ダンジョン・ザ・チョイス
256.動力室へ
『ゥオオオオオオオオ!!』
貝殻の騎士風のモンスターが、貝殻の槍を突き付けてきた。
「ハアッ!!」
右手の“ドラゴンの顎”で槍を咬み逸らし、“泰然なる高潔竜の雄叫び”を腹に押し付ける。
「“深淵盾術”――アビスバニッシュ」
貝殻の騎士を、弾き潰した。
「ナイスです、メグミぃ!」
反対側から迫っていたモンスターを、“砲火剣・イグニス”の大火力で一掃してくれたクリスと、手を叩き合う!
「お疲れ。それじゃあ、船を動かそうか」
「私が後ろを預かろう」
メルシュを先頭に、私が最後尾で階段を降りていく。
「嫌らしいな。罠解除」
細めの扉の前でメルシュがスキルを使用すると……扉から無数の棘が回転しながら飛び出し……すぐに引っ込んで消えた。
へ……怖。
「開けるよ」
「どうぞ」
「オケ」
トゥスカとクリスが返事をすると、メルシュがカードをスライドさせたのちにドアを押し開け……巨大な機械部品のある場所に出る。
「ここはもう安全エリアだから、一安心だよ」
「フー、一息つけますねぇ!」
「じゃあ、私は復旧作業に取り掛かるから、三人は休んでて」
そう言い、メルシュが奥へと進んでいく。
「念のため、二人一組で行動した方が良いだろう。私がメルシュに付いていこう」
「分かりました」
「よろでぇす!」
メルシュの後を追い、金属だらけの部屋の奥へ。
「休んでて良かったのに」
こちらを見ずに、テキパキと作業をこなしていくメルシュ。
「……結局の所、お前達は何者なんだ?」
機械の駆動音が鳴り始めたため、それを利用してトゥスカ達には聞こえないように尋ねる。
「……デルタと同じ組織に所属していたトライアングルが生み出したシステムにより、疑似人格を作り出し、隠れNPCの思考の元としている。ここでは、それ以上のことは言えないかな」
観測者に見られているからか。
「そうだな……邪魔をして悪かった」
「あ、そうだ、近くに宝箱が無いか一通り回ってきて貰える?」
「分かった」
チョイスプレートを操作し、“盗賊”のサブ職業をセットして動力室を見て回る。
「……懐かしいな」
この空間は、微かに憶えている宇宙船の雰囲気に少し似ている。
あくまで、金属の部品に囲まれた、密閉された空間という意味でだが。
だが、憐れな息苦しさを覚えることに変わりはない。
だからなのか、地球を訪れた時に感じた広大な大自然への感激は……今でも忘れられない。
「あの時の感覚が、私をレプティリアンの……シーカーの呪縛から、本当の意味で解き放ってくれたのかもしれないな」
レプティリアンとして死んだのち、地球に転生するまでの間の記憶は無い。
だがきっと、地球を守るために私は、この時代に地球人として転生する事を選んだのだろう。
そして、それはきっと、コセも同じ。
「お、本当に置いてあったか」
ここに来るまでに何度も見た、湿った黒い宝箱。
とはいえ、ここまでの流れを見るに、宝箱の中身にはあまり期待出来そうにないけれど。
○罠を感知しました。
「罠解除」
黒い濡れた宝箱から、一メートルを超えるドリルが四方八方に飛び出て……引っ込んでいった。
「相変わらず殺意高いな」
さて、なにが貰えるのか。
……箱の中にあったのは、刃先が紫身を帯びた黒い短剣。
○“冥雷の呪法剣”を手に入れました。
「おっと!」
船が急に揺れたため、倒れないように体勢を変えて踏ん張る。
「ん? 向こうにも宝箱が」
しかも、突発クエストが始まってから目にしたのとは違う、銀色の宝箱が!
