俺のハクスラ異世界冒険記は、ドタバタなのにスローライフ過ぎてストーリーに脈略が乏しいです。
8-3【コカトリス討伐依頼】
俺はスイカを食べるワニ亭の酒場で晩飯をたらふく食べると部屋を借りた。
そして二階に上がる階段の手前で足を止める。
山盛りの肉を食べて、腹がはち切れそうで重いから階段が上れなくて足を止めたわけではない。
階段の手前に掲示板が出されていたからだ。
それは冒険者を雇うための掲示板だが、依頼の貼り紙は一枚しか貼られていなかった。
しかし、その一枚が非常に気になって俺は足を止めたのである。
依頼書のタイトルはコカトリス退治であった。
「コカトリスの討伐か~」
俺の記憶に残るコカトリスと言えば、ドラゴンの羽に尻尾が蛇の鶏だ。
何より怖くて有名なのは、嘴で突っつかれると石化してしまうっていうじゃあないか。
たった一撃で石化なんでしゃれにならないぞ。
確かバシリスクの語源が変わって想像されたモンスターだったと思うけど、そこまで詳しくは知らない。
知っているのは石化が怖い鶏のモンスターってことと、バシリスク同様に石化の申し子ってことぐらいだ。
それにしても、そんな化け物を相手にするのに依頼料が2000Gとは安い仕事だな。
普通の六人パーティーだと、一人頭300Gぐらいにしかならないじゃあないか。
ゴブリン退治程度の報酬だぞ。
これって、ケチリすぎじゃね。
そんな少額の報酬で石化の恐れがあるモンスターを相手にしなければならないなんて、割りが合わないってもんだ。
だからこの仕事だけ残っているのだろう。
そんなことを考えながら、俺が貼り紙を眺めていると、カウンターの中から店のにーちゃんが話し掛けて来る。
「フッサフサのお客さんんん、コカトリスに興味が有るのかいいい?」
俺は振り返ると言ってやった。
「コカトリス相手にこの金額は、すごーーく安くないかい。ケチ過ぎて誰も受けてくれないだろ?」
「それがそうでもないんだぜぜぜ」
「と、言うと?」
「先週も六人パーティーが依頼人のところに行ったんだけど、帰って来なかったって話だぜぜぜ。まあ、依頼の貼り紙が剥がされないってことは、全滅なんだろうけどななな。本当に南無南無だわわわ」
んー、何故に引き受けるパーティーが居るのだろう?
こんな安い仕事をさ?
それに南無南無って、仏教ですか……?
そして俺が不思議そうな顔をしていると、店のにーちゃんが言った。
「なんでもそのコカトリスは、何人もの冒険者を返り討ちにしているから、かな~り金品を溜め込んでいるって話だぞぞぞ」
「あ~、なるほどね~」
なるほど、なるほど、理解できたぞ。
石化された冒険者の遺品を狙っているのか。
しかし、ミイラ取りがミイラになって、再びミイラ取りを呼び寄せる。
それの繰り返しでコカトリスが金品を溜め込むはめになっているのだろう。
がめつい話だな。
それで依頼料が安くても、釣られるパーティーが居るんだな。
俺は店のにーちゃんに訊いた。
「この仕事の依頼人は、どこに居るんだ?」
「おっ、おっ、おっ、あんたもチャレンジするのかいいい?」
「ああ、遺品が多そうだからな~。依頼料より旨そうだぜ」
「でも、お客さん、パーティーのお仲間ははは?」
「俺はソロ冒険者だ」
「一人かいいい。それでコカトリスを殺れるのかかか?」
「一人だからこそ、やれる戦法ってのも多くてな。夜襲とかな、トラップとかな」
なんか自分で言ってて思ったが、俺って卑怯なのかな?
まあ、今さらやり方は変えられないから、どうでもいいや。
「そうかいそうかいいい。一人って大変なんだな、モッサモサのお客さんんん」
モッサモサって?
まあ、いいか。流そう……。
「で、この依頼人は何処に居るんだい?」
「依頼人はこの町を西に進んだ農村の果てに住む、ラングレイって言う爺さんだだだ」
「よし、じゃあ早速行ってみるぜ。サンキュー、にーちゃん」
「いいってことよ、モッジャモジャのお客さんんん」
モッジャモジャ?
