俺のハクスラ異世界冒険記は、ドタバタなのにスローライフ過ぎてストーリーに脈略が乏しいです。
5-30【再会と逃走】
俺は全裸のまま謁見室を出た。
ベルセルクの爺さんやベオウルフの髭オヤジとは話が付いたのだ。
まあ、夜這いの誤解が解けたと言えば明確なのだろうか。
結局俺はポラリスを何とも思っていないと告げてベオウルフの髭オヤジを納得させたのだ。
ともかく、エロイことをすると死ぬ呪いの説得力が強かったのかも知れない。
子作りをしたら死んじゃうのだ。
そんな体で娘を誑かすわけがないと知れたのだろう。
まあ~、ポラリスは残念がっていたがね。
あの怪力プリンセスは、本気で俺の子種が欲しかったようだ。
まったく呆れた話である。
理解できんな、本当によ。
そして、俺が全裸で城内を闊歩していると、後ろから声を掛けられる。
全裸な俺が振り返ると警備兵長が、ローブを片手に持って立っていた。
「これを着ていけ」
警備兵長はぶっきらぼうに述べると俺にローブを投げつけた。
俺はそれを顔面で受け止める。
そして、何も言わずに去って行った。
なんなんだ、あのオッサンは?
ツンデレですか?
名もなきツンデレモブてすか?
まあ、ローブは感謝しよう。
俺はローブを広げて肩から羽織った。
しかし、残念なことに、丈が短く下半身が丸出しになる。
チンチロリンが微塵も隠せない。
丸出しである。
「あの糞警備兵長め!!」
マジ使えない!
もっと大きなローブを持ってこいや!!
短すぎるだろ!!
下半身が隠せないじゃあないか。
何これ、バスタオルか何かですか!?
俺は仕方がないのでローブを腰に巻いて下半身を隠すのに優先させる。
「畜生、乳首がスースーするぜ」
そんなこんなで俺は裏庭の詰所まで短めのローブ一つで歩いて帰った。
勿論ながら城内なので、行き来する人々には冷たい眼差しを浴びせられましたがね。
特に若いメイドたちの視線が熱すぎましたよ。
もう、明日からは半裸少年とかあだ名がつけられますわ。
乳首丸出し野郎って卑猥なあだ名をつけられちゃうよ。
それとも乳首マンかな。
間違いないわ。
たぶん乳首マンだな。
そんなこんなで俺は恥ずかしながらも裏庭の詰所に到着する。
すると早々にパーカーさんが出迎えてくれた。
「よう、アスランくん、どうだった? とりあえずは無事のようだな」
パーカーさんたち三人が俺を出迎えてくれたが、朝食は先に食べたからないぞと告げられる。
なんだよ、畜生が!!
朝食まで抜きですか!?
それは嫌だな、も~!
仕方がないので俺は部屋に戻ると服や装備を装着してから城を出た。
しゃあないから城下町の酒場で飯にすることにしたのだ。
もう外食である。
なんだろうかな、今日はついていない。
とにかくだ、運が悪いぞ。
朝から疑われて逮捕されるは、全裸だは、朝食は先に食べられるわで、本当に運がない。
マジで不運だぜ。
こんな日はダンジョン探索はよしたほうがいいのかな?
