俺のハクスラ異世界冒険記は、ドタバタなのにスローライフ過ぎてストーリーに脈略が乏しいです。
3-2【山沿いの街道】
夜のうちに旅立った俺が、ソドムタウンがある平原から山道に入ったのは日が昇ってからだった。
山道と言っても、この辺は乾燥地帯だから、草木が殆ど生えてないゴツゴツした岩山ばかりが目立つ場所である。
おそらく既に俺は山賊が出没するエリアに入っているだろう。
俺自身が囮になっているのだから、さっさと食い付いてもらいたいものだ。
こんな詰まらない仕事は、サクッと終わらせて、もっと冒険者らしい刺激的でロマン溢れる冒険がやりたいのだ。
ダンジョンとかに潜りたいのだ。
正直なところ、小者の山賊風情に時間を費やしてはいられない。
何せ時間は無限ではない、有限なのだから!
よし、俺ってばかっこいいこと言ったぞ!
名言だな!
まあ、それはさておき──。
俺は岩山と岩山に挟まれた街道を徒歩で進んでいた。
スダンと言う町までは、ほぼほぼ一本道らしい。
ソドムタウンを出る前にスカル姉さんから、スダンまでの道のりや、いろいろな情報を仕入れていた。
まずスダンと言う小さな町は人口500人程度の宿場町で、農家が主力産業の町らしい。
主に家畜を育てている農家が多く、その殆どがソドムタウンに肉やミルクを下ろしているとか。
だからソドムタウンで口にする多くの肉が、この町から運ばれてきた家畜の肉らしいのだ。
また、多くの旅人や行商人が立ち寄ることから宿場町としても盛んだとか。
だから遠方から来たピンの旅商人を狙って山賊が現れるのだろう。
そして今回はスカル姉さんから素晴らしい情報も仕入れている。
おそらく山賊がソドムタウンかスダンを寝床にしていないなら、道中のどこかにキャンプを張っていなければ可笑しいとのことだ。
即ち、商人から強奪した品物を貯め込んでいる場所があるはずだと言うのだ。
秘密基地ってことである。
その候補となるポイントを三ヶ所ばかりスカル姉さんが教えてくれたのだ。
もしも山賊が俺を襲いに現れなかったとしても、そのキャンプ候補地を探せば高確率で山賊どもの寝床が掴めるってことになる。
流石は元冒険者のスカル姉さんだぜ。
素晴らしい情報を高値で提供してくれたもんだ。
そう、お金を取られた……。
あのババァ、俺の弱みに漬け込んで、この情報を100Gで売り付けて来やがったんだぜ!
ひでーよ、人の足元見やがってさ!
でも、有力な情報だ。
これで仕事が早く終わるかもしれない。
スピードは大事だ。
何せ時間は無限ではない、有限なのだから!
よし、名言がまたまた決まったぜ!
俺ってば格好いい!
今のうちに練習しとかないとな。
いざ人前でこの台詞を言う時が来たら、役に立つだろう。
今の練習がさ!