「かなり見えにくい位置にあったな」
「隠しアイテム的な宝箱だね。なら、良い物が期待できそう」
いつの間にか、メルシュが近くまでやって来ていた。
「……驚かさないでくれよ」
「ごめんごめん。たぶん、レアな宝箱を配置する事でクエスト難易度を引き上げようって魂胆だと思う。あれは罠が無いタイプだね。罠付きとかだとそれだけで難易度設定を上げづらくなるから、あのタイプにしたんだろうな」
向こうも、色々と小賢しい事を考えているようだ。
いや、低周波の人間ほど考え付きそうなやり方か。
品質が落ちてでも原価を抑え、少しでも自分達の利益を優先する。
商売という概念を利用した、金儲けしか頭にないような奴等と同じ。
「私は、まだ作業が残っているから」
近くのコンソールを操作し始めるメルシュ。
「さっさと回収するか」
太い配管を潜り、宝箱が置いてある狭い空間へ。
「ん? ……二つ入ってる」
○“双銀鳥の仕込み杖”×2を手に入れました。
鳥の翼が薙刀のようにくっ付いた銀の……杖なのか、これ?
「一つの宝箱に二つも入っているとは。珍しいパターンだな」
メルシュの所に戻ると、船の巨大モーターと思われる部品が急回転し始める!
「すぐに動力が戻って、十分後くらいには船が動き始めるよ」
「つまり、あと十分耐えればいい訳か」
「うん? ああ……船が魔の海域を超えるまではクエストは終わらないから、もう暫く時間が掛かっちゃうかな」
「つまり、モンスターもすぐには消えないと」
想像していた以上に質の悪いクエストだな、今回のは。
メルシュが居なかったら、勘違いしていたかもしれない部分が多すぎる。
「というわけだから、残り三十分から四十分間は、頑張って宝箱を一つでも多く回収するよ!」
「ああ、なるほど」
だから私達を、少しでも休ませようとしていたわけか。
結構がめついNPCなんだな、メルシュは。
……今更だが、まるで人間みたいだ。
●●●
「戦闘音……急がないと」
作業をしていたら、微かにだけれど上から戦っている気配が伝わってきた。
鎖の連結部を全て切り離し、錨を降ろした状態でボートの鍵を差し込んでおく。
「風が……完全に止んだな」
おかげで、夜鷹を呼び出せばすぐに二人が居る甲板に戻れそうだ。
「夜鷹、頼む!」
いつものように肩を掴んで、甲板を目指して貰う!
「“伸縮”!」
クマムが一人で、見たことの無いモンスターと戦っている?
細剣を伸ばして貫くも、効いているようには見えない。
武器攻撃を無力化するタイプか?
「“魚群”!!」
水の魚の群れをぶつけ、深海モンスターを足止めしているナオ。
「コセ、クマムちゃんをお願い!」
「分かった!」
足止めだけなら、今のナオでもどうにかなるはず。
むしろ、一対一とはいえクマムが手こずっている方が危険と判断できる!
「“煉獄魔法”――インフェルノブラスター!!」
紫の炎を放つも、水の身体を盾のようにして防がれてしまう。
今ので、またMPがほとんど無くなってしまった。
「魔法が有効というわけでもないか」
“偉大なる英雄竜の猛撃剣”を手に駆けていくと、水の鞭が幾重にも襲い掛かってくる!
あの砲撃は神代文字を使わないと放てないし……船が動き出すまでは、これ以上の無茶は控えるべきか。
「コセさん、たぶん弱点は核です! そういうアニメを見たことがあります!」
「へ? ああ、うん」
クマムからアニメって言葉が飛びだした事に、凄い違和感を覚えてしまう。
――奴の身体から、水球が飛びだしてきた!!
剣の腹で流すように弾き逸らし、斬り付けに行く!
「“超竜撃”!!」
核ごと吹き飛ばそうとするも、水が前面に集まって核を守ったか!
それに、核から水が染み出すように、あっという間に元と同じくらいの体積に。
だけれど、弾け飛んだ水は戻らず、光に変わっていった。
核から補充される方が厄介そうだな……攻撃はクマムに任せるか。
「武器変更、“ザ・ディープシー・カリバーン”!!」
”偉大なる英雄竜の猛撃剣”を、目の前のモンスターにそっくりな色合いの水が込められた、美しい大剣に持ち替える!
