俺のハクスラ異世界冒険記は、ドタバタなのにスローライフ過ぎてストーリーに脈略が乏しいです。

ヒィッツカラルド

2-33【そして、冒険は続いてく】

まずは前回のレベルアップで覚えた新スキルをお知らせしたい。

今回覚えた新スキルは一つである。

【薬物鑑定スキル】
薬草やポーションの鑑定ができるようになり、効能まで分かる。

新たなスキルはこれだけだったが、バトルアックスキルLv2がLv3にアップして、更にシャーマン魔法のファイアーシャードがLv2にアップしたのだ。

今回レベルアップして新規や成長したスキルは、この三つである。

薬物鑑定は説明通りだろう。

知識系のスキルだね。

今回は薬草取りの仕事だったから覚えたのかな。

正直なところ馬鹿で無知な俺には知識系のスキルは大変助かる。

なんか博学に見えて、女の子にもモテるかも知れないしね。

何よりスバルちゃんとは話が合うようになるかもしれない。

あと、バトルアックススキルがレベル3にアップしたのだが、斧にも数種類あって、それぞれで呼び方が異なるみたいである。

それによってスキル習得も異なるようだ。

軽い斧から、片手斧ハンドアックスアックス戦斧バトルアックス大斧グレートアックス長斧ハルバードと、いろいろとあるのだ。

まあ、斧の種類はこんな物だろうか。

だから今回レベルアップしたバトルアックススキルは戦斧専用である。

他の斧系にはスキルが当てはまらないのだ。

でも、何故か俺はハンドアックス投擲スキルを習得しているんだけどね。

武器を手に持って戦うスキルと、武器を投擲して戦うスキルは別々のようである。

そんなこんなで俺は、薬草取りの依頼から帰った次の日に、冒険者ギルドにミッション終了の報告に出掛けた。

受付嬢に依頼の成功報酬を貰う。

すると奥の部屋でギルドマスターのギルガメッシュが呼んでいると言われた。

直ぐに俺は奥の部屋に通される。

部屋の中に入ると、正面のマホガニーの高そうな机でギルマスが、何やら事務仕事に励んでいた。

羊皮紙の書類に目を通しては判子を押している。

ギルガメッシュが俺に気付いて声をかけてきた。

「ちょっと待っててくれ。今すぐ仕事を終わらせるから」

「うい~」

俺は待っている間に部屋の中を見回す。

部屋の中には色々な物が飾られていた。

芸術品から珍品までといろいろある。

よく分からないが名画や彫刻、壺や皿、熊の剥製やパンダの剥製といろいろとだ。

って、すんなり流すところだったわ!

パンダの剥製っていいんですか!?

ジュネーブ条約だったかワシントン条約に引っ掛かりませんか!?

大丈夫なの!?

ついでだったから魔力感知スキルを使ってマジックアイテムを探して見る。

数秒間だけだが、目視で3メートル以内ならば見えている物の魔力だけが光って見えるスキルだ。

なので壁の向こうや箱の中のマジックアイテムまでは光って見えないから発見できない。

それと3メートル外に出たとたんに、物が見えていても光は消えるのだ。

俺はこの部屋に飾られている珍品にマジックアイテムがないかと興味本位で見回してみた。

すると一つだけ魔力の光を放っている物品があった。

俺は呟く。

「このパンダ、マジックアイテムだよ……」

俺は心中で驚愕していた。

パンダの剥製がマジックアイテムなんだよ!

そりゃあ、驚くでしょう!

これはアイテム鑑定で調べるしかないよね!

