ダンジョン・ザ・チョイス
305.浮浪児専用装備
「不気味だな」
11:11分の重大発表が終わったのち、神秘の館の外を見ると……不気味な黒い靄が空で蠢いていた。
「アップデート中は、ずっとあの靄があるままみたいだよ。触れたらなにが起きるか分からないから、絶対に近付かないようにね」
メルシュが、全員に警告する。
「外に出るのもまずいってこと?」
「一日中、家の中ってのはな」
アヤナは不安げで、ザッカルはげんなり気味。
「久しぶりの再会なんだし、一日中コセに可愛がって貰えば良いじゃないか」
シレイアがとんでもない事を口にする!! モモカだって居るのに!
「なるほど、その手があったか」
「あ、僕もお願いします」
「私も……見学だけでも良い」
ザッカルとノーザン、ユイまで乗っかってしまう!
「ハイハイ、そういうのは後でね。ちなみに、陸の縁に近付かなければ問題ないと思うよ。まあ、出来れば家から離れない方が良いだろうけれど」
良かった。メルシュが話を戻してくれた。
「どうせ暇だし、皆が各ステージで手に入れてきてくれたアイテムやスキルカードを、今から分配するから。シレイア、レリーフェを呼んできてくれる?」
「了解。ついでに、靄には近付くなってエルフ共に警告しておくかね」
「念のため、私も行こう」
シレイアとフェルナンダが出ていく。
「まずは、アヤナとアオイにこれをあげる」
そう言ってメルシュが二人に差し出したのは、頭に鳥が止まっている二本の銀杖。
「良いの?」
「私、戦士だけれど?」
アヤナは魔法使いだから良いとして、戦士のアオイに杖を渡してもな。
「この杖は、戦士でも装備可能だよ。それに」
メルシュが一本の杖をアヤナに渡したのち、手首を捻ってもう一本の杖の中から刃を顕わに。
仕込み刀みたいだ。
「“双銀鳥の仕込み杖”、Aランク。同じパーティー内で魔法使いと戦士で装備すると、ほぼ全ての性能が上がるよ。アオイは魔法と色んな武器をバランスよく使うし、二人にピッタリだと思う」
出来過ぎなくらい、アオイとアヤナに都合の良い武器だな。
「色んな武器をって……どういうこと?」
「それはね」
メルシュが、アオイに杖の使い方のレクチャーを始める。
「マスター。これ、カナさんが手に入れたスキルカードです」
ヨシノがユリカに、二枚のスキルカードを渡した。
「私が貰って……て、もしかしなくても、煉獄系?」
「さすがに、お気づきになりましたか」
もはや、ユリカと言えば煉獄、煉獄と言えばユリカっていうイメージがあるくらいだからな。
「スゥーシャさんにはこれです」
ターバンを巻いた黒髪ショートの隠れNPC、テイマーのサキが、スゥーシャにスキルカードと綺麗な……鰭? を渡す。
「これは……姉さんの鎧に雰囲気が似ている?」
昔見た、鰭がボロボロになったイルカかなにかのために作った物みたいだ。
水で出来ているような感じが、魔の海域を脱出せよで手に入れたあの剣に似ている。
「その他の装備欄で使ってください」
「わ、分かりました」
「マスター、この“携行のベルト”を使ってみない?」
「へ? 良いけれど……その他が埋まってしまっているな」
「代わりに、“武器隠しのマント”をアオイに譲って欲しいと思ってて」
アオイは、色んな種類の武器を使うもんな。
武器変更のシステムでは、メインかサブ武器にセットした物の中から、同じ種類の武具としか交換出来ないし。
「分かった」
“武器隠しのマント”を渡して、“携行のベルト”を装備。
「そのベルトには、武具を磁石みたいに吸着させられる効果があるから」
「本当だ」
背中に、“サムシンググレートソード”をくっ付けられた。
ザッカルの鎧に備わっている効果と同じのか。
「コッチの方が、しっくり来るかもしれない」
マントは、稀に邪魔に感じることもあったし。
「アオイ、これを使って」
「あいよ」
さっそく装備し、身じろぎして黒いマントをヒラヒラさせるアオイ。
そう言えばあのマント、連続殺人鬼の槍男が使っていた物だったな。
「男の人のお下がり……ちょっと照れる」
本当に照れているのかどうか判らない感じで発した言葉に、ちょっとドキッとしてしまった。
「……そうだ」
俺も、人に渡す物があったんだ。
「ルイーサ」
「うん?」
青い水が入ったような透き通る剣を実体化させ、同じ大剣使いである彼女に渡す。
「“ザ・ディープシー・カリバーン”、Aランク。水属性の聖剣らしい。詳細は、後でメルシュにでも聞いてくれ」
「あ、ありがとう……コセからのプレゼント」
ルイーサの頬が赤い気が……そう言えば、あれからまだ返事を聞いていない。
離れている間に、新たに五人に手を出してしまったこと……ルイーサは知っているのか?
