ダンジョン・ザ・チョイス
495.聖地の城の地下へ
「臭いな」
鍵を使って地下部分に足を踏み入れると、土の匂いに僅かに腐臭が混じっているのが解った。
入り口以外から光が差さない道を進めば進むほど、腐臭が土の匂いを凌駕してくる。
「来たか」
前方から現れたのは、ボロボロの鎧を着たゾンビ二体。
「ユウダイ様、私が」
「いい、俺がやる」
ナターシャを制し、長さ一メートルもない直刀、“名も無き英霊の劍”を構え――前へ!!
「……呆気ないな」
さすがはSSランクというべきか、太刀でもないのに鎧ごと斬り捨てる事が出来た。
「お見事です、ユウダイ様」
「ありがとう、ナターシャ」
この狭い場所では重宝しそうだけれど、なんだかな。
なんの効果も持たないSSランクなんて、今みたいに大剣が使えないような状況でもない限り、わざわざ使用する必要が無い。
石で舗装された道を進んだのち、階段を下っていく
「……もう別れ道か」
整備されていた道が無くなり、掘って作られた坑道のような道が二つ。
○右:暗がりの鉱脈
左:魔物の通り道
「右に俺とリューナ、左がウララさんのパーティーで」
俺のパーティーはトゥスカ、マリナ、ナターシャ、クレーレの五人。
リューナはネレイスのサカナ、チトセ、ヴァンパイアロードのエルザにヘラーシャ。
ウララさんは狸獣人のカプア、ウォーダイナソーのバルバーザード、牛獣人のノーザン、烏鳥人のクオリア、トキコさんの六人パーティーとなっている。
「コセさん……私から離れちゃうんですか?」
小悪魔というより、病んでるような雰囲気を発し出すウララさん!
「左の方が楽なので……予定通り、ここを抜けた先の安全エリアで会いましょう」
パーティーリーダーとその契約隠れNPCには一通りの攻略情報を教えているため、ウララさんは始めからここで二手に別れると知っていて言っている。
つまり、半分はおふざけ。
「ブー、仕方ないですねー」
子供のようにわざとらしくむくれる姿は可愛い物の、なんか怖い。
以前のサトミに感じていたのに近く、それでいて別種の恐怖を感じてしまっていた。
一度関係を持った相手とこんなにも距離を感じるのは、初めての経験だな。
「ノーザン、クオリアのフォローをよろしくな」
右の道は目の見えないクオリアには危険が大きいと考え、ウララさんのパーティーに入れて貰うことにした。
「はい、お任せください!」
なんだか張り切ってるな、ノーザンのやつ。
「それじゃあ、昼過ぎくらいに」
「はい! ――絶対に、無事に会いましょうね」
「……はい」
やっぱり、なんだかウララさんが怖い。
●●●
「“雷雲魔法”――サンダークラウズエクスパンシブ」
“至高のグリモワ-ル”を開いた状態で、雷と氷の二種属性魔法を行使。
雷を迸らせる雲が坑道を覆い尽くし、前方から迫る多種多様なアンデッドの群れを一網打尽にする。
「私をこっちに回したのは、このためか」
魔物の通り道は、その名の通り正面から魔物が向かって来るだけの場所。
ただし、一本道を真っ直ぐ進むだけな代わりに、ひっきりなしに様々なモンスターが出現し続けている。
「私の魔法ほど、この場所に最適な物も無いでしょうね」
雷雲を操るこの魔法ならば、この坑道をあますことなく攻撃出来るのだから。
オリジナルプレイ時には、する必要がなかった発想。
「ウララ様、生き残りが」
「たぶん、デュアルアンチゴーレムだわ。二種属性攻撃を無効化するから」
両腕に盾のような物を身につけた岩石の身体の巨人が、私の雷雲の中から姿を現す。
「二体か。ここは――」
とか思っているうちに、カプアのチャージされた“魔力矢”とトキコの連撃であっという間に倒される。
「なんだ? 随分呆気ない」
「デュアルアンチゴーレムは、二種属性に対して無敵な分、耐久値はゴーレムの中でも低めだから」
物足りなさそうなトキコに説明しておく。
「その口振り、やっぱりオリジナルプレーヤーか」
トキコさんに気付かれる。
「まあね」
暇さえあれば、弟のラキと協力プレイで遊んでいたのがこのゲーム。
「もう新手が!」
ノーザンちゃんの言うとおり、少し進むとすぐに“切り裂きモグラ”の群れが前方の壁や地面から出現。
「“悪夢魔法”――ナイトメアバットズ」
黒霧で出来た無数のコウモリ達が、モグラに次々と食らい付いて干からびさせていく!?
