俺のハクスラ異世界冒険記は、ドタバタなのにスローライフ過ぎてストーリーに脈略が乏しいです。
8-31【頂から見える景色】
キノコの森の洞窟の中で俺は暖炉の前に腰掛けるクラーク爺さんに訊いてみた。
「なあ、クラーク爺さん」
「なんだ、小僧?」
「この森で一番強いマタンゴって居ないか?」
「一番強いマタンゴか?」
「ああ、そうだ」
一番強いマタンゴを俺が知りたい理由は、ただ一つだ。
そう、魔女の指輪をそいつに取り付けるためである。
すべては嫌がらせのためだった。
こんなキモイ森のマタンゴに指輪が嵌め込まれたら、いろいろとショックだろう。
まさか俺がマタンゴに寄生されたのではないかと確認するのですから大変だろうさ。
何せキノコだらけだものな。
マタンゴからキノコを全部剥ぎ取って、俺の外観を確認するだけでも大変な作業だろう。
作業的にも、精神的にも苦痛になるだろうさ。
だからこそ、この森にわざわざ危険を承知の上で入って来たのだ。
そして俺の質問にクラーク爺さんは古びたカップに注がれた椎茸茶の水面を見詰めながら答える。
「そうだな、やっぱりあいつだろうか……」
「あいつとは誰だ?」
勿体ぶるな、クラーク爺さん。
だが、それだけ悩めるのだろうさ。
何せ、このキノコの森には多彩なマタンゴが生息していやがる。
様々な武器を持ったマタンゴから、鹿や馬のようなマタンゴも見た。
だから一番強いマタンゴも、それなりに楽しみな存在であった。
さあ、クラーク爺さんは、なんて答えるかな?
あいつとは、どいつだ!?
「アースジャイアントのマタンゴかのぉ」
えっ……?
ジャイアント……?
アースジャイアントですか……?
でも、アースって言うからには大地のジャイアントですよね?
なんで、土塊がキノコに汚染されますか?
「マジでアースジャイアントがマタンゴ化しているの……?」
「正確にはマタンゴではないが、全身キノコだらけじゃ」
「ワケワカメだわ……」
「アースジャイアントの岩の表面に、キノコが付着しているだけなんじゃ。まあ、それで、見た目は大きなマタンゴに見えるってわけじゃよ」
「じゃあ、そいつは、キノコだらけの、ただのアースジャイアントってことか?」
「まあ、そうなるのぉ」
「大きさは……、身長はどのぐらいなんだ?」
「20メートルぐらいかのぉ」
「そこら辺に生えている、大きなキノコより高いじゃんか……」
おそらく2倍の高さだ。
「お前さん、まさかアースジャイアントを倒す積もりか?」
「まさか、勝てるわけないだろ……」
「そうかえ」
「相手は20メートルの巨人だぞ。流石の俺でも軽く踏み潰されて終わりだわ」
「まあ、そうなるわな」
「ただ、ちょっくらその巨人さんには会って見たいな~」
「ほほう」
クラークじいさんは少し椎茸茶を啜った後に話し出す。
「アースジャイアントは巨人と言ってもエレメンタルじゃ。人間と会話が出来る文化を持ち合わせてはいないぞ。あれは大自然のままに生きている妖精だからのぉ。知能はあるが言葉を持たぬ。対話もままならん」
「分かってるって。夜ならマタンゴたちも眠って活動が緩いならば、アースジャイアントに会えるかな?」
「まあ、見るだけなら、この洞窟の上の絶壁を昇れば、居場所ぐらい分かるかも知れんぞ。何せアースジャイアントはデカイからな。動いただけで良く分かるはずだ」
「OK、クラーク爺さん。じゃあ俺は行くぜ!」
俺は廊下を進み出入り口を目指した。
名残惜しいのか、クラーク爺さんは俺を出入り口まで見送ってくれる。
「気を付けるんだぞ、小僧……」
「クラーク爺さんも元気でな!」
俺とクラーク爺さんは、拳をゴチンっと合わせてから別れた。
俺は閂を外すと鉄扉を開けて外に旅立つ。
外に出てみるとマタンゴたちの姿は見えなかった。
おぞましいキノコの森だけが月夜に映る。
「じゃあな……」
クラーク爺さんは、直ぐに鉄扉を閉めた。
あー、クラーク爺さんは、ここで朽ちる積もりなんだ。
独りでさ……。
この森が、そんなに好きだったんだな。
俺は直ぐに、鉄扉の横から岩の壁を、スキルを使って登り始めた。
【クライムウォークLv1】
岩場などをよじ登る技術が向上する。
まさか、岩壁を登る機会が来るなんて考えてもいなかったぜ。
本当に、このスキルだけで絶壁を登りきれるのかな?
まあ、覚えたスキルを信じるか。
てか、もう疲れて来たぞ。
まだ、半分も登ってないのにさ。
やはりこのぐらいの絶壁を登るのは、もっとスキルレベルが上がってからだっただろうか……。
ちょっぴり後悔だ……。
まあ、登り始めたんだから仕方ないか。
頑張って登るぞ!!
