俺のハクスラ異世界冒険記は、ドタバタなのにスローライフ過ぎてストーリーに脈略が乏しいです。
8-32【アースジャイアント】
俺はクラーク爺さんと一緒に螺旋階段を下って山を降りた。
そして、今度こそお別れをする。
「じゃあ、今度こそお別れだ」
「ああ、元気でやるんだぞ」
「クラーク爺さんもな」
俺が踵を返して森に向かおうとすると、後ろからクラーク爺さんが萎れた声を掛けて来る。
「達者でな……」
俺は背を向けたまま歩むと、小さく答えた。
「ああ……」
俺は少しずつ離れて行く。
「気を付けろよ……」
「ああ……」
「家族を大切にな……」
「ああ……」
「寝る前に歯を磨けよ」
「ああ……」
「今度はいつ来るのじゃ?」
「もう、来ねえよ……」
「キノコは旨かったか?」
「糞爺!!」
我慢出来なくなった俺は、踵を返して引き返す。
「なに、寂しいの? 別れたくないの? もっと遊んでもらいたいの? なんなの!?」
「だってぇ~~、久々の客人だったし、ワシのチ◯コのキノコも食べてくれたしさ~~」
「あー、ウザイ。もー、ウザイ。寂しいなら町に下りろよな!!」
「それは出来ないわぁ~。だってここがワシの家だものぉ~」
「じゃあ、仕方ないよね。俺は行くよ、いいね!?」
「分かった。マジで元気でな」
「ああ、クラーク爺さんもな!!」
こうしてやっと俺はクラーク爺さんと別れてキノコの森に入って行った。
俺はショートソードにマジックトーチを掛けて明かりを作る。
夜の森の中は暗くて不気味だったが、昼前はあんなに居たマタンゴたちが見当たらない。
もしかしたら、そこらのキノコに埋もれて居るのかも知れないが、動き出す気配は感じられなかった。
どうやら本当に夜は眠るのかな?
それとも太陽光で光合成をしないと動けないのかな?
まあ、どっちでもいいや。
それでも俺は、周りを警戒しながら先を目指した。
目的地はアースジャイアントだ。
たぶん、こっちのほうだろう。
日が昇るまでに、アースジャイアントにまで到着して、魔女の探知指輪を取り付けなければならない。
しかも出来るだけ上のほうにだ。
下半身だと、歩いた衝撃だけで外れて落ちちゃいそうだもんな。
できれば胸だろう。
その辺だと、魔女も確認するのに手こずるだろうさ。
そして俺は、アースジャイアントが移動したと思われる荒れた道を発見した。
その道を辿って一気にアースジャイアントの元に迫った。
そしてアースジャイアントを黙視で捕える。
しかもラッキーなことにアースジャイアントは、タイの大仏のように寝そべっていやがる。
なんか、呑気だな、このアースジャイアントは……。
すげー、寛いでね?
まあ、いいや~。
横になっていてくれれば、23メートルもの体を登らなくても、簡単に胸に指輪を埋め込めるぞ。
ある意味でラッキーなのかな~。
俺はルンルン気分でスキップしながらアースジャイアントに接近した。
すると、アースジャイアントの腕が動いて俺にせまる。
あれ、俺に気付いているの?
「なに、こいつは起きているのか!?」
だよね、マタンゴは寝ててもエレメンタルのアースジャイアントが寝ているとは限らないよね!!
そして、アースジャイアントの拳が俺に迫ってくる。
しかも、その指先は特殊な形に組まれていた。
中指だけを親指の先に引っ掻けているのだ。
それは───。
「デコピン?」
そう、迫るアースジャイアントの手は、デコピンの形を作っていた。
そして、力を溜めて振りきられる中指。
「のわっ!!」
デコピンが俺に直撃する。
それはデコピンだが、サイズが巨大。
まるで丸太でフルスイングバッティングされたかのような怒涛の衝撃が俺の全身を襲った。
俺はアースジャイアントのデコピン一撃で吹き飛ばされる。
「ぐぅぁぁあああ!!」
瞬時に景色が加速する。
凄い衝撃の次に何度か地面を跳ねて転がった。
俺は翔んで転がって、跳ねてからキノコにぶつかって止まる。
「うぐぅぅ……。死ぬかと思った……」
何すんの、あいつ!?
なんで、デコピンなんてしてくるのさ!?
お前さん見たいなビックな巨人に取ってはお茶目の積もりでも、俺サイズの小人には死を意味するデコピンですがな!!
マジやめて!
本気でやめて!!