「今のが、ユニークスキルの“悪夢魔法”ですか」
「はい。“鳥獣戯画”の代わりにと」
ノーザンちゃんとクオリアちゃんの会話。
「確か、闇、風、霊の三属性魔法」
「ええ、メルシュさんもそのようにおっしゃっていましたね」
貴重なユニークスキルの所持数も多いみたいだし、このレギオンてやっぱり凄いのかもしれない。
「お前ら、次こそは私が思いっきり暴れるんだからな! 手ぇ出すなよ!」
勝手な事を言って勝手に進んでしまうトキコ。
「私……いつまで保つかな」
「ウララ様?」
「ううん、なんでもない」
私の心はコセさんによって大分埋められたけれど……まだ、埋めようのないなにかが残っているような……ううん。そもそも、埋め方を間違えてしまったのかもしれない。
だって私の心は…………こんなにも枯れているのだから。
●●●
「……どんどん下って行くのね」
マリナの指摘は俺も同意で、ウララさん達から離れてから程なく、俺達は凹凸の激しい鉱物の坂をひたすら下り続けていた。
周りの地形が変わったのもあり、既に腐臭から解放されている。
「敵襲ですわよ」
気付いたネレイスが、“遊泳”で空中を泳げるのを生かして真っ先に大コウモリの対処を始めてくれる。
「この狭い足場で襲ってくるのか!」
「臆しましたか、マリナ?」
「誰が!」
なぜかマリナに対しては挑発的なトゥスカ。
トゥスカは新しい武器である“多目的ガンブーメラン”から“魔力弾”を放ち、マリナは“熱光線”などを放って第一波をやり過ごした。
「ていうかユウダイ、あんたも戦いなさいよ!」
「いや、過剰戦力かと思って」
問題無いと判断した俺は、“獣の聖地”で購入した”割り杭”に小槌を打ち付け、キラキラ輝く岩部分を割っていた。
「来た」
小槌を杭に叩きつける程に罅が大きくなり、とうとう割れ崩れる!
「ご主人様、これは……金塊ですか?」
「そうらしい」
不格好な金の塊を回収すると、本当に金塊と表示された。
「もしかして、これが三十六ステージの特殊宝箱ってやつ? ギオジィ?」
声を掛けてくるクレーレ。
「ああ、正解だ」
樹木の膨らみや皮の中、大鳥の死骸やヘドロの下に続いて岩の中と、これで五種類目の特殊宝箱か。
「コセ、あそこが別れ道じゃないのか?」
リューナの視線の先を追うと、暗い洞穴の入り口の横に青い湖が。
「はい、あれが地底湖で間違いないかと」
ヘラーシャの断定。
その後何度かの襲撃をやり過ごし、地底湖の傍へ。
すると、上からでは見えなかった横穴が湖の奥にあった。
「コセ君は、地底湖を進むんですよね? 全員で飛んでいくんですか?」
チトセに尋ねられる。
「通常ならそうだけれど、こっちには良い物がある」
俺はチョイスプレートを操作し、突発クエスト・魔の海域を脱出せよで手に入れた“耐弾性クルーザー”を湖の上に実体化した。
鍵を使って地下部分に足を踏み入れると、土の匂いに僅かに腐臭が混じっているのが解った。
入り口以外から光が差さない道を進めば進むほど、腐臭が土の匂いを凌駕してくる。
「来たか」
前方から現れたのは、ボロボロの鎧を着たゾンビ二体。
「ユウダイ様、私が」
「いい、俺がやる」
ナターシャを制し、長さ一メートルもない直刀、“名も無き英霊の劍”を構え――前へ!!
