するのも悪くはないですが。実際には私はそんな話を一度も聞いた事がありませんね」
バーテンはあくまでも王国贔屓で、王国との関係を一番にもっていきたいと思っており、この場でウェルザード全体の商人の協力を得たいと考えている。
今回もすでに『ルオー家』に物資の供給を約束しており、個人的にもバーテンは『ステイラ』公爵に気に入られようと必死なのであった。
そんな彼の前ではこの恰幅のいい『シティ・タークス』の発言は余計でしかない。
慌ててバーテンは流れを王国側に戻そうとそう告げるのであった。
しかし『シティ・タークス』はここが好機とばかりにバーテンには喋らせない。
「いえいえ、これは確かな情報ですよ。何せ懇意にしている『ケビン』王国の大貴族の方から、商売の席で直接お聞きしたのです。その時の話によれば何と『レルバノン』卿が、冒険者ギルドにわざわざ出向いてその『破壊神』を名指しで依頼して雇い、戦争へ参加させたらしいのですよ。それも信じられない程の莫大な金額で雇ったとの話でした」
レルバノン卿の名前が出ると、水を打ったような静けさの後に再び部屋の中は喧ましくなった。
「な、何と! 破壊神はレルバノン卿とも繋がりがあるのか!」
「破壊神が動くのであれば『微笑』や『最強の剣士』が、動いてもおかしくはない話だ」
「確かに……! それだけの影響を『破壊神』は持っているからな! しかしまさかレルバノン卿とは……、いやはや本当に驚かされる」
ウェルザードの商人達がこんなに騒ぐのも無理はない。
レルバノン卿といえば『ミールガルド』大陸の両国家とも繋がりを持っていると言われており、元々は『ラルグ』魔国の宰相になると噂をされていた程の人物である。
そしてそんな大貴族の『レルバノン』と、いち冒険者ではあっても『破壊神』として冒険者ギルドで絶大なる影響力を有している『ソフィ』が契約関係にある事は『ウェルザード』という大ギルドの大商人達でさえも十分に驚くに値する事だった。
「クラウリー商会長! 我々はレルバノン殿と冒険者ギルドに対して全面的な協力をするべきだと思います」
シティの進言を受けたクラウリーは、悩む素振りを見せた後に部屋の中に居る商人達を見渡した。
すでに多くの者が『シティ』の言葉に賛同して支持しているのが見て取れた。
そしてクラウリーは、数秒程考えた後に決定を下した。
「諸君! 直ぐに自分達の街に戻り、武具や回復材等の物資をかき集めるのだ。そして我々『ウェルザード』商会は、冒険者ギルドに協力すると大々的に伝えるのだ!」
その言葉に一流の商人達は頷き、各町の支店長たちは一斉に行動を開始したのだった。
……
……
……
悔しそうな表情を浮かべたバーテンを横目に、恰幅のいい男『シティ』はほくそ笑みながら部屋を出ていった。
(ククッ……! レルバノン様、こちらは思惑通り全てが上手くいきましたぞ)
『シティ・タークス』は商会の建物を出た後に人通りのない路地裏に入ると、手で顔を引き剥がす。
――何とそこには白髪混じりの男『ビレッジ』が姿を現すのだった。
こうして『ミールガルド』大陸の大商会を味方につけたソフィ達は、戦争に向けて準備を進めるのだった。
「レルバノンとシスは『ミールガルド』大陸に居るという話だ。シュライダーよ、貴様の兵団と三軍に属する連中共を連れて奴らの首を刎ねてこい」
シーマ王に直接任命された事でシュライダーは、気分が高揚しながらも頭を下げて命令を受託した。
「御意! 奴らの抹殺の邪魔をする人間共がいれば、その者達も手にかけて宜しいのでしょうか?」
シーマ王は笑みを浮かべて頷く。
「もちろんだ。我々の邪魔をする輩は皆殺しにしろ」
その言葉にシュライダーは、シーマ王に劣らぬ邪悪な笑みを浮かべるのだった。
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そしてシチョウが『レルバノン』の屋敷へ降り立った頃、ラルグ魔国から総勢7500体の『魔族』の大群を引き連れてラルグ統括軍事副司令『シュライダー・クーティア』が『ミールガルド』大陸へ飛び立つのだった。
7000体を越える『魔族』達が一斉に飛び上がっていく姿は実に壮観であり、その様子を見ていたシーマ王は満足気に頷きを見せるのであった。
――遂に『ヴェルマー』大陸の『魔王軍』が『ミールガルド』大陸との戦争の火蓋を切るのであった。
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「うふふ、ついにヴェルマーの魔族が動いたわねぇ?」