それよりだ。
てか、今さ、このにーちゃんは町の名前を言わなかったな。
『この町』って言ったよな。
もしかして──。
「なあ、にーちゃん」
「なんだいいい、モジャモジャのお客さんんん?」
「あんた、この町の名前を言えるかい?」
すると突然リュートの演奏が止まり、騒いでいた客たちが静まり返る。
そして注目が店のにーちゃんに集まった。
えっ、どういうこと?
「あ、ああ、昔から住んでるからななな……。言えるさささ……」
なんだ?
今、どもったぞ?
「じゃあ、町の名前を教えてくれないか?」
「ああ……、分かったたた……」
店のにーちゃんは大きく深呼吸をすると町の名前を語ろうとする。
「町の名前ははは……」
「町の名前は、なんだ?」
「この町の名前は、メルリッヒシュタッがぶっ!!!」
舌を噛んだぞ!!
「しぃーたぁーかぁーんーだぁー、ぐぅぅぅぅううう!!」
店のにーちゃんはカウンターの奥でしゃがみ込んでいた。
だいぶ深く舌を噛んだのかな?
するとリュートの演奏が始まり客たちが騒ぎだす。
なんだったんだ?
てか、町の住人ですら言えないのかな、この町の名前はさ?
まあ、いいか。
よし、明日はコカトリス退治だ。
なんか、ワクワクするぜ。
俺はルンルン気分で階段を駆け上ると借りた部屋に飛び込んだ。
「ところで俺って、そんなにモジャモジャだったかな?」
俺はベッドに寝転ぶとズボンの中を眺める。
そんなにモジャモジャかな?
普通だろ?
いや、ちょっと毛深いのかな?
それよりもコカトリスだ。
「ちょっとしたバイト感覚で、明日は稼ごうかな。コカトリスに返り討ちにされたヤツらがいるなら、その遺品にマジックアイテムが少しはあるだろう。少しでも金を稼がなければな」
まあ、小銭稼ぎかも知れないが、経験値にもなるだろう。
ここんところは、経験値にならない仕事ばかりだったしな。
レベルアップも大切だ。
経験値も稼がんとね。
「とにかくコカトリスを狩ってやるぜ!」
そう独り言を呟くと、俺は眠りに付いた。
そして直ぐに朝が来る。
俺が一階の酒場に下りると店の髭親父さんがホールでモップがけをしていた。
他に客は見えない。
「おはよう」
「おはようさん、くっそモッジャモジャのお客さん!」
朝から元気だな……。
それにしても、くっそくっそと下品なオヤジだぜ。
「なあ、親父さん」
「なんだい?」
「この町の名前を教えてくれないか?」
「ま、町の名前か……」
「ああ、この 町に住んで、酒場まで出しているんだから、町の名前ぐらい知ってるだろ?」
「あ、ああ、くっそ知ってるとも……」
こいつも、どもったぞ。
髭親父は大きく深呼吸をした。
それから町の名前を語ろうとする。
「この町の名前は……」
「町の名前は、なんだい?」
「この町の名前は、メルリッヒシュタッがぶっ!!!」
うん、舌を噛んだぞ。
「くっ、くっそ、ぐぅぅぅぅううう!!」
髭親父はホールの真ん中でしゃがみ込んでいた。
親子揃って見事な天丼芸だな。
なにこれ、一子相伝の伝統芸ですか?
まあ、とりあえず朝食にしよう。
「親父さん、朝食を頼むわ~」
「は、はい……」
俺は朝食を静かな酒場で食べると午前中の内に町を出た。
アキレスに乗って農村を進む。
見渡す限りトウモロコシ畑が続き、ちらほらと農家の屋根が見える。
村と言っても住人は広大な敷地に散らばって住んでいるようだ。
俺はその村の最果ての農家を目指す。
たまに見える村人に聞いて、依頼人ラングレイの家を探した。
先程出合った村人の話では、あの山の麓にラングレイの家があるって話だ。
俺はアキレスを走らせ山の麓を目指した。
そして背の高いトウモロコシ畑を抜けると、山の麓に農家を見付ける。
「あれが、今回の依頼人の家か」
俺が家の前までアキレスを進めると、軒先で薪割りをしている人物が居た。
マッチョで長身の中年男性だ。
いや、老人に近いかな。
でも、体つきがムッキムキなのだ。
容姿は角刈りの金髪に、迷彩柄のタンクトップを着ている。
更には腰にかなり大きめのコマンドーナイフを下げていた。
そのサイズはもうショートソード並みである。
要するに、老人もナイフもデカイのだ。
「あー、えーと、退職したロシアの軍人さんかな……」
なるほどね……。
名前がラングレイってのは、外見で分かったぞ。
じゃあコカトリスの名前はロッキーかな?
