6-7【五日目のチャレンジ】

あー、嫌な夢を見た……。

夢なのかな？

現実なのかな？

マジで夢だったのだろうか？

どっちか分からん……。

まあ、どっちでもええかな。

それにしてもだ。

朝っぱらからテンションがめっちゃ下がったわ。

あの糞女神の野郎は、天界でもブイブイやってやがるようだな。

怠惰なヤツなのに人の上に立つほど権力を握り締めていやがる。

ギュッとだ。

もう、超ギュッとだよ。

まだまだ先の話だが、レベル30になるまでに、何らかの女神対策を考えて置かねばならないぞ。

面倒臭いこったぜ。

何故に俺まで天界の争いに巻き込まれなければならないんだよ。

俺が居るのは下界の異世界だぞ。

天界とはなんも関係ないだろうが。

こりゃあ、巻き沿いもいいところだぜ。

神は神だけで争っていてもらいたい。

まあ、文句を言っても始まらないか。

とりあえず朝起きて、飯を食って、ちょっとマッタリしてから俺は閉鎖ダンジョンに入った。

レイス夫婦が居る部屋で土産の線香を上げて感謝されたあとに、更なる奥へと俺は目指して進んだ。

始めて足を進ませるダンジョンのスペースである。

地面を指先で擦れば埃がミッシリと溜まっていた。

しばらく誰も踏み込んでないのだろう、足跡すらない。

てっ、ことわだ。

歩行するモンスターが居ないってことだろう。

この辺に居るとしたら歩行しないモンスターだけだろうな。

飛行しているか、霊体か、一ヶ所にとどまって動かないかだ。

どれにしても厄介だな。

だが、出合えば戦うのみだから、ドーンと来いやってんだ。

なんだって相手にしてやるぞ。

そう意気込んだ俺は、ランタンを片手にテクテクと閉鎖ダンジョン内を進んだ。

やはりマジックトーチも便利だが、ランタンのようにシャッターで明かりが絞れる道具も便利である。

いざって時には明かりを小さくして身を潜められるのがいい。

俺は、そんなことを考えながら人気のないダンジョンの通路を黙々と進んで行った。

テイアーから貰った下手くそなマップだと、この辺は迷路状態のエリアである。

ちょくちょくもらったマップに描かれていない通路や部屋などが沢山あって、俺を困惑させていた。

あの馬鹿ドラゴンめ、適当にマップを描きやがってよ。

てか、この小さなミスの数々は才能かな。

それでもなんやかんやでちゃんと道と道とが繋がってるんだよな。

だから俺は迷わないでいれた。

それが不思議だわ。

さて、ここに大部屋があるはずだ。

俺はランタンの明かりを絞ってから、通路の曲がり角を覗き込む。

その奥には普通サイズの扉があり、半開きの隙間から淡い光が漏れ出ていた。

「明かりだな……」

暗闇が続くダンジョン内に明かりが灯されている。

俺は部屋の中を覗き込んだ。

部屋の天井には小さな明かりが浮いていた。

松明や油の光でない、魔法の明かりだろう。

そして、部屋のスペースは20×20メートルぐらいの部屋で目立った荷物は置かれていない。

しかし、室内にはスケルトンウォリアーが十体ほど蠢いていた。

武装も立派で中にはマジックアイテムを装備しているヤツも居やがる。

俺は慎重に息を潜めながら敵を数えた。

「──八、九、十、十一体か」

しかも十一体目はローブ姿で立派なスタッフを持っていやがるぞ。

ネーム判定の間合いから外れているから分からないが、あいつはウォリアーじゃあないな。

スケルトンメイジかウィザードかな。

どちらにしてもマジシャン系だわ。

「魔法使いのアンデッドか～。あいつがヤバイよな」

戦うならば、アイツから優先に倒したい。

しかし、蠢くスケルトンウォリアーズは、あの骸骨魔法使いを中心に置いて、ぐるぐると動き回っている。

