ダンジョン・ザ・チョイス
285.魔神・木の葉狸
「”意思疎通の首輪”、Aランク。これまた、変わった物を手に入れたね」
モモカ達とホテルで合流したのち、離れている間に手に入れたという物を確認していたメルシュ。
「どういう物なんです?」
モモカを膝に乗せながら尋ねる。
「同じパーティー内で、”意思疎通の首輪”を装備している物同士で意思疎通が出来るって代物だけれど……あんまし役には立たないかな。補助効果とかもあるけれど」
「あらら」
せっかくモモカが手に入れてくれたのに。
「じゃあ、モモカに頂戴!」
「うーん……売っちゃダメ?」
「やだ!」
宝箱を取り上げられたからなのか、露骨に嫌がるモモカ。
「本当に役に立たない物なのですか?」
「意思疎通を図るから、連携の向上とかも見込めるんだけれど……むしろ雑念を送り合う事になっちゃって、マイナス面が大きいと思う。二人だけの世界に閉じ籠もっちゃって、周りが見なくなる可能性もあるし」
「なるほど」
私とご主人様なら、問題なく使えそうな気がしますけれど。
その場合でも、他の人達との連携に問題が出るかもしれないか。
「そもそも、いずれはそれ以上の事が出来るようになって貰わないと困るし」
メルシュがなにか言っていたけれど、小声過ぎてさすがに聞き取れませんでした。
「なら頂戴! 頂戴! 頂戴! 頂戴!!」
「メルシュ、今回は良いのでは?」
「まあ、なにか上げるって約束したばかりだしなー」
そう言いながら、棘付きの赤い首輪二つをモモカに渡すメルシュ。
「やったー!!」
私の膝から飛び降りて、首輪を掴んでご主人様達の方へ走っていくモモカ。
「この指輪が高かったから、少しでも補填したかったのに。元を取る算段はあるけれど」
「まあまあ。それより、明日にはダンジョンですね」
「他の皆は、もう二十ステージに到着している可能性もあるし……私達は、只でさえ到着が遅れたからなー」
全員、無事だと良いんですけれど。
●●●
「地上へと脱出しようとする異世界の冒険者よ、この扉の先には第十九ステージのボスが待ち受けている」
ボス部屋前の妖精に、途轍もなく久し振りに話し掛けている。
ここの妖精は基本色がブラウンで、四肢の末端だけ緑なんだ。
「ボス攻略に挑むなら、五人パーティーを推奨する。平均Lv37以上が好ましい」
「適性Lv37って、私らのLvなら全然問題ないじゃない」
アヤナがぼやく。
「まあ、あくまでゲーム的な視点からの意味合いだからね。現実で戦うなら、適性Lvよりも高いに超したことはないよ」
マリサが宥めてくれる。
アヤナは、すぐに油断してしまうからな。
「ボスの名前は、魔神・木の葉狸。木の葉を振り撒いてこちらの視界を封じてくる。危険攻撃は、その木の葉を攻撃に使用する”木の葉尖傷”。弱点の炎で簡単に燃やせるはずだけれど、気をつけないとコッチが火傷しちゃうかもね」
マリサが色々説明してくれる。
「有効武器は剣で、ステージギミックはさっき言った大量の木の葉なんだけれど……そっちが持っている情報との齟齬はあるかな?」
「いや、大丈夫だ」
ジュリーから聞いたのと同じ内容。
「とはいえ、メルシュの情報じゃないとデルタ側が改変している可能性もあるから、鵜呑みにし過ぎない方が良いぞ」
フェルナンダが忠告する。
「ああ、その通りだな」
リアルタイムで情報を収集できるメルシュが居ない分、彼女達は私達よりも危ない橋を渡り続けてきたのだろうな。
「さっさと行きましょう、マリサ。私は、早くフカフカのベッドで眠りたいのよ」
デボラが、我が物顔で催促して来る。
「当たり前のように要求が通ると思っていないか、お前?」
アムシェルが、腰の魔剣に手を掛けた。
「べ、別にこれくらい良いじゃない! 背中が痛くて仕方ないのよ!」
「アムシェル、一々その女に噛み付いていると疲れるわよ?」
「……リリルの言うとおりだな」
このパーティー、よく今まで仲違いしなかったな。
「く! どうしてアテルくらいしか、私に優しくしてくれないのよ!」
おいデボラ、お仲間の殺気が一段上がったぞ。空気を読めよお前、生き残りたいならさ。
「……出会ったの、コセ達の方で良かったな」
あんなギスギスした空気は嫌だ。
「リリル、気をつけてな」
「る、ルイーサは、自分の心配でもしていなさいよね!」
そう言い、《日高見のケンシ》の五人はボス部屋の中へと消えていった。
「……見事なツンデレよね」
「だね。リリルって、ああいう子だったんだ」
「見てるコッチの方が恥ずかしくなるレベルだな、あれは」
「本当ですねぇ」
アヤナとアオイ、フェルナンダとスゥーシャも、私に変な視線を向けている?
