俺のハクスラ異世界冒険記は、ドタバタなのにスローライフ過ぎてストーリーに脈略が乏しいです。
5-4【ゴモラタウンの閉鎖ダンジョン】
城の謁見室内で俺は話し出す。
「でぇ~、君主の爺さん。あんたの恥ってなんなんだよ?」
「恥じゃあない。過去じゃわい!」
俺はレッドカーペットの上で胡座をかきながらゴモラタウンの君主であるベルセルクに訊いた。
「じゃあなに、その過去ってさ。恥ずかしい内容じゃあないの?」
「少し恥ずかしいが、恥ではないわい!」
「じゃあ話してよ」
呆れたような溜め息を吐き捨ててからベルセルクが答えた。
「まず、この城の地下にダンジョンがあるのは知っているな」
「知らん」
「そう、誰もが知っているゴモラタウンの閉鎖ダンジョンだ」
「人の言葉を聞いていますか。知らないってばさ」
俺が無視されても、ベルセルクの話は勝手に進む。
「その閉鎖ダンジョンへの入り口は、町の中の警備が固い場所にあるのも知っているだろう」
「それも知らないわ~」
「だが、もう一つこの城に入り口があるのだよ」
「へぇ~、そうなんだ~」
なんかもうどうでもいいや。
勝手に話を進めてくださいな。
「ワシはまだ幼かったころに、警備の薄い日にそこからダンジョンに入ってしまってのぉ」
「なんで?」
「幼心の好奇心だ。しかしそれでワシは一日だけだが行方不明になってしまったんだ」
「そりゃあ、大変だったな~」
「その時に閉鎖ダンジョン内で助けられたのだ。ある人物になぁ。いや、人物じゃあないかのぉ……」
「それがドラゴンか?」
だからドラゴン語で書かれた羊皮紙を渡したのだろう。
この仕事には、何かしらドラゴンが絡んで来るはずだ。
「察しが良いのぉ。だが、正確にはちょっと違うんじゃ」
「なにがさ?」
「ワシを助けてくれたのは、ドラゴンの幽霊だったんじゃ……」
「ドラゴンの幽霊……?」
うわぁ~、また思いきった変化球を投げて来ましたね。
今度はドラゴンゴーストかよ。
「そのドラゴンの幽霊に、もう一度会いたいのだよ。ワシは……」
「会えばいいじゃんか。兵士をズラズラッと並べてさ、ダンジョンを力任せに攻略したら良いじゃあないか?」
「それが叶わないから、お前さんを雇ったってわけなんじゃあ」
「まあ、分かった。じゃあ君主の爺さんを連れてダンジョンを俺が進めばいいのか?」
「それはワシの体力的に無理じゃわい」
「んんじゃあ、どうすれば?」
「まあ、ダンジョンの入り口までだな。そこならワシも行けるし、ドラゴンの幽霊もこれるからのぉ」
「城から出入り出きる入り口まで、ドラゴンの幽霊を連れて来いばいいんだな」
「ああ、そうじゃ」
「うし、分かったぜ。任せな」
「怖くはないのか?」
「何故に怖がる?」
「ゴモラタウンの閉鎖ダンジョンだぞ。それにドラゴンの幽霊だぞ。どちらも恐怖の対象じゃあないか?」
「そうなのか。俺は遠くの異邦から来た田舎者だから、ゴモラタウンの閉鎖ダンジョンが、どんな場所かも知らんし、ドラゴンの神龍となら二匹に会ったことがあるからな。だからドラゴンは怖くない」
「お前さんは、その若さで結構な冒険者なのだな……」
「まあ、いろいろあったからな。この仕事に推薦されるぐらいの実力は持っているってわけよ」
「なるほどの。舐めていたのは、ワシなのかも知れんのぉ」
「まあ、今回の依頼は、そのドラゴンの幽霊を見つけて城への出入り口まで連れて来いばいいんだな」
「そうだ」
「制限時間とかあるのか?」
「別にないが、閉鎖ダンジョンに挑んでいるのは、一般人には秘密だぞ。理由は言わんでも分かるだろう」
「いやいや、だから知らないってばさ」
「ならば簡単に説明するとだ。あの閉鎖ダンジョン内で死ぬと、呪縛されて閉鎖ダンジョンのモンスターと変わるのだよ。100%のぉ」
「なるほどね。じゃあ死ななければ問題無いじゃんか」
「それが問題ありなんだわい」
「なぜ?」
「あのダンジョンでは勇者級の冒険者たちが何人も命を落としていて、アンデッドに変わった彼らに次々と冒険者たちが狩られるのだよ」
