ダンジョン・ザ・チョイス

魔神スピリット

296.姉妹の死闘 星辰の災火


「「――ハァァァッッ!!!」」


 お互いに”ワッカカムイ”と神代文字の力を練り上げ、その手の銛をぶつけ合う私とキジナ姉さん!!

 このままじゃ埒が明かない!

「装備セット2――”幻影の銛群”!!」

 もう一つの銛である”ファンタズムハープン”をこの手に出現させ、六つに分裂させて飛ばす!!

 更に、神代文字の力を流しこんて強化――超速を付与する!!

「装備セット2」

 キジナ姉さんが、青い大弓を装備した?

 姉さんは、弓なんて使えなかったはず。

「へ?」

 私の”幻影の銛群”を避けながら、自身の弓に銛をつがえた!?


「”深淵弓術”――アビスシュート!!」


 高速で空を泳ぎながら――神代文字の力も合わせた藍色の水流が、私の六本の銛全てを射り消してしまう!!

「アテル達から貰った”銛撃ちの水神弓”、Sランク。水属性の弓術を劇的に強化してくれるが、連続で放てないのが難点か」

 姉さんも、Sランク武器を持っていたんだ。

「お前の銛は神代文字に対応しているようだし、私が貰い受けてやろう」

「いつもいつも、勝手な事ばかりッ!!」

 この場で、私が姉さんを終わらせる!!

 ――”天の白河は流れる”に九文字が刻まれ、銛が形状を変えていき――”天の激流の白河”へ!!

 一回り大きくなり、穂先には黄金の意匠が生まれる!

「武具を、今の己に最適化させたか……王族であった私達がどちらもこの世界に送り込まれたのは、やはりそういう事だったというわけだ」

「訳の分からない事を!! 装備セット1」
「フッ! 装備セット1」

 お互いにSランク武器を消し、再び銛同士をぶつけ合う!!

「ク!! 三文字違うだけで、ここまでの差がッ!!」

 これなら――行けるxj3kd3!!

「”深海猛進”!!」

 スキルで、文字の差を埋めるつもり!?

「”渦の障壁”!!」

 本来はガードに使うスキルを至近距離で使用し――姉さんの勢いを殺す!!

「しま!!」


「――アアあああああああッッッz3dj3ps!!!」


 私の銛が――姉さんの胸を貫いた。

「ハアハア、ハアハア」

 姉さんを……この手で…………私が殺したッ!!

「まさか、ろくに覚悟なんて持っていなかったお前に……本当に胸を貫かれるとはな」

 聞こえてきた姉さんの声は、なんだか世間話をするような軽さがあって……へ?

「生き……てる?」

 銛はちゃんと刺さって……る部分の周りが、白く発光している?

「レギオンが同盟を組んだのかもな。同盟者同士では殺せないと聞いたことがある」

「…………」

「おい、さっさとこれを抜け。痛くはないが、圧迫されてる感じで気持ち悪いんだ」

「――ぁぁぁぁぁぁああああ!!」

「……おい」

 姉さんに抱き付いて……泣いていた。

「生きてで……良がっだぁぁぁぁぁぁああッッッ!!」
「……まったく、泣き虫は治ってなかったか」
「うるさいぃぃぃ゛ぃ゛ぃ゛」


●●●


「チ! しつこい奴等だ」

 ”隕石魔法”を使った鎧の男を追っていたら、かなり開けた場所に出た。

「ここなら良いだろう」

 男がその手に、円盤にコの字の握りが付いた赤いアイテムを!

 武器として使用する類いには見えないけれど、円盤内側部分に夜空のような物が浮かんでいる?

「ソイツになにもさせるな!」

 レリーフェの掛け声の元、エルフの弓持ちが矢を射り、槍や剣を持った者が囲もうとする。

「”正しき刻み”」

 円盤の中の星々が蠢いて――爆発的な炎が男の周囲に広がっていった!?