「えっさ、ほっさ、えっさ、ほっさ!!」
そんなこんなで俺は絶壁の頂上まで登りきった。
岩山に登頂する。
「月が綺麗だ」
夜空を見上げれば真ん丸い満月が煌々と輝いていた。
「はぁ~。すげー、疲れたわ……」
途中で何度か心が折れるところだったぜ。
でも、登り始めたら登りきるしかないもんな。
途中で引き返せないもの。
すると頂上ではクラーク爺さんが何故か待って居た。
「よう、久しぶりじゃのぉ」
「なんでぇーーー!!!」
「ああ、洞窟の中に上に登れる螺旋階段があってな」
「それを俺にも使わせろよ!!」
「それにしてもお前さん、凄いな。この絶壁を素手で登りきるなんてのぉ」
「疲れたわ! すげー疲れたわ!!」
「だろうな~」
何こいつ冷静に言ってやがるんだ!!
すげー意地が悪いな、糞爺が!!
この絶壁は30メートルぐらいあったんだぞ!!
疲れるし、高くて怖くて疲れるんだぞ!!
この、バカぁ!!
「ほれ、見てみい」
クラーク爺さんがキノコの森の中を指差した。
「えっ?」
俺はクラーク爺さんの言うがままにキノコの森を眺めた。
すると夜の闇の中で、大きなキノコの傘がグラグラと揺れているポイントがあった。
「夜なのに動いている?」
俺は目を凝らした。
「あそこにアースジャイアントがいるのか……」
月明かりが照らし出す景色を俺たちが眺めていると、キノコの傘を越えてアースジャイアントの姿がニョッキリと見えた。
頭が突き出て、上半身まで見える。
それは巨大なキノコのタワーである。
まるでキノコのタワーがナメクジのようにノソノソと歩いているのだ。
クラーク爺さんが冷静に言う。
「ありゃ~、20メートル以上あるな。おそらく23メートルかのぉ」
「だな~。そのぐらいありそうだな」
「成長したのかのぉ」
よし、やる気が湧いてきたぞ。
あれに指輪を付けれれば、最高の嫌がらせに成りそうだぜ。
くっくっくっ………。
俺は嫌がらせのためなら全力を尽くせるタイプなのだ。
「見ていろ、糞魔女が」
俺は月夜に照らされながら怪しく微笑んだ。
強く探知指輪を握り締める。
「アースジャイアントのマタンゴに、この指輪を埋め込んでやるぜ!」
「なあ、クラーク爺さん」
「なんだ、小僧?」
「この森で一番強いマタンゴって居ないか?」
「一番強いマタンゴか?」
「ああ、そうだ」
一番強いマタンゴを俺が知りたい理由は、ただ一つだ。
そう、魔女の指輪をそいつに取り付けるためである。
すべては嫌がらせのためだった。
こんなキモイ森のマタンゴに指輪が嵌め込まれたら、いろいろとショックだろう。
まさか俺がマタンゴに寄生されたのではないかと確認するのですから大変だろうさ。
何せキノコだらけだものな。
マタンゴからキノコを全部剥ぎ取って、俺の外観を確認するだけでも大変な作業だろう。
作業的にも、精神的にも苦痛になるだろうさ。
だからこそ、この森にわざわざ危険を承知の上で入って来たのだ。
そして俺の質問にクラーク爺さんは古びたカップに注がれた椎茸茶の水面を見詰めながら答える。
「そうだな、やっぱりあいつだろうか……」
「あいつとは誰だ?」
勿体ぶるな、クラーク爺さん。
だが、それだけ悩めるのだろうさ。
何せ、このキノコの森には多彩なマタンゴが生息していやがる。
様々な武器を持ったマタンゴから、鹿や馬のようなマタンゴも見た。
だから一番強いマタンゴも、それなりに楽しみな存在であった。
さあ、クラーク爺さんは、なんて答えるかな?
あいつとは、どいつだ!?
「アースジャイアントのマタンゴかのぉ」
えっ……?
ジャイアント……?
アースジャイアントですか……?
でも、アースって言うからには大地のジャイアントですよね?
なんで、土塊がキノコに汚染されますか?