それともシルベスタかな?
てか、中年だけど、あの人が一人でコカトリスを倒せそうだわ。
たぶんドルフなんだろう。
そして二階に上がる階段の手前で足を止める。
山盛りの肉を食べて、腹がはち切れそうで重いから階段が上れなくて足を止めたわけではない。
階段の手前に掲示板が出されていたからだ。
それは冒険者を雇うための掲示板だが、依頼の貼り紙は一枚しか貼られていなかった。
しかし、その一枚が非常に気になって俺は足を止めたのである。
依頼書のタイトルはコカトリス退治であった。
「コカトリスの討伐か~」
俺の記憶に残るコカトリスと言えば、ドラゴンの羽に尻尾が蛇の鶏だ。
何より怖くて有名なのは、嘴で突っつかれると石化してしまうっていうじゃあないか。
たった一撃で石化なんでしゃれにならないぞ。
確かバシリスクの語源が変わって想像されたモンスターだったと思うけど、そこまで詳しくは知らない。
知っているのは石化が怖い鶏のモンスターってことと、バシリスク同様に石化の申し子ってことぐらいだ。
それにしても、そんな化け物を相手にするのに依頼料が2000Gとは安い仕事だな。
普通の六人パーティーだと、一人頭300Gぐらいにしかならないじゃあないか。
ゴブリン退治程度の報酬だぞ。
これって、ケチリすぎじゃね。
そんな少額の報酬で石化の恐れがあるモンスターを相手にしなければならないなんて、割りが合わないってもんだ。
だからこの仕事だけ残っているのだろう。
そんなことを考えながら、俺が貼り紙を眺めていると、カウンターの中から店のにーちゃんが話し掛けて来る。
「フッサフサのお客さんんん、コカトリスに興味が有るのかいいい?」
俺は振り返ると言ってやった。
「コカトリス相手にこの金額は、すごーーく安くないかい。ケチ過ぎて誰も受けてくれないだろ?」
「それがそうでもないんだぜぜぜ」
「と、言うと?」
「先週も六人パーティーが依頼人のところに行ったんだけど、帰って来なかったって話だぜぜぜ。まあ、依頼の貼り紙が剥がされないってことは、全滅なんだろうけどななな。本当に南無南無だわわわ」
んー、何故に引き受けるパーティーが居るのだろう?
こんな安い仕事をさ?
それに南無南無って、仏教ですか……?
そして俺が不思議そうな顔をしていると、店のにーちゃんが言った。
「なんでもそのコカトリスは、何人もの冒険者を返り討ちにしているから、かな~り金品を溜め込んでいるって話だぞぞぞ」
「あ~、なるほどね~」
なるほど、なるほど、理解できたぞ。
石化された冒険者の遺品を狙っているのか。
しかし、ミイラ取りがミイラになって、再びミイラ取りを呼び寄せる。
それの繰り返しでコカトリスが金品を溜め込むはめになっているのだろう。
がめつい話だな。
それで依頼料が安くても、釣られるパーティーが居るんだな。
俺は店のにーちゃんに訊いた。
「この仕事の依頼人は、どこに居るんだ?」
「おっ、おっ、おっ、あんたもチャレンジするのかいいい?」
「ああ、遺品が多そうだからな~。依頼料より旨そうだぜ」
「でも、お客さん、パーティーのお仲間ははは?」
「俺はソロ冒険者だ」
「一人かいいい。それでコカトリスを殺れるのかかか?」
「一人だからこそ、やれる戦法ってのも多くてな。夜襲とかな、トラップとかな」
なんか自分で言ってて思ったが、俺って卑怯なのかな?
まあ、今さらやり方は変えられないから、どうでもいいや。
「そうかいそうかいいい。一人って大変なんだな、モッサモサのお客さんんん」
モッサモサって?
まあ、いいか。流そう……。
「で、この依頼人は何処に居るんだい?」
「依頼人はこの町を西に進んだ農村の果てに住む、ラングレイって言う爺さんだだだ」
「よし、じゃあ早速行ってみるぜ。サンキュー、にーちゃん」
「いいってことよ、モッジャモジャのお客さんんん」
モッジャモジャ?
それよりだ。
てか、今さ、このにーちゃんは町の名前を言わなかったな。
『この町』って言ったよな。
もしかして──。
「なあ、にーちゃん」
「なんだいいい、モジャモジャのお客さんんん?」
「あんた、この町の名前を言えるかい?」
すると突然リュートの演奏が止まり、騒いでいた客たちが静まり返る。
そして注目が店のにーちゃんに集まった。
えっ、どういうこと?