俺は立ち上がるとアースジャイアントの顔を凝視した。
首の無いズンムリとした頭を片手の腕枕で支えながら寝そべっている。
そこからはキノコまみれで表情は窺えない。
俺はキュッと指輪を握り締めながら歩き出した。
「絶対に、指輪を埋め込んでやる!!」
そう決意して俺が近付くと、再び巨人の片腕が動き出した。
その腕の形は、やはりデコピンの形である。
「またかよ。今度は躱す!!」
ブルンっと風が唸る。
巨人のデコピンが、俺の眼前で放たれる。
しかし俺は、迫るアースジャイアントのデコピンを横に躱した。
「よし、回避したぞ!!」
俺めがけてスイングされた巨大な指が俺の眼前で猛スピードのもとに空振られた。
デコピンの一撃で風が唸って周囲の枯れ木を巻き上げる。
そして、俺も動いた。
「ダッシュだ!!」
俺は走った。
アースジャイアントを目指してひた走る。
そこにアースジャイアントの手の平が落ちて来た。
まるで虫でも潰す積もりで振りきられた掌が、ドスンと地を叩く。
俺は横に飛んで難を逃れていた。
「なんの!!」
倒れていた体を直ぐに起こすと再び走り出す。
アースジャイアントの胸元に辿り付ければいいのだ。
それだけでいいのだ。
何もこいつを倒す必要はないのだ。
接近するだけだ。
そこで指輪をキノコの中に捩じ込めばいいのである。
これは戦闘でも喧嘩でもないのである。
探知指輪をアースジャイアントに埋め込む。
それだけで任務は終わるのだ。
「のぉぉおおおわわ!!」
今度はアースジャイアントの手の甲が飛んで来た。
払い除ける積もりだな。
躱せるぞ!!
この程度の速さならば躱せるぞ!!
「ぐほ!!」
嘘です。
躱せなかった!!
回避失敗!!
俺は半身を手の甲に弾かれ後退する。
「ぐぬぬぬ!!」
だが、堪える。
倒れない。
再び走り出す。
負けるもんか!!
絶対にこの探知指輪をこいつに埋め込んで、魔女に嫌がらせを達成させるんだ!!
それまでは、意地でも退かないぞ!!
諦めるものか!!
やれば出来る!!
「どぉぉおおらららああ!!」
再び俺は巨人の掌打プレスを躱し、更に手の甲の払い除けを躱して、ついに巨人の胸元に辿り着いた。
そのまま握った指輪ごと拳を胸のキノコに押し込んだ。
「ぜぇぇぁあああ!!!」
ズブズブと俺の拳がキノコの間に突き刺さって行く。
キモイ!!
ヌルってしたぞ!!
ヌルってしましたぞ!!
だが、我慢だ!!
最奥まで押し進めるんだ!!
俺の腕が気合いと共に肩までキノコに突き刺さった。
深い!?
想像より深くね!?
まあ、いいか。
この辺で手を放して抜くか。
俺が指輪を放して腕を抜こうとしたが……。
あれ……。
抜けない………。
今度は腕がキノコから抜けないぞ……。
その時であった。
寝そべっていたアースジャイアントがグラグラと動き出す。
「ちょっと待って、ウソ!!」
嘘ではない。
寝そべっていたアースジャイアントが立ち上がったのだ。
俺の体はキノコに腕を刺したまま持ち上げられる。
「いや~~ん、マジで高いわ……」
俺がどうしようかと思った瞬間であった。
ヌルリっと腕が抜ける。
「うそ~~~ん……」
そして俺の体が急降下して行く。
アースジャイアントの胸の高さからの落下だ。
おそらく15メートルか20メートルほどの高さからだろう。
これは着地に成功しても両足が折れそうだわ……。
でも、考えている暇はない。
気合いで着地を成功させるしかないのだ。
「おらっぁああ!」
両足での着地と同時に、俺は体を横に倒した。
腰から肘にと衝撃を逃がして、そのまま側転しながら転がり一回転して地面に倒れ込んだ。
四点着地である。
「いたたた~……」
成功かな……。
落下のダメージを分散できたかな。
受け身の成功である。
俺は立ち上がりながら体にセルフヒールを掛けた。
まだ、足首が痛いな……。
ちょっと挫いたかも。
まあ、探知指輪をアースジャイアントに埋め込めたからいいか~。
任務達成である。
アースジャイアントは大きな背中を向けながら、ドシンドシンと去って行く。
キノコの森を見上げれば、もうそろそろ日が登りそうだった。
「ちっ、朝が来る。もう一日だけ、クラーク爺さんのところにお世話になるか……」
俺がクラーク爺さんの家を目指して歩き出すとインフォメーションが入った。
【ミッションクリアおめでとうございます。レベル26になりました!】
えっ、マジで!?