「あらま……」
なるほどね。
勇者級の冒険者がモンスターとして蠢いているなら、次から次に挑む冒険者がモンスター化するのも無理がないか。
確かに高難度のダンジョンだわな。
「だから、あの閉鎖ダンジョンに入れるのは年に一度と決められている」
「その決まりを破ってまで、何故に俺を捜索に向かわせるんだ?」
「閉鎖ダンジョンが解放されるのは、僅か年に三日だ。それではドラゴンゴーストを探し出せんだろ。それに見つけても、ここまで連れて来れるかもわからん。やはり時間は必要だろうさ」
「なるほどね。じゃあさ、最後に二つ訊くけど、そのドラゴンの幽霊って、善人か悪人か?」
「そうだの~。まだ子供だったワシには優しかったわい。ワシをダンジョンの出口まで連れて来てくれたのだからのぉ」
なるほど、ショタか。
今回のドラゴンはショタドラゴンか──。
「じゃあ、最後にだ──」
俺はバックパックから羊皮紙を出した。
「ここに書かれているのはなんだ?」
それは、俺がソドムタウンの冒険者ギルドで見た羊皮紙の手紙だ。
『愛しき人間。私は地下で待つ。長きに渡って、地下で待つ。心が決まったら、会いに来い』
「これ、なんだよ?」
「私がドラゴンに言われた言葉だよ。もしもこれからも一人なら戻って来なさいって意味だ。彼女はそう述べてからワシと別れたんじゃ」
ドラゴンの幽霊は牝かよ。
なんかさ、やな予感がするわい……。
「もしかして、そのドラゴンはドラゴン語しかしゃべれないとか?」
「いや、ちゃんと人間語もしゃべっていたぞ」
良かった。これでドラゴンが人間語をしゃべれなかったら、俺がドラゴン語を習得してからダンジョンに入らなければならなくなるところだったぜ。
そうなると、すげー時間が掛かるぞ。
あぶね~、あぶね~。
「時間は無制限。目標はドラゴンの幽霊を出入り口側まで連れて来る。ダンジョン内で見付けた物は、全部俺の物ってことでいいんだな?」
「ああ、それがワシからの依頼内容と条件だ」
「で、ドラゴンの幽霊に君主の爺さんは、何を伝えたいの?」
「感謝の言葉だ。もう妻も亡くして孫も居る。後はワシが朽ちて息子にこの町の権利を譲るばかりだからのぉ」
なんだろう……。
この爺さんの第一印象はガメツそうだったけど、話していたら普通の爺さんに見えてきたぜ。
「最後の最後で、あの時に助けられた感謝を、もう一度ちゃんと伝えたいのじゃ。何せ当時はわがままなワッパだったからのぉ。ちゃんと感謝の言葉を返したかも覚えていないんじゃ」
へぇ~、死に際の想いですか。
しゃあね~な~。
そんな臭い話なら、尚更断れないだろう。
「分かったよ、爺さん。でぇ、俺はどうしたらいい。何せ閉鎖ダンジョンに入るのすら秘密なんだろ?」
「城にある出入り口に見張りの詰所を作ってある。そこに寝泊まりしてくれ。この話を知っているのは、僅かな大臣と出入り口を警備している数人の兵士だけだからな。お前さんは客人だから、城の中の自由は制限される。勝手に城内を出歩くなよ」
「爺さんとの連絡はどうしたらいいんだ?」
「ほれ、これを持ってけ」
爺さんが玉座に腰掛けながら腕輪を一つ差し出した。
俺は立ち上がると、それを受け取る。
「なんだい、これ?」
俺はアイテム鑑定を呟いた。
【通信リング+7】
対象の人物と離れていても一分間だけ会話が出来る。会話回数はプラスの回数分だけである。一回使うごとにプラスが消去されて、0になると腕輪は破壊される。
「へぇー、便利なアイテムだな。これの対象を爺さんに設定しておけばいいんだな~」
「凄いなお主。マジックアイテムの鑑定も出来るのか」
「ああ、こんな馬鹿げた仕事をソロで受けるだけの実力は、ちゃんと備えているぜ」
「ソドムタウンの冒険者は、下品だが侮れぬのぉ」
「下品は余計だわ。もしも~し、聞こえますか~?」
俺の手にあるリングが+6に変化した。
ベルセルクが小声で述べる。