「「「”暴風壁”!!」」」

 エルフ達が風で炎に耐えようとするも、凄まじいエネルギーに押し負けてしまう!!

「一撃で……戦闘不能に」

 誰も死んでは居ないようだけれど、戦えるような状態じゃない。

「お前達は撤退しろ! 私が殿しんがりを務める!」

「追いかけ回しておいて、落とし前着けねーつもりかー? こっちは、Sランクの”星辰の円盤”まで使わされたんだぞ?」

「ランクを知ってる?」

 てことは、アイツはオリジナルプレイヤーか、その手の情報を知っている仲間が居るって事に。

「知ったことか!!」

 レリーフェの弓に、神代文字が三つ刻まれた!?

「おい、しっかりしろ!」
「どうしたの?」
「彼女が動かないんだ!」

 女性のエルフがうずくまったまま動けないようで、回復魔法を掛けようと駆け付ける。

「……酷い」

 左眼を抑えて……身体の左側が焼け爛れていた。

 短時間での治療は不可能。でも、ここに留まるのは危険すぎる。

 こんな時、コセなら――

「これを!」

 ”賢者”のサブ職業のメダルを実体化し、男のエルフに渡す!

「へ?」
「向こうで彼女を治療して!」

 手に入れておいた”逆転の紋章”を使って、二人をゲームから退場させる!

 どちらも私の奴隷にしたから、同じ空間に転送されたはず。

 転送先がどうなっているか分からないけれど、少なくともここよりは安全。


「”風光弓術”――シーニックアロー!!」


 神代文字の力を乗せた矢を射り、攻撃し続けるレリーフェ。

「”超高速”」

 一瞬、鎧が輝いて――男が消えた!?

「”紅蓮魔法”――クリムゾンブラスター!!」

「しま――」

 レリーフェの背後に!

「”魔斬り”!!」

 ”煉獄は罪過を払いけり”の爪部分で、紅の熱線を切り裂く!

「お前が一番厄介だなー、おっぱい眼鏡!」
「そういう卑猥な特徴の捉え方しか出来ないの? スケベオヤジ」

 近場で見ると、男は三十代手前くらいに見える。

「俺は古参組だぞ。敬えよ、オーイ」
「年上だからって、偉そうにしないでくれる?」

 年齢だけで上下を決めたがるとか、承認欲求の塊かっての!

「俺のLvは、魔法使い53。どうだー? 参ったかよー!」

 てことは、私より10は上か。

「て、嘘つけ! 魔法使いなのに、なんで鎧を装備できんのよ!」

「知らないってことは、貴様のLvは45以下のようだなー!」

 つまり、魔法使いでも46で鎧を装備可能になるってわけか。

 まあ、ジュリー達は当然、知っていたんでしょうけれど。

「多少のLv差くらい、知恵と技量、神代文字で覆して見せる!」

 今の話を聞いても怖じ気づかないって事は、レリーフェってかなり強い?

「あの訳の分からないチート能力でか。インチキしてんじゃねーぞ! この鎧だって、Sランクの装備なんだからなー!」

 さっきの高速移動も、Sランク装備の効果ってわけか。

「ユリカさん!」

 タマが、槍の噴射で駆け付けてくれた!

「な……この獣人もチート能力使いかよ!」

 タマが槍に文字を刻んでいるのを見て、男が怯えだした?

「言っておくけれど、私の仲間のほとんどが、アンタの言うチート能力使いだから」

 神代文字を操る力を、チート能力なんて陳腐な言葉で片付けて欲しくはないけれどね。

「……く! ここは退いてやる! ――”超高速”!!」

 男の気配が、凄まじい速度で遠ざかって行くのが判……る。

「ハァー、ハァー!」

「ユリカさん!?」

 やっぱり……十二文字は……キツかったかも。

「おい、大丈夫か!」
「動けるうちに……」
「て、貴様!!」

 レリーフェに最後の”逆転の紋章”を使って、強制的に私の奴隷にした。

 あとでお金払うの勿体ないし……別に良いでしょ。

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