「ノーザンにはコレを」
「両刃の斧ですか」
船上で、モンスターにされた男が使っていた斧を渡すヨシノ。
「”ザ・ディープシー・ラビュリス”、Aランク。見たとおりの水属性です。それとこちら、”ブレイクラッシュアックス”、Aランク」
くすんだ緑色の大斧で、柄が一メートル程。
「斧と鎚どちらとしても使え、鎚側に鎚を叩き込む事で、斧の刀身側にて、増幅したエネルギーを炸裂させることも可能です」
「それは……面白い使い方が出来そうですね」
ノーザンの不適な笑みが怖い。
「タマさん、こちらをどうぞ。“蒼穹王の指輪”です」
名前からして、蒼穹系の攻撃を強化する装備か。
「ありがとうございます、ヨシノさん!」
「そう言えば、モモカちゃんに渡す物があったんでした」
カナさんが、六枚の黄金色の翼を実体化させた?
「これ、モモカにくれるの?」
「うん。そのために競り落としたんだもの」
「ありがとう、カナ!」
とても無邪気に笑うモモカ。
その様子を見ていたノーザンは、少し申し訳なさそうにしていた。
「モモカ……ますます可愛くない装備ばかりに」
「あのトゲトゲの首輪も、どうにか出来ませんかね……ハァー」
相変わらず、モモカを着せ替え人形かなにかだと思いたいらしいな、ジュリーとサキは。
「モモカ、バニラに渡したい物があるから、意思疎通を図ってくれる?」
「良いよー」
言葉が喋られないバニラに、なにを渡すつもり……と思ったら、アテル達と交換した“超赤竜の裂孔脚”に、アルファ・ドラコニアンが使用した“愚劣な無我の境剣”を実体化させた!?
下半身を覆うような鋭いつま先と尻尾が付いた脚甲に、先端が丸味を帯びた鮮やかな赤い大刀。
「そうか、あの剣を装備するとスキルを発動できないけれど……」
言葉を発することが出来ないバニラには、そんなデメリットなんて最初からあって無いような物。
「もしかして、脚甲の方にもその剣と似たようなデメリットが?」
「うん。コッチは身体能力強化に特化している分、攻撃的な武具効果を発動できないんだよね」
強力だけれど、バニラにしか使いこなせそうにないな。
「アウー!! アウアウアウー!!」
「これは……喜んでるのか?」
装備すると同時に、はしゃぎだしたように見える。
「バニラ、危ないから振り回しちゃメ! お手!」
「アウ!」
モモカが手を差し出すと、瞬時に左手を乗っけるバニラ。
……一発で大人しくさせちゃったよ。
「マスター。もしかしてモモカちゃんは、私に憧れてバニラを飼いだしたのでは?」
「へ?」
サキ。それはバニラに対して、いくらなんでも失礼すぎるだろう。
11:11分の重大発表が終わったのち、神秘の館の外を見ると……不気味な黒い靄が空で蠢いていた。
「アップデート中は、ずっとあの靄があるままみたいだよ。触れたらなにが起きるか分からないから、絶対に近付かないようにね」
メルシュが、全員に警告する。
「外に出るのもまずいってこと?」
「一日中、家の中ってのはな」
アヤナは不安げで、ザッカルはげんなり気味。
「久しぶりの再会なんだし、一日中コセに可愛がって貰えば良いじゃないか」
シレイアがとんでもない事を口にする!! モモカだって居るのに!
