最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第110話 壊れゆく心
シチョウは部屋に入った後にソフィを見て驚いていた。
ヴェルマー大陸出身であった『ラルグ』魔国のNo.2のレルバノンや、この大陸にきた目的である『レイズ』魔国の女王シスが居る事よりも、ソフィの普段隠している力を『トウジン』魔国のシチョウは、瞬時に気づいたのであった。
(な、なんだこいつは!?)
シチョウはこの部屋に入った瞬間に恐怖で押し潰されそうになりながら、何とか堪えて魔法をソフィに放つ。
『漏出』。
【種族:魔族 名前:ソフィ 戦力値:70万】。
(はぁ? 戦力値70万? 何の冗談だと言うんだ……)
『漏出』。
【種族:魔族 名前:ソフィ 戦力値:70万】。
シチョウが何度も漏出をソフィに繰り返し行ってみても結果は変わらずに戦力値70万としか出なかった。
(……俺如きの魔力では、こいつの深淵には届かないという事か?)
このミールガルド大陸に辿り着いた時、最初に漏出を放った時から直ぐに大きな力をいくつか感知出来たのだが、この少年の魔力は感じられなかった。こうして目の前に来るまでその存在すら分からなかったのである。だが、シチョウはソフィを目の前にして直ぐにこの少年が『ディアス』王や『シス』女王、そして『シーマ』王といった、遥か雲の上の存在と理解するのであった。
しかし今は任務が先だと、直ぐに頭の中を切り替えてレルバノンに話しかける。
「……これは驚いた。『ラルグ』魔国から居なくなったとされていたレルバノン殿と、滅んだ『レイズ』のシス女王が同じ部屋に居るとはな」
シチョウがそういうと、レルバノンも口を開く。
「……いやはやこちらも驚きました。シス女王だけじゃなく、ディアス王の懐刀の『シチョウ・クーティア』までもがこの大陸に現れるとはね」
トウジンのシチョウ・クーティアと言えば、レルバノンがラルグ王の補佐だった時代の主だったもの達の間で、次の時代を担う『トウジン』王と言われていたのである。
そしてシスにとってはシチョウが現れた事よりも、その彼が告げていた滅んだレイズの言葉は、決して聞き捨てならない言葉だった。
「お主! レイズがどうなったか知っているのか! ピナは!? ラネアは!? ヴェルはどうなったの!」
悲壮感が漂う表情で『シス』はシチョウに尋ねる。シス女王に詰め寄られたシチョウは、包み隠さず答えた。
「……死んだよ。レイズはアンタを残して、末端の兵士に至るまで玉砕自爆で全滅だ」
その言葉を聞いた瞬間、シスは膝を曲げて地面に崩れ落ちた。
「れ、レイズが……、滅んだ!? う、嘘だ……。み、みんなが自爆……、だと……?」
シスは心のどこかでまだレイズは無事だと、ヴェルはまだ生きていると信じていたかったのだろう。それこそが今のシスを支える唯一の心の拠り所であり彼女の生きる希望だった。
感情の波がシスの中で、押し寄せる。
彼女の中にあった大事な者達に次々と亀裂が入って割れていく。
「あ……、ああ……、ヴェル? 助けてよヴェルッ……!」
今はもう居ない彼女の姉の存在に縋り、シスはヴェルトマーの幻影に手を伸ばす。
しかし手を伸ばしても手を伸ばしても、可愛がってくれた姉の影に届かない。シスが見ている幻影は、こちらを見て慈しむ笑みを浮かべているのに、触れる事が出来ない。
「どうして? どうして? ヴェル……ッ!」
レイズ魔国の女王シスは故郷を失い、慕ってくれる民を失い……。そして彼女の『全てを失った』。
シスはやがて伸ばしていた手を降ろして目の色を失う。そして彼女の心の中で、自問自答が繰り返される。
(私はどうすればよかったの?) 答えは出ない。
(ヴェルが殺される前に降伏すればよかったの?) 答えは出ない。
(私がもっと強ければ、レイズは守れたの?) 答えは出ない。
少なくとも私がもっと強ければ、あの時にヴェルが私の盾にはならなくても済んだはずだ。
そうだ弱い自分が悪いのだ。国が滅ぼされたのも自分のせいだ。
シスの中で自分を責める言葉が次々と浮かんできては、その全ての言葉で自分の心を攻撃する。
何故だ? 何故、私なんかが、女王なんてしていたの? 私なんかが女王になった所為で、国は滅んで皆が死ぬ事になったのでは?
