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ダンジョン・ザ・チョイス

魔神スピリット

246.残虐な遺伝子

「まずは適当にぃ撃てぇ、反動に慣れましょうぅか」

 さっきのクリス先生の姿を思い出して、海に向かって構えてみる。

 引き金に指を添え、飛んでいる海鳥を狙って――撃つ。

「ッ!!」

 外れた……それとも届いていなかったのか。

 にしても……反動、思った以上だな。

 ハンドガードの傍の銃身が熱を帯び、引き金を引いた右手には反動の残滓が残る。

 これが、銃を撃つ時の高揚感という奴か。

 この感覚は、どこか麻薬じみているようにも思うな。

「思っていた以上に銃身が上にブレるというか、狙うのが大変そうだ」
「古典的な銃でしょうからねぇ。私も、銃の歴史やメーカーには詳しくはありませぇんが」

 遠くから狙い撃つという利点が無ければ、なんだか凄く……武器として無駄を感じてしまう。

「このライフルはぁ、自分で薬莢を排出しなければなりませぇん」
「ああ、そっか」

 スナイパーは薬莢を現場に残さないようにするらしいし、一発で仕留めて撤退するのが基本だから、敢えて自動化しない場合が多い……のかな? ごめん、分かんない。

「ええと……こうかな」

 クリスの見よう見まねでレバーを引くと、金属の筒が飛び出し、足元に落ちる。

「弾はまだ入ってまぁすから、続けて撃てまぁすよ。ちなぁみに、この子の装填数は四でぇす」

 俺に渡すときに弾を込めてくれてたから、残り三発か。

「残りの弾数の把握って、やっぱり大事なのかな?」
「戦場ならそうなのでしょうねぇ。この世界の銃だぁとMPを消費するのでぇ、つい配分を忘れそうになりまぁす」

 現金ではなくカードで払っていると、つい使いすぎてしまうアレに似ている気がする。

 チャージした方が得みたいに見せるあのシステムも、中々にあくどいよな。

 性根が腐ってなきゃ、あんな裏搾取システムなんて思いつかないだろう。

 余程上手くやらなきゃ、消費者が一方的に損することの方が多いのだから。

 母親に何度か説明したが「じゃあなんでみんなは使ってるの? やっぱりお前は、普通の人とどこかおかしい。ズレてる!」なんて言われた事があった。

「コセさん?」
「ああ……なんでもないよ。ちょっとボーッとしてただけだから」

 銃を持ってるのに、安全装置も掛けずに考え事に耽るなんて。

 でも……あんな風に家族や同級生、この世界に来る前に関わった人達に、俺は何千何百というトラウマや劣等感を植え付けられていたということを……今更ながら思い出してしまった。

「もしかしてぇ、私のおパイに見蕩れてましたぁ♡?」
「……へ?」

 反射的に、クリスの大きな美乳から生まれる魅惑的な谷間を覗いてしまう!

「いや、そういうわけでは」
「ココ、ちょっと硬くなってるのでは?」

 ――どこ触ってんだ、コイツ!!

「さ、さっきの飛ぶ的を撃ってみたいな!」

 クリスの魔の手から離れ、海側に向かって構える。

「……仕方無いですねぇ、カモン!」

 クリスが合図すると、NPCと思われる男が機会を操作し、白いフリスビーを撃ち出し始めた。

「ぉお、一発だけですが当たりましたねぇ。さすがでぇす」

 クソ、集中しようとしても先っぽを触られた余韻が忘れられない!

 ていうか、長い金髪に青々とした水着って――俺のドストライクなんじゃい!!

「オウ、リロードのやり方、教えまぁす!」

 素早く弾を四発込め、高速で飛んでいくフリスビーを百発百中で撃ち抜き……俺に渡してくるクリス。

「……上手くいかない」

 弾を入れる部分のカバーが、クリスみたいに上手くスライド出来ない。

「ココを持って、一回押し込んで……下げる。ハァイ、出来ましたねぇ」

 クリスの胸が、左胸の脇に!!

