ダンジョン・ザ・チョイス

魔神スピリット

486.展示室での成果

「フムフム」

 私がモモカ達と手に入れたSランクが”超赤竜の裂刃装鎧”で、Aランクが“テーザープラズマ銃”と“倍打突きのザグナル”。

 クマム達のSランクが“二種属性マジックシールドリング”で、Aランクが“トリニティーセットロッド”に”倍打突きのザグナル”。

 ユリカ達のSランクが“コンバージェンス・プラズマランチャー”で、Aランクが“レーザーツインエッジ”に”ジェットウィングユニット”。

 サトミ達のSランクが“メタモルコピーウェポン”で、Aランクが”バトルパペット・メタルンルン”、“多目的ガンブーメラン”。

 メグミ達のSランクが“メタモルコピーウェポン”で、Aランクが“レーザーソード”に“ジェットウィングユニット”か。

「ウーン……まあまあかな」

 むしろ、どちらかと言えば良い方。

「せっかくのSランクが“メタモルコピーウェポン”ていうのが、勿体ないような、そうでもないような」
「その“メタモルコピーウェポン”というのは、どういう物なんだ?」

 展示室前で皆が手に入れた物を確認していると、メグミが尋ねてきた。

「自分が装備しているメイン、もしくはサブの武器、防具を完全にコピーするっていう代物だよ」
「なるほど。確かに微妙だな」
「そうなの?」

 サトミが会話に入ってきた。

「わざわざ同じ装備を使うメリットは低いだろう。コセのように二刀流で戦うなら、重さも形状もまったく同じ方が振りやすいだろうが」
「そうなんだよね」

 武器を二つ持つなら、違う性能の方が対応率も上がる。

 わざわざ武器装備欄を一つ埋めてまで、この“メタモルコピーウェポン”を装備するメリットはほとんど無い。

「まあ、形を変えると名前も対象と同じになるし、活用法も色々あるけれど」

 同一系統装備は、装備すればするほど恩恵があるし。

 “連携装備”持ちなら、上手く生かせる場面もあるかも。

 それにこの武器、SSランクにも対応可能みたいだし。

「そろそろ出発しようか」

 展示室の正面右側へと進み、階段を上って別フロアへ。

 あの展示室で手に入れた装備って強力なのも多いけれど、他の武具との親和性が薄いって言うか、同じランクの武器と比べると特色があまり無いんだよね。

 自分と相性が悪い相手にはちょうど良い予備武器にはなるんだけれどね。ザッカルが使っている“レーザーソード”とか。

「それで、このフロアではなにを?」
「何も無いよ。設定では、この研究所の運営者達のオフィスがあるってくらいで」

 だから、実を言うと地下の方が色々旨味があったりする。

「そう言えば、マスター達に武器を作らせてなかったな」

 ここの地下にある素材を使えば、色々作れるはずだし。

「宝箱があるけれど?」

 ナオが聞いてくる。

「こっちのルートは特に危険も無しに高ランク武具が手に入る分、ここらの宝箱はお金とか“瞬足”とか、低ランクのスキルカードくらいしか手に入らないよ」

 指輪なんかも手に入るけれど、稀にAランクが出るかどうか。

「ま、回収はしてくんだけれどね」

 そのまま近代ビルのようなフロアを回って上に行き、というのを三回繰り返して最上階にあるポータル前へと到達。

 ろくに経験値設定稼ぎも出来ないまま、私達は第三十一ステージのボス部屋前へと転移した。

 
●●●


『“投斧術”――ハイパワートマホーク!!』

 “決闘場”の舞台上にて、右手の神代文字を刻んだ小振りの斧から力を注いだ、“首刈りの斧”を投げ付ける雪豹獣人のクレーレ。

 そのクレーレと相対して居るのは、チトセの使用人NPCであるヘラーシャ。

 そのヘラーシャの手にあるのは、俺が吸血皇との戦いで黒鬼から手に入れた、二つの棒状鈍器が両端内側に取り付けられた楕円型の銀盾、“ツインボンバーシールド”Aランク。

『“大盾術”――ハイパワーカウンター!!』

 クレーレが投げた斧を、本来の勢い以上の速度で跳ね返した!?

