ダンジョン・ザ・チョイス

魔神スピリット

447.チェイスバトル

「来たか」

 暴走族出没エリアの方へとやって来た私、ルイーサ、メグミ、ヒビキ、タマの操るバイクの後方から、タイヤの無いBランク――反発バイク四台に跨がった“暴走族”達がやってくる。

『あれ、ぶっ倒して良いのか?』

 通信機から、ルイーサの声。

「そろそろ前からも来るよ」

 そう言うやいなや、前方から後ろ向きで現れる四台の”暴走族”達。

「接近されたら武器か体当たりで攻撃される。遠距離攻撃で早めに倒して」

 現在の先頭は私とルイーサのため、前の四台は私達が受け持った方が良いだろう。

「やるよ、ルイーサ」
「面白そうだ――“古王の威厳”」

 右手で抜いた、“古代王の聖剣”の効果を発動させるルイーサ。

「“古代剣術”――オールドスラッシュ!!」

 “古王の威厳”により、古代属性の攻撃を長大な斬撃として飛ばし、二台の暴走族を倒してしまう。

「完全にオーバーキルだよ、ルイーサ」
『そうなのか?』

 走行中に襲ってくるのもあって暴走族は打たれ弱く、このストリートブリッジでは最弱のモンスター。

 私は、金星球と“磁力”のコンボで反発バイクの体勢を崩して難なく撃破。

 タマ達の方はというと、メグミはディフェンドガードの特徴である、左右の盾付きアームで接近を阻みつつ、私と同じく体勢を崩して退けている。

 タマは、オプションである”ガードアーム”によりメグミのディフェンドガードと同じ特徴を獲得しているため、同様に青の盾をぶつけて吹き飛ばしていた。

 同乗していたサトミやスゥーシャによる援護もあり、あっという間に八台を撃破。

『さすが、手際が良いですね』

 経験者であるヒビキの声が聞こえてくる。

『おい、なにか大きいのが来たぞ』

 ルイーサが指摘したのは、前方から向かってくる棘付きタイヤの灰色車。

「”ブレイカート”。出現率の低い厄介なモンスターだ」

『こっちに真っ直ぐ突っ込んでくる! 避けろ!』

 メグミの声に皆が左右に避ける中、ヒビキがスピードを上げて突っ込んでいく!?

『このフレイムマグナムの力を見せてあげましょう』

「まさか、フレイムマグナムの特殊機能を!」

 ヒビキが操るフレイムマグナムの前方に、赤いエネルギーの力場が展開された!

「幾らなんでも無茶――」

 ヒビキのバイクに、神代文字の光が染み入っていく!

 もしかしてあの機体にも、私のゴルドライトニングと同じ”ウェポンエフェクター”が!!


『私の前を――遮るな!!』


 フレイムマグナムが“ブレイカート”と真っ正面からぶつかり合い――灰色の奇行車を破壊してしまった。

 クラッシュアタックと神代文字の力で、ブレイカートを一撃で倒せるだけの破壊力を生み出したのか。

 となると、”ウェポンエフェクター”にセットしているのは神代文字対応武器。

「もしかして、“馬上で振るうは十字の煌めき”以外にも神代文字対応武器を?」

 ヒビキの得物である十文字槍は、この状況では使い勝手が良いはず。セットするだけでわざわざ使えなくしているとは思えない。

『ええ。実は、“馬上で振るうは侍の一矢”という和弓を持っておりまして、私は弓が得意ではないため、この子にセットしたままにしているのです』
「な、なるほど」

 ”ウェポンエフェクター”にセットしている場合、その武具その物は使用できないからな。

 でも名前からして、十字の煌めきと侍の一矢は同時に装備するだけでも恩恵がありそうだけれど。

 そんなこんなで、私達は順調に暴走族達を蹴散らして進んでいた。


○○○


「“金星砲術”――ヴィーナスショット!!」

 “ゴルドヴィーナス”を用い、牽引トレーラーの窓から、並走する大型の狐モンスターを倒すクリス。

「“氷炎魔法”――アイスフレイムバレット!!」

 トレーラーの屋根に乗り、後方から追い縋る獣型モンスターを倒していくナオ。

 バイク組は、車の前から迫るモンスターを倒してくれていた。

「ユイとクマムはさすが」

 車の屋根からだと、あの二人の技量がよく分かる。

 バイクをシレイアとナノカが操縦し、相乗りしている二人が次々とモンスターを倒していた。

 ヨシノとユリカのコンビも奮闘しているけれど、あの二組に比べるとね。

「車は暴走族エリアを通れないって制約があったけれど、これならどうとでもなりそう」

 向こうの方が旨味があるから一人でも多く行かせたかったけれど、車だけだとモンスターの群れに対処しづらいからね。

「“混沌魔法”――カオスレイ!!」

 前方の遠くから迫る、超大型モンスターを葬り去る。

「メルシュ、取り敢えずモンスターは全滅したみたいだぞ!」

 運転席のフェルナンダが教えてくれる。

「了解! ……さて、あと何回襲撃があるかな」

 まあ、ジュリー達よりは遥かに安全だろうけれど。

 なにせ向こうは、こっちと違ってね。


●●●


「なんか、都市内と外で代わり映えしないな」

 実験都市からダンジョン部分へと八人で進み始めて間もなく、エリューナさんが呟く……なんだかウンザリしてそう。

 まあ、この青黒い毒々しいヘドロは、私でも見ていて気分が悪いですけれど。

 それに、若干腐臭のような物がしますし。

「まあまあ。それにしても、この粘液のどこに“死活液”を使えば良いのか、見た目じゃ判りませんね」

「そこだよ、マスター。あの部分だけ、他のところよりも少し黒っぽいだろ」

 エルザが教えてくれる。

「なるほど」

 言われてみると、見える範囲に何カ所か色が濃い場所があった。

「じゃあ、早速」

 “マルチギミック薬液銃”に、“死活液”をセットする。

「ブリッツモードで少しずつ撃った方が、薬液の消費を抑えられる」

「了解」

 試しにピュン、ピュンとちょっとずつ撃ってみた。

 すると、粘液が溶けるように消えていく。

「なんとなく解ってきた」

 三発目で宝箱……アタッシュケース? の一部が見えたため、予測して宝箱に付いた粘液を綺麗に消すように撃つ。

 すると、全ての粘液が消えたと言わんばかりにアタッシュケースが一瞬輝き、勝手にバカッと開いた。

「なにこれ?」

 薬液銃っぽい透明な部品が多い銃みたいだけれど、変わった形をしている。

○“倍増薬液ランチャー”を手に入れました。

「リボルバーランチャーみたいだな」
「グレネードランチャー版の薬液銃ですね。一発で一瓶分の薬液を使用してしまう代わりに、撃ち出される薬液の量は二瓶分になります」

 コセ君とナターシャが教えてくれる。

「あらかじめ六発分の瓶を装填できて、別種類を使い分けることが出来るAランクだ。強敵や集団用にちょうど良いだろうな。散布範囲が広いし」

「なるほど」

 薬液が勿体ないけれど、試し撃ちしてみたいな。

 どんな武器もそうだけれど、銃は精密な分、クセを掴んでおかないといざという時に狙いを外しかねない。
 
「武器が増えてきたし、保留にしてた腕輪選択はサブ武器にしようかな」

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