ダンジョン・ザ・チョイス

魔神スピリット

403.緑人魚のグダラ

「“真空魔法”――バキュームレイド!!」

 魔法使いと思われる男が放ってきたのは、無数の鎌鼬か。

「回遊魚雷!」

 その他装備の“回遊魚雷群”を展開――四つの黒魚雷を発射して、鎌鼬を爆風で消し飛ばす!

「これで終わりだ! “緑雷魔法”――グリーンスプランター!!」

「無駄だっつの! “真空魔法”、バキューム!!」

 私の緑雷が、再び真空の渦に吸い込まれていく。


「“緑雷銛術”――グリーンサンダーハープン!!」


 真空の渦が消えた瞬間、投げた“ザ・テンペスト・トライデント”が男の左腕を消し飛ばす。

「があああああッッ!!! き、汚ーぞ!!」

「最初に二対一で仕掛けてきておいて、なにが穢いだ」

 ユニークスキル持ちだったらしいが、戦闘センスの差が出たな。

「ち、ちくしょう!! 来い――雷禍の千狐!!」

 紫の雷纏う、凶悪そうな七尾の狐を指輪から召喚する男。

「その魚女を喰らい尽くせぇッッ!!」

 腕が吹き飛ばされたことを、みっともなく逆恨みしないで欲しいな。

「武器交換――“赦しを請いし蛇蠍ども”」

 戻ってきた“ザ・テンペスト・トライデント”を、蛇と蠍の意匠がある禍々しい緑黒いトライデントに持ち替える。

 飛び交う七つの尾と鋭い爪の攻撃を、“ストームバックラー”で去なしながら上へと逃れ――急降下!!

「“颶風衝撃”!!」

 “ストームバックラー”の効果で地面のプレートに押し潰すように発動し、動きを止めた!

「“真空魔法”――バキュームレイドッッ!!」

 腕の復元途中で攻撃を仕掛けてきた根性だけは――認めてやる!

『キャウーーンッ!!』

 狐を盾にし、その隙に――“赦しを請いし蛇蠍ども”に神代文字を三文字刻む!!


「“緑雷槍術”――グリーンサンダーチャージ!!」


 倒れ掛けた狐の腹部にエネルギーを展開した状態で激突し――槍を突き立て、そのまま男へと突っ込んでいく!

 この狐は、果たしてバキュームで吸い込めるか?

「く、クソぉぉぉぉぉぉ!!」

 狐の背が男に激突し、その狐が纏う雷に焼かれ……命を落とした。

「せっかくのユニークスキルも、宝の持ち腐れだったようだな」

 私か私の仲間が、上手く使ってやる。


○○○


「俺達の邪魔をするなよ、女!!」

 杖を振る度に、かなりの勢いで飛んでくる重い黒球体。

「ああ、もう! 邪魔!」

 “栄光の杖”を捨てて、右手で“ドラゴンナックルバスター”を握る!

「“氷炎の共演”」

 青と赤に彩られた左腕の甲手、“氷炎の共演に魅せられよ”から氷粉と火花を放出する!

「食らえ! ――“氷炎の狂情”!!」

 右腕の装身具、“氷炎の感情を思い知れ”から、炎と冷気の弾が螺線を描きながら飛んでいく!

 そこに、放出した氷粉と火花を注ぎ込んで強化!

「“大鉄球術”――ハイパワーボール!!」

 私の攻撃を正面からぶち抜いて、そのまま迫ってくる――チャンス!!


「お――らぁぁぁぁああああああッッッ!!!」


 “ドラゴンナックルバスター”と“氷炎の共演に魅せられよ”で挟み込み、そのまま後退させられるも――掴まえた!

「”青光吻”!!」

 右手に青の杭を纏い、神代文字の力を流し込んで強化――黒球体に亀裂を入れる!!

「ふ、ふざけんな!! 俺のSランク武器だぞ!!」

 球体を戻そうと杖を引いた瞬間、逆らわずに私から接近!!

「て、テメーはくんな!!」


「“氷炎拳”――アイスフレイムナックル!!」


 “ドラゴンナックルバスター”に纏わせた氷炎を男の顔面に叩き込み……頭部を消し去った。

「ハアハア……私、魔法使いだけれど接近戦の方が向いてるかも」

 前に出るのは怖いとか思ってたけれど……そのうち、誰かに教わってみようかな?


●●●


「……強い」

 レプティリアンが乗る金属の人形を、完全に圧倒しているミユキさん。

「チ! 動きは雑魚なのに、無駄に硬い!」

『ざ、雑魚だと!! ノルディック風情が粋がるな!!』


「私は虚勢が嫌いだ――”焱竜砲”!!」


 刃が生えたランスに刻まれた神代の九文字より、光が炎龍の中へ吸い込まれて威力を増大させた!

『ど……どうし……て……――』
「凄い……」

 圧倒的な火力で、終始優勢に勝負を決してしまうなんて。

「ハアハア、ハアハア!」

「ミユキさん!?」

「ハアハア、問題ありません。連戦だったのと、神代文字を使いすぎただけで……」

「すみません、手助け出来ず」

「私がそういう戦いをしたのです。チップを手に入れるために。フフ」
「あ……なるほど」

 すっかり魅入ってしまって、この大規模突発クエスト最大の目的を忘れてしまっていました。


●●●


「ハアハア」

『まだ粘るのか、このドイツ人!』
『いい加減にしてほしいな』

 レプティリアンのマシーンが二体……さすがに荷が重いかdk3gj。

 盾と剣に同時に刻んだ十二文字はすぐに九文字に戻したが……そろそろ私の精神力も限界。

「だったら……」

 “ヴリルの祈りの聖剣”を、“ヴリルの聖骸盾”に収め――“抜剣”。

『外した瞬間に終わりだぞ、女』
『さて、一撃で二体同時に始末できるかな?』

「関係ない――死んでも、一体は確実に仕留めるつもりだからな」

『これだから高周波の人間は!』


「“二重魔法”――“光線魔法”、アトミックシャワー!!」


 光線の雨が、二体のマシーンに直撃する!

「今よ、ルイーサ!!」
「ナイスだ、アヤナ!」

 まさか、この土壇場でアヤナに助けられるとは!


「“聖水剣術”――セイントスラッシュ!!」


 瞬間的に十二文字引き出し、銀色の障壁ごと――無傷な方のマシーンを両断して見せた!

『この――くたばれぇぇ!!』

 光に変わり始めながら――背部からミサイルを撃ち出しただと!?

 しかも、そのミサイルの向かう先は――アヤナ!!

「“鞭化”――“水銀鞭術”、マーキュリーラッシュヒット!」

 銀の鞭がミサイルを瞬時に叩き落とし、アヤナの窮地を救う!

「さすがアオイ」

「ありがとう、アオ――」
「――姉ちゃんッ!!」

 アオイがアヤナを突き飛ばした次の瞬間、私が片腕をぶった切った奴の剣が――アオイの胸から下腹部までを……貫いた。

「アオ……イ?」
「姉ちゃ……逃げ」

 私が両断したマシーンが消えるよりも早く――アオイが……光になって…………消えた。

『……ク、フハハハハハハ!! 《龍意のケンシ》メンバーを、この俺が一人始末したぞぉぉぉ!! ハハハハハハハハハッッ!!』

「アオイ……お前……本当に」

 本当に……死んだ? こんな……アッサリと?


「――ぁぁぁぁぁぁあああああああああッッッッッッ!!!」


 アヤナの絶叫が、アオイの死が現実なのだと……麻痺していた私の頭に、嫌でも理解させてくれた。

 身体から……力が抜けて……。

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