さよならが薄まる日常
推理

連載中:10話

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さよならが薄まる日常

  • あらすじ

      賭守は人生を変えたいと思っている。それは逃れなれない運命から逃げる為であり立ち向かう為だ。人生に嫌な事なんかない。やりたい事とやりたくない事があるだけだ。人生変換ミステリー
     
     「フィクションでタイムリープ物ってあるだろ? タイムトラベルでも良いんだけど」
      「あるね。バックトゥザフィーチャーとか時を駆ける少女とか私好きだよ」。
     「俺はあれあんまり好きじゃないんだよ」
     「そうなの? 面白いと私は思うけどね。夢があるじゃん。タイムリープものはどうして好きじゃないの? 主人公が恋人や家族を守るために一生懸命に頑張る姿って恰好良いと思うけど。胸がアツくなるじゃん」
     「その意見には俺も賛成だ。何度も失敗を繰り返す中で挫けそうになりながらも、周囲の助けを受けながら何度も立ち上がる姿は俺も恰好良いと思う」
     「好きなんじゃん」
     「確かに、昔は好きなジャンルの話だったんだよ」
     「昔は?」
     「考えたんだ」
     「この手の話では現在の時間軸で恋人が死んでしまって、主人公は過去に戻って恋人の死を止めるみたいなパターンがある」
     「そうだね」
     「主人公は過去に戻って恋人の死因を防ぐ。でも、色々な理由があって、恋人の死を何度止めようとしても結局恋人は死んでしまう。そんな試練を乗り越えて主人公は最終的に恋人を助けて、二人で生きていく世界に辿り着く。ハッピーエンドだ」
     「ハッピーエンドいいじゃん」
     「ハッピーエンドを否定するつもりはないよ。俺だって幸せな結末の物語は好きだし。でも、ここでどうしても考えてしまうんだ。恋人が生きている世界に辿り着いたのは主人公だけなんじゃないかって」
     「どういう事?」
     「結局、主人公の視点でしかないってことだよ。主人公の視点では確かに恋人は生きている世界に辿り着いている。でも、それまでに何十回もの恋人が死んでいる世界があったということだろう? 主人公は確かに恋人の生きている世界に辿り着いているけれど、その恋人が死んだ世界に生きていた周囲の人たちはどうなったんだろう? 主人公は過去に戻って恋人を助けることができても、その周囲の人たちは過去に戻る力なんてないんだ。
      恋人が死んだ世界で生きていかなくちゃいけない。これって理不尽だとは思わないか? 主人公だけが恋人を死なせた回数だけ、恋人が死んだ世界が作られているって思うんだ」
     「……びっくりした」
     「賭守はびっくりするぐらい。ひねくれてるねー」
     「確かに。それは残された世界の住人には理不尽かもしれないね」
     「でも。私は思うよ。そんな残された世界の人たちだって、それから一生懸命あがいて生きればいいんだよ。主人公の恋人は死んでしまっているけど、それでも理不尽を飲み込んで、あがいてもがいて精一杯生きればいいんだよ。そうすれば……」
     「世界だってその人に恋に落ちちゃうかもよ」

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