ここまで来て、新しいパターンのレベルアップが来たわ。
嫌がらせでも何かを達成するって経験値になるんだな。
そして、今度こそお別れをする。
「じゃあ、今度こそお別れだ」
「ああ、元気でやるんだぞ」
「クラーク爺さんもな」
俺が踵を返して森に向かおうとすると、後ろからクラーク爺さんが萎れた声を掛けて来る。
「達者でな……」
俺は背を向けたまま歩むと、小さく答えた。
「ああ……」
俺は少しずつ離れて行く。
「気を付けろよ……」
「ああ……」
「家族を大切にな……」
「ああ……」
「寝る前に歯を磨けよ」
「ああ……」
「今度はいつ来るのじゃ?」
「もう、来ねえよ……」
「キノコは旨かったか?」
「糞爺!!」
我慢出来なくなった俺は、踵を返して引き返す。
「なに、寂しいの? 別れたくないの? もっと遊んでもらいたいの? なんなの!?」
「だってぇ~~、久々の客人だったし、ワシのチ◯コのキノコも食べてくれたしさ~~」
「あー、ウザイ。もー、ウザイ。寂しいなら町に下りろよな!!」
「それは出来ないわぁ~。だってここがワシの家だものぉ~」
「じゃあ、仕方ないよね。俺は行くよ、いいね!?」
「分かった。マジで元気でな」
「ああ、クラーク爺さんもな!!」
こうしてやっと俺はクラーク爺さんと別れてキノコの森に入って行った。
俺はショートソードにマジックトーチを掛けて明かりを作る。
夜の森の中は暗くて不気味だったが、昼前はあんなに居たマタンゴたちが見当たらない。
もしかしたら、そこらのキノコに埋もれて居るのかも知れないが、動き出す気配は感じられなかった。
どうやら本当に夜は眠るのかな?
それとも太陽光で光合成をしないと動けないのかな?
まあ、どっちでもいいや。
それでも俺は、周りを警戒しながら先を目指した。
目的地はアースジャイアントだ。
たぶん、こっちのほうだろう。
日が昇るまでに、アースジャイアントにまで到着して、魔女の探知指輪を取り付けなければならない。
しかも出来るだけ上のほうにだ。
下半身だと、歩いた衝撃だけで外れて落ちちゃいそうだもんな。
できれば胸だろう。
その辺だと、魔女も確認するのに手こずるだろうさ。
そして俺は、アースジャイアントが移動したと思われる荒れた道を発見した。
その道を辿って一気にアースジャイアントの元に迫った。
そしてアースジャイアントを黙視で捕える。
しかもラッキーなことにアースジャイアントは、タイの大仏のように寝そべっていやがる。
なんか、呑気だな、このアースジャイアントは……。
すげー、寛いでね?
まあ、いいや~。
横になっていてくれれば、23メートルもの体を登らなくても、簡単に胸に指輪を埋め込めるぞ。
ある意味でラッキーなのかな~。
俺はルンルン気分でスキップしながらアースジャイアントに接近した。
すると、アースジャイアントの腕が動いて俺にせまる。
あれ、俺に気付いているの?
「なに、こいつは起きているのか!?」
だよね、マタンゴは寝ててもエレメンタルのアースジャイアントが寝ているとは限らないよね!!
そして、アースジャイアントの拳が俺に迫ってくる。
しかも、その指先は特殊な形に組まれていた。
中指だけを親指の先に引っ掻けているのだ。
それは───。
「デコピン?」
そう、迫るアースジャイアントの手は、デコピンの形を作っていた。
そして、力を溜めて振りきられる中指。
「のわっ!!」
デコピンが俺に直撃する。
それはデコピンだが、サイズが巨大。
まるで丸太でフルスイングバッティングされたかのような怒涛の衝撃が俺の全身を襲った。
俺はアースジャイアントのデコピン一撃で吹き飛ばされる。
「ぐぅぁぁあああ!!」
瞬時に景色が加速する。
凄い衝撃の次に何度か地面を跳ねて転がった。
俺は翔んで転がって、跳ねてからキノコにぶつかって止まる。
「うぐぅぅ……。死ぬかと思った……」
何すんの、あいつ!?
なんで、デコピンなんてしてくるのさ!?
お前さん見たいなビックな巨人に取ってはお茶目の積もりでも、俺サイズの小人には死を意味するデコピンですがな!!
マジやめて!
本気でやめて!!