『魔王』レアは楽しそうに椅子の上で足をパタパタさせる。
「人間なんかを守りながら戦おうとするなんて、ソフィちゃんも変わってるわぁ。だからこそどうなるのかが楽しみなんだけどぉ」
くすくすと両手を口元に持っていって、心底楽しいといった表情を見せる幼女の姿をしているレアだった。
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ケビン王国領ではすでに戦争の噂が飛び交い、あらゆるところで話題に上がっていた。
「聞いたか? 魔物達を束ねる偉い魔族達が俺達人間たちを狙って、この『ミールガルド』大陸に向かってきているらしいぞ?」
「ああ。ここ最近の王国軍がせわしなく動きを見せているところをみるに、その噂は本当かもしれないな」
「俺も冒険者ギルドの奴らが慌てていたところを見たぞ」
酒場や至る所でこういった会話が繰り広げられており、徐々に他人事でなくなっていく様は、人々を恐怖に陥れていった。
そしてケビン王国だけではなく『魔族』達との戦争が始まるかもしれないというこの状況下は『ルードリヒ』王国にも伝播していき、ルードリヒの民達や貴族、それに王族達も『ケビン』王国の動向を逐一確認するようになっていった。
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ルードリヒ王国に数多くの支店を持つ大商人ギルド『ウェルザード』でも多くの人材を使い、戦争の情報を仕入れていた。
そして『ケビン』王国でレルバノン達が会議をした日『ウェルザード』の本部がある『クッケ』の街で、ウェルザード商会長『クラウリー・ショアド・ヴァイス』は『ルードリヒ』王国の各町の支店長達を集めて会議を行っていた。
「本日は忙しい中、よくぞ集まってくれた」
クラウリーが話始めると、各町の商会員達は一語一句聞き逃すまいと耳を傾け始めた。
彼ら一人一人が一流の商人であり、商売に命をかけている者達である。
そんな彼らがここ一番の商売の好機を見逃す筈もなく、情報を少しでも仕入れようと必死であった。
いつものような支店の報告会や、業務の進捗等を確認するような会議ではないというのは、商会長クラウリーの態度で分かり、この場に居る商人達は密かに心を躍らせていた。
「同士諸君の働きのおかげで『ヴェルマー』大陸の連中が、我々の住む『ミールガルド』大陸に戦争を仕掛けようとしているという情報を入手出来た」
部屋の中にいる者達は、やはりその話かという様子を態度で示しながら互いに顔を見て頷く。
「何故今になってこちらを狙ってきたのかは分からぬが、我々商人にとっては非常事態の時こそ商売の好機だと考えて上手く立ち回らなければならない」
クラウリーの言葉に多くの商会メンバーたちが頷く。
「ヴェルマー大陸の戦力がどの程度の者かは分からないが、戦争自体は国や冒険者ギルドに任せて、我らは我らの戦いを始めたいと思う」
「つまり王国や、冒険者に物資を売れという事でしょうか?」
この大商会『ウェルザード』の副長『バーテン・ダグラス』が口を開いた。
この人物は主に『ルードリヒ』王国相手に取引を行っている、ウェルザードの重要な交渉役を担う人物であった。
「そういう事になるが我々商人としては、今後の事も考えなければならぬ。我々が協力し合って集めたとしても、戦争までに集められる物資は限られる。しかしそうであるならば、どこの派閥に協力する事が、一番の益になるかを考えねばなるまい?」
彼らは戦争で『ミールガルド』大陸側が負ける事など、僅かであっても考える事などしていなかった。
それだけ『ケビン』王国や『ルードリヒ』王国の王族や貴族たちの持つ軍事力が、巨大であった為である。
つまり彼らにとっては、どこの派閥に協力する事が一番『ウェルザード』大商会の利益になるか。そして自分達の立場を組織内で大きく出来るのか。まさにそれだけを考えていた。
「それでは、他の商人ギルド達に先を越されるのでは?」
「いや……、まだ今の段階で戦争の情報は、そこまで広まってはいないでしょう」
各町の支店長達がそれぞれの意見を交わし合う。
その様子を見て静かに頷いていた『クラウリー』が口を開いた。
「もう一つ大事な事は何処の派閥が動くかを待ちながら、事前に物資を各町で集めておく事が先決だ」
そしてそのクラウリーの言葉で、これまで黙っていた恰幅のいい商人の一人が口を開いた。
「私の持つ情報だと冒険者ギルドに所属する冒険者達も、此度の戦争に参戦するらしいとの事ですぞ」
