最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第113話 魔王シスの新魔法
突如シスの容態に変化が訪れた。
 先程まで真なる魔王化状態のソフィを長時間相手にして、体力の消耗も激しく肩で息をしていたのだが唐突に笑みを浮かべ始めたかと思うと、シスのソフィを見る目が獲物を見る目に変わったのである。
(何かを狙っているのか?)
ソフィがどうするかと悩んでいると、シスが口を開いて何かを呟き始めた。
「『尊き其の輝き 清浄の体を望む、消失した魂よ堕ちた我に纏わせ給え』」。
(何だ……? 形態変化の詠唱か?)
ソフィが聞き覚えのない言葉の詠唱なのも仕方がなかった。
 シスが無意識に呟いている言の葉は、ヴェルトマー・フィクスの新魔法の詠唱であり、ヴェルトマー亡き今はシスだけが扱う事の出来る魔法である。
――シスの詠唱によって何もない空間から突如、見た事のない女性が現れ始める。
(魔神? いや、契約系統か?)
ソフィが見た事がないのは当然である。
 シスの詠唱によって召喚されて目の前に居るのは『ヴェルトマー・フィクス』その者であった。
しかしそれは本物のヴェルトマーを召喚したというわけでもない。
 生前契約をしていたヴェルトマーを一時的に術者に憑依させているのである。
 そして更にシスの詠唱は進んでいく。
「『儚い気質を以て、哀れな我に力を与え給え消失した魂よ、堕ちた我に纏わせ給え」。
何とその詠唱後にヴェルトマーの姿をした者が、シスと同化していきやがて一つとなるのであった。
――ドクンッとシスの体が脈打った後、彼女の目が『金色の目』に変わる。
「む……っ!」
ソフィは何か危なさを感じて、即座にその場から離れる。
――超越魔法、『終焉の炎』。
――超越魔法、『終焉の雷』。
――超越魔法、『万物の爆発』。
「なんだと?」
シスは無詠唱で一気に三つの極大魔法をソフィに向けて放つと、鮮やかな魔法陣がソフィの周りを囲むように浮かび上がる。
ソフィは天井の穴から高速で移動して更に距離を取っていくが、真なる魔王化状態のソフィの速度を上回る速度でソフィを追い抜き、頭上からさらに笑みを浮かべたシスが無詠唱魔法を放ち続けられるのであった。
――超越魔法、『炎帝の爆炎』。
――超越魔法、『雷光殲撃《フードル・クラッシュ》』。
――超越魔法、『凜潔暴風雨《ディグナストーム》』。
シスの放つ数々の魔法は系統など完全に無視されていた。
そして遂には魔王の代名詞と呼ぶべき魔法を織り交ぜて次々と放ち始める。
流石に移動中に放たれた為にソフィは止まる事が出来ずに『相殺』しようと魔法を放とうとするが、シスがソフィを再度『金色の目』で睨みつけると、目が眩く光りソフィはコンマ数秒間動きを止められるのであった。
直ぐ様ソフィも目で相殺するが、そのコンマ数秒の間にシスの『魔法』はソフィに届いた。
「ぐっ……!」
爆音が鳴り響きソフィはシスの魔法をその身に直撃させられた。
流石のソフィでも『魔王』シスの魔法を受けて、この形態であってもノーダメージとはいかない。
そして魔法が止んだのを見てソフィがシスの姿を捉えると、左手と右手で違う『魔法』が具現化されていくのが見えた。
(先程までのシスとは全く違う……っ!)