貝殻の騎士風のモンスターが、貝殻の槍を突き付けてきた。
「ハアッ!!」
右手の“ドラゴンの顎”で槍を咬み逸らし、“泰然なる高潔竜の雄叫び”を腹に押し付ける。
「“深淵盾術”――アビスバニッシュ」
貝殻の騎士を、弾き潰した。
「ナイスです、メグミぃ!」
反対側から迫っていたモンスターを、“砲火剣・イグニス”の大火力で一掃してくれたクリスと、手を叩き合う!
「お疲れ。それじゃあ、船を動かそうか」
「私が後ろを預かろう」
メルシュを先頭に、私が最後尾で階段を降りていく。
「嫌らしいな。罠解除」
細めの扉の前でメルシュがスキルを使用すると……扉から無数の棘が回転しながら飛び出し……すぐに引っ込んで消えた。
へ……怖。
「開けるよ」
「どうぞ」
「オケ」
トゥスカとクリスが返事をすると、メルシュがカードをスライドさせたのちにドアを押し開け……巨大な機械部品のある場所に出る。
「ここはもう安全エリアだから、一安心だよ」
「フー、一息つけますねぇ!」
「じゃあ、私は復旧作業に取り掛かるから、三人は休んでて」
そう言い、メルシュが奥へと進んでいく。
「念のため、二人一組で行動した方が良いだろう。私がメルシュに付いていこう」
「分かりました」
「よろでぇす!」
メルシュの後を追い、金属だらけの部屋の奥へ。
「休んでて良かったのに」
こちらを見ずに、テキパキと作業をこなしていくメルシュ。
「……結局の所、お前達は何者なんだ?」
機械の駆動音が鳴り始めたため、それを利用してトゥスカ達には聞こえないように尋ねる。
「……デルタと同じ組織に所属していたトライアングルが生み出したシステムにより、疑似人格を作り出し、隠れNPCの思考の元としている。ここでは、それ以上のことは言えないかな」
観測者に見られているからか。
「そうだな……邪魔をして悪かった」
「あ、そうだ、近くに宝箱が無いか一通り回ってきて貰える?」
「分かった」
チョイスプレートを操作し、“盗賊”のサブ職業をセットして動力室を見て回る。
「……懐かしいな」
この空間は、微かに憶えている宇宙船の雰囲気に少し似ている。
あくまで、金属の部品に囲まれた、密閉された空間という意味でだが。
だが、憐れな息苦しさを覚えることに変わりはない。
だからなのか、地球を訪れた時に感じた広大な大自然への感激は……今でも忘れられない。
「あの時の感覚が、私をレプティリアンの……シーカーの呪縛から、本当の意味で解き放ってくれたのかもしれないな」
レプティリアンとして死んだのち、地球に転生するまでの間の記憶は無い。
だがきっと、地球を守るために私は、この時代に地球人として転生する事を選んだのだろう。
そして、それはきっと、コセも同じ。
「お、本当に置いてあったか」
ここに来るまでに何度も見た、湿った黒い宝箱。
とはいえ、ここまでの流れを見るに、宝箱の中身にはあまり期待出来そうにないけれど。
○罠を感知しました。
「罠解除」
黒い濡れた宝箱から、一メートルを超えるドリルが四方八方に飛び出て……引っ込んでいった。
「相変わらず殺意高いな」
さて、なにが貰えるのか。
……箱の中にあったのは、刃先が紫身を帯びた黒い短剣。
○“冥雷の呪法剣”を手に入れました。
「おっと!」
船が急に揺れたため、倒れないように体勢を変えて踏ん張る。
「ん? 向こうにも宝箱が」
しかも、突発クエストが始まってから目にしたのとは違う、銀色の宝箱が!