そんなことを考えながら俺が山沿いの街道を歩いていると、道の先から人影が歩んで来る。
一人だ。
最初はただの旅人かと思ったが、明らかに様子が可笑しかったから、俺は警戒しながら歩き続けた。
その人影は、おっさんだった。
モッチリと太った腹の中年男性で、やたらと疲れた顔をしている。
何より可笑しいのは、そのおっさんが全裸で歩いていることだった。
すっぽんぽんなのである。
なんとも珍しいものだ。
俺以外にも全裸で旅する人って居るんだなって思ったよ。
すると全裸おっさんも俺に気付いたやうで、こちらに駆け寄ってきた。
俺はなんだかキモかったから怪訝な顔でおっさんを見た。
全裸で旅をするのは構わないけど、他人に絡んでくるのはやめてもらいたい。
誰かに見られたら、こっちまで変態だと思われるじゃあないか。
まったくもぉ~、これだから変態は嫌である。
そして俺の前まで内股で駆け寄って来た全裸おっさんがオロオロとした素振りで言う。
「すまない、若い旅人よ」
「なんだ、変態おっさん?」
「いやいや、私は変態ではないぞ!」
「いやいや、どう見ても変態ではないか?」
「ど、どの辺が!?」
「全裸なところがだよ!」
「好きで全裸なわけがないでしょう!!」
「嫌いなら服を着ろよ」
「その服もすべて取られたから全裸なんですよ!」
「取られた?」
「そう、山賊に、荷物も服も全部持ってかれたんですよ」
「あー、山賊の被害者か。俺はてっきりそう言う性癖のおっさんかと思ったよ」
「そんなわけあるか!!」
「怒鳴るなよ、五月蝿いな。俺がおっさんから服を奪ったわけじゃあないんだからよ。怒鳴るなら追い剥ぎした山賊に怒鳴りやがれ」
「それはそうだが。普通はそんな勘違いしないだろ!」
「そうかな~?」
「そうだよ!」
「でも、いきなり全裸のおっさんと道端で出合ったら、俺みたいな反応を見せないか、普通さ?」
「私はいままで全裸の人と出くわしたことがないからわからんわ!」
「そうだろうさ。何せ全裸はおっさんのほうだからな」
「そ、そうだけれども……」
「もしも、おっさんが別の全裸と出合ったら全裸同士が鉢合わせになったことになるんだぜ。そんなミラクルなかなかないぞ」
「あってたまるか。それに普段の私は全裸じゃあないわい!」
「って、ことはだ。いまのあんたは、普段じゃあない如何わしいプレイ中ってことだろ、全裸おっさん?」
「だから如何わしいプレイ中じゃあないわい!」
「プレイ中じゃあないのに全裸ってことは、やっぱり変態じゃあねえの?」
「だから違うって。お前は馬鹿か!?」
「変態の全裸おっさんに、馬鹿呼ばわりされてもね」
「だから私は山賊に襲われて身ぐるみを剥がされただけだってば!」
「えっ? 山賊に襲われたの。大丈夫?」
「こっちは全裸だよ、大丈夫なわけがないじゃんか。それにさっき言ったよね、山賊に襲われたってさ!」
「とりあえず、コーヒーカップをあげるから、これで大事なところだけでも隠せよ」
「なんですっぽりと収まりが良さそうな物で隠せって言うのさ。普通は服を譲れよ!」
「服はやれんよ。俺の着替えがなくなるじゃんか」
「じゃあなんか、タオルか何かくれないかな。せめてさ!?」
「いいや、いまんところあげられるのは、そのコーヒーカップぐらいだわ。それか、サボテンの苗木ぐらいかな。どっちがいい?」
「サボテンの苗木はないわぁ~。それで全裸の私が隠せる場所はないわぁ~……。もしも、サボテンの苗木で大事なところを隠していて、間違って先っちょでも触れたら酷いことになりそうだしさ……」
「だろう。だったらコーヒーカップで我慢しろよ」
「せめて布切れでいいから持ってないかな……?」
「もってない!」
「うわぁ……。絶対に持ってるけど、力強く言いきりやがったな!」
「とりあえず、コーヒーカップのお礼代わりに訊きたいんだが、山賊に襲われたのはいつごろだ。場所はどこで襲われた?」
「コーヒーカップ確定かよ……」
「いいからどこで襲われたんだよ?」
「場所は直ぐそこだ。100メートルくらい戻ったところだ。時間は30分ぐらい前かな。まだ山賊どもが、その辺を彷徨いてて危険かも知れないぞ」
「なんだ、襲われたてのほやほやじゃんか。新鮮な変態なんたな」
「産まれたてのような姿だが、新鮮な変態じゃあないぞ!」
「そうか~、サンキュー。話は分かったぜ」
「いいからコーヒーカップをよこせ!」
「ほらよ」
「今日はなんて日だ……」
「それじゃあ、情報サンキューな~」
俺がお礼を言うと、全裸のおっさんは、コーヒーカップを股間に被せて歩き出した。
ソドムタウンの方角に向かって歩き出す。
両腕をぶらぶら振ってたから、コーヒーカップの収まりが丁度良かったのだろう。
どうやらジャストフィットしたらしい。
しかし、その背中に寂しさを感じる。
でも、あんたなら絶対に立ち直れるさ。
きっとね!