てか、骸骨魔法使いはほとんど部屋の中央から動かないでいた。

不味いフォーメーションだ。

「完全にあいつがこの部屋のリーダーだな。──んん？」

あとトラップが仕掛けられているぞ。

部屋を入って直ぐの床が、1×1メートルサイズで何かのスイッチ状態の仕掛けになってやがる。

床を踏んだらスイッチが入るのだろうけれど、仕掛けの全貌までは分からなかった。

これも新スキル【トラップ発見スキル】の効果なのね。

まあ、役に立つスキルだわ。

何より自動でトラップを感知してくれるのは助かる話だ。

とりあえず室内に飛び込んだ際には、この床を踏まずに飛び越えよう。

わざわざトラップに引っ掛かる必要はなかろうて。

そうなるとだ。

やはり問題は骸骨魔法使いだわな。

あいつをロングボウの初撃でぶっ倒すか。

それとも遠距離魔法攻撃でぶっ倒すかだ。

ここは安定の魔法攻撃が有効だろう。

俺は作戦を考えた。

まずは初弾をロングボウで射撃してから、続いて攻撃スキルのスマッシュアローを連射する。

それで骸骨魔法使いをぶっ倒す。

あとはスケルトンウォリアーを、この狭い通路で一体ずつ撃破すればいいだろうさ。

よし、パーフェクト！

この作戦で行こうかな。

俺は異次元宝物庫からロングボウ+1を取り出した。

このロングボウは攻撃力の向上が掛かっている。

あの骸骨魔法使いにも効果的だろうさね。

俺は矢筒を壁に寄り掛けて弓矢を引いた。

そして、足でゆっくりと扉を押し開く。

「スマッシュアロー&マジックトーチ！」

俺はロングボウの矢先に魔法の明かりを灯すと初撃を放った。

光輝く矢が飛んで行くと、スケルトンウォリアーズの隙間を縫って、見事に骸骨魔法使いの頭部に突き刺さる。

「よし！」

しかし骸骨魔法使いは倒れなかった。

骨足を踏ん張り転倒を堪えていやがる。

「初弾では撃破出来なかったか！」

俺は矢筒から二本目の矢を抜くとロングボウを構える。

「二発目で決める！」

あっ！

作戦を間違えた！

二発目を装填してどうするんだよ！

作戦だと、二発目は魔法攻撃だったはずじゃん！

俺ってばバカか！

まあ、いいや。

それよりも早く二発目を装填せんと！！

『ガガガガガっ！！』

「わぉ！」

そこでこちらを向くスケルトンたちと顔が合った。

その中でも矢が固めに刺さっている骸骨魔法使いは凄い表情に見える。

顔に肉も皮も無く骨だけなのに、骸骨からは激怒が表情と化して色鮮やかに伺えた。

だが、その気迫に負けずに俺は装填を完了させた二発目の矢を、スキルを乗せて骸骨魔法使いに向かって放つ。

「スマッシュアロー！！」

だが骸骨魔法使いはスタッフを前に翳すと、矢の進行方向を光で曲げた。

「魔法で矢を回避しやがったのか！？」

俺が驚いているとスケルトンウォリアーたちが走って来る。

そして、視界をスケルトンウォリアーたちに塞がれてしまう。

これでは矢が骸骨魔法使いに放てない。

「ちっ、ここからは白兵戦か！」

一旦スケルトンウォリアーをぶっ倒してからだな。

俺は数歩だけ通路内を後退した。

そこに、わんさかとスケルトンウォリアーズが走って来たが、最初の一体目がトラップの床を踏んだ。

「バカめが、くっくっくっ～」

俺が嘲笑っていると、天井から1×1メートルのブロック石板が落ちて来てスケルトンウォリアーの体を頭からペシャンコに潰してしまう。

二体もだ。

「わぁ～～お～～……」

思ったよりも派手な罠が降って来ましたね。

こんなので潰されたらたまらんかったわ。

さて、残りの八体のスケルトンウォリアーズは自力で倒しますか。

それに骸骨魔法使いもな。

俺は対アンデッド用のロングソード+2を抜いて構えた。

「さて、来いや！」