ダンジョン・ザ・チョイス
291.突発クエスト・逆転奴隷堕ち
「あら、凄いわね」
腐敗の王都に転移した直後に見えたのは、荘厳な街並みと……都市中央に聳える立派な煉瓦造りのお城。
というか、外壁も家々も煉瓦造りのようね。
そう考えると、なんだか重苦しく感じてきたわ。
「サトミ、私とクリスで先行して安全を確保しようと思うが、構わないか?」
メグミちゃん。モモカちゃんが居るから、いつも以上に安全に気を遣っているのかしら?
「なら、リンピョンちゃんも一緒に――」
『これより~、突発クエスト・逆転奴隷堕ちを始めるぞ~』
息苦しそうな低音ボイスが響いた瞬間――私達の身体がまた光に!!
「……うそ」
見渡す限りの煉瓦造りの街並み……空が、汚い虹色に覆われていく?
「あれ?」
綺麗な青空に戻った?
「ここ……もしかして、腐敗の王都内に強制的に転移させられた?」
しかも、リンピョンちゃん達がどこにも居ない!!
「パーティーメンバーから引き離された……しかも」
足が引っ付いて離れない!
『あー、今から~、ルールの説明を始める~』
この声の持ち主、絶対に重度の肥満ね。聞いているだけで、こっちが息苦しくなってくるような声だわ!
『現在この街に居る人間達の~、奴隷所持者と奴隷の関係性を逆転させた~』
「それになんの意味が……」
『奴隷所有者の額には~、本来胸にある奴隷の紋様が浮き出ている~。額を隠しても奴隷紋は透けて見えるようになっているから~、無駄な足掻きだぞ~』
私は隠れNPC扱いのクリスちゃんと契約しているから、きっと額から浮き出ているんでしょうね。
『逆に~、奴隷は胸元から奴隷紋が消えている~。主従が逆転している状況だから~、今まで奴隷側だった人間が~、好きに命令することが出来るぞ~!』
「うっわ~」
露骨に、内部分裂を煽ってくるわねー。
『だがしかし、クエストが終われば元の関係に戻ってしまう~。そこで~、今だけの特別ルール~。元主が死ねば~、生きたまま奴隷から解放してやる~』
奴隷さんと良好な関係を築いていない人達は、首を締められる事になるでしょうね~。
『クエストの説明は~、ここからが本番~。ゲームが開始されると~、この街の奴隷商館に居る奴隷達が解き放たれる~』
「奴隷?」
『商品のエルフ共には~、今回に限りAランク武器を持たせている~。殺せば~、そのAランク武器を手に入れられるぞ~』
これまた、露骨に人殺しを煽ってくるのね。
「て、エルフ?」
この街には、エルフが売られているの?
『それ以外の奴隷は~、元々の装備を使わせる~。奴等には~、奴隷になっているプレーヤーを殺せば~、奴隷から解放すると説明してあるぞ~。パーティーを組んでいれば~、メンバー全員が解放されるともな~』
つまり、自由を手にするために、私のような奴隷持ちを初対面でも狙ってくると。
奴隷の主が、圧倒的に不利になるルールじゃない。
『というわけで~――ゲームスタート~~!!』
「急いで、皆と合流しないと……あれ、まだ動けない?」
『うん~、なんで始まらんのだ~?』
向こうにとっても、想定外の事態?
『なに、説明不足~?』
「そう言えば、どうなればクエストが終わるのか聞いていなかったわね」
『お~、そうだった~! このクエストは~、元奴隷か元奴隷の主~、どちらかが半分になるまで終わらん~』
「なら、私とクリスちゃん以外は狙われづらい……はず」
心無い人間に、モモカちゃんが狙われなきゃ良いけれど。
『ちなみに~、街の至る所に宝箱を配置した~。開けられるのは~、元奴隷か元主のみ~』
「奴隷に関係ない人間は、ほとんど蚊帳の外って感じね」
『その中には~、突発クエスト限定アイテム~、”逆転の紋章”という~、消費アイテムがある~』
「”逆転の紋章”?」
『元奴隷の主のみが使用でき~、元奴隷を誰でも~、自分の奴隷として隷属させられる~。その際~、奴隷に戻された者はクエストから退場~。クエスト終了後に~、堕とした人間の奴隷となる~。つまり~、タダで見目の良いエルフが手に入るぞ~。高値のエルフがな~!』
どこからか、下卑た男女の声が聞こえてくる。
うっわー、とっっっても――ぶっ殺したくなってくるわね~!!