グッバイ、変態おっさん。
山道と言っても、この辺は乾燥地帯だから、草木が殆ど生えてないゴツゴツした岩山ばかりが目立つ場所である。
おそらく既に俺は山賊が出没するエリアに入っているだろう。
俺自身が囮になっているのだから、さっさと食い付いてもらいたいものだ。
こんな詰まらない仕事は、サクッと終わらせて、もっと冒険者らしい刺激的でロマン溢れる冒険がやりたいのだ。
ダンジョンとかに潜りたいのだ。
正直なところ、小者の山賊風情に時間を費やしてはいられない。
何せ時間は無限ではない、有限なのだから!
よし、俺ってばかっこいいこと言ったぞ!
名言だな!
まあ、それはさておき──。
俺は岩山と岩山に挟まれた街道を徒歩で進んでいた。
スダンと言う町までは、ほぼほぼ一本道らしい。
ソドムタウンを出る前にスカル姉さんから、スダンまでの道のりや、いろいろな情報を仕入れていた。
まずスダンと言う小さな町は人口500人程度の宿場町で、農家が主力産業の町らしい。
主に家畜を育てている農家が多く、その殆どがソドムタウンに肉やミルクを下ろしているとか。
だからソドムタウンで口にする多くの肉が、この町から運ばれてきた家畜の肉らしいのだ。
また、多くの旅人や行商人が立ち寄ることから宿場町としても盛んだとか。
だから遠方から来たピンの旅商人を狙って山賊が現れるのだろう。
そして今回はスカル姉さんから素晴らしい情報も仕入れている。
おそらく山賊がソドムタウンかスダンを寝床にしていないなら、道中のどこかにキャンプを張っていなければ可笑しいとのことだ。
即ち、商人から強奪した品物を貯め込んでいる場所があるはずだと言うのだ。
秘密基地ってことである。
その候補となるポイントを三ヶ所ばかりスカル姉さんが教えてくれたのだ。
もしも山賊が俺を襲いに現れなかったとしても、そのキャンプ候補地を探せば高確率で山賊どもの寝床が掴めるってことになる。
流石は元冒険者のスカル姉さんだぜ。
素晴らしい情報を高値で提供してくれたもんだ。
そう、お金を取られた……。
あのババァ、俺の弱みに漬け込んで、この情報を100Gで売り付けて来やがったんだぜ!
ひでーよ、人の足元見やがってさ!
でも、有力な情報だ。
これで仕事が早く終わるかもしれない。
スピードは大事だ。
何せ時間は無限ではない、有限なのだから!
よし、名言がまたまた決まったぜ!
俺ってば格好いい!
今のうちに練習しとかないとな。
いざ人前でこの台詞を言う時が来たら、役に立つだろう。
今の練習がさ!
