ダンジョン・ザ・チョイス
248.突発クエスト・魔の海域から脱出せよ
モンモンとした気分の最中、月明かりしか差さない暗闇の中に、傲慢そうな男性の声が響く。
『貴様らは魔の海域に入り込んだ事により、窮地に陥っている。そこで、お前達には二つの選択肢が与えられる』
ダンジョン・ザ・チョイスの名の通り、また選択して決めろという事ですね。
『一つは、搭乗中の豪華客船の電源とモーターを回復させることで、豪華客船ごと魔の海域を脱出するという方法』
そっちが順当な方法という感じですね。
『もう一つは、脱出ボートを海に降ろし、それで出て行く方法だ。ただし、脱出ボートの定員は六名となり、船は一隻しか存在しない』
つまり、後者を選べば強制的にここに居る半数近くが生き残れないということ。
脱出ボートの方が楽なのでしょうけれど、コセさん達がこの豪華客船を復旧する道以外を選ぶことは無いでしょう。
『脱出ボートには、Sランクアイテムがランダムに手に入る宝箱が用意されていて、魔の海域を抜けた後に手に入れられる。更に、脱出ボートそのものも手に入れることが出来、今後の冒険で大いに役立つだろう』
最高ランクの武具などを与えてでも、私達を仲間割れに導きたいようですね。
『クエスト中は武装することができ、十五分後から船内には、モンスターが無尽蔵に湧き続けることになる。船を復旧させるまでに、何百体のモンスターを相手にすることになるのやら』
露骨に分断を煽って来る。
『クエストは夜明けがタイムリミットだ。夜明けの五時までに魔の海域を脱出出来なければ、船ごと全員、海の底に消えて貰う。ちなみに今、貴様らが居るそのラウンジは安全エリアにしてやる。ありがたく思え』
「制限時間はぁ……およそ十時間ですねぇ」
「となると、モンスターは減ってから補充されるタイプではなく、時間と共に増え続ける仕様の可能性が高いな」
クリスさんとメグミさんの話しから、安全な場所の提供と無駄に長い時間設定は、私達の油断を誘うために設定された可能性が高いと判断出来ます。
『それでは、今この瞬間より突発クエスト開始だ!』
傲慢な声が、ようやく聞こえなくなってくれた。
「どうする、コセ?」
「メルシュから、突発クエストの詳しい概要を聞きたい」
メグミさんに尋ねられるも、コセさんは応えずにメルシュさんに丸投げする。
……どうしよう、コセさんに対して悪感情を向けやすくなってしまっているみたい。
「どうやらこのクエスト、両方の選択肢を両立することが出来るみたい。船を復旧したあと、魔の海域を出るまでに脱出ボートで逃げれば、ボートもSランクアイテムも手に入るね」
「なら、船の復旧を第一優先にして、余裕がありそうならボートも手に入れるで良いな」
……もう方針が決まってしまった。
「船を復旧させるには、まず発電室で電力を戻して、それから動力室でモーターを起動させる必要がある。その前に、扉を開けるためのカードキーが必要だね。この船の船長から貰わないといけないみたい」
メルシュさんが居なかったら、それだけで私達は詰んでいた気がします。
「それと、脱出ボートを使うならボートの鍵が必要だよ。ボートの鍵は副船長が持っているみたい」
「船長は操舵室だったな。副船長はどこだ?」
「甲板後部に居るね」
このラウンジは船の前面なので、副長さんが居るのは反対側ですか。
それはつまり、操舵室とも反対ということ。
「私は船の復旧に当たった方が良いと思うんだけれど、脱出ボートを操縦するには”操舵手”のサブ職業が必要だよ。それに、迷わずに第十六ステージに進むには“航海士”のサブ職業、船もだけれど“機関士”のサブ職業がないとモーターを動かせないからね」
サブ職業が三つも無いとまともに動かせないなんて……さっきの方、幾らなんでも説明不足なのでは!!
まさか……だからこその十時間という長時間設定なのですか?
「そのサブ職業は、いったいどうやって集めるのです?」
トゥスカさんが尋ねる。
「現れる深海モンスターから稀にドロップするみたい。あと、モンスター出現と同時に船の各地に配置される宝箱からも手に入るみたいだね」
「深海モンスターと言うことは、水属性の攻撃は効果が薄いのかしら……ぅぷ!」
サトミさん、かなり辛そう。
「深淵系のスキルを使ってくるし、水と闇の耐性もあるけれど、二種属性なら深淵系以外問題ないよ」
これは確かに、最初にメルシュさんに聞くのが正解でしたね。
「マスターは、船の構造を記憶しているよね?」
「ボートの下ろし方が書かれている場所も分かるよ」
「さすがマスター! なら、ボート組はマスターとナオにクマム。復旧組は私とトゥスカ、メグミとクリスで」
メルシュさんが、素早く組み分けをしていく。
でも、コセさんは本当に、この数十階建ての船の構造を全て理解して居るのでしょうか?
「メルシュ、私は?」
モモカちゃんが尋ねた。
「念のため、サトミとリンピョンの傍に居てあげて。ローザとマリアが居れば、モモカ一人でも戦力的に問題ないはず」
「分かった! サトミ達はモモカ達で守る!」
もっともらしい事を言って、モモカちゃんを危険から遠ざけようとしていますね。
「それぞれ鍵を手に入れたら、プールのあった中央デッキで一度合流。その時に道中で手に入れたサブ職業を融通しあおう」
あっという間に、細かな行動まで決まってしまった。
「め……面目ないわ」
「今回ばかりは……本当に申し訳ないです」
サトミさんとリンピョンさんは、完全に戦力外と考えた方が良さそうです。
「全員装備を整えて。あと五分もしないうちに、モンスターが湧き始めるよ」
メルシュさんの言葉に従い、私達は装備セット機能を使って戦闘準備に入った。
……そう言えば、私はコセさんと一緒に行動するのか。
ちょっと気まずいけれど……気にしている場合じゃないですよね。
「準備は良いか、ナオ、クマム」
「ええ、オーケーよ」
「私も問題ありません」
「よし、ならすぐに行くぞ!」
“一輪の華花への誓い”を握り、私はラウンジから、コセさんとナオさんと共に飛びだした!
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