お前(私)が、全部悪い。何故お前(私)が、のうのうと生きているのだ。
お前(私)が、原因なのに、お前(私)以外の者が死んでお前(私)だけが生き残っている。憎い、憎い、憎い、シュライダーが憎い、ラルグが憎い!
――でも、何も出来なかった私が一番憎い!!
次の瞬間、シスの目に色が戻る。そして彼女の行動に、その場にいる者全員が驚いた。
――超越魔法、『終焉の炎』。
何と自分に向けて超越の『魔法』を放ったのである。手加減などを一切せずに発動されたその全てを焼き尽くす魔王の魔法は、あっさりと魔族のシスの皮膚を、そして身体を燃やし始めていく。
「馬鹿者が!」
ソフィは誰よりも早く『力』を行使する。
――根源魔法、『偽騙救済』。
シスの体がソフィの『魔法』によって癒されていく。しかし、治った傍から更にシスは自分を燃やそうとする。
「これは、仕方あるまい……」
ソフィが魔瞳『金色の目』を行使して一つの命令を下す。
「『全てを一時的に忘れて眠れ』」。
キィイインという発動の音の後にソフィの魔瞳の目の効力がシスに向かう。
――しかし……。
邪魔をするな――。
何とソフィの『金色の目』がシスの目を捉えた瞬間、必死で抗うシスの目が『金色の目』に変わった。
ソフィは驚愕に目を丸くする。
「な、なんだと?」
バチバチと互いの目の効力が共鳴するかの如く場を支配する。やがてソフィの『金色の目』は『相殺』されて何事もなく消え去った。
しかしソフィにとってはそれどころではない。目の前の魔族が、唐突に『魔王』の資質に目覚めたのである。流石にソフィと言えども信じ難い程の現象であった。
それは簡単な理由だがとても信じられるものではなかった。死のうとする自分から自分を守る為に彼女の潜在能力が覚醒して、シスは真なる魔王化を果たしたのである。
そしてソフィの『金色の目』を見て瞬時にその技法の『理』を見抜き、一瞬で『金色の目』の『理』の全てを理解して、即座に発動して相殺して見せたのだ。
――この瞬間、ミールガルドの大陸に新たな『魔王』が誕生したのだった。
ヴェルマー大陸出身であった『ラルグ』魔国のNo.2のレルバノンや、この大陸にきた目的である『レイズ』魔国の女王シスが居る事よりも、ソフィの普段隠している力を『トウジン』魔国のシチョウは、瞬時に気づいたのであった。
(な、なんだこいつは!?)
シチョウはこの部屋に入った瞬間に恐怖で押し潰されそうになりながら、何とか堪えて魔法をソフィに放つ。
『漏出』。
【種族:魔族 名前:ソフィ 戦力値:70万】。
(はぁ? 戦力値70万? 何の冗談だと言うんだ……)
『漏出』。
【種族:魔族 名前:ソフィ 戦力値:70万】。
シチョウが何度も漏出をソフィに繰り返し行ってみても結果は変わらずに戦力値70万としか出なかった。
(……俺如きの魔力では、こいつの深淵には届かないという事か?)