そんなことを考えながら俺が山沿いの街道を歩いていると、道の先から人影が歩んで来る。
一人だ。
最初はただの旅人かと思ったが、明らかに様子が可笑しかったから、俺は警戒しながら歩き続けた。
その人影は、おっさんだった。
モッチリと太った腹の中年男性で、やたらと疲れた顔をしている。
何より可笑しいのは、そのおっさんが全裸で歩いていることだった。
すっぽんぽんなのである。
なんとも珍しいものだ。
俺以外にも全裸で旅する人って居るんだなって思ったよ。
すると全裸おっさんも俺に気付いたやうで、こちらに駆け寄ってきた。
俺はなんだかキモかったから怪訝な顔でおっさんを見た。
全裸で旅をするのは構わないけど、他人に絡んでくるのはやめてもらいたい。
誰かに見られたら、こっちまで変態だと思われるじゃあないか。
まったくもぉ~、これだから変態は嫌である。
そして俺の前まで内股で駆け寄って来た全裸おっさんがオロオロとした素振りで言う。
「すまない、若い旅人よ」
「なんだ、変態おっさん?」
「いやいや、私は変態ではないぞ!」
「いやいや、どう見ても変態ではないか?」
「ど、どの辺が!?」
「全裸なところがだよ!」
「好きで全裸なわけがないでしょう!!」
「嫌いなら服を着ろよ」
「その服もすべて取られたから全裸なんですよ!」
「取られた?」
「そう、山賊に、荷物も服も全部持ってかれたんですよ」
「あー、山賊の被害者か。俺はてっきりそう言う性癖のおっさんかと思ったよ」
「そんなわけあるか!!」
「怒鳴るなよ、五月蝿いな。俺がおっさんから服を奪ったわけじゃあないんだからよ。怒鳴るなら追い剥ぎした山賊に怒鳴りやがれ」
「それはそうだが。普通はそんな勘違いしないだろ!」
「そうかな~?」
「そうだよ!」
「でも、いきなり全裸のおっさんと道端で出合ったら、俺みたいな反応を見せないか、普通さ?」
「私はいままで全裸の人と出くわしたことがないからわからんわ!」
「そうだろうさ。何せ全裸はおっさんのほうだからな」
「そ、そうだけれども……」
「もしも、おっさんが別の全裸と出合ったら全裸同士が鉢合わせになったことになるんだぜ。そんなミラクルなかなかないぞ」
「あってたまるか。それに普段の私は全裸じゃあないわい!」
「って、ことはだ。いまのあんたは、普段じゃあない如何わしいプレイ中ってことだろ、全裸おっさん?」
「だから如何わしいプレイ中じゃあないわい!」
「プレイ中じゃあないのに全裸ってことは、やっぱり変態じゃあねえの?」
「だから違うって。お前は馬鹿か!?」
「変態の全裸おっさんに、馬鹿呼ばわりされてもね」
「だから私は山賊に襲われて身ぐるみを剥がされただけだってば!」
「えっ? 山賊に襲われたの。大丈夫?」
「こっちは全裸だよ、大丈夫なわけがないじゃんか。それにさっき言ったよね、山賊に襲われたってさ!」
「とりあえず、コーヒーカップをあげるから、これで大事なところだけでも隠せよ」
「なんですっぽりと収まりが良さそうな物で隠せって言うのさ。普通は服を譲れよ!」
「服はやれんよ。俺の着替えがなくなるじゃんか」
「じゃあなんか、タオルか何かくれないかな。せめてさ!?」
「いいや、いまんところあげられるのは、そのコーヒーカップぐらいだわ。それか、サボテンの苗木ぐらいかな。どっちがいい?」
「サボテンの苗木はないわぁ~。それで全裸の私が隠せる場所はないわぁ~……。もしも、サボテンの苗木で大事なところを隠していて、間違って先っちょでも触れたら酷いことになりそうだしさ……」
「だろう。だったらコーヒーカップで我慢しろよ」
「せめて布切れでいいから持ってないかな……?」
「もってない!」
「うわぁ……。絶対に持ってるけど、力強く言いきりやがったな!」
「とりあえず、コーヒーカップのお礼代わりに訊きたいんだが、山賊に襲われたのはいつごろだ。場所はどこで襲われた?」
「コーヒーカップ確定かよ……」
「いいからどこで襲われたんだよ?」
「場所は直ぐそこだ。100メートルくらい戻ったところだ。時間は30分ぐらい前かな。まだ山賊どもが、その辺を彷徨いてて危険かも知れないぞ」
「なんだ、襲われたてのほやほやじゃんか。新鮮な変態なんたな」
「産まれたてのような姿だが、新鮮な変態じゃあないぞ!」
「そうか~、サンキュー。話は分かったぜ」
「いいからコーヒーカップをよこせ!」
「ほらよ」
「今日はなんて日だ……」
「それじゃあ、情報サンキューな~」
俺がお礼を言うと、全裸のおっさんは、コーヒーカップを股間に被せて歩き出した。
ソドムタウンの方角に向かって歩き出す。
両腕をぶらぶら振ってたから、コーヒーカップの収まりが丁度良かったのだろう。
どうやらジャストフィットしたらしい。
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