「かなり見えにくい位置にあったな」
「隠しアイテム的な宝箱だね。なら、良い物が期待できそう」
いつの間にか、メルシュが近くまでやって来ていた。
「……驚かさないでくれよ」
「ごめんごめん。たぶん、レアな宝箱を配置する事でクエスト難易度を引き上げようって魂胆だと思う。あれは罠が無いタイプだね。罠付きとかだとそれだけで難易度設定を上げづらくなるから、あのタイプにしたんだろうな」
向こうも、色々と小賢しい事を考えているようだ。
いや、低周波の人間ほど考え付きそうなやり方か。
品質が落ちてでも原価を抑え、少しでも自分達の利益を優先する。
商売という概念を利用した、金儲けしか頭にないような奴等と同じ。
「私は、まだ作業が残っているから」
近くのコンソールを操作し始めるメルシュ。
「さっさと回収するか」
太い配管を潜り、宝箱が置いてある狭い空間へ。
「ん? ……二つ入ってる」
○“双銀鳥の仕込み杖”×2を手に入れました。
鳥の翼が薙刀のようにくっ付いた銀の……杖なのか、これ?
「一つの宝箱に二つも入っているとは。珍しいパターンだな」
メルシュの所に戻ると、船の巨大モーターと思われる部品が急回転し始める!
「すぐに動力が戻って、十分後くらいには船が動き始めるよ」
「つまり、あと十分耐えればいい訳か」
「うん? ああ……船が魔の海域を超えるまではクエストは終わらないから、もう暫く時間が掛かっちゃうかな」
「つまり、モンスターもすぐには消えないと」
想像していた以上に質の悪いクエストだな、今回のは。
メルシュが居なかったら、勘違いしていたかもしれない部分が多すぎる。
「というわけだから、残り三十分から四十分間は、頑張って宝箱を一つでも多く回収するよ!」
「ああ、なるほど」
だから私達を、少しでも休ませようとしていたわけか。
結構がめついNPCなんだな、メルシュは。
……今更だが、まるで人間みたいだ。
●●●
「戦闘音……急がないと」
作業をしていたら、微かにだけれど上から戦っている気配が伝わってきた。
鎖の連結部を全て切り離し、錨を降ろした状態でボートの鍵を差し込んでおく。
「風が……完全に止んだな」
おかげで、夜鷹を呼び出せばすぐに二人が居る甲板に戻れそうだ。
「夜鷹、頼む!」
いつものように肩を掴んで、甲板を目指して貰う!
「“伸縮”!」
クマムが一人で、見たことの無いモンスターと戦っている?
細剣を伸ばして貫くも、効いているようには見えない。
武器攻撃を無力化するタイプか?
「“魚群”!!」
水の魚の群れをぶつけ、深海モンスターを足止めしているナオ。
「コセ、クマムちゃんをお願い!」
「分かった!」
足止めだけなら、今のナオでもどうにかなるはず。
むしろ、一対一とはいえクマムが手こずっている方が危険と判断できる!
「“煉獄魔法”――インフェルノブラスター!!」
紫の炎を放つも、水の身体を盾のようにして防がれてしまう。
今ので、またMPがほとんど無くなってしまった。
「魔法が有効というわけでもないか」
“偉大なる英雄竜の猛撃剣”を手に駆けていくと、水の鞭が幾重にも襲い掛かってくる!
あの砲撃は神代文字を使わないと放てないし……船が動き出すまでは、これ以上の無茶は控えるべきか。
「コセさん、たぶん弱点は核です! そういうアニメを見たことがあります!」
「へ? ああ、うん」
クマムからアニメって言葉が飛びだした事に、凄い違和感を覚えてしまう。
――奴の身体から、水球が飛びだしてきた!!
剣の腹で流すように弾き逸らし、斬り付けに行く!
「“超竜撃”!!」
核ごと吹き飛ばそうとするも、水が前面に集まって核を守ったか!
それに、核から水が染み出すように、あっという間に元と同じくらいの体積に。
だけれど、弾け飛んだ水は戻らず、光に変わっていった。
核から補充される方が厄介そうだな……攻撃はクマムに任せるか。
「武器変更、“ザ・ディープシー・カリバーン”!!」
”偉大なる英雄竜の猛撃剣”を、目の前のモンスターにそっくりな色合いの水が込められた、美しい大剣に持ち替える!
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