ソフィのように無詠唱で超越魔法を放つだけでもこの世に何人もいないが、更に複数の魔法を同時に扱いながらなど、目覚めたばかりの『魔王』が行える所業ではない。
――それもその筈、今シスに宿っているのは『ヴェルトマー・フィクス』そのものである。
ヴェルマー大陸で最強の魔法使いとされて、古の魔法から新魔法に至るまでの全ての魔法を使いこなすと言われていた魔族。
まさに生前のヴェルトマーがこの場にいるかの如く、そして宿主であるのは無尽蔵の魔力を持つ『魔王』シスなのだ。
相対している相手が真なる大魔王でなければ、一瞬で勝負はついている事だろう。
これこそが生前ヴェルトマーが、膨大な魔力を持つシスの為だけに伝授した新魔法の一つである。
当然こんな魔法は『アレルバレル』の世界の出身であるソフィは、見た事も聞いた事もない魔法である。
具体的な魔法の効果は、生前に契約した者が死んだ後にその霊体を召喚して使役する事が出来る『魔法』である。
そしてソフィはそんなシスに向けて、再度『漏出』を放つ。
【種族:覚醒した真なる魔王 名前:シス(+憑依)年齢:3221歳
魔力値:1440万 戦力値:8544万】。
(戦力値が先程までとは比べ物になっておらぬだと……!)
大賢者クラスの知識を持つヴェルトマーと、膨大な魔力を持つシスの同化である。
戦力値が膨れ上がるのも当然であった。
そしてそんな分析をしているソフィに前で、シスの左右の手から再び別々の魔法が同時に放たれる。
――超越魔法、『終焉の炎』。
――超越魔法、『終焉の雷』。
今度は僅か数分前にソフィが放っただけの『終焉の雷』をもう完全に自分のモノにしている様子であった。
さらに今回の『終焉の雷』は、先程ソフィが放ったアレルバレルの『理』ではなく、違う世界の『理』が刻まれていた。
つまり魔法を発動させるための『発動羅列』そのモノはソフィの見様見真似なのだが、自分の扱う『理』に置き換えて『終焉の雷』を放ったという事であり、もはやそれは彼女が完全にこの『魔法』を熟知している事の証左であり、自分が編み出した魔法と、同一に使いこなしている事に他ならない。
ソフィも同時に無詠唱で二つの魔法を相殺するが、ソフィはさらに驚愕の表情を浮かべた。
『魔王』シスは、両手を頭上高く掲げていた。
やがて何もない空間から大きな球体のエネルギーが具現化され始める。
「『広大な空に雷鳴響け、雷神よ我の魔力に呼応し、存分にその力を示せ』」。
――神域魔法、『天雷一閃』。
(あれは……、まずい!)
「『数多の神々を従える魔神よ、汝の全てを今ここに欲す。大気の力を我は望む、契約者たる大魔王の言葉に応じよ、我が名はソフィ』」。
――神域魔法、『天空の雷』。
シスの放った神域魔法『天雷一閃』と、対応に出たソフィの『天空の雷』は、どちらも現代では見る事等が出来ない神域領域の魔法である。
両者とも手を前に突き出して自らの魔力を込め続ける。
シスの放った神域魔法は、初めて使用する魔法だというのにソフィですら、詠唱を必要だと感じさせる程の魔力であった。
もはやこの場に『魔王』以外の者が入れる次元ではなく、神域魔法同士のぶつかり合う衝撃で空に浮かんでいた雲は全て吹き飛んだ。
――しかし、互いの魔法は数秒程は拮抗していたが、ソフィが『一段階』戦力値コントロールを行う事で勝敗を分ける事となった。
そして遂に『大魔王』ソフィの魔力から放たれた神域魔法に『魔王』シスは押し負ける。
そのまま身体を捻って『魔法』を躱して何とか直撃は避けるが、ソフィの神域魔法は『ステンシア』と『レルバノン』の屋敷の間に流れる谷の底を突き破って魔力の渦を巻き起こしながら、どこまでも破壊し尽くしていくのであった。
そして全ての魔力を使い果たしたのだろう。
ついにシスはそのまま魔力切れを起こして、意識を失って空から落下していくのだった。
それを見届けたソフィは溜息を吐いた後に、空を飛んでシスの体を抱えながら地面に降り立つのだった。
 先程まで真なる魔王化状態のソフィを長時間相手にして、体力の消耗も激しく肩で息をしていたのだが唐突に笑みを浮かべ始めたかと思うと、シスのソフィを見る目が獲物を見る目に変わったのである。
(何かを狙っているのか?)