これ以上、何か不運が続いたら、今日の仕事は休みにしようかな。
まあ、仕事は順調だから、たまには休んでもいいだろうさ。
時間はまだまだあるしね。
そんなことを考えながら俺はゴモラタウンの酒場に到着する。
店の看板を見上げたら冒険者の不買品亭と書かれていた。
なんとも冗談が詰まらない店の名前である。
まったくもってネーミングセンスの欠片もない店名だ。
まあ、飯を食うだけだから店名なんて関係ないか。
余は飯が旨ければ問題ないのである。
俺は店の中に足を進めた。
店内はソドムタウンのように騒がしくない。
静かな酒場である。
客の数も少なかった。
とても落ち着いた感じが深い。
流石は商業の町ですな。
朝から飲んだくれて居る暇な野郎は少ないようだ。
何より冒険者の非売品亭と看板が出ていたが冒険者の姿が見られない。
ぜんぜん冒険者御用達の酒場には感じられなかった。
「まあ、飯だ飯だ」
俺がカウンター席に座ると店の女将が相手をしてくれた。
俺が食事を頼むとピイターさんが作る料理よりも不味い食事が出て来る。
盛り付けも雑で汚い。
更になんとも不味い肉料理だった。
俺が頼んだのはパンと肉入りスープだったが、もうパンは乾いてパサパサだし、肉は石のようにカッチカチに硬いのだ。
スープ皿の端からは刻んだ玉ねぎがべろ~んっとはみ出していた。
俺は肉を頬張りながら、時間をかけながら噛み砕く。
そして、やっぱりついてないなと絶望に浸りながら飲み込んだ。
食事の味は、まあビジュアルを気にしなければ、まだ食えるだろう。
「まあ、仕方がないか……。飢えるよりましだしな」
でも、テンションが駄々下がりである。
今日の仕事は休みにしよう。
そう考える──。
そんな感じで俺が食事をしていると、酒場の二階から一人のお客が降りてきた。
トボトボと階段を下る姿は痩せた若い男である。
冴えない顔立ちで、大きな欠伸をしていた。
歳は俺と同じぐらいだろう。
上半身だけの革鎧に、腰には安物のダガーを下げている。
身形の軽装備からいってシーフだろうな。
俺が食事を取りながら、その男をチラリと見ると、見覚えがある容姿であった。
相手は俺に感心がないようだ。
目と目すら会わせようとしない。
俺は少し悩んだ。
何処かで会ってるような気がする。
確か、何処だっけな?
なんとも平凡な冴えない男なので思い出せん。
俺は美味しくない肉を噛み締めながら考える。
その男は俺の後ろにあるテーブル席に座った。
そして朝食を注文する。
俺は自分の食事を終えると男に近寄った。
「あんた、何処かで俺と会ったことがないか?」
俺は本気で訊いているのだ。
しかし、男は怯えるように顔を反らして「知りません」と突っぱねた。
その怯える仕草が俺の記憶を呼び覚ます。
「あ~~~~、思い出したぞ!!」
俺は言いながら、そいつの肩をガッシリと掴んだ。
「おまえ、リックドムだろ!!」
「ちっ、違いますよ!!」
男は俺の腕を払うと椅子から立ち上がった。
周りの視線が俺たちに集まる。
間違いない!
こいつは以前パーティーを組んで、俺やクラウドから装備品を全部盗んだ野郎だ。
名前は、確か……。
思い出せん。
だが恨みは忘れていない。
「まさかこんなところで出会うとはな。もっと遠くに逃げているかと思ったのによ!」
俺が野郎に詰め寄ると、唐突に野郎がアクションを取る。
「あっ、何あれ?」
「えっ?」
リックドムが俺の後ろを指差したので、なんだろうと俺が振り返る。
しかし、そこには何も無い、ただの壁だった。
「何か、あるのか?」
俺が前を向き直して見ると、リックドムが酒場の出入り口から逃げ出すところだった。
「あの野郎、古典的な手段で逃げやがったな!!」
古典的な罠に引っ掛かった俺は、慌ててリックドムを追いかける。
そして、ゴモラタウン内で、逃げた張ったの追いかけっこが始まった。
追うは俺ことアスランさまだ。
逃げるは裏切り者でこそ泥野郎のリックドムだ。
朝の街中を疾走する二人。
馬鹿めが!!
俺は逃げ足に鍛えられた冒険者様だぞ!!
貴様みたいな裏切り者が、足の速さで俺から逃げきれるわけがなかろうて!
瞬速なスキルの数々が俺の足腰を支えているのだ。
脚力で遅れを取るわけがない。
「まて、ごらっ! 逃げると追うぞ!!」
「ひぃぃいーーー!!!」
女々しい悲鳴を上げやがって。
絶対に逃がさねえぞ。
こっちとら、逃げ足に鍛えられた冒険者様だぞ!!
貴様みたいな裏切り者が、俺の足の速さから逃げきれるわけがなかろうて!
んん?
なんだ、デジャブ?
それよりもだ。
てか、なんだろう?