そして俺がパンダの剥製をアイテム鑑定しようとした時である。

ギルガメッシュに呼ばれた。

「すまない、やっと仕事が終わった。こっちに来て話そう」

そう言うとギルガメッシュは俺を応接セットのソファーに招く。

「あ、ああ。今行く……」

俺は剥製パンダのアイテム鑑定が出来ないままソファーに座った。

少し名残惜しい……。

どんな魔法が掛かっているのだろうか。

そこに興味を強く引かれる。

だが、そんな俺の心中を無視してギルガメッシュが話し掛けてくる。

「どうだった。薬草取りの仕事は?」

俺はパンダの剥製に後ろ髪を引かれていたが、仕方ないとギルガメッシュの質問に答える。

「まあ、問題なかったよ。リバーボアの主も倒したしな」

「主とは、あの20メートル級のリバーボアのことか?」

「ああ、そうだよ」

「あれを倒したのか。一人で?」

俺は胸を張ってドヤ顔で語る。

「おう、スバルちゃんから支援魔法は貰ったけれどね。まあ、ほとんど一人で倒したと言っても過言ではないだろうさ」

「薬草取りの依頼は定期的にあるから、あのリバーボアは討伐隊を編成して倒して置こうかと考えていたんだが。手間が省けたぞ」

「そんなことより、なんかようなのか。呼び出してさ?」

「それはな、次の仕事はどうする。やるかい?」

「やりますとも」

「いつからやる?」

「いつでも構わないぜ。俺は元気満点だからな」

「なんか、馬鹿っぽいな、その言いかた」

「馬鹿とか言うな、変態オヤジのくせに……」

「仕事は直ぐにでも出来るか?」

「変態オヤジ発言は否定しないのかよ……」

「事実だからな」

「自覚があるのね……」

「それよりも、仕事はどうする?」

「冒険の依頼があるならガンガンやるって言ったよな。休憩期間とか要らないからよ」

「若いっていいよな。羨ましいぜ。歳を取ると長時間の労働は腰に響くんだよ」

そう言えば、このモヒカンおっさんは幾つぐらいの歳なのだろうか?

やたらとファンキーでクレイジーな風貌だが年齢が読み取れない。

分かるのはおっさんで変態ってことぐらいだ。

よし、訊いてみよう。

「失礼かも知れんが、訊いてもいいかな?」

「何をだ?」

「ギルマスって、歳は幾つなんだよ?」

「ああ、俺は今年で80だ」

「80歳!?」

「実年齢より若く見えるだろ」

「う、うん……」

すげー、ジジイじゃんか!

予想していたよりも糞爺だぞ!

ほとんど棺桶に片足を突っ込んでる歳じゃあねえか……。

いや、片足どころか場合によっては両足だぞ。

「まあ、普段から身体を鍛えているからな。あまり老けているとかは言われないがな」

確かにマッチョマンだ。

しかしこれで80歳には見えない。

せいぜい40歳から50歳ぐらいだ。

そもそもこの異世界の平均寿命は幾つぐらいなのだろう?

昔の人は寿命が短いって聞くし、信長も人生50歳とか歌っていたとか聞くしな。

あれ、なんか俺、間違えて言葉の意味を捉えてる?

まあ、いいや。

寿命に関しては今度スカル姉さんに何気無く訊いて見よう。

でも、女性に年齢のことを訊くのは失礼だって言うから、あのBBAは勘違いして怒り出しそうだな。

「まあ、やる気があるなら次の仕事の話を始めようか」

「どんな仕事だよ?」

「ここは冒険者ギルドだぞ」

「ああ、そんなの知ってるわい」

「だから仕事は冒険だ。魔物が巣くう洞窟や死人が蔓延るダンジョンの探索だ!」

「そう言うのは望むところだぜ!」

「じゃあ、話は変わるが、野盗とは戦えるか?」

「野盗……?」

野盗退治ってことは、人間と戦わなくてはならないのか?