「あー、下品なだけじゃあないわ。更に馬鹿だわ……。マジックアイテムの無駄使いをしおってからに……」
「おっ、聞こえた聞こえた!」
「でぇ~、君主の爺さん。あんたの恥ってなんなんだよ?」
「恥じゃあない。過去じゃわい!」
俺はレッドカーペットの上で胡座をかきながらゴモラタウンの君主であるベルセルクに訊いた。
「じゃあなに、その過去ってさ。恥ずかしい内容じゃあないの?」
「少し恥ずかしいが、恥ではないわい!」
「じゃあ話してよ」
呆れたような溜め息を吐き捨ててからベルセルクが答えた。
「まず、この城の地下にダンジョンがあるのは知っているな」
「知らん」
「そう、誰もが知っているゴモラタウンの閉鎖ダンジョンだ」
「人の言葉を聞いていますか。知らないってばさ」
俺が無視されても、ベルセルクの話は勝手に進む。
「その閉鎖ダンジョンへの入り口は、町の中の警備が固い場所にあるのも知っているだろう」
「それも知らないわ~」
「だが、もう一つこの城に入り口があるのだよ」
「へぇ~、そうなんだ~」
なんかもうどうでもいいや。
勝手に話を進めてくださいな。
「ワシはまだ幼かったころに、警備の薄い日にそこからダンジョンに入ってしまってのぉ」
「なんで?」
「幼心の好奇心だ。しかしそれでワシは一日だけだが行方不明になってしまったんだ」
「そりゃあ、大変だったな~」
「その時に閉鎖ダンジョン内で助けられたのだ。ある人物になぁ。いや、人物じゃあないかのぉ……」
「それがドラゴンか?」
だからドラゴン語で書かれた羊皮紙を渡したのだろう。
この仕事には、何かしらドラゴンが絡んで来るはずだ。
「察しが良いのぉ。だが、正確にはちょっと違うんじゃ」
「なにがさ?」
「ワシを助けてくれたのは、ドラゴンの幽霊だったんじゃ……」
「ドラゴンの幽霊……?」
うわぁ~、また思いきった変化球を投げて来ましたね。
今度はドラゴンゴーストかよ。
「そのドラゴンの幽霊に、もう一度会いたいのだよ。ワシは……」
「会えばいいじゃんか。兵士をズラズラッと並べてさ、ダンジョンを力任せに攻略したら良いじゃあないか?」
「それが叶わないから、お前さんを雇ったってわけなんじゃあ」
「まあ、分かった。じゃあ君主の爺さんを連れてダンジョンを俺が進めばいいのか?」
「それはワシの体力的に無理じゃわい」
「んんじゃあ、どうすれば?」
「まあ、ダンジョンの入り口までだな。そこならワシも行けるし、ドラゴンの幽霊もこれるからのぉ」
「城から出入り出きる入り口まで、ドラゴンの幽霊を連れて来いばいいんだな」
「ああ、そうじゃ」
「うし、分かったぜ。任せな」
「怖くはないのか?」
「何故に怖がる?」
「ゴモラタウンの閉鎖ダンジョンだぞ。それにドラゴンの幽霊だぞ。どちらも恐怖の対象じゃあないか?」
「そうなのか。俺は遠くの異邦から来た田舎者だから、ゴモラタウンの閉鎖ダンジョンが、どんな場所かも知らんし、ドラゴンの神龍となら二匹に会ったことがあるからな。だからドラゴンは怖くない」
「お前さんは、その若さで結構な冒険者なのだな……」
「まあ、いろいろあったからな。この仕事に推薦されるぐらいの実力は持っているってわけよ」
「なるほどの。舐めていたのは、ワシなのかも知れんのぉ」
「まあ、今回の依頼は、そのドラゴンの幽霊を見つけて城への出入り口まで連れて来いばいいんだな」
「そうだ」
「制限時間とかあるのか?」
「別にないが、閉鎖ダンジョンに挑んでいるのは、一般人には秘密だぞ。理由は言わんでも分かるだろう」
「いやいや、だから知らないってばさ」
「ならば簡単に説明するとだ。あの閉鎖ダンジョン内で死ぬと、呪縛されて閉鎖ダンジョンのモンスターと変わるのだよ。100%のぉ」
「なるほどね。じゃあ死ななければ問題無いじゃんか」
「それが問題ありなんだわい」
「なぜ?」
「あのダンジョンでは勇者級の冒険者たちが何人も命を落としていて、アンデッドに変わった彼らに次々と冒険者たちが狩られるのだよ」