意見を交換し合っていた商人達は、その男の言葉に一様に押し黙る。
「冒険者ギルドですか。王国に比べれば、そこまで益は見込めないと思われますが」
この組織の副長である『バーテン』が、その恰幅のいい商人に対して返答をする。
「勲章ランクAのスイレン程の猛者はそんなに多くはないですしね。やはり王国と比べると………」
しかし恰幅のいい男『シティ・タークス』は、その言葉を聞いてとある冒険者達の名前を出す。
「表立って戦争に立つのはかの有名な『リディア』殿と『微笑』の二つ名を持つ元Aランクの殺し屋『ラルフ』。そしてその殺し屋をを配下にしたと言われる『破壊神』ソフィ殿らしいですぞ!」
――その瞬間、ざわざわと部屋の中が今までの中で一番と呼べる程に騒がしくなるのであった。
「そ、それは本当なのか?」
「あの『破壊神』が動くのであれば冒険者ギルドに協力も、決して悪くはないのでは?」
『魔法一つで陸一つを消し飛ばすという噂が本当であれば、王国よりも余程にいい商売相手ですね」
大商会である『ウェルザード』に属する支店長達は、そう言って互いに頷き合う。
「確かにその話が本当であれば、冒険者ギルドに投資するのも悪くはないですが。実際には私はそんな話を一度も聞いた事がありませんね」
バーテンはあくまでも王国贔屓で、王国との関係を一番にもっていきたいと思っており、この場でウェルザード全体の商人の協力を得たいと考えている。
今回もすでに『ルオー家』に物資の供給を約束しており、個人的にもバーテンは『ステイラ』公爵に気に入られようと必死なのであった。
そんな彼の前ではこの恰幅のいい『シティ・タークス』の発言は余計でしかない。
慌ててバーテンは流れを王国側に戻そうとそう告げるのであった。
しかし『シティ・タークス』はここが好機とばかりにバーテンには喋らせない。
「いえいえ、これは確かな情報ですよ。何せ懇意にしている『ケビン』王国の大貴族の方から、商売の席で直接お聞きしたのです。その時の話によれば何と『レルバノン』卿が、冒険者ギルドにわざわざ出向いてその『破壊神』を名指しで依頼して雇い、戦争へ参加させたらしいのですよ。それも信じられない程の莫大な金額で雇ったとの話でした」
レルバノン卿の名前が出ると、水を打ったような静けさの後に再び部屋の中は喧ましくなった。
「な、何と! 破壊神はレルバノン卿とも繋がりがあるのか!」
「破壊神が動くのであれば『微笑』や『最強の剣士』が、動いてもおかしくはない話だ」
「確かに……! それだけの影響を『破壊神』は持っているからな! しかしまさかレルバノン卿とは……、いやはや本当に驚かされる」
ウェルザードの商人達がこんなに騒ぐのも無理はない。
レルバノン卿といえば『ミールガルド』大陸の両国家とも繋がりを持っていると言われており、元々は『ラルグ』魔国の宰相になると噂をされていた程の人物である。
そしてそんな大貴族の『レルバノン』と、いち冒険者ではあっても『破壊神』として冒険者ギルドで絶大なる影響力を有している『ソフィ』が契約関係にある事は『ウェルザード』という大ギルドの大商人達でさえも十分に驚くに値する事だった。
「クラウリー商会長! 我々はレルバノン殿と冒険者ギルドに対して全面的な協力をするべきだと思います」
シティの進言を受けたクラウリーは、悩む素振りを見せた後に部屋の中に居る商人達を見渡した。
すでに多くの者が『シティ』の言葉に賛同して支持しているのが見て取れた。
そしてクラウリーは、数秒程考えた後に決定を下した。
「諸君! 直ぐに自分達の街に戻り、武具や回復材等の物資をかき集めるのだ。そして我々『ウェルザード』商会は、冒険者ギルドに協力すると大々的に伝えるのだ!」
その言葉に一流の商人達は頷き、各町の支店長たちは一斉に行動を開始したのだった。
……
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悔しそうな表情を浮かべたバーテンを横目に、恰幅のいい男『シティ』はほくそ笑みながら部屋を出ていった。
(ククッ……! レルバノン様、こちらは思惑通り全てが上手くいきましたぞ)
『シティ・タークス』は商会の建物を出た後に人通りのない路地裏に入ると、手で顔を引き剥がす。
――何とそこには白髪混じりの男『ビレッジ』が姿を現すのだった。
こうして『ミールガルド』大陸の大商会を味方につけたソフィ達は、戦争に向けて準備を進めるのだった。
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