「……呆気ないな」
さすがはSSランクというべきか、太刀でもないのに鎧ごと斬り捨てる事が出来た。
「お見事です、ユウダイ様」
「ありがとう、ナターシャ」
この狭い場所では重宝しそうだけれど、なんだかな。
なんの効果も持たないSSランクなんて、今みたいに大剣が使えないような状況でもない限り、わざわざ使用する必要が無い。
石で舗装された道を進んだのち、階段を下っていく
「……もう別れ道か」
整備されていた道が無くなり、掘って作られた坑道のような道が二つ。
○右:暗がりの鉱脈
左:魔物の通り道
「右に俺とリューナ、左がウララさんのパーティーで」
俺のパーティーはトゥスカ、マリナ、ナターシャ、クレーレの五人。
リューナはネレイスのサカナ、チトセ、ヴァンパイアロードのエルザにヘラーシャ。
ウララさんは狸獣人のカプア、ウォーダイナソーのバルバーザード、牛獣人のノーザン、烏鳥人のクオリア、トキコさんの六人パーティーとなっている。
「コセさん……私から離れちゃうんですか?」
小悪魔というより、病んでるような雰囲気を発し出すウララさん!
「左の方が楽なので……予定通り、ここを抜けた先の安全エリアで会いましょう」
パーティーリーダーとその契約隠れNPCには一通りの攻略情報を教えているため、ウララさんは始めからここで二手に別れると知っていて言っている。
つまり、半分はおふざけ。
「ブー、仕方ないですねー」
子供のようにわざとらしくむくれる姿は可愛い物の、なんか怖い。
以前のサトミに感じていたのに近く、それでいて別種の恐怖を感じてしまっていた。
一度関係を持った相手とこんなにも距離を感じるのは、初めての経験だな。
「ノーザン、クオリアのフォローをよろしくな」
右の道は目の見えないクオリアには危険が大きいと考え、ウララさんのパーティーに入れて貰うことにした。
「はい、お任せください!」
なんだか張り切ってるな、ノーザンのやつ。
「それじゃあ、昼過ぎくらいに」
「はい! ――絶対に、無事に会いましょうね」
「……はい」
やっぱり、なんだかウララさんが怖い。
●●●
「“雷雲魔法”――サンダークラウズエクスパンシブ」
“至高のグリモワ-ル”を開いた状態で、雷と氷の二種属性魔法を行使。
雷を迸らせる雲が坑道を覆い尽くし、前方から迫る多種多様なアンデッドの群れを一網打尽にする。
「私をこっちに回したのは、このためか」
魔物の通り道は、その名の通り正面から魔物が向かって来るだけの場所。
ただし、一本道を真っ直ぐ進むだけな代わりに、ひっきりなしに様々なモンスターが出現し続けている。
「私の魔法ほど、この場所に最適な物も無いでしょうね」
雷雲を操るこの魔法ならば、この坑道をあますことなく攻撃出来るのだから。
オリジナルプレイ時には、する必要がなかった発想。
「ウララ様、生き残りが」
「たぶん、デュアルアンチゴーレムだわ。二種属性攻撃を無効化するから」
両腕に盾のような物を身につけた岩石の身体の巨人が、私の雷雲の中から姿を現す。
「二体か。ここは――」
とか思っているうちに、カプアのチャージされた“魔力矢”とトキコの連撃であっという間に倒される。
「なんだ? 随分呆気ない」
「デュアルアンチゴーレムは、二種属性に対して無敵な分、耐久値はゴーレムの中でも低めだから」
物足りなさそうなトキコに説明しておく。
「その口振り、やっぱりオリジナルプレーヤーか」
トキコさんに気付かれる。
「まあね」
暇さえあれば、弟のラキと協力プレイで遊んでいたのがこのゲーム。
「もう新手が!」
ノーザンちゃんの言うとおり、少し進むとすぐに“切り裂きモグラ”の群れが前方の壁や地面から出現。
「“悪夢魔法”――ナイトメアバットズ」
黒霧で出来た無数のコウモリ達が、モグラに次々と食らい付いて干からびさせていく!?
