ダンジョン・ザ・チョイス

魔神スピリット

488.砂漠の中心で裸体に見惚れる

「気っ持ちぃ~!」

 “発掘村”を出発して半日。ようやく中間地点のコテージ付き安全エリアに到達した私達は、各々二階にあるプールと温泉に別れて寛いでいた。

「フー……」

 私は泳ぐ元気が無かったため、温泉に浸かっている。

 屋根も無い場所で裸になるのは恥ずかしいけど、サキ達隠れNPCが見張ってくれているからある程度安心して入っていられそう。

 コテージ周りは念入りに確認したし、発掘村には私達以外のプレーヤーは一人も居なさそうだったし、突然男が来て裸を見られる心配も無い。

「開放感凄いな~」

 見渡す限りの夕焼けを見ながら、温泉に浸かって居られるなんて……このコテージと同じ魔法の家が欲しい。

 まあ、私は“砦城”と契約しちゃってるんだけれど。

「……」
「どうしたの、モモカ?」

 正面から私を……私の脚の方に視線が行ってる?

「ジュリー……オッパイ大っきい」
「……へ?」

 自分の胸を触りながら、ジッと私の胸を見ている!

「確かにジュリーって、十五歳とは思えないくらい大っきいわよね」

 隣に入ってきたのはユリカ。

 確かに、同い年で私より大きい人は今までデ……膨よかな子しか居なかったけれど。

「……ユリカの方が大きいよね?」
「そんなに違わないと思うけれど……何カップ?」
「……HよりのG」
「私はHだよ」

 ほら、やっぱりユリカの方が大っきい!

「ていうか、レギオン内で一番大きいよね?」
「ま、まあね。て言っても、私より大きい人なんて、向こうにはいっぱい居るでしょ」

 日本だけでも、たまにKとかLとか見掛けるけれど。

「この年でこのサイズだと、将来どれくらいになるのか……これ以上大きくなって欲しくないんだけれど」
「戦闘には邪魔だしね」
「じゃあ、私に頂戴! オッパイ、大っきくなりたい!」

 ユリカと私の会話に、子供らしい爆弾を投下してくるモモカ。

「オッパイ大きくなっても良いこと無いわよ? ナンパとか、視線とか、変な男が寄ってきやすいし」

 ユリカもそうなんだ。

「確かに、変な男子にばかり告白されてたな」

 あんまり大きくない方が、良い男に巡り会いやすいかも。

「コセは? コセは大っきい方が好きじないの?」

「「…………」」

 無邪気な子供の疑問ほど、恐ろしい物なんて無いのかもしれない。

「ああ……あれよ……その」

 ユリカが困っている。

「た、たぶん、トゥスカくらいが良いんじゃない……かな?」

 トゥスカはEよりのDくらいだから、私達よりは幾分か小さい。

「分かった!」

 なにが?

「で、でも、オッパイのサイズが女の価値じゃ無いんだからね!」
「そうだよ! 性格とか、身体のバランスとかだって!」

「お前達は、子供にいったいなにを言っているんだ?」

 湯船を歩いてきたのは、緑の髪を濡らしたレリーフェさん……。

「「…………」」

 その堂々とした佇まいに均整の取れた顔、プロポーションに……思わず見惚れてしまう。

「ん、どうした?」

「本当だ! ユリカ達よりオッパイ小さいのに、レリーフェの方が凄く綺麗!!」

「「グフッ!!」」

「……お前達、本当にモモカになにを話していたんだ?」
「レリーフェ、身体洗って!」
「仕方のない奴だ。今日だけだぞ」

 モモカを連れ、湯船から出て行くレリーフェさん。

「さすがエルフ。裸だと余計に美貌の差を解らせられる……」
「子供って……正直だよね」

 女としての敗北感が凄まじい。

「どうしたら、レリーフェさんくらい綺麗になれるんだろう?」
「……」
「へ、なに?」

 ユリカがジト目で見てくる。

「いや、異世界人メンバーの中で、ジュリーにだけは言われたくないなって。サトミもだけれど」
「うん?」

 どういうこと?


●●●


「エントランスの階段を上った先にありますのが”淑女達の花園”、右扉から繋がるのが”数多の墓所”、左扉は“千花の庭園”、正面が”コックの戦場”となります」

 スジャと名乗った執事風NPCの説明が終わる。

 場所は三十四ステージ、”吸血皇の城”のエントランス。

「チトセとエルザの城と、この辺はまんま同じなんだ」
「不気味な雰囲気は、ここほどではなかったですけれど」

 ナオとクマムが話している。

 私達の魔法の家の領域にある“吸血皇の城”でパーティーを開いたのもあって、ある程度みんな城の構造は把握しているはず。

「ルートは、あらかじめ話しておいた通りに進んでね」

 “淑女達の花園”にはジュリー達、“数多の墓所”にはルイーサ達、“千花の花園”には私も居るクマム達、“コックの戦場”はサトミ達に担当して貰う。

 モモカとバニラは、ヨシノと共にお留守番。

 その他のメンバーは、街を襲っているモンスターの群れの迎撃を、経験値と素材集めのために励んで貰うことになっていた。

「行くよ、クマム」
「はい!」

 ナノカ、ナオ、カナと共に五人で左の扉へ。

 そこから伸びる暗い廊下を通り、奥のドアを開けると……広大な庭である“千花の庭園”へと出た。

「花は綺麗なのに、不気味な場所ですね」

 クマムの率直な感想。

 そこかしこに花壇があり、長く蔦を絡めさせて作った敷居、ガーデウォールなどで庭が仕切られている。

「ここでは浮遊系の能力は使えないから、注意してね。それと――」

 庭へと足を踏み入れると、見渡す限りの花々が一斉に蠢いて牙を向く。

「な、なによこれ!」
「コイツらは全て食人花。血に一気に寄っていく習性があるから、特にナオは近付き過ぎないようにね」

 魔法使いなのに、何故かどんどん拳で戦うようになっているナオに忠告しておく。

「りょ、了解」
「それで、この花全てを刈り取れば良いわけ?」

 気合を入れるカナが確認してきた。

「コイツらは強くない代わりに際限なく生えて来るから、私達は迎撃しながら庭園を抜ける必要がある」
「で、余等はどちらへ向かえば良いのだ?」

 取り回しの良い武器の方が良いと考えたのか、”突撃猪の石盾”と“天元侵蝕の木樵斧”に装備を替えるナノカ。

「このまま真っ直ぐ。庭中央にある噴水、その更に向こうにあるあの塔まで走るよ!」

「はい!」
「「「おう!」」」

 ナノカを先頭に私達は、襲い来る様々な食人花のテリトリーを突っ切る!!

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