ソフィがどうするかと悩んでいると、シスが口を開いて何かを呟き始めた。
「『尊き其の輝き 清浄の体を望む、消失した魂よ堕ちた我に纏わせ給え』」。
(何だ……? 形態変化の詠唱か?)
ソフィが聞き覚えのない言葉の詠唱なのも仕方がなかった。
 シスが無意識に呟いている言の葉は、ヴェルトマー・フィクスの新魔法の詠唱であり、ヴェルトマー亡き今はシスだけが扱う事の出来る魔法である。
――シスの詠唱によって何もない空間から突如、見た事のない女性が現れ始める。
(魔神? いや、契約系統か?)
ソフィが見た事がないのは当然である。
 シスの詠唱によって召喚されて目の前に居るのは『ヴェルトマー・フィクス』その者であった。
しかしそれは本物のヴェルトマーを召喚したというわけでもない。
 生前契約をしていたヴェルトマーを一時的に術者に憑依させているのである。
 そして更にシスの詠唱は進んでいく。
「『儚い気質を以て、哀れな我に力を与え給え消失した魂よ、堕ちた我に纏わせ給え」。
何とその詠唱後にヴェルトマーの姿をした者が、シスと同化していきやがて一つとなるのであった。
――ドクンッとシスの体が脈打った後、彼女の目が『金色の目』に変わる。
「む……っ!」
ソフィは何か危なさを感じて、即座にその場から離れる。
――超越魔法、『終焉の炎』。
――超越魔法、『終焉の雷』。
――超越魔法、『万物の爆発』。
「なんだと?」
シスは無詠唱で一気に三つの極大魔法をソフィに向けて放つと、鮮やかな魔法陣がソフィの周りを囲むように浮かび上がる。
ソフィは天井の穴から高速で移動して更に距離を取っていくが、真なる魔王化状態のソフィの速度を上回る速度でソフィを追い抜き、頭上からさらに笑みを浮かべたシスが無詠唱魔法を放ち続けられるのであった。
――超越魔法、『炎帝の爆炎』。
――超越魔法、『雷光殲撃《フードル・クラッシュ》』。
――超越魔法、『凜潔暴風雨《ディグナストーム》』。
シスの放つ数々の魔法は系統など完全に無視されていた。
そして遂には魔王の代名詞と呼ぶべき魔法を織り交ぜて次々と放ち始める。
流石に移動中に放たれた為にソフィは止まる事が出来ずに『相殺』しようと魔法を放とうとするが、シスがソフィを再度『金色の目』で睨みつけると、目が眩く光りソフィはコンマ数秒間動きを止められるのであった。
直ぐ様ソフィも目で相殺するが、そのコンマ数秒の間にシスの『魔法』はソフィに届いた。
「ぐっ……!」
爆音が鳴り響きソフィはシスの魔法をその身に直撃させられた。
流石のソフィでも『魔王』シスの魔法を受けて、この形態であってもノーダメージとはいかない。
そして魔法が止んだのを見てソフィがシスの姿を捉えると、左手と右手で違う『魔法』が具現化されていくのが見えた。
(先程までのシスとは全く違う……っ!)