「なるほど、その手があったか」
「あ、僕もお願いします」
「私も……見学だけでも良い」
ザッカルとノーザン、ユイまで乗っかってしまう!
「ハイハイ、そういうのは後でね。ちなみに、陸の縁に近付かなければ問題ないと思うよ。まあ、出来れば家から離れない方が良いだろうけれど」
良かった。メルシュが話を戻してくれた。
「どうせ暇だし、皆が各ステージで手に入れてきてくれたアイテムやスキルカードを、今から分配するから。シレイア、レリーフェを呼んできてくれる?」
「了解。ついでに、靄には近付くなってエルフ共に警告しておくかね」
「念のため、私も行こう」
シレイアとフェルナンダが出ていく。
「まずは、アヤナとアオイにこれをあげる」
そう言ってメルシュが二人に差し出したのは、頭に鳥が止まっている二本の銀杖。
「良いの?」
「私、戦士だけれど?」
アヤナは魔法使いだから良いとして、戦士のアオイに杖を渡してもな。
「この杖は、戦士でも装備可能だよ。それに」
メルシュが一本の杖をアヤナに渡したのち、手首を捻ってもう一本の杖の中から刃を顕わに。
仕込み刀みたいだ。
「“双銀鳥の仕込み杖”、Aランク。同じパーティー内で魔法使いと戦士で装備すると、ほぼ全ての性能が上がるよ。アオイは魔法と色んな武器をバランスよく使うし、二人にピッタリだと思う」
出来過ぎなくらい、アオイとアヤナに都合の良い武器だな。
「色んな武器をって……どういうこと?」
「それはね」
メルシュが、アオイに杖の使い方のレクチャーを始める。
「マスター。これ、カナさんが手に入れたスキルカードです」
ヨシノがユリカに、二枚のスキルカードを渡した。
「私が貰って……て、もしかしなくても、煉獄系?」
「さすがに、お気づきになりましたか」
もはや、ユリカと言えば煉獄、煉獄と言えばユリカっていうイメージがあるくらいだからな。
「スゥーシャさんにはこれです」
ターバンを巻いた黒髪ショートの隠れNPC、テイマーのサキが、スゥーシャにスキルカードと綺麗な……鰭? を渡す。
「これは……姉さんの鎧に雰囲気が似ている?」
昔見た、鰭がボロボロになったイルカかなにかのために作った物みたいだ。
水で出来ているような感じが、魔の海域を脱出せよで手に入れたあの剣に似ている。
「その他の装備欄で使ってください」
「わ、分かりました」
「マスター、この“携行のベルト”を使ってみない?」
「へ? 良いけれど……その他が埋まってしまっているな」
「代わりに、“武器隠しのマント”をアオイに譲って欲しいと思ってて」
アオイは、色んな種類の武器を使うもんな。
武器変更のシステムでは、メインかサブ武器にセットした物の中から、同じ種類の武具としか交換出来ないし。
「分かった」
“武器隠しのマント”を渡して、“携行のベルト”を装備。
「そのベルトには、武具を磁石みたいに吸着させられる効果があるから」
「本当だ」
背中に、“サムシンググレートソード”をくっ付けられた。
ザッカルの鎧に備わっている効果と同じのか。
「コッチの方が、しっくり来るかもしれない」
マントは、稀に邪魔に感じることもあったし。
「アオイ、これを使って」
「あいよ」
さっそく装備し、身じろぎして黒いマントをヒラヒラさせるアオイ。
そう言えばあのマント、連続殺人鬼の槍男が使っていた物だったな。
「男の人のお下がり……ちょっと照れる」
本当に照れているのかどうか判らない感じで発した言葉に、ちょっとドキッとしてしまった。
「……そうだ」
俺も、人に渡す物があったんだ。
「ルイーサ」
「うん?」
青い水が入ったような透き通る剣を実体化させ、同じ大剣使いである彼女に渡す。
「“ザ・ディープシー・カリバーン”、Aランク。水属性の聖剣らしい。詳細は、後でメルシュにでも聞いてくれ」
「あ、ありがとう……コセからのプレゼント」
ルイーサの頬が赤い気が……そう言えば、あれからまだ返事を聞いていない。
離れている間に、新たに五人に手を出してしまったこと……ルイーサは知っているのか?