俺は立ち上がるとアースジャイアントの顔を凝視した。
首の無いズンムリとした頭を片手の腕枕で支えながら寝そべっている。
そこからはキノコまみれで表情は窺えない。
俺はキュッと指輪を握り締めながら歩き出した。
「絶対に、指輪を埋め込んでやる!!」
そう決意して俺が近付くと、再び巨人の片腕が動き出した。
その腕の形は、やはりデコピンの形である。
「またかよ。今度は躱す!!」
ブルンっと風が唸る。
巨人のデコピンが、俺の眼前で放たれる。
しかし俺は、迫るアースジャイアントのデコピンを横に躱した。
「よし、回避したぞ!!」
俺めがけてスイングされた巨大な指が俺の眼前で猛スピードのもとに空振られた。
デコピンの一撃で風が唸って周囲の枯れ木を巻き上げる。
そして、俺も動いた。
「ダッシュだ!!」
俺は走った。
アースジャイアントを目指してひた走る。
そこにアースジャイアントの手の平が落ちて来た。
まるで虫でも潰す積もりで振りきられた掌が、ドスンと地を叩く。
俺は横に飛んで難を逃れていた。
「なんの!!」
倒れていた体を直ぐに起こすと再び走り出す。
アースジャイアントの胸元に辿り付ければいいのだ。
それだけでいいのだ。
何もこいつを倒す必要はないのだ。
接近するだけだ。
そこで指輪をキノコの中に捩じ込めばいいのである。
これは戦闘でも喧嘩でもないのである。
探知指輪をアースジャイアントに埋め込む。
それだけで任務は終わるのだ。
「のぉぉおおおわわ!!」
今度はアースジャイアントの手の甲が飛んで来た。
払い除ける積もりだな。
躱せるぞ!!
この程度の速さならば躱せるぞ!!
「ぐほ!!」
嘘です。
躱せなかった!!
回避失敗!!
俺は半身を手の甲に弾かれ後退する。
「ぐぬぬぬ!!」
だが、堪える。
倒れない。
再び走り出す。
負けるもんか!!
絶対にこの探知指輪をこいつに埋め込んで、魔女に嫌がらせを達成させるんだ!!
それまでは、意地でも退かないぞ!!
諦めるものか!!
やれば出来る!!
「どぉぉおおらららああ!!」
再び俺は巨人の掌打プレスを躱し、更に手の甲の払い除けを躱して、ついに巨人の胸元に辿り着いた。
そのまま握った指輪ごと拳を胸のキノコに押し込んだ。
「ぜぇぇぁあああ!!!」
ズブズブと俺の拳がキノコの間に突き刺さって行く。
キモイ!!
ヌルってしたぞ!!
ヌルってしましたぞ!!
だが、我慢だ!!
最奥まで押し進めるんだ!!
俺の腕が気合いと共に肩までキノコに突き刺さった。
深い!?
想像より深くね!?
まあ、いいか。
この辺で手を放して抜くか。
俺が指輪を放して腕を抜こうとしたが……。
あれ……。
抜けない………。
今度は腕がキノコから抜けないぞ……。
その時であった。
寝そべっていたアースジャイアントがグラグラと動き出す。
「ちょっと待って、ウソ!!」
嘘ではない。
寝そべっていたアースジャイアントが立ち上がったのだ。
俺の体はキノコに腕を刺したまま持ち上げられる。
「いや~~ん、マジで高いわ……」
俺がどうしようかと思った瞬間であった。
ヌルリっと腕が抜ける。
「うそ~~~ん……」
そして俺の体が急降下して行く。
アースジャイアントの胸の高さからの落下だ。
おそらく15メートルか20メートルほどの高さからだろう。
これは着地に成功しても両足が折れそうだわ……。
でも、考えている暇はない。
気合いで着地を成功させるしかないのだ。
「おらっぁああ!」
両足での着地と同時に、俺は体を横に倒した。
腰から肘にと衝撃を逃がして、そのまま側転しながら転がり一回転して地面に倒れ込んだ。
四点着地である。
「いたたた~……」
成功かな……。
落下のダメージを分散できたかな。
受け身の成功である。
俺は立ち上がりながら体にセルフヒールを掛けた。
まだ、足首が痛いな……。
ちょっと挫いたかも。
まあ、探知指輪をアースジャイアントに埋め込めたからいいか~。
任務達成である。
アースジャイアントは大きな背中を向けながら、ドシンドシンと去って行く。
キノコの森を見上げれば、もうそろそろ日が登りそうだった。
「ちっ、朝が来る。もう一日だけ、クラーク爺さんのところにお世話になるか……」
俺がクラーク爺さんの家を目指して歩き出すとインフォメーションが入った。
【ミッションクリアおめでとうございます。レベル26になりました!】
えっ、マジで!?
ここまで来て、新しいパターンのレベルアップが来たわ。
嫌がらせでも何かを達成するって経験値になるんだな。
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