ダンジョン・ザ・チョイス
234.スケベな五人
夕方、全員が神秘の館に帰ってきて、本日の戦利品を並べたのだが……これは。
「“瀑布の指輪”が一個、“風化の指輪”が二個、“雷鳴の指輪”が二個、“灼熱の指輪”が三個で……“寒冷の指輪”が六個か。ここまで偏るとはな」
運良く四つのパーティーの花の色はばらけたようなのに、宝箱から手に入れた指輪が、俺のパーティーの”瀑布の指輪”以外、全て“寒冷の指輪”だったらしい。
しかも、もっとも必要の無かった“灼熱の指輪”が一番多くドロップしているし。
「“瀑布の指輪”が一個だけなのは痛いかな。うちのレギオン、水属性魔法を使う人間が多いし」
光と水属性特化のアヤナとスゥーシャのために、最低でも二つは欲しかった所だけれど。
「ままならないわね。この“瀑布の指輪”は、スゥーシャが使ってちょうだい」
「良いんですか、アヤナさん?」
「私は他の属性の魔法を幾つか使えるし、私以上に水属性特化のスゥーシャが使うべきよ」
「確かにその通りだね」
メルシュが、アヤナの理に適った主張を肯定した。
「では、遠慮無く使わせて頂きます」
「それにしても、サトミ達は中々良い魔法を手に入れてくれたみたいだね」
メルシュが五枚のスキルカードを広げる。
「天雷魔法のスキルカードはジュリー、颶風魔法のスキルカードはサトミで良いとして、氷光魔法のスキルカードはマリナに渡しちゃうか」
俺を蹴ろうとした、あの子の名前だったっけ。
「こ、こここの暁光魔法というのはなんですか?」
オドオドモードのカナが、メルシュに尋ねる。
「ちょっと特殊な魔法で、無属性なんだけれど光属性、闇属性に対してダメージを増加させる特殊効果があるんだよ」
「これ、わ、私が貰ってはダメでしょうか?」
珍しく積極的に欲しがるカナ。
「私は構わないかな」
「私も良いと思うよ。無属性だから、誰が使った方が良いとか無いしね。ただ、使いところが限定される魔法だから、サブ職業として使った方が良いかも」
「な、なるほど……ありがとうございます、ジュリーさん」
「“蒼穹魔法”も似たような魔法で、風属性なのに風属性の敵に強い魔法なんだよね」
「では、私に頂けないでしょうか!」
タマが挙手をした。
「“蒼穹を駆けろ”には“蒼穹強化”の効果もあるし、タマが使うのが一番良いかもね」
そんな感じで、全ての魔法スキルカードの持ち主が決まる。
「モモカ、これをローゼに渡してあげてくれ」
「分かった!」
「へ? なに、お菓子?」
モモカに渡したのは、海賊の宝物庫で手に入れた”リジェクトアタッチメント”。
「……もうちょっと女の子向けの物は無いの?」
そんな気の利いた物、そう簡単に用意出来るか。
「コセ……おんぶ」
「うん?」
モモカ、なんか落ち込んでる?
「良いよ」
モモカを抱き抱えて、優しく包み込むように座る。
「アイツ、そこらの女よりも聖母みたい」
「確かに」
アヤナとアオイがなにか言っていた。
「クマムちゃん、これ使って」
サトミさんがクマムに差し出したのは……緑のペンライト?
「へと……これってペンライトですよね?」
「”魔除けのペンライト“、Bランク。ジュリーちゃんが言ってたんだけれど、灯りにも使えるその他装備なんですって。アンデッドモンスター除けにも使えるし、光属性を少しだけ強くしてくれる効果もあるんですって!」
なんか、ペンライトだから押し付けようとしているように見えるんだけれど。
「あ、ありがとうございます」
まあ、クマムはその他装備が乏しかったはずだから、ちょうど良いだろう。
「メルシュちゃん、この指輪は誰に渡せば良い?」
今度はメルシュに声を掛けるサトミさん。
「“爆裂黒球の指輪”、Sランク……これは私が使う!」
メルシュが食い付いた。
「“金剛石の甲手”に“悪魔の翼のスキルカード”、“バーストアックス”、“古代の尖盾の指輪”……色々手に入っているが、イマイチレギオンメンバーに合わないな」
フェルナンダが、“灼熱の指輪”を受け取りながらメルシュに向かって語る。
「まあ、新しいメンバーを迎えるときに役に立つかも知れないし、新しい戦闘スタイルに変える人間が出て来る可能性だってゼロじゃないからね」
新しい戦闘スタイルか……今のところ、俺はなにも思いつかないな。
「そうそう! クリスちゃんがね、厨二病武器を手に入れたのよ!」
なぜか公開処刑を始めるサトミさん。
「へー、なんて名前なんだよ?」
「“甘い花弁の刹那”って言うんだけれど、どういう意味なのかしらね?」
ザッカルの問いにサトミさんが答えるも、確かによく分からない名前だな。
トゥスカの“荒野の黄昏の目覚め”とか、ユリカの“煉獄は罪過を払いけり”とか、他の人間の文字対応武器も大抵は情景が浮かぶうような名前なのに。
「「「「「あぁ……」」」」」
隠れNPC五人が同時に反応したけれど……なんか、凄い気まずそう。
「コセ、どういう意味?」
「……俺にもちょっと分からないな」
甘い花弁って所までなら、吸うと甘い花の事なのかなと思うんだけれど。
昔お爺ちゃんに教えて貰って、自分で摘んで吸ってた事があったな。
砂糖と違って、仄かな甘味と花の香りが美味しかった気がする。
「ローゼは分かったの?」
「女にとって、途轍もない一大イベブホッッ!!」
マリアが、ローゼに拳骨をお見舞いして黙らせた。
……刹那ってそういう事か。そりゃ気まずくなもなる。
「止めてくれてありがとうな、マリア」
「いや、身内が恥をさらす前に止めただけだ」
「どういうこと?」
モモカが純粋に尋ねてしまう!
「意味が分かると、コセに嫌われるかもしれないぞ」
「じゃあ、いいや」
マリア、モモカの扱いが上手い!
「この武器もガンソードタイプなのでぇ、私が使いたいでぇす! 構いませんかぁ?」
花で装飾されたような、変わった意匠の銃剣。片手で扱えるスナイパーライフルタイプに近いかな?
クリスには……黙ってよ。知らない方が良いこともあるさ。
それにしても、五人全員が一斉に気付くとは……さすがは同一人物。五人とも同レベルのスケベだ。
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