ソフィのように無詠唱で超越魔法を放つだけでもこの世に何人もいないが、更に複数の魔法を同時に扱いながらなど、目覚めたばかりの『魔王』が行える所業ではない。
――それもその筈、今シスに宿っているのは『ヴェルトマー・フィクス』そのものである。
ヴェルマー大陸で最強の魔法使いとされて、古の魔法から新魔法に至るまでの全ての魔法を使いこなすと言われていた魔族。
まさに生前のヴェルトマーがこの場にいるかの如く、そして宿主であるのは無尽蔵の魔力を持つ『魔王』シスなのだ。
相対している相手が真なる大魔王でなければ、一瞬で勝負はついている事だろう。
これこそが生前ヴェルトマーが、膨大な魔力を持つシスの為だけに伝授した新魔法の一つである。
当然こんな魔法は『アレルバレル』の世界の出身であるソフィは、見た事も聞いた事もない魔法である。
具体的な魔法の効果は、生前に契約した者が死んだ後にその霊体を召喚して使役する事が出来る『魔法』である。
そしてソフィはそんなシスに向けて、再度『漏出』を放つ。
【種族:覚醒した真なる魔王 名前:シス(+憑依)年齢:3221歳
魔力値:1440万 戦力値:8544万】。
(戦力値が先程までとは比べ物になっておらぬだと……!)
大賢者クラスの知識を持つヴェルトマーと、膨大な魔力を持つシスの同化である。
戦力値が膨れ上がるのも当然であった。
そしてそんな分析をしているソフィに前で、シスの左右の手から再び別々の魔法が同時に放たれる。
――超越魔法、『終焉の炎』。
――超越魔法、『終焉の雷』。
今度は僅か数分前にソフィが放っただけの『終焉の雷』をもう完全に自分のモノにしている様子であった。
さらに今回の『終焉の雷』は、先程ソフィが放ったアレルバレルの『理』ではなく、違う世界の『理』が刻まれていた。
つまり魔法を発動させるための『発動羅列』そのモノはソフィの見様見真似なのだが、自分の扱う『理』に置き換えて『終焉の雷』を放ったという事であり、もはやそれは彼女が完全にこの『魔法』を熟知している事の証左であり、自分が編み出した魔法と、同一に使いこなしている事に他ならない。
ソフィも同時に無詠唱で二つの魔法を相殺するが、ソフィはさらに驚愕の表情を浮かべた。
『魔王』シスは、両手を頭上高く掲げていた。
やがて何もない空間から大きな球体のエネルギーが具現化され始める。
「『広大な空に雷鳴響け、雷神よ我の魔力に呼応し、存分にその力を示せ』」。
――神域魔法、『天雷一閃』。
(あれは……、まずい!)
「『数多の神々を従える魔神よ、汝の全てを今ここに欲す。大気の力を我は望む、契約者たる大魔王の言葉に応じよ、我が名はソフィ』」。
――神域魔法、『天空の雷』。
シスの放った神域魔法『天雷一閃』と、対応に出たソフィの『天空の雷』は、どちらも現代では見る事等が出来ない神域領域の魔法である。
両者とも手を前に突き出して自らの魔力を込め続ける。
シスの放った神域魔法は、初めて使用する魔法だというのにソフィですら、詠唱を必要だと感じさせる程の魔力であった。
もはやこの場に『魔王』以外の者が入れる次元ではなく、神域魔法同士のぶつかり合う衝撃で空に浮かんでいた雲は全て吹き飛んだ。
――しかし、互いの魔法は数秒程は拮抗していたが、ソフィが『一段階』戦力値コントロールを行う事で勝敗を分ける事となった。
そして遂に『大魔王』ソフィの魔力から放たれた神域魔法に『魔王』シスは押し負ける。
そのまま身体を捻って『魔法』を躱して何とか直撃は避けるが、ソフィの神域魔法は『ステンシア』と『レルバノン』の屋敷の間に流れる谷の底を突き破って魔力の渦を巻き起こしながら、どこまでも破壊し尽くしていくのであった。
そして全ての魔力を使い果たしたのだろう。
ついにシスはそのまま魔力切れを起こして、意識を失って空から落下していくのだった。
それを見届けたソフィは溜息を吐いた後に、空を飛んでシスの体を抱えながら地面に降り立つのだった。
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