「マジでアースジャイアントがマタンゴ化しているの……?」
「正確にはマタンゴではないが、全身キノコだらけじゃ」
「ワケワカメだわ……」
「アースジャイアントの岩の表面に、キノコが付着しているだけなんじゃ。まあ、それで、見た目は大きなマタンゴに見えるってわけじゃよ」
「じゃあ、そいつは、キノコだらけの、ただのアースジャイアントってことか?」
「まあ、そうなるのぉ」
「大きさは……、身長はどのぐらいなんだ?」
「20メートルぐらいかのぉ」
「そこら辺に生えている、大きなキノコより高いじゃんか……」
おそらく2倍の高さだ。
「お前さん、まさかアースジャイアントを倒す積もりか?」
「まさか、勝てるわけないだろ……」
「そうかえ」
「相手は20メートルの巨人だぞ。流石の俺でも軽く踏み潰されて終わりだわ」
「まあ、そうなるわな」
「ただ、ちょっくらその巨人さんには会って見たいな~」
「ほほう」
クラークじいさんは少し椎茸茶を啜った後に話し出す。
「アースジャイアントは巨人と言ってもエレメンタルじゃ。人間と会話が出来る文化を持ち合わせてはいないぞ。あれは大自然のままに生きている妖精だからのぉ。知能はあるが言葉を持たぬ。対話もままならん」
「分かってるって。夜ならマタンゴたちも眠って活動が緩いならば、アースジャイアントに会えるかな?」
「まあ、見るだけなら、この洞窟の上の絶壁を昇れば、居場所ぐらい分かるかも知れんぞ。何せアースジャイアントはデカイからな。動いただけで良く分かるはずだ」
「OK、クラーク爺さん。じゃあ俺は行くぜ!」
俺は廊下を進み出入り口を目指した。
名残惜しいのか、クラーク爺さんは俺を出入り口まで見送ってくれる。
「気を付けるんだぞ、小僧……」
「クラーク爺さんも元気でな!」
俺とクラーク爺さんは、拳をゴチンっと合わせてから別れた。
俺は閂を外すと鉄扉を開けて外に旅立つ。
外に出てみるとマタンゴたちの姿は見えなかった。
おぞましいキノコの森だけが月夜に映る。
「じゃあな……」
クラーク爺さんは、直ぐに鉄扉を閉めた。
あー、クラーク爺さんは、ここで朽ちる積もりなんだ。
独りでさ……。
この森が、そんなに好きだったんだな。
俺は直ぐに、鉄扉の横から岩の壁を、スキルを使って登り始めた。
【クライムウォークLv1】
岩場などをよじ登る技術が向上する。
まさか、岩壁を登る機会が来るなんて考えてもいなかったぜ。
本当に、このスキルだけで絶壁を登りきれるのかな?
まあ、覚えたスキルを信じるか。
てか、もう疲れて来たぞ。
まだ、半分も登ってないのにさ。
やはりこのぐらいの絶壁を登るのは、もっとスキルレベルが上がってからだっただろうか……。
ちょっぴり後悔だ……。
まあ、登り始めたんだから仕方ないか。
頑張って登るぞ!!
「えっさ、ほっさ、えっさ、ほっさ!!」
そんなこんなで俺は絶壁の頂上まで登りきった。
岩山に登頂する。
「月が綺麗だ」
夜空を見上げれば真ん丸い満月が煌々と輝いていた。
「はぁ~。すげー、疲れたわ……」
途中で何度か心が折れるところだったぜ。
でも、登り始めたら登りきるしかないもんな。
途中で引き返せないもの。
すると頂上ではクラーク爺さんが何故か待って居た。
「よう、久しぶりじゃのぉ」
「なんでぇーーー!!!」
「ああ、洞窟の中に上に登れる螺旋階段があってな」
「それを俺にも使わせろよ!!」
「それにしてもお前さん、凄いな。この絶壁を素手で登りきるなんてのぉ」
「疲れたわ! すげー疲れたわ!!」
「だろうな~」
何こいつ冷静に言ってやがるんだ!!
すげー意地が悪いな、糞爺が!!
この絶壁は30メートルぐらいあったんだぞ!!
疲れるし、高くて怖くて疲れるんだぞ!!
この、バカぁ!!
「ほれ、見てみい」
クラーク爺さんがキノコの森の中を指差した。
「えっ?」
俺はクラーク爺さんの言うがままにキノコの森を眺めた。
すると夜の闇の中で、大きなキノコの傘がグラグラと揺れているポイントがあった。
「夜なのに動いている?」
俺は目を凝らした。
「あそこにアースジャイアントがいるのか……」
月明かりが照らし出す景色を俺たちが眺めていると、キノコの傘を越えてアースジャイアントの姿がニョッキリと見えた。
頭が突き出て、上半身まで見える。
それは巨大なキノコのタワーである。
まるでキノコのタワーがナメクジのようにノソノソと歩いているのだ。
クラーク爺さんが冷静に言う。
「ありゃ~、20メートル以上あるな。おそらく23メートルかのぉ」
「だな~。そのぐらいありそうだな」
「成長したのかのぉ」
よし、やる気が湧いてきたぞ。
あれに指輪を付けれれば、最高の嫌がらせに成りそうだぜ。
くっくっくっ………。
俺は嫌がらせのためなら全力を尽くせるタイプなのだ。
「見ていろ、糞魔女が」
俺は月夜に照らされながら怪しく微笑んだ。
強く探知指輪を握り締める。
「アースジャイアントのマタンゴに、この指輪を埋め込んでやるぜ!」
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