でもこれ、下手をしたらクリスちゃんが他の人間に取られちゃう可能性も……。
「ルールを知れば知るほど、胸糞な気分になってくるわ」
『おっと~、今更奴隷解除はできんぞ~。このクエストが終わるまではな~』
誰かが、契約を解除しようと試みたのかしら?
私の場合は隠れNPCだから、解除するという選択肢がそもそも無いのだけれど。
『ゴミが……一人の人間が奴隷に出来る数は~、無制限だ~』
今この人、私達をゴミ呼ばわりしたわよね?
『奴隷はあとから売り払う事も出来るから~、思う存分堕としまくるが良い~』
……マズいわ、おトイレに行きたくなって来たかも。
『城以外の家屋には自由に出入りができ~、屋内にも宝箱は出現している~。そうそう、奴隷に戻された人間の主がクエスト中に死んだ場合~、売り物の奴隷は奴隷商館に戻るだけだ~、安心しろ~』
「今更だけれど、生殺与奪の権利を他人に預けるなんて……気持ちの良い物じゃないわね」
クリスちゃんは、まったく気にしていなかったのかしら?
『それでは~、今度こそ――ゲームの始まりだ~ッ!!』
胸糞悪いゲームがスタートすると同時に、私はお手洗いを見付けるべく駆け出す!
●●●
「最悪のゲームだな」
今もっとも危険なのは、サトミとクリス。
モモカも心配だが、バトルパペットも居るし奴隷契約もしていないから、なんとかなるだろう。
「リンピョンが、いち早く誰かと合流してくれれば良いが」
問題は、人を殺さずに、もっとも穏便にクエストを済ませる方法が、元奴隷の主であるサトミに”逆転の紋章”を使って貰うこと。
だが、私やリンピョンでは、”逆転の紋章”が入った宝箱を開けることが出来ない。
「歯痒いルールだ」
私に出来るのは、一刻も早く仲間と合流する事だけか!
「ん?」
剣戟と荒れ狂う風の音を聞いて駆け付けると、そこに居たのは……。
「ねぇ、邪魔なんだけれど」
「うるさいんだよ、異世界人」
「アンタを殺して、俺達は自由になるんだ!」
「悪く思わないでくださいね、美人さん!」
見窄らしい服を着た三人組は、その美貌と耳の長さからエルフの男達と判断できる。
それに相対しているのは……黒昼村でジュリーと戦っていた黒髪ハーフアップの女!
「奴隷を買うような女なんて、とっとと死んでしまえよ!! ”暴風弓術”――ハリケーンアロー!!」
男の放った矢が、彼女の石の甲手に直撃――女が吹き飛ばされる!
「よし、今だ!」
「なあ……殺す前にさ、楽しませて貰おうぜ」
「な、なにを言い出すんですか、貴方は!」
「俺達はデルタの奴等に捕らわれて、こんな所にまで連れて来られたんだぞ? ちょっとくらい良い思いしたって良いはずだろう!」
「……そ、そうだな、このまま殺すだけじゃ面白くない」
「よ、よく見たらこの人、淫乱な顔をしてますもんね。き、きっと娼婦なんですよ!」
娼婦だとして、だからなんなんだよ。
「あ、アンタ達なんかにッ!!」
どこの世界に行っても、ああいう輩は居なくならない物なんだな。
むしろ、顔立ちが綺麗な分、余計に嫌悪感が強い気がするよ。
「おい――やめろ」
「な、なんだ、お前!」
私を警戒し、距離を取ってくれるエルフ達。
「貴女……《龍意のケンシ》の」
「アテル達とは同盟を結んだ。だから、協力させて貰う」
「……心強いわ」
彼女が立ち上がり、バカでかい庖丁を構えた。
「私はサキ。貴女は?」
「メグミだ、ジュリーの姉」
「行くわよ、メグミ!」
「おう!」
肩を並べ、三人の男エルフに仕掛ける!
