話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

ダンジョン・ザ・チョイス

魔神スピリット

245.忍耐の破邪

「し、しししし、シレイアさん! いい加減に服を着てください!」
「あ、おはよう、カナ。アンタも裸で日光浴しない?」
「しません!」

 朝っぱらから、あんなナイスバディな褐色肌の裸身を晒すなんて……綺麗すぎてムカつく!

「たまには、素っ裸で居るのも悪くないね」
「ザッカルまで……」

 気持ち良さそうにプールで泳いでるんじゃない!

「良いじゃん良いじゃん、どうせ俺ら以外誰も居ないんだし」
「……観測者に見られているかもしれないでしょう」
「あ……ヤベ、忘れてた」

 急いで黒い水着を装備するザッカル。

「シレイアさんも」
「ああ、大丈夫大丈夫。アタシは気にしないから」
「むしろ気にしてください!」

 私なんて、見られてると思うとシャワーで身体を洗うのすら躊躇しているのに!

 オシッコも気付いたら我慢しちゃってるし……全然旅行気分になれない!

「……早く帰りたい」

 十八ステージの魔女の避暑地に着いたら、一秒でも早く攻略してしまおう!


●●●


「良いね、ノーザン」

 船の中の修練場にて、僕はユイさんに稽古を着けて貰っていた。

「はあ!!」

 ”極寒の忍耐魂”に似た木製の斧を振り、木刀を手にしたユイさんに仕掛ける!

「隙のない動きを心掛けていて偉いけれど、力の込め方に無駄が多いから、疲れで段々切れが無くなってきてるよ」

 年は大して変わらないはずなのに、完全に手玉に取られている!

「感情的になると無駄な力が入りやすくなる。コセとの事後の、放心状態を意識して」

 ――どんなアドバイス!?

 でも……神代文字の特訓の時、メルシュが似たような事を言っていた。

 なにより、アドバイスをくれたのはコセ様と同じく神代文字を十二文字刻めるユイさん!

 このアドバイスは、おそらく的を射て居るはず!

「自分に固執するのはやめて、世界と一体になるような感覚だよ。そうすると、自分の命への醜い執着が薄らいで行くから」

 自分の命への……醜い執着。

「……装備セット1」

 ”極寒の忍耐魂”をこの手にする――と、僕の魂が、湧き上がっていた気が――斧に吸い込まれていく気がする。

「…………あ」

 ”極寒の忍耐魂”が輝き……一回り大きくなって形状も変化した!

「殻を破れたって事かな?」
「ええ、そうみたいです。ありがとうございます、ユイさん!」

 斧の真ん中の、悪魔のような顔が益々怖くなったけれど……以前よりも手に馴染む感じだ。

「これからもよろしく、”極寒忍耐の破邪魂”」


●●●


「……朝か」

 両脇で眠るトゥスカとナオを置いて、昨日のうちに確認しておいた修練場に向かう。

 最近は朝稽古が当たり前になってたから、今日も軽く自主練をするつもりなのだ。

 と言っても、敵を人間だけに想定することも出来ないため、武器を身体に慣らす程度と言うか……武器の癖を身体に忘れさせないための軽い運動という所か。

「修練場でなら、武器を装備出来るはずだったよな?」

 ……ヤバい、寝起きでまだ頭がボーッとしている。

「ハッ!! ハァッ!!」

 修練場の方から、誰かの声が聞こえる?

「クマム?」

 ”一輪の華花への誓い”を手に、高速で突きを放つクマム。

 ……かなり汗を掻いている。どれくらいの時間、ここで剣を振っていたのだろうか。

「ハアハア、ハアハア……なにをやっているんだろう、私…………あ」
「お、おはよう」

 なにか悩み事を抱えているのかな?

「悩みとか不満があるなら、相談に乗ろうか?」

 女同士だからこそ言えない事だってあるだろうし……その場合の悩みとなると、あんまり想像つかないけれど。

「い、いえ! 私はもう上がるので、どうぞ使ってください!」
「ああ……ありがとう……」

 慌てた様子で出ていくクマム…………なんか俺……避けられてる?


●●●


「海が綺麗ね、リンピョンちゃん」
「紺碧の海という奴ですね、サトミ様!」

 昨日はもっと暗い感じの色だったけれど、今日の海の色はとっても綺麗!

「この海で良いムードを作って、なんとかコセさんを堕とせないかしら」
「なんでも協力しますよ、サトミ様!」

 リンピョンちゃんたら、本当に良い子ね。

 それにしても……なんで私は、こんなにもコセさんに執着しているのかしら?

 今までならすぐに飽きて、別の恋を探していたのに。

「コセさんが、私に全然振り向いてくれないからかしら?」

 ……ううん、それだけじゃない気がする。

 今まで私に告白してきた男子達と、なにかが根本的に違う気がするのよね。

 でも、それがなんなのかが全然分からない。

 まるでなにかが……理解させまいと阻んで居るかのように。

「ハアハア、ハアハア」

 船内から飛びだして来て、息を整え始めたのは……クマム?

「どうしよう……今の、絶対に変に思われた」

 彼女の頬は蒸気し、その悩ましげな憂い顔は……恋する乙女のそれに見える。

「どうかなさいましたか、サトミ様?」
「……ううん、なんでもないわよ」

 このままコセさんの相手が増え続けたら、私が入り込む余地が無くなっちゃうかも。

 ……そろそろ、本気で迫った方が良いのかもしれないわね。


●●●


「……なんだかな」

 船旅二日目の昼前……俺は暇をもてあましていた。

 本でもあれば、興味が無くてもそれらを読むのにと思ってしまう程に。

 ちなみに、モモカはメグミと一緒に釣りをしている。

 他の者は船内でゲームをするなり、料理をするなりして時間を潰しているようだ。

 俺も、なにかしら有意義に時間を使いたいのだが……朝練の続きか、泳ぐことくらいしか思いつかない。

 そのため、昨日と同じ水着でプール傍までやって来たわけだが。

「ヘイ! 次をよこしな!」

 昨日聞いた気がするセリフに視線を向けると、クリスが昨日とは別の水着で銃撃の練習を行っていた。

「クリス、今日もやってたのか」
「あら、コセさん。おはようぅございまーす!」

 もうすぐ昼だけれどな。

 ていうか、自分から外人に話し掛けるなんて、向こうにいた頃なら考えられない行動だ。

「リアルな銃、こんなに撃ち放題は初めてでぇすからねぇ」

 クリスが使っているのは……スコープの無いスナイパーライフルかな。

「銃を撃つのって……楽しい?」
「最初はぁ……怖かったです。音も大っきいし、万が一誰かを撃ってしまったらって……でも、撃っているうちに慣れてしまいまぁした。適応力……という奴ですかねぇ……」

 どこか悲しそうに吐露するクリス。

 それを言うのなら、俺だって剣を振ることに対する恐怖がいつの間にか無くなっていた。

 それが、良いことなのかどうかは分からないけれど、生きていくためには必要な事だったのは確かだ。

「コセさん……撃ってみまぁすか?」
「俺が?」

 確かに、銃には昔から興味はあったけれど。

「じゃあ、少しだけ」
「では、まずは安全装置セーフティーの解除からでぇすね」

 わざわざ弾を込め、安全装置を掛けてから渡してくれるクリス……意外と律義だ。銃を扱うなら、当然の心掛けなのだろうけれど。

「ありがとう」

 クリスからスナイパーライフルを受け取ると、銃身を向ける先に気を付けながら……俺は安全装置を解除した。

「ダンジョン・ザ・チョイス」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く