なかなか追い付かないな。
あいつ、足が速くね!?
もう、二回も同じ台詞をリピートするぐらい走っているのに追い付かないぞ。
まさかこんなに足が速いやつが俺以外にも存在するとはびっくりだわ。
てか、俺も追われるばっかで追いかけるのは初めてだから、上手く走れていないのかな?
ええい、こうなったら切り札の魔法オーバーランを使うか。
この隠し球でイチコロだぜ。
魔法で一気に距離を縮めてやるぞ。
「魔法オーバーラン、発動!!」
一日一回一分間の超加速だ。
これで、一気に間合いを詰める!!
詰める!!
詰める!?
詰める??
詰まらねーーぞ!?
なんでだよ!?
なんで追い付かないんだよ!?
何このシーフ野郎!?
足が速すぎね!?
すげー、速くね!?
俺ですら追い付けないのかよ!?
魔法を使っても駄目なのか!?
くそーーー。
こうなったら持久戦だ。
何処までも追いかけてやるぞ!!
そして、二時間経過──。
ひぃぃいいいい!!!
なんでこいつは走り続けられるの!?
もう二時間も走りっぱだよ!!
普通ならガス欠してませんか!?
体力が無限??
何故に追い付けない!?
何故に疲れない!?
何故に止まらないのさ!?
ぜぇはー、ぜぇはー……。
もう駄目だ……。
お、俺がガス欠だわ。
もう走れない……。
俺の足が止まった。
俺は疲れた体を沈めるように両膝を地に付けた。
完敗である。
俺が息を切らして立ち止まっていると、軽い足取りでリックドムが駆け寄って来た。
そして、俺に申し訳なさそうに言う。
「ご、ごめん。裏切るつもりはなかったんだ。ただついつい体が……」
そう述べるとリックドムは、再び走り出して、人混みの中に消えて行った。
「ちっ、畜生……」
足には自信があったのに、上には上がいるってことか……。
そして俺は、最後の最後で思い出す。
「あいつの名前はリックドムじゃなくて、リックディアスだったっけな?」
あれ、やっぱりはっきりと思い出せない。
まあ、なんだっていいか……。
【第五章】閉鎖ダンジョン前編・完。
【第六章につづく】
ベルセルクの爺さんやベオウルフの髭オヤジとは話が付いたのだ。
まあ、夜這いの誤解が解けたと言えば明確なのだろうか。
結局俺はポラリスを何とも思っていないと告げてベオウルフの髭オヤジを納得させたのだ。
ともかく、エロイことをすると死ぬ呪いの説得力が強かったのかも知れない。
子作りをしたら死んじゃうのだ。
そんな体で娘を誑かすわけがないと知れたのだろう。
まあ~、ポラリスは残念がっていたがね。
あの怪力プリンセスは、本気で俺の子種が欲しかったようだ。
まったく呆れた話である。
理解できんな、本当によ。
そして、俺が全裸で城内を闊歩していると、後ろから声を掛けられる。
全裸な俺が振り返ると警備兵長が、ローブを片手に持って立っていた。
「これを着ていけ」
警備兵長はぶっきらぼうに述べると俺にローブを投げつけた。
俺はそれを顔面で受け止める。
そして、何も言わずに去って行った。
なんなんだ、あのオッサンは?
ツンデレですか?
名もなきツンデレモブてすか?
まあ、ローブは感謝しよう。
俺はローブを広げて肩から羽織った。
しかし、残念なことに、丈が短く下半身が丸出しになる。
チンチロリンが微塵も隠せない。
丸出しである。
「あの糞警備兵長め!!」
マジ使えない!
もっと大きなローブを持ってこいや!!
短すぎるだろ!!
下半身が隠せないじゃあないか。
何これ、バスタオルか何かですか!?