腐敗の王都に転移した直後に見えたのは、荘厳な街並みと……都市中央に聳える立派な煉瓦造りのお城。
というか、外壁も家々も煉瓦造りのようね。
そう考えると、なんだか重苦しく感じてきたわ。
「サトミ、私とクリスで先行して安全を確保しようと思うが、構わないか?」
メグミちゃん。モモカちゃんが居るから、いつも以上に安全に気を遣っているのかしら?
「なら、リンピョンちゃんも一緒に――」
『これより~、突発クエスト・逆転奴隷堕ちを始めるぞ~』
息苦しそうな低音ボイスが響いた瞬間――私達の身体がまた光に!!
「……うそ」
見渡す限りの煉瓦造りの街並み……空が、汚い虹色に覆われていく?
「あれ?」
綺麗な青空に戻った?
「ここ……もしかして、腐敗の王都内に強制的に転移させられた?」
しかも、リンピョンちゃん達がどこにも居ない!!
「パーティーメンバーから引き離された……しかも」
足が引っ付いて離れない!
『あー、今から~、ルールの説明を始める~』
この声の持ち主、絶対に重度の肥満ね。聞いているだけで、こっちが息苦しくなってくるような声だわ!
『現在この街に居る人間達の~、奴隷所持者と奴隷の関係性を逆転させた~』
「それになんの意味が……」
『奴隷所有者の額には~、本来胸にある奴隷の紋様が浮き出ている~。額を隠しても奴隷紋は透けて見えるようになっているから~、無駄な足掻きだぞ~』
私は隠れNPC扱いのクリスちゃんと契約しているから、きっと額から浮き出ているんでしょうね。
『逆に~、奴隷は胸元から奴隷紋が消えている~。主従が逆転している状況だから~、今まで奴隷側だった人間が~、好きに命令することが出来るぞ~!』
「うっわ~」
露骨に、内部分裂を煽ってくるわねー。
『だがしかし、クエストが終われば元の関係に戻ってしまう~。そこで~、今だけの特別ルール~。元主が死ねば~、生きたまま奴隷から解放してやる~』
奴隷さんと良好な関係を築いていない人達は、首を締められる事になるでしょうね~。
『クエストの説明は~、ここからが本番~。ゲームが開始されると~、この街の奴隷商館に居る奴隷達が解き放たれる~』
「奴隷?」
『商品のエルフ共には~、今回に限りAランク武器を持たせている~。殺せば~、そのAランク武器を手に入れられるぞ~』
これまた、露骨に人殺しを煽ってくるのね。
「て、エルフ?」
この街には、エルフが売られているの?
『それ以外の奴隷は~、元々の装備を使わせる~。奴等には~、奴隷になっているプレーヤーを殺せば~、奴隷から解放すると説明してあるぞ~。パーティーを組んでいれば~、メンバー全員が解放されるともな~』
つまり、自由を手にするために、私のような奴隷持ちを初対面でも狙ってくると。
奴隷の主が、圧倒的に不利になるルールじゃない。
『というわけで~――ゲームスタート~~!!』
「急いで、皆と合流しないと……あれ、まだ動けない?」
『うん~、なんで始まらんのだ~?』
向こうにとっても、想定外の事態?
『なに、説明不足~?』
「そう言えば、どうなればクエストが終わるのか聞いていなかったわね」
『お~、そうだった~! このクエストは~、元奴隷か元奴隷の主~、どちらかが半分になるまで終わらん~』
「なら、私とクリスちゃん以外は狙われづらい……はず」
心無い人間に、モモカちゃんが狙われなきゃ良いけれど。
『ちなみに~、街の至る所に宝箱を配置した~。開けられるのは~、元奴隷か元主のみ~』
「奴隷に関係ない人間は、ほとんど蚊帳の外って感じね」
『その中には~、突発クエスト限定アイテム~、”逆転の紋章”という~、消費アイテムがある~』
「”逆転の紋章”?」
『元奴隷の主のみが使用でき~、元奴隷を誰でも~、自分の奴隷として隷属させられる~。その際~、奴隷に戻された者はクエストから退場~。クエスト終了後に~、堕とした人間の奴隷となる~。つまり~、タダで見目の良いエルフが手に入るぞ~。高値のエルフがな~!』
どこからか、下卑た男女の声が聞こえてくる。
うっわー、とっっっても――ぶっ殺したくなってくるわね~!!