「あ、ああ、昔から住んでるからななな……。言えるさささ……」
なんだ?
今、どもったぞ?
「じゃあ、町の名前を教えてくれないか?」
「ああ……、分かったたた……」
店のにーちゃんは大きく深呼吸をすると町の名前を語ろうとする。
「町の名前ははは……」
「町の名前は、なんだ?」
「この町の名前は、メルリッヒシュタッがぶっ!!!」
舌を噛んだぞ!!
「しぃーたぁーかぁーんーだぁー、ぐぅぅぅぅううう!!」
店のにーちゃんはカウンターの奥でしゃがみ込んでいた。
だいぶ深く舌を噛んだのかな?
するとリュートの演奏が始まり客たちが騒ぎだす。
なんだったんだ?
てか、町の住人ですら言えないのかな、この町の名前はさ?
まあ、いいか。
よし、明日はコカトリス退治だ。
なんか、ワクワクするぜ。
俺はルンルン気分で階段を駆け上ると借りた部屋に飛び込んだ。
「ところで俺って、そんなにモジャモジャだったかな?」
俺はベッドに寝転ぶとズボンの中を眺める。
そんなにモジャモジャかな?
普通だろ?
いや、ちょっと毛深いのかな?
それよりもコカトリスだ。
「ちょっとしたバイト感覚で、明日は稼ごうかな。コカトリスに返り討ちにされたヤツらがいるなら、その遺品にマジックアイテムが少しはあるだろう。少しでも金を稼がなければな」
まあ、小銭稼ぎかも知れないが、経験値にもなるだろう。
ここんところは、経験値にならない仕事ばかりだったしな。
レベルアップも大切だ。
経験値も稼がんとね。
「とにかくコカトリスを狩ってやるぜ!」
そう独り言を呟くと、俺は眠りに付いた。
そして直ぐに朝が来る。
俺が一階の酒場に下りると店の髭親父さんがホールでモップがけをしていた。
他に客は見えない。
「おはよう」
「おはようさん、くっそモッジャモジャのお客さん!」
朝から元気だな……。
それにしても、くっそくっそと下品なオヤジだぜ。
「なあ、親父さん」
「なんだい?」
「この町の名前を教えてくれないか?」
「ま、町の名前か……」
「ああ、この 町に住んで、酒場まで出しているんだから、町の名前ぐらい知ってるだろ?」
「あ、ああ、くっそ知ってるとも……」
こいつも、どもったぞ。
髭親父は大きく深呼吸をした。
それから町の名前を語ろうとする。
「この町の名前は……」
「町の名前は、なんだい?」
「この町の名前は、メルリッヒシュタッがぶっ!!!」
うん、舌を噛んだぞ。
「くっ、くっそ、ぐぅぅぅぅううう!!」
髭親父はホールの真ん中でしゃがみ込んでいた。
親子揃って見事な天丼芸だな。
なにこれ、一子相伝の伝統芸ですか?
まあ、とりあえず朝食にしよう。
「親父さん、朝食を頼むわ~」
「は、はい……」
俺は朝食を静かな酒場で食べると午前中の内に町を出た。
アキレスに乗って農村を進む。
見渡す限りトウモロコシ畑が続き、ちらほらと農家の屋根が見える。
村と言っても住人は広大な敷地に散らばって住んでいるようだ。
俺はその村の最果ての農家を目指す。
たまに見える村人に聞いて、依頼人ラングレイの家を探した。
先程出合った村人の話では、あの山の麓にラングレイの家があるって話だ。
俺はアキレスを走らせ山の麓を目指した。
そして背の高いトウモロコシ畑を抜けると、山の麓に農家を見付ける。
「あれが、今回の依頼人の家か」
俺が家の前までアキレスを進めると、軒先で薪割りをしている人物が居た。
マッチョで長身の中年男性だ。
いや、老人に近いかな。
でも、体つきがムッキムキなのだ。
容姿は角刈りの金髪に、迷彩柄のタンクトップを着ている。
更には腰にかなり大きめのコマンドーナイフを下げていた。
そのサイズはもうショートソード並みである。
要するに、老人もナイフもデカイのだ。
「あー、えーと、退職したロシアの軍人さんかな……」
なるほどね……。
名前がラングレイってのは、外見で分かったぞ。
じゃあコカトリスの名前はロッキーかな?
それともシルベスタかな?
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