「ツンデレってなんだ?」
「出たわよ、日本生まれを疑う発言」
「日本で育って、ツンデレを知らない人って居るのかな?」
なぜ私は、こんなにもしょっちゅう日本育ちを疑われるんだ?
「あ、もう終わったみたいですよ」
「さすがだな」
ボス部屋前の扉から、光が消えていく。
「私達も、さっさと終わらせて合流するぞ」
急がないと、先に二十ステージに進んだあの五人だけが突発クエストに巻き込まれる可能性があるからな。
進んで、マリサ達は危険な方を選んでくれたんだ。
五人で、ボス部屋へと入る。
「狸って聞いていたから、もう少し可愛いのを想像していたが……格好いいじゃないか」
濃い茶系の石で出来たボディーに、鋭い黒爪を持つ巨人。
その身体に緑のラインが灯っていくのと同時に、魔神の左右の天井から木の葉が大量に出て来た!
「木の葉は任せろ! ”精霊魔法”、サラマンダー!!」
フェルナンダが火の蜥蜴を呼び出し、火魔法も用いて木の葉を燃やしてくれる。
「”幻影の銛群”!」
”ファンタズムハープン”を六つに増やし、高速で飛ばすスゥーシャ。
さすが、Sランク武器だけあって、その速度は凄まじい。
だが、魔神・木の葉狸は、俊敏な動きでそれを回避していく。
「壁を駆けることが出来るのか」
さすがは第十九ステージのボス……少し舐めていたかもしれん。
「”光線魔法”――アトミックレイ!!」
木の葉を燃やすフェルナンダを狙った魔神を、強力な魔法で牽制してくれるアヤナ。
「頼む、アオイ!」
「おうともよ!!」
”大鬼の手”で振るった”法喰いの金棒”で打たれ、動きが鈍る魔神!
「”絡め取り”!」
「”回転”!」
アオイの鞭が脚に絡み付いた瞬間、六つの銛が回転しながら魔神のボディーを穿つ!
しかも、手脚と腹と胸と、上手い具合に動きが鈍るよう、ダメージを入れてくれたようだ!
「――”抜剣”」
”聖剣万象”の力を、”ヴリルの聖骸盾”から抜いた”古代王の聖剣”に纏わせる。
同時に、ステージに放出される木の葉の量が倍増!
『ァァァァァァァァァァァァ!!』
赤ん坊の泣き声にも似た奇声を上げ、例の危険攻撃を仕掛けて来たか!
「”瞬足”跳躍”!!」
高速で突撃しながら盾を掲げ、無理矢理木の葉の刃の中を突き進む!
この木の葉その物はスキルではないため、”古代王の聖剣”に宿る”古代の力”の対象外。
高ランクの古代系武器が手に入る直後に現れるボスがこういった攻撃手段を持っている事には、制作者のイヤらしさを感じるな。
――魔神・木の葉狸が着地すると同時に、聖剣を振りかぶる!!
「”古王の威厳”――”古代剣術”、オールドブレイクッ!!」
”古代王の聖剣”のもう一つの効果、”古王の威厳”により、この剣から放つ古代属性攻撃を強化すると同時に――剣の十二倍の大きさのエネルギーの斬撃と成し、魔神に直撃させた!!