俺は仕方がないのでローブを腰に巻いて下半身を隠すのに優先させる。
「畜生、乳首がスースーするぜ」
そんなこんなで俺は裏庭の詰所まで短めのローブ一つで歩いて帰った。
勿論ながら城内なので、行き来する人々には冷たい眼差しを浴びせられましたがね。
特に若いメイドたちの視線が熱すぎましたよ。
もう、明日からは半裸少年とかあだ名がつけられますわ。
乳首丸出し野郎って卑猥なあだ名をつけられちゃうよ。
それとも乳首マンかな。
間違いないわ。
たぶん乳首マンだな。
そんなこんなで俺は恥ずかしながらも裏庭の詰所に到着する。
すると早々にパーカーさんが出迎えてくれた。
「よう、アスランくん、どうだった? とりあえずは無事のようだな」
パーカーさんたち三人が俺を出迎えてくれたが、朝食は先に食べたからないぞと告げられる。
なんだよ、畜生が!!
朝食まで抜きですか!?
それは嫌だな、も~!
仕方がないので俺は部屋に戻ると服や装備を装着してから城を出た。
しゃあないから城下町の酒場で飯にすることにしたのだ。
もう外食である。
なんだろうかな、今日はついていない。
とにかくだ、運が悪いぞ。
朝から疑われて逮捕されるは、全裸だは、朝食は先に食べられるわで、本当に運がない。
マジで不運だぜ。
こんな日はダンジョン探索はよしたほうがいいのかな?
これ以上、何か不運が続いたら、今日の仕事は休みにしようかな。
まあ、仕事は順調だから、たまには休んでもいいだろうさ。
時間はまだまだあるしね。
そんなことを考えながら俺はゴモラタウンの酒場に到着する。
店の看板を見上げたら冒険者の不買品亭と書かれていた。
なんとも冗談が詰まらない店の名前である。
まったくもってネーミングセンスの欠片もない店名だ。
まあ、飯を食うだけだから店名なんて関係ないか。
余は飯が旨ければ問題ないのである。
俺は店の中に足を進めた。
店内はソドムタウンのように騒がしくない。
静かな酒場である。
客の数も少なかった。
とても落ち着いた感じが深い。
流石は商業の町ですな。
朝から飲んだくれて居る暇な野郎は少ないようだ。
何より冒険者の非売品亭と看板が出ていたが冒険者の姿が見られない。
ぜんぜん冒険者御用達の酒場には感じられなかった。
「まあ、飯だ飯だ」
俺がカウンター席に座ると店の女将が相手をしてくれた。
俺が食事を頼むとピイターさんが作る料理よりも不味い食事が出て来る。
盛り付けも雑で汚い。
更になんとも不味い肉料理だった。
俺が頼んだのはパンと肉入りスープだったが、もうパンは乾いてパサパサだし、肉は石のようにカッチカチに硬いのだ。
スープ皿の端からは刻んだ玉ねぎがべろ~んっとはみ出していた。
俺は肉を頬張りながら、時間をかけながら噛み砕く。
そして、やっぱりついてないなと絶望に浸りながら飲み込んだ。
食事の味は、まあビジュアルを気にしなければ、まだ食えるだろう。
「まあ、仕方がないか……。飢えるよりましだしな」
でも、テンションが駄々下がりである。
今日の仕事は休みにしよう。
そう考える──。
そんな感じで俺が食事をしていると、酒場の二階から一人のお客が降りてきた。
トボトボと階段を下る姿は痩せた若い男である。
冴えない顔立ちで、大きな欠伸をしていた。
歳は俺と同じぐらいだろう。
上半身だけの革鎧に、腰には安物のダガーを下げている。
身形の軽装備からいってシーフだろうな。
俺が食事を取りながら、その男をチラリと見ると、見覚えがある容姿であった。
相手は俺に感心がないようだ。
目と目すら会わせようとしない。
俺は少し悩んだ。
何処かで会ってるような気がする。
確か、何処だっけな?
なんとも平凡な冴えない男なので思い出せん。
俺は美味しくない肉を噛み締めながら考える。
その男は俺の後ろにあるテーブル席に座った。
そして朝食を注文する。
俺は自分の食事を終えると男に近寄った。
「あんた、何処かで俺と会ったことがないか?」
俺は本気で訊いているのだ。
しかし、男は怯えるように顔を反らして「知りません」と突っぱねた。
その怯える仕草が俺の記憶を呼び覚ます。
「あ~~~~、思い出したぞ!!」
俺は言いながら、そいつの肩をガッシリと掴んだ。
「おまえ、リックドムだろ!!」
「ちっ、違いますよ!!」
男は俺の腕を払うと椅子から立ち上がった。
周りの視線が俺たちに集まる。
間違いない!