でもこれ、下手をしたらクリスちゃんが他の人間に取られちゃう可能性も……。
「ルールを知れば知るほど、胸糞な気分になってくるわ」
『おっと~、今更奴隷解除はできんぞ~。このクエストが終わるまではな~』
誰かが、契約を解除しようと試みたのかしら?
私の場合は隠れNPCだから、解除するという選択肢がそもそも無いのだけれど。
『ゴミが……一人の人間が奴隷に出来る数は~、無制限だ~』
今この人、私達をゴミ呼ばわりしたわよね?
『奴隷はあとから売り払う事も出来るから~、思う存分堕としまくるが良い~』
……マズいわ、おトイレに行きたくなって来たかも。
『城以外の家屋には自由に出入りができ~、屋内にも宝箱は出現している~。そうそう、奴隷に戻された人間の主がクエスト中に死んだ場合~、売り物の奴隷は奴隷商館に戻るだけだ~、安心しろ~』
「今更だけれど、生殺与奪の権利を他人に預けるなんて……気持ちの良い物じゃないわね」
クリスちゃんは、まったく気にしていなかったのかしら?
『それでは~、今度こそ――ゲームの始まりだ~ッ!!』
胸糞悪いゲームがスタートすると同時に、私はお手洗いを見付けるべく駆け出す!
●●●
「最悪のゲームだな」
今もっとも危険なのは、サトミとクリス。
モモカも心配だが、バトルパペットも居るし奴隷契約もしていないから、なんとかなるだろう。
「リンピョンが、いち早く誰かと合流してくれれば良いが」
問題は、人を殺さずに、もっとも穏便にクエストを済ませる方法が、元奴隷の主であるサトミに”逆転の紋章”を使って貰うこと。
だが、私やリンピョンでは、”逆転の紋章”が入った宝箱を開けることが出来ない。
「歯痒いルールだ」
私に出来るのは、一刻も早く仲間と合流する事だけか!
「ん?」
剣戟と荒れ狂う風の音を聞いて駆け付けると、そこに居たのは……。
「ねぇ、邪魔なんだけれど」
「うるさいんだよ、異世界人」
「アンタを殺して、俺達は自由になるんだ!」
「悪く思わないでくださいね、美人さん!」
見窄らしい服を着た三人組は、その美貌と耳の長さからエルフの男達と判断できる。
それに相対しているのは……黒昼村でジュリーと戦っていた黒髪ハーフアップの女!
「奴隷を買うような女なんて、とっとと死んでしまえよ!! ”暴風弓術”――ハリケーンアロー!!」
男の放った矢が、彼女の石の甲手に直撃――女が吹き飛ばされる!
「よし、今だ!」
「なあ……殺す前にさ、楽しませて貰おうぜ」
「な、なにを言い出すんですか、貴方は!」
「俺達はデルタの奴等に捕らわれて、こんな所にまで連れて来られたんだぞ? ちょっとくらい良い思いしたって良いはずだろう!」
「……そ、そうだな、このまま殺すだけじゃ面白くない」
「よ、よく見たらこの人、淫乱な顔をしてますもんね。き、きっと娼婦なんですよ!」
娼婦だとして、だからなんなんだよ。
「あ、アンタ達なんかにッ!!」
どこの世界に行っても、ああいう輩は居なくならない物なんだな。
むしろ、顔立ちが綺麗な分、余計に嫌悪感が強い気がするよ。
「おい――やめろ」
「な、なんだ、お前!」
私を警戒し、距離を取ってくれるエルフ達。
「貴女……《龍意のケンシ》の」
「アテル達とは同盟を結んだ。だから、協力させて貰う」
「……心強いわ」
彼女が立ち上がり、バカでかい庖丁を構えた。
「私はサキ。貴女は?」
「メグミだ、ジュリーの姉」
「行くわよ、メグミ!」
「おう!」
肩を並べ、三人の男エルフに仕掛ける!
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