『ベクトルコントロール!』

 自分に牙を向こうとした武具を操り、無事その手に戻すクレーレ。

「クレーレは、どうやらカウンターを見越していたようですね」

「小手調べというか、挨拶気分だったんだろうな」

 観客席にて、トゥスカと語らう。

『“爆撃”』

 盾の効果を使用し、自分から前に出るヘラーシャ。

『接近戦を仕掛けて来るんだ――へ?』

 クレーレから視線を外さずに突っ込んでいったヘラーシャが、クレーレの手前の地面に向かって盾の鈍器先端をぶつけ――爆風を巻き起こした!

『“瞬足駆け”』

 高速で駆けながら爆煙から脱出し、視界を確保するクレーレ。

「“瞬足駆け”。連続で”瞬足”を放つスキルの上位版か?」

 回数制限が無いとなると、厄介極まりない。

「回数制限はありませんが、あのスキルは発動中TPを高速で消費し続けます」

 教えてくれたのはナターシャ。

「“超高速”との違いは?」
「あちらは消費無しの代わりに、最大三秒しか高速で動けません。再使用には二秒のインターバルも必要になります」

「つまり、どちらも一長一短か」

 どちらかと言えば、“超高速”の方が扱いやすい気がする。

『“二重武術”――ハイパワートマホーク!!』

 両手の斧に神代文字の力を纏わせた状態で、同時に投げ付けるクレーレ。

『“瞬足”――シールドチャージ!!』

 前に出て斧の挟撃を避けると共に、盾にエネルギーを纏わせた状態で加速――攻撃のために動きが止まっていたクレーレを弾き飛ばす!

「クレーレがもう少し早く動いていれば、なんとか躱せたでしょうね」
「だな」

 その証拠に、クレーレは後方ではなく右に弾き飛ばされていた。

『まだやりますか?』
『ハァー! しゃーない、こうさーん』

 意外にも、アッサリ負けを認めるクレーレ。

 決闘が終わったため、見物していたメンバー全員が決闘場の上へ。

「武器を使いこなして居るな、ヘラーシャ」
「大旦那様より譲り頂いた武器、大切に使わせて頂いております」
「お、おう」

 あまりにも恭し過ぎて、ちょっと困ってしまう。

「クレーレもさすがですね。神代文字のコントロールを、もう随分物にしているようですし」

 別の武具にエネルギーを送って強化するあれか。

「トゥスカ叔母さんに比べると、まだまだだけれどねー」
「叔母……年はそんなに離れていないのだし、お姉さんで良いですよ? 前に言いましたよね?」

 クレーレの叔母呼び、だいぶ気にしてるな、トゥスカ。

「うーん、どうしよっかなー」
「クレーレ、今度は私が相手になろうか?」
「うん、よろしく! リューナっち!」

 トゥスカの提案にはろくに答えず、いつの間にか愛称呼びになっているリューナと模擬戦を始めてしまう。

「随分馴染んだようですね、あの子」

 声を掛けてきたのは、“決闘場”を使わせてくれているオクネルさん。

 彼女の指には、“高級の婚姻の指輪”が。

「あの子の人柄かと」
「ああ見えて、実は他種族が苦手なんですよ、クレーレは」
「へ?」

 うちで寝泊まりするようになってから数日、そんな風には見えなかったけれど。

「他種族と言うと、語弊がありますね……あの子はそもそも、ヴァルカ様以外には心を開いていなかったのです」

 獣人に対しても、と言うことか。

「なのにあの子は、貴方達と居る時の方が楽しそう……クレーレのこと、よろしくお願いします」

「……はい」
「任せてください」

 俺とトゥスカは、改めて義兄の義理の娘を預かる決意を固めるのだった。

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