俺のハクスラ異世界冒険記は、ドタバタなのにスローライフ過ぎてストーリーに脈略が乏しいです。

ヒィッツカラルド

4-23【暇な休日】

俺が茨の森のクエストからソドムタウンに帰って来て二日が過ぎていた。

まだ時間は昼前である。

「ソドムタウンは平和だな~」

長椅子に腰かけた俺はぼんやりと空を眺めながら呟いた。

プカプカとワタアメのような白い雲が青空のキャンバスに流れていく。

今までのことを考える。

最近は少し働きすぎてたと思う。

死人の森から帰って直ぐにアイアンシップに出かけて、それが終わったら直ぐに茨の森に出掛けたのだ。

三つのミッションを連続で解決してきたんだもんな。

流石に働き過ぎだ。

現在はギルマスのギルガメッシュに仕事が無いと言われて待機中である。

三日後に来いと言われていた。

まあ、ソロ冒険者の俺が出来る仕事なんて、やたらめったにないのかも知れない。

そんなわけで二日間も暇をしていた。

明日になったらギルマスのところに行くことになっているのだが……。

だが……暇である。

俺は仕事もしないで二日間ソドムタウン内をブラブラしていた。

冒険者が冒険もしないでブラブラしていると、こんなに暇なものとは知らなかったわ。

たまの体休めも二日までだな。

「飽きてもうたわぁ……」

早く冒険がしたくてウズウズして止まらない。

せめてこんな時に遊んでくれる仲間とか、何やら楽しげなゲームでもあれば良かったんだがな~。

スバルちゃんのところへ遊びに行ったけれど、仕事が忙しそうで相手にすらしてもらえなかったしさ。

新発売の臭い取りポーションが大好評で製作に忙しいとかでさ、まったく遊んで暮れる暇なんてなかったんだよね。

冒険者ギルドの酒場も大反響で大忙しだったし、ミーちゃんですら仕事中だったんだ。

凄い珍しいことにスカル姉さんまで出張診療とか言って、丸々二日間も出払っている。

今この季節はソドムタウンの刈り入れどきか何かなのかな?

そんなこんなで行く場所も遊んで暮れる人も居ないのだ。

冒険をしていない時の俺が、こんなに詰まらない存在だとは思いもしなかったよ。

俺はスカル姉さんの診療所の前に置かれたベンチに腰掛けながら、ぼんやりと流れ行く人々を眺めて過ごしていた。

すると呑気で気ままそうな声で話し掛けられる。

「おゃあ~、これはこれはアスランくんじゃあないか~」

「はぁ~?」

俺が顔を上げると、そこにはモッチリとした贅肉たっぷりのおっさんが立っていた。

それは上等な洋服に身を包んだワイズマンのおっさんだったのだ。

何してるんだ、このおっさんは?

「よう、おっさん。まだこの町で遊んでたのか?」

「いやいや、昨日までゴモラタウンで仕事をしていたよ。私は今日になってからソドムタウンに到着したばかりだ」

「へ~、じゃあまた遊びに来たんだな」

「いやいや、それも違うよ」

何が違うんだ?

「もう、面倒臭いヤツだな~。もったいぶらずに話せよ」

俺はお前がソドムタウンに何しにこようが関係無いんだよ、もう……。

「今回、私はね。仕事で来たんだよ」

「へ~、そうなんだぁ……」

「なんだなんだ、やる気も気力もないな、キミは?」

「やる気も何も、俺は休暇中だ」

「そうか、休暇中なのか。ならば一緒に飲みにでも行くかい?」

「俺は酒が飲めない」

「じゃあ乙女のオッパイでもモミモミしに行くか?」

「それは魅力的だが、俺は死んだじいちゃんの遺言で女性の乳は揉めないんだ」

「切ない遺言だな」

「すまないね、ワイズマンのおっさん」

「じゃあ、私のオッパイでもモミモミするかい!?」

「えっ! マジでいいのかおっさーーん!?」

「いいぞ~、モミモミしごたえあるぞ~」

「やった~、わーい、わーい、って揉むか!!」

「痛たたっ、アスランくん、乳首をつねらないで! 乳首が捥げる!!」

「なんで俺がモッチリおっさんのタプタプオッパイをモーミモーミせにゃならんのだ!」

「嫌がってるわりには乳首を力強くつねるのね!!」

「念のためだよ」

俺はワイズマンの乳首を強行から解放してやった。

「まあ、それじゃあまた明日にでも会おうか、アスランくん」

「へぇ、明日ってなんだ?」

「おや、そうか、聞いてないんだね」

「ああ、何も聞いてないぞ?」

「明日冒険者ギルドで仕事を頼む予定になっているんだよ」

「おっさんが?」

「そう、このワイズマンがだ」

「誰に?」

「キミを指名している」

「なんで?」

「なに、嫌なのか?」

「嫌じゃあないけれど……。いや、やっぱり嫌かも」

「キミが私の生乳をモーミモーミする仕事だよ!」

「それは絶対に嫌だわ~……」

「まあ、仕事の話は明日だ。私はこれから別の仕事であっちこっち回らないとならないからね。忙しいんだよ」

「さっき飲みに行くかとか言ってなかったっけ?」

「そうだったかな、あはっはっはっはー」

いい加減なモッチリさんだな。

これでゴモラタウンだと、ナンバーワンの商人なんだからビックリするぜ。

でも、なんだろう。

このおっさんの依頼って?

まあ、いいか~。

どうせ明日になれば分かるんだから。

それに乳揉み仕事ではないのは間違いなかろうて。

あ、そうだった。

「そうだ、ワイズマンのおっさん」

「んん、何かね?」

「トリンドルって魔法使いを知ってるか?」

「な、何故キミは彼女の名前を知ってるんだね……?」

なに、この反応は?

顔が引きつってませんか?

なんだか露骨に驚愕してますよ?

「やっぱりトリンドルを知ってるんだな」

「あ、ああ、昔良く飲んだ仲でね……」

「飲んだだけ?」

「の、飲まれたりもした……」

「飲まれた?」

意味が分からん。

飲まれたってなんだよ?

「言っている意味が分からんぞ?」

「そうなんだ、飲まれたんだよ。彼女の夜はスッゴイんだよ。私ですらいろいろとあっちこっちから飲まれまくったんだよ……」

「それで、最後はどうなったんだ?」

「そりゃあ最後はいつもチューチューとされて、私はアヘ~ンとかデレ~ンって感じで……」

「いいよ、もう聞きとうないわ」

「そ、そうか……」

なんだなんだ?

急にワイズマンが痩せて見え始めたぞ。

過去を思い出しただけで痩せるのか?

トリンドルの想い出は、そんなにダイエット効果満点なのかよ。

「じゃあ~、ワシは行くよ。それじゃあのぉ~」

今度は老けてるな。

トリンドルの想い出は、老化能力もあるんかい……。

俺はヨボヨボのワイズマンが立ち去るとベンチから腰を上げた。

やっぱりトリンドルはヤバイ絶倫モンスターなんだな。

俺に呪いが掛かってなければワイズマンと同じ運命を辿っていたかも知れない。

それを考えると──。

…………こわ!!

とりあえず腹も減ったので、昼飯にしようと思う。



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