今までモンスターとは剣を交えて戦ったが、人とは喧嘩以上の争いをやったことがない。

「退治ってことは、野盗を殺せってことかよ?」

「場合によってはそうなる。捕縛して連れてこれるなら、それでも構わんがな」

最近のアニメや少年漫画だと、人殺しはモラル的に御法度ってこともあるが、俺の場合はどうなのだろうか。

人殺しか、あまりやりたくないな。

でも、ファンタジーに転生したのなら、それも覚悟しなくてはならないのかもしれない。

人間の最大の敵は、いつだって人間なのかも知れないし。

モンスター以上に怖いのは、やはり人間なのだろう。

ギルガメッシュが嫌らしく口角をつり上げながら言った。

「どうする。やるかやらないかと言うより、やれるかやれないかと訊けばよかったか?」

見透かされている。

俺が人殺しをしたことがないと知って試されているな。

「やるよ。やりますとも……」

俺が自信の薄い返答を返すとギルガメッシュが羊皮紙の依頼書をこちらに差し出す。

「良く依頼書に目を通してから回答しろよ。返答は後日で構わん。よ~く考えてから返答しろ。さあ、今日は行け」

俺は羊皮紙の依頼書を手に取るとギルマスの部屋を出た。

そして、部屋を出る直前にパンダの剥製をアイテム鑑定した。

【この剥製にはガーディアンゴーレムの魔法が掛けられています。場所や物や人物を警護する魔法です】

あのパンダはゴーレムとして動くのか!

動いているところ、すげー見てみてー!!

こうして俺は冒険者ギルドを出た。

そして、スカル姉さんの診療所に帰る。

その晩に、俺はスカル姉さんと晩飯を食べながら話した。

「なあ、スカル姉さん──」

「なんだ、アスラン?」

「スカル姉さんって、冒険者のころに人殺しとかしたことがあるか?」

スカル姉さんはパンを両手で千切りながら答えた。

「あるぞ」

「……ふ~ん」

俺は出来るだけ冷静な素振りで、素っ気なく返事を返した。

すると今度はスカル姉さんが俺に訊いて来る。

「なんだ、次の以来は人殺しか?」

「野盗の討伐だ……」

「なら、殺さず捕まえて来い。お前が自ら裁きを下す必要はないだろ」

「でも……」

「なんだ、お前はヒーローになりたいのか?」

「えっ?」

「英雄とか正義の味方になりたいのかって訊いてるんだよ」

「い、いや……」

スカル姉さんが俺の顔を真面目な眼差しで見詰めながら言う。

「お前は冒険者になりたいんだろ。アスラン」

「あ、ああ……」

「ならば、やるべき事は分かってるだろ」

俺はスカル姉さんを見詰め返しながら返答した。

「殺さずに捕まえるか……」

「そうだ。もしもそれが出来なければ、ミッションの失敗で構わんだろ」

「でも……」

「仕事に失敗するのと、仕事のために手を血に染めるのと、どっちがましだ?」

「どっちも嫌だ!」

「ならば、どちらも選択しなくて良いように励めば良いだけだろ」

「確かに!」

俺はスカル姉さんの言葉を聞いてて声が大きくなっていた。

ついでに元気も沸いてきていた。

確かにそうだ。

何も自分から後ろ向きな選択を選ばなくても良いのだ。

何事も前向きに考えれば良いだけだ。

「スカル姉さん、俺、野盗を殺さずに捕まえてくるぜ!」

「そう、それでいいんだよ」

スカル姉さんは髑髏仮面の下で微笑んでいた。

「俺、野盗どもをボコボコの半殺しにしてからとっ捕まえてくるぜ!」

「ボコボコの半殺しにはするのね……」

「当然だ!」

「当然かよ……」

こうして俺は次の以来を受けることにした。

俺はこの町で立派な冒険者になってやる。

将来は大物冒険者だ。

そして、女神から受けた呪いを解いて、べっぴんなヒロインと結婚して、毎晩イチャイチャラブラブしまくってぇえぇいだだただぁだただだぁああが!!

心臓がぁぁあああああ!!!

のーろーいーがーー!!!

【第二章】最臭兵器スバル編・完

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