「フー……ぶっつけ本番だったが、なんとかなる物だな」
四散した魔神の身体が、光になって消えていく。
「剣の能力について、フェルナンダに聞いておいて良かったよ」
○おめでとうございます。魔神・木の葉狸の討伐に成功しました。
○ボス撃破特典。以下から一つをお選びください。
★木の葉の指輪 ★木の葉旋舞のスキルカード
★木の葉尖舞のスキルカード ★木の葉狸の陰嚢
私は、メルシュに頼まれていた”木の葉狸の陰嚢”を選択した。
モモカ達とホテルで合流したのち、離れている間に手に入れたという物を確認していたメルシュ。
「どういう物なんです?」
モモカを膝に乗せながら尋ねる。
「同じパーティー内で、”意思疎通の首輪”を装備している物同士で意思疎通が出来るって代物だけれど……あんまし役には立たないかな。補助効果とかもあるけれど」
「あらら」
せっかくモモカが手に入れてくれたのに。
「じゃあ、モモカに頂戴!」
「うーん……売っちゃダメ?」
「やだ!」
宝箱を取り上げられたからなのか、露骨に嫌がるモモカ。
「本当に役に立たない物なのですか?」
「意思疎通を図るから、連携の向上とかも見込めるんだけれど……むしろ雑念を送り合う事になっちゃって、マイナス面が大きいと思う。二人だけの世界に閉じ籠もっちゃって、周りが見なくなる可能性もあるし」
「なるほど」
私とご主人様なら、問題なく使えそうな気がしますけれど。
その場合でも、他の人達との連携に問題が出るかもしれないか。
「そもそも、いずれはそれ以上の事が出来るようになって貰わないと困るし」
メルシュがなにか言っていたけれど、小声過ぎてさすがに聞き取れませんでした。
「なら頂戴! 頂戴! 頂戴! 頂戴!!」
「メルシュ、今回は良いのでは?」
「まあ、なにか上げるって約束したばかりだしなー」
そう言いながら、棘付きの赤い首輪二つをモモカに渡すメルシュ。
「やったー!!」
私の膝から飛び降りて、首輪を掴んでご主人様達の方へ走っていくモモカ。
「この指輪が高かったから、少しでも補填したかったのに。元を取る算段はあるけれど」
「まあまあ。それより、明日にはダンジョンですね」
「他の皆は、もう二十ステージに到着している可能性もあるし……私達は、只でさえ到着が遅れたからなー」
全員、無事だと良いんですけれど。
●●●
「地上へと脱出しようとする異世界の冒険者よ、この扉の先には第十九ステージのボスが待ち受けている」
ボス部屋前の妖精に、途轍もなく久し振りに話し掛けている。
ここの妖精は基本色がブラウンで、四肢の末端だけ緑なんだ。
「ボス攻略に挑むなら、五人パーティーを推奨する。平均Lv37以上が好ましい」
「適性Lv37って、私らのLvなら全然問題ないじゃない」
アヤナがぼやく。
「まあ、あくまでゲーム的な視点からの意味合いだからね。現実で戦うなら、適性Lvよりも高いに超したことはないよ」
マリサが宥めてくれる。
アヤナは、すぐに油断してしまうからな。
「ボスの名前は、魔神・木の葉狸。木の葉を振り撒いてこちらの視界を封じてくる。危険攻撃は、その木の葉を攻撃に使用する”木の葉尖傷”。弱点の炎で簡単に燃やせるはずだけれど、気をつけないとコッチが火傷しちゃうかもね」
マリサが色々説明してくれる。
「有効武器は剣で、ステージギミックはさっき言った大量の木の葉なんだけれど……そっちが持っている情報との齟齬はあるかな?」
「いや、大丈夫だ」
ジュリーから聞いたのと同じ内容。
「とはいえ、メルシュの情報じゃないとデルタ側が改変している可能性もあるから、鵜呑みにし過ぎない方が良いぞ」
フェルナンダが忠告する。
「ああ、その通りだな」
リアルタイムで情報を収集できるメルシュが居ない分、彼女達は私達よりも危ない橋を渡り続けてきたのだろうな。
「さっさと行きましょう、マリサ。私は、早くフカフカのベッドで眠りたいのよ」
デボラが、我が物顔で催促して来る。
「当たり前のように要求が通ると思っていないか、お前?」
アムシェルが、腰の魔剣に手を掛けた。
「べ、別にこれくらい良いじゃない! 背中が痛くて仕方ないのよ!」
「アムシェル、一々その女に噛み付いていると疲れるわよ?」
「……リリルの言うとおりだな」
このパーティー、よく今まで仲違いしなかったな。
「く! どうしてアテルくらいしか、私に優しくしてくれないのよ!」
おいデボラ、お仲間の殺気が一段上がったぞ。空気を読めよお前、生き残りたいならさ。
「……出会ったの、コセ達の方で良かったな」
あんなギスギスした空気は嫌だ。
「リリル、気をつけてな」
「る、ルイーサは、自分の心配でもしていなさいよね!」
そう言い、《日高見のケンシ》の五人はボス部屋の中へと消えていった。
「……見事なツンデレよね」
「だね。リリルって、ああいう子だったんだ」
「見てるコッチの方が恥ずかしくなるレベルだな、あれは」
「本当ですねぇ」
アヤナとアオイ、フェルナンダとスゥーシャも、私に変な視線を向けている?