こいつは以前パーティーを組んで、俺やクラウドから装備品を全部盗んだ野郎だ。
名前は、確か……。
思い出せん。
だが恨みは忘れていない。
「まさかこんなところで出会うとはな。もっと遠くに逃げているかと思ったのによ!」
俺が野郎に詰め寄ると、唐突に野郎がアクションを取る。
「あっ、何あれ?」
「えっ?」
リックドムが俺の後ろを指差したので、なんだろうと俺が振り返る。
しかし、そこには何も無い、ただの壁だった。
「何か、あるのか?」
俺が前を向き直して見ると、リックドムが酒場の出入り口から逃げ出すところだった。
「あの野郎、古典的な手段で逃げやがったな!!」
古典的な罠に引っ掛かった俺は、慌ててリックドムを追いかける。
そして、ゴモラタウン内で、逃げた張ったの追いかけっこが始まった。
追うは俺ことアスランさまだ。
逃げるは裏切り者でこそ泥野郎のリックドムだ。
朝の街中を疾走する二人。
馬鹿めが!!
俺は逃げ足に鍛えられた冒険者様だぞ!!
貴様みたいな裏切り者が、足の速さで俺から逃げきれるわけがなかろうて!
瞬速なスキルの数々が俺の足腰を支えているのだ。
脚力で遅れを取るわけがない。
「まて、ごらっ! 逃げると追うぞ!!」
「ひぃぃいーーー!!!」
女々しい悲鳴を上げやがって。
絶対に逃がさねえぞ。
こっちとら、逃げ足に鍛えられた冒険者様だぞ!!
貴様みたいな裏切り者が、俺の足の速さから逃げきれるわけがなかろうて!
んん?
なんだ、デジャブ?
それよりもだ。
てか、なんだろう?
なかなか追い付かないな。
あいつ、足が速くね!?
もう、二回も同じ台詞をリピートするぐらい走っているのに追い付かないぞ。
まさかこんなに足が速いやつが俺以外にも存在するとはびっくりだわ。
てか、俺も追われるばっかで追いかけるのは初めてだから、上手く走れていないのかな?
ええい、こうなったら切り札の魔法オーバーランを使うか。
この隠し球でイチコロだぜ。
魔法で一気に距離を縮めてやるぞ。
「魔法オーバーラン、発動!!」
一日一回一分間の超加速だ。
これで、一気に間合いを詰める!!
詰める!!
詰める!?
詰める??
詰まらねーーぞ!?
なんでだよ!?
なんで追い付かないんだよ!?
何このシーフ野郎!?
足が速すぎね!?
すげー、速くね!?
俺ですら追い付けないのかよ!?
魔法を使っても駄目なのか!?
くそーーー。
こうなったら持久戦だ。
何処までも追いかけてやるぞ!!
そして、二時間経過──。
ひぃぃいいいい!!!
なんでこいつは走り続けられるの!?
もう二時間も走りっぱだよ!!
普通ならガス欠してませんか!?
体力が無限??
何故に追い付けない!?
何故に疲れない!?
何故に止まらないのさ!?
ぜぇはー、ぜぇはー……。
もう駄目だ……。
お、俺がガス欠だわ。
もう走れない……。
俺の足が止まった。
俺は疲れた体を沈めるように両膝を地に付けた。
完敗である。
俺が息を切らして立ち止まっていると、軽い足取りでリックドムが駆け寄って来た。
そして、俺に申し訳なさそうに言う。
「ご、ごめん。裏切るつもりはなかったんだ。ただついつい体が……」
そう述べるとリックドムは、再び走り出して、人混みの中に消えて行った。
「ちっ、畜生……」
足には自信があったのに、上には上がいるってことか……。
そして俺は、最後の最後で思い出す。
「あいつの名前はリックドムじゃなくて、リックディアスだったっけな?」
あれ、やっぱりはっきりと思い出せない。
まあ、なんだっていいか……。
【第五章】閉鎖ダンジョン前編・完。
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