「ノーザンにはコレを」
「両刃の斧ですか」
船上で、モンスターにされた男が使っていた斧を渡すヨシノ。
「”ザ・ディープシー・ラビュリス”、Aランク。見たとおりの水属性です。それとこちら、”ブレイクラッシュアックス”、Aランク」
くすんだ緑色の大斧で、柄が一メートル程。
「斧と鎚どちらとしても使え、鎚側に鎚を叩き込む事で、斧の刀身側にて、増幅したエネルギーを炸裂させることも可能です」
「それは……面白い使い方が出来そうですね」
ノーザンの不適な笑みが怖い。
「タマさん、こちらをどうぞ。“蒼穹王の指輪”です」
名前からして、蒼穹系の攻撃を強化する装備か。
「ありがとうございます、ヨシノさん!」
「そう言えば、モモカちゃんに渡す物があったんでした」
カナさんが、六枚の黄金色の翼を実体化させた?
「これ、モモカにくれるの?」
「うん。そのために競り落としたんだもの」
「ありがとう、カナ!」
とても無邪気に笑うモモカ。
その様子を見ていたノーザンは、少し申し訳なさそうにしていた。
「モモカ……ますます可愛くない装備ばかりに」
「あのトゲトゲの首輪も、どうにか出来ませんかね……ハァー」
相変わらず、モモカを着せ替え人形かなにかだと思いたいらしいな、ジュリーとサキは。
「モモカ、バニラに渡したい物があるから、意思疎通を図ってくれる?」
「良いよー」
言葉が喋られないバニラに、なにを渡すつもり……と思ったら、アテル達と交換した“超赤竜の裂孔脚”に、アルファ・ドラコニアンが使用した“愚劣な無我の境剣”を実体化させた!?
下半身を覆うような鋭いつま先と尻尾が付いた脚甲に、先端が丸味を帯びた鮮やかな赤い大刀。
「そうか、あの剣を装備するとスキルを発動できないけれど……」
言葉を発することが出来ないバニラには、そんなデメリットなんて最初からあって無いような物。
「もしかして、脚甲の方にもその剣と似たようなデメリットが?」
「うん。コッチは身体能力強化に特化している分、攻撃的な武具効果を発動できないんだよね」
強力だけれど、バニラにしか使いこなせそうにないな。
「アウー!! アウアウアウー!!」
「これは……喜んでるのか?」
装備すると同時に、はしゃぎだしたように見える。
「バニラ、危ないから振り回しちゃメ! お手!」
「アウ!」
モモカが手を差し出すと、瞬時に左手を乗っけるバニラ。
……一発で大人しくさせちゃったよ。
「マスター。もしかしてモモカちゃんは、私に憧れてバニラを飼いだしたのでは?」
「へ?」
サキ。それはバニラに対して、いくらなんでも失礼すぎるだろう。
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