「ツンデレってなんだ?」
「出たわよ、日本生まれを疑う発言」
「日本で育って、ツンデレを知らない人って居るのかな?」
なぜ私は、こんなにもしょっちゅう日本育ちを疑われるんだ?
「あ、もう終わったみたいですよ」
「さすがだな」
ボス部屋前の扉から、光が消えていく。
「私達も、さっさと終わらせて合流するぞ」
急がないと、先に二十ステージに進んだあの五人だけが突発クエストに巻き込まれる可能性があるからな。
進んで、マリサ達は危険な方を選んでくれたんだ。
五人で、ボス部屋へと入る。
「狸って聞いていたから、もう少し可愛いのを想像していたが……格好いいじゃないか」
濃い茶系の石で出来たボディーに、鋭い黒爪を持つ巨人。
その身体に緑のラインが灯っていくのと同時に、魔神の左右の天井から木の葉が大量に出て来た!
「木の葉は任せろ! ”精霊魔法”、サラマンダー!!」
フェルナンダが火の蜥蜴を呼び出し、火魔法も用いて木の葉を燃やしてくれる。
「”幻影の銛群”!」
”ファンタズムハープン”を六つに増やし、高速で飛ばすスゥーシャ。
さすが、Sランク武器だけあって、その速度は凄まじい。
だが、魔神・木の葉狸は、俊敏な動きでそれを回避していく。
「壁を駆けることが出来るのか」
さすがは第十九ステージのボス……少し舐めていたかもしれん。
「”光線魔法”――アトミックレイ!!」
木の葉を燃やすフェルナンダを狙った魔神を、強力な魔法で牽制してくれるアヤナ。
「頼む、アオイ!」
「おうともよ!!」
”大鬼の手”で振るった”法喰いの金棒”で打たれ、動きが鈍る魔神!
「”絡め取り”!」
「”回転”!」
アオイの鞭が脚に絡み付いた瞬間、六つの銛が回転しながら魔神のボディーを穿つ!
しかも、手脚と腹と胸と、上手い具合に動きが鈍るよう、ダメージを入れてくれたようだ!
「――”抜剣”」
”聖剣万象”の力を、”ヴリルの聖骸盾”から抜いた”古代王の聖剣”に纏わせる。
同時に、ステージに放出される木の葉の量が倍増!
『ァァァァァァァァァァァァ!!』
赤ん坊の泣き声にも似た奇声を上げ、例の危険攻撃を仕掛けて来たか!
「”瞬足”跳躍”!!」
高速で突撃しながら盾を掲げ、無理矢理木の葉の刃の中を突き進む!
この木の葉その物はスキルではないため、”古代王の聖剣”に宿る”古代の力”の対象外。
高ランクの古代系武器が手に入る直後に現れるボスがこういった攻撃手段を持っている事には、制作者のイヤらしさを感じるな。
――魔神・木の葉狸が着地すると同時に、聖剣を振りかぶる!!
「”古王の威厳”――”古代剣術”、オールドブレイクッ!!」
”古代王の聖剣”のもう一つの効果、”古王の威厳”により、この剣から放つ古代属性攻撃を強化すると同時に――剣の十二倍の大きさのエネルギーの斬撃と成し、魔神に直撃させた!!
「フー……ぶっつけ本番だったが、なんとかなる物だな」
四散した魔神の身体が、光になって消えていく。
「剣の能力について、フェルナンダに聞いておいて良かったよ」
○おめでとうございます。魔神・木の葉狸の討伐に成功しました。
○ボス撃破特典。以下から一つをお選びください。
★木の葉の指輪 ★木の葉旋舞のスキルカード
★木の葉尖舞のスキルカード ★木の葉狸の陰嚢
私は、メルシュに頼まれていた”木の葉狸の陰嚢”を選択した。
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