「あらま……」
なるほどね。
勇者級の冒険者がモンスターとして蠢いているなら、次から次に挑む冒険者がモンスター化するのも無理がないか。
確かに高難度のダンジョンだわな。
「だから、あの閉鎖ダンジョンに入れるのは年に一度と決められている」
「その決まりを破ってまで、何故に俺を捜索に向かわせるんだ?」
「閉鎖ダンジョンが解放されるのは、僅か年に三日だ。それではドラゴンゴーストを探し出せんだろ。それに見つけても、ここまで連れて来れるかもわからん。やはり時間は必要だろうさ」
「なるほどね。じゃあさ、最後に二つ訊くけど、そのドラゴンの幽霊って、善人か悪人か?」
「そうだの~。まだ子供だったワシには優しかったわい。ワシをダンジョンの出口まで連れて来てくれたのだからのぉ」
なるほど、ショタか。
今回のドラゴンはショタドラゴンか──。
「じゃあ、最後にだ──」
俺はバックパックから羊皮紙を出した。
「ここに書かれているのはなんだ?」
それは、俺がソドムタウンの冒険者ギルドで見た羊皮紙の手紙だ。
『愛しき人間。私は地下で待つ。長きに渡って、地下で待つ。心が決まったら、会いに来い』
「これ、なんだよ?」
「私がドラゴンに言われた言葉だよ。もしもこれからも一人なら戻って来なさいって意味だ。彼女はそう述べてからワシと別れたんじゃ」
ドラゴンの幽霊は牝かよ。
なんかさ、やな予感がするわい……。
「もしかして、そのドラゴンはドラゴン語しかしゃべれないとか?」
「いや、ちゃんと人間語もしゃべっていたぞ」
良かった。これでドラゴンが人間語をしゃべれなかったら、俺がドラゴン語を習得してからダンジョンに入らなければならなくなるところだったぜ。
そうなると、すげー時間が掛かるぞ。
あぶね~、あぶね~。
「時間は無制限。目標はドラゴンの幽霊を出入り口側まで連れて来る。ダンジョン内で見付けた物は、全部俺の物ってことでいいんだな?」
「ああ、それがワシからの依頼内容と条件だ」
「で、ドラゴンの幽霊に君主の爺さんは、何を伝えたいの?」
「感謝の言葉だ。もう妻も亡くして孫も居る。後はワシが朽ちて息子にこの町の権利を譲るばかりだからのぉ」
なんだろう……。
この爺さんの第一印象はガメツそうだったけど、話していたら普通の爺さんに見えてきたぜ。
「最後の最後で、あの時に助けられた感謝を、もう一度ちゃんと伝えたいのじゃ。何せ当時はわがままなワッパだったからのぉ。ちゃんと感謝の言葉を返したかも覚えていないんじゃ」
へぇ~、死に際の想いですか。
しゃあね~な~。
そんな臭い話なら、尚更断れないだろう。
「分かったよ、爺さん。でぇ、俺はどうしたらいい。何せ閉鎖ダンジョンに入るのすら秘密なんだろ?」
「城にある出入り口に見張りの詰所を作ってある。そこに寝泊まりしてくれ。この話を知っているのは、僅かな大臣と出入り口を警備している数人の兵士だけだからな。お前さんは客人だから、城の中の自由は制限される。勝手に城内を出歩くなよ」
「爺さんとの連絡はどうしたらいいんだ?」
「ほれ、これを持ってけ」
爺さんが玉座に腰掛けながら腕輪を一つ差し出した。
俺は立ち上がると、それを受け取る。
「なんだい、これ?」
俺はアイテム鑑定を呟いた。
【通信リング+7】
対象の人物と離れていても一分間だけ会話が出来る。会話回数はプラスの回数分だけである。一回使うごとにプラスが消去されて、0になると腕輪は破壊される。
「へぇー、便利なアイテムだな。これの対象を爺さんに設定しておけばいいんだな~」
「凄いなお主。マジックアイテムの鑑定も出来るのか」
「ああ、こんな馬鹿げた仕事をソロで受けるだけの実力は、ちゃんと備えているぜ」
「ソドムタウンの冒険者は、下品だが侮れぬのぉ」
「下品は余計だわ。もしも~し、聞こえますか~?」
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