このミールガルド大陸に辿り着いた時、最初に漏出を放った時から直ぐに大きな力をいくつか感知出来たのだが、この少年の魔力は感じられなかった。こうして目の前に来るまでその存在すら分からなかったのである。だが、シチョウはソフィを目の前にして直ぐにこの少年が『ディアス』王や『シス』女王、そして『シーマ』王といった、遥か雲の上の存在と理解するのであった。
しかし今は任務が先だと、直ぐに頭の中を切り替えてレルバノンに話しかける。
「……これは驚いた。『ラルグ』魔国から居なくなったとされていたレルバノン殿と、滅んだ『レイズ』のシス女王が同じ部屋に居るとはな」
シチョウがそういうと、レルバノンも口を開く。
「……いやはやこちらも驚きました。シス女王だけじゃなく、ディアス王の懐刀の『シチョウ・クーティア』までもがこの大陸に現れるとはね」
トウジンのシチョウ・クーティアと言えば、レルバノンがラルグ王の補佐だった時代の主だったもの達の間で、次の時代を担う『トウジン』王と言われていたのである。
そしてシスにとってはシチョウが現れた事よりも、その彼が告げていた滅んだレイズの言葉は、決して聞き捨てならない言葉だった。
「お主! レイズがどうなったか知っているのか! ピナは!? ラネアは!? ヴェルはどうなったの!」
悲壮感が漂う表情で『シス』はシチョウに尋ねる。シス女王に詰め寄られたシチョウは、包み隠さず答えた。
「……死んだよ。レイズはアンタを残して、末端の兵士に至るまで玉砕自爆で全滅だ」
その言葉を聞いた瞬間、シスは膝を曲げて地面に崩れ落ちた。
「れ、レイズが……、滅んだ!? う、嘘だ……。み、みんなが自爆……、だと……?」
シスは心のどこかでまだレイズは無事だと、ヴェルはまだ生きていると信じていたかったのだろう。それこそが今のシスを支える唯一の心の拠り所であり彼女の生きる希望だった。
感情の波がシスの中で、押し寄せる。
彼女の中にあった大事な者達に次々と亀裂が入って割れていく。
「あ……、ああ……、ヴェル? 助けてよヴェルッ……!」
今はもう居ない彼女の姉の存在に縋り、シスはヴェルトマーの幻影に手を伸ばす。
しかし手を伸ばしても手を伸ばしても、可愛がってくれた姉の影に届かない。シスが見ている幻影は、こちらを見て慈しむ笑みを浮かべているのに、触れる事が出来ない。
「どうして? どうして? ヴェル……ッ!」
レイズ魔国の女王シスは故郷を失い、慕ってくれる民を失い……。そして彼女の『全てを失った』。
シスはやがて伸ばしていた手を降ろして目の色を失う。そして彼女の心の中で、自問自答が繰り返される。
(私はどうすればよかったの?) 答えは出ない。
(ヴェルが殺される前に降伏すればよかったの?) 答えは出ない。
(私がもっと強ければ、レイズは守れたの?) 答えは出ない。
少なくとも私がもっと強ければ、あの時にヴェルが私の盾にはならなくても済んだはずだ。
そうだ弱い自分が悪いのだ。国が滅ぼされたのも自分のせいだ。
シスの中で自分を責める言葉が次々と浮かんできては、その全ての言葉で自分の心を攻撃する。
何故だ? 何故、私なんかが、女王なんてしていたの? 私なんかが女王になった所為で、国は滅んで皆が死ぬ事になったのでは?
お前(私)が、全部悪い。何故お前(私)が、のうのうと生きているのだ。
お前(私)が、原因なのに、お前(私)以外の者が死んでお前(私)だけが生き残っている。憎い、憎い、憎い、シュライダーが憎い、ラルグが憎い!
――でも、何も出来なかった私が一番憎い!!
次の瞬間、シスの目に色が戻る。そして彼女の行動に、その場にいる者全員が驚いた。
――超越魔法、『終焉の炎』。
何と自分に向けて超越の『魔法』を放ったのである。手加減などを一切せずに発動されたその全てを焼き尽くす魔王の魔法は、あっさりと魔族のシスの皮膚を、そして身体を燃やし始めていく。
「馬鹿者が!」
ソフィは誰よりも早く『力』を行使する。
――根源魔法、『偽騙救済』。
シスの体がソフィの『魔法』によって癒されていく。しかし、治った傍から更にシスは自分を燃やそうとする。
「これは、仕方あるまい……」
ソフィが魔瞳『金色の目』を行使して一つの命令を下す。
「『全てを一時的に忘れて眠れ』」。
キィイインという発動の音の後にソフィの魔瞳の目の効力がシスに向かう。
――しかし……。
邪魔をするな――。
何とソフィの『金色の目』がシスの目を捉えた瞬間、必死で抗うシスの目が『金色の目』に変わった。
ソフィは驚愕に目を丸くする。
「な、なんだと?」
バチバチと互いの目の効力が共鳴するかの如く場を支配する。やがてソフィの『金色の目』は『相殺』されて何事もなく消え去った。
しかしソフィにとってはそれどころではない。目の前の魔族が、唐突に『魔王』の資質に目覚めたのである。流石にソフィと言えども信じ難い程の現象であった。
それは簡単な理由だがとても信じられるものではなかった。死のうとする自分から自分を守る為に彼女の潜在能力が覚醒して、シスは真なる魔王化を果たしたのである。
そしてソフィの『金色の目』を見て瞬時にその技法の『理』を見抜き、一瞬で『金色の目』の『理』の全てを理解して、即座に発動して相殺して見せたのだ。
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