 不可抗力なのか? それともわざとなのか!?

「私のおパァイの感触、一生メモリーしてもぉ、良いですよぉ」
「それは……アメリカンジョークなのか?」
「……ただの本音でぇす」

 クリスが背後から……ギュッと抱き付いてきた。

「クリス?」
「……私とぉ……子作りシませぇんかぁ?」
「…………は?」

 ……へ? 子作りって……あの子作り?

「私の身体はぁ……お気に召しませんですか?」

 声のトーンが、アルファ・ドラコニアンと戦っていた時のマジの物に変わった。

「自分の安売りは……良くないと思うぞ」
「メグミには手を出したくせに」
「ぐ!」

 やっぱり気付いてたか。

「……恐いのです。自分を構成するDNAの中に、レプティリアン由来の物があるということが」

 人肉を食する、爬虫類に似た人型宇宙人。

「DNAで運命が決まるなんて説があったけれど……そこに左右される部分も確かにあるのだろうけれど……俺は、遺伝子だけで全ての運命が決まるなんて思えない」
「貴方はそういう人……じゃなきゃ、メグミに手を出したりしない。レプティリアンについて知った後でも、モモカを大切にしようとする姿勢は変わらなかった」

 あの日から、俺はクリスに観察されていたらしい。

 それとも、もっと前からなのかな?

「様々な宇宙人由来の遺伝子が、地球人の中には紛れ込んでるんだろう? 気にするだけ無駄だよ」

 今思えば、赤、青、黄、黒、白とここまで肌の色に違いがあるのを、世代を重ねた環境が違うというだけで説明しようとするのは不自然だ。

 全ての人類の祖がアフリカの一人の女性だという説が真実だとするなら、尚更に違和感がある。

 肌などの色だけで決まる問題じゃ無いだろうけれど、根本的に違う遺伝子が流入したと考える方が、むしろ納得がいく。

 もしかしたら、本能的に外国人を、肌の色や思想が違う人間を恐れ排除しようと考えてしまうのも、他者によって遺伝子をプログラムされてしまっているから……なのかもしれない。

「そもそも、そんな事を気にしていたらトゥスカやスゥーシャ達と添い遂げたいと思えなくなるかもしれないじゃないか」

 少なくとも、トゥスカが居ない未来なんて考えられない。

「でもレプティリアンは……」
「ノーザンなんかは俺を原種って呼ぶけれど、その俺だって、元を辿れば遺伝子的ルーツはどこにあるのかは判らないんだろう?」
「確かにその辺は……私にもまだまだ分からないことだらけですけれど……」

 メルシュなら知っていそうだけれど、それでもメルシュが真実を完全に理解しているとは限らない。

 そもそも、原種やらライトワーカーとか、そういう言葉に囚われてはいけない気がする。

 自分を高尚な存在と思い込めば、その瞬間に傲慢な人間に成り下がってしまう気がするのだ。

 ……俺に自分達の価値観を押し付け、悪気があろうと無かろうとトラウマや劣等感を何千と植え付けていった者達と、同じ所まで堕ちてしまう気がして……それが一番怖い。

「でもコセさんは……一時的にアセンションしました。あの能力の一部は、私が調べた中にもありましたから間違いありません……だから」

 クリスの抱き付く力が……一際強くなる。

「コセさんの遺伝子があれば、私の子供は残虐なDNAを……運命を克服出来るかもしれないのです」

 ……そこまで考えてたのか……いや、思い悩んで居たと言うべきか。

 誰だって、自分が悪い存在、劣っている存在だなんて思いたくないよな。

 向こうの世界で出会った人々にそう思わされ続けた俺には、その気持ちは痛いほど分かってしまう。

「だから……ソーリー」
「へ?」

 クリスの手が艶めかしくお腹を擦ってきて――ズボンの中に侵入してきたッ!!?

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