「今のが、ユニークスキルの“悪夢魔法”ですか」
「はい。“鳥獣戯画”の代わりにと」
ノーザンちゃんとクオリアちゃんの会話。
「確か、闇、風、霊の三属性魔法」
「ええ、メルシュさんもそのようにおっしゃっていましたね」
貴重なユニークスキルの所持数も多いみたいだし、このレギオンてやっぱり凄いのかもしれない。
「お前ら、次こそは私が思いっきり暴れるんだからな! 手ぇ出すなよ!」
勝手な事を言って勝手に進んでしまうトキコ。
「私……いつまで保つかな」
「ウララ様?」
「ううん、なんでもない」
私の心はコセさんによって大分埋められたけれど……まだ、埋めようのないなにかが残っているような……ううん。そもそも、埋め方を間違えてしまったのかもしれない。
だって私の心は…………こんなにも枯れているのだから。
●●●
「……どんどん下って行くのね」
マリナの指摘は俺も同意で、ウララさん達から離れてから程なく、俺達は凹凸の激しい鉱物の坂をひたすら下り続けていた。
周りの地形が変わったのもあり、既に腐臭から解放されている。
「敵襲ですわよ」
気付いたネレイスが、“遊泳”で空中を泳げるのを生かして真っ先に大コウモリの対処を始めてくれる。
「この狭い足場で襲ってくるのか!」
「臆しましたか、マリナ?」
「誰が!」
なぜかマリナに対しては挑発的なトゥスカ。
トゥスカは新しい武器である“多目的ガンブーメラン”から“魔力弾”を放ち、マリナは“熱光線”などを放って第一波をやり過ごした。
「ていうかユウダイ、あんたも戦いなさいよ!」
「いや、過剰戦力かと思って」
問題無いと判断した俺は、“獣の聖地”で購入した”割り杭”に小槌を打ち付け、キラキラ輝く岩部分を割っていた。
「来た」
小槌を杭に叩きつける程に罅が大きくなり、とうとう割れ崩れる!
「ご主人様、これは……金塊ですか?」
「そうらしい」
不格好な金の塊を回収すると、本当に金塊と表示された。
「もしかして、これが三十六ステージの特殊宝箱ってやつ? ギオジィ?」
声を掛けてくるクレーレ。
「ああ、正解だ」
樹木の膨らみや皮の中、大鳥の死骸やヘドロの下に続いて岩の中と、これで五種類目の特殊宝箱か。
「コセ、あそこが別れ道じゃないのか?」
リューナの視線の先を追うと、暗い洞穴の入り口の横に青い湖が。
「はい、あれが地底湖で間違いないかと」
ヘラーシャの断定。
その後何度かの襲撃をやり過ごし、地底湖の傍へ。
すると、上からでは見えなかった横穴が湖の奥にあった。
「コセ君は、地底湖を進むんですよね? 全員で飛んでいくんですか?」
チトセに尋ねられる。
「通常ならそうだけれど、こっちには良い物がある」
俺はチョイスプレートを操作し、突発クエスト・魔の海域を脱出せよで手に入れた“耐弾性クルーザー”を湖の上に実体化した。
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