ダンジョン・ザ・チョイス
226.憂う魔性と飛躍の煉獄
「人数は足りていないけれど、レギオンに入った事でチュートリアルのレギオン戦を受けられるようになったから、みんな頑張ってね」
夜の例の庭園で、リョウ達から聞いていたとおり、メルシュという少女が色々教えてくれる。
隠れNPCという奴らしいけれど、モブのNPCと違って本当に生きているようにしか見えない。
「あの……今日、ユウダイは?」
「マリナだっけ? マスターなら、昼間の訓練で疲れちゃったみたいで、今日は来ないよ」
「「残念」」
コトリとリョウが、同時に落胆する。
この二人、中身はほとんど一緒だろう。
「あの……私のことについてなにか……」
「まだ思い出せないみたいだよ」
アイツ!!
「言いたいことがあるなら、私から伝えようか?」
「いや、結構だ」
この私を忘れるなんて……絶対に許さん!!
「出来るだけそっちの攻略状況は知りたいし、攻略を休む日以外は情報交換したいんだけれど、基本この時間で構わない?」
「はい、大丈夫です!」
「オッケーだよー」
「毎回全員で来る必要はないから、各々のパーティーから最低一人でも大丈夫だからね」
段取りよく進めていくな、この子。
……それにしても、コセが複数の女に…………ハァー……都会が、アンタをそんな風に変えてしまったのか。
●●●
「……久しぶり、アヤちゃん」
「うん、久しぶり……サトミ」
メルシュちゃんが話している横で、アヤちゃんと話す。
今のパーティーメンバーが気を利かせてくれたようで、メグミちゃんとリンピョンちゃんを含めた四人だけで話せる。
「元気だった?」
「うん……まあ」
やっぱり、パーティーから抜けたことに負い目を感じてるのかしら?
「アヤちゃん……私達のところに戻ってくる?」
「……ごめん。私はもう、リョウ達と一緒に行くって決めたから。たとえサトミ達に追い付いても……サトミのパーティーには戻れない」
「……そっか」
なんとなく、昨日の様子を見てて分かった。
なにがあったのか分からないけれど、アヤちゃんは私達に追い付くためじゃなくて、リョウさん達の力になるために行動を共にしているんだって。
「もし私達に追い付いたら、その時はまた一緒にご飯でも食べましょう」
「うん、サトミのご飯は美味しいもんね!」
「アヤさんは下手でしたしね」
「面倒くさいとか言って、全然手伝おうとしなかったよな」
「リンピョンもメグミも、シーッ! リョウに聞かれたらどうすんのよ!」
「……へー」
「ああ、やっぱりそうなんですか」
「予想通りだったわね♪」
やっぱりアヤちゃん、リョウさんに惚の字だったのね~!
「そ、そういうサトミはどうなったのよ! まあ、アンタのことだから、もうとっくに付き合ってるんでしょうけれど」
「…………」
「へ? どうしたの、サトミ?」
「聞いてやるな、アヤ」
「相変わらずデリカシー無いですね、アヤさんは」
「……へ? あの、先輩、後輩、同級生、年齢、性別に関係なく告られまくっていたサトミが、まだ口説き落とせてないの?」
「アヤちゃん――そろそろ怒るわよ?」
「ヒッ!! ご、ごめん!」
アヤちゃんのせいで、心の傷が広がっちゃったじゃない! もう!!
「そう言えば、カズマさん達は元気? ルイーサちゃん達に、聞いてきて欲しいって頼まれたんだけれど」
「それがね……アンタ達が居なくなってから一週間くらいしたあと……めでたく五人目が産まれたわよ!」
「「「本当に!!?」」」
そっか……カズマさん達、元気でやってるのね。
●●●
「ハアハア、ハアハア……神代文字を同時って……滅茶苦茶キツいんだけれど!」
「地味に、ご主人様が凄いことしてたって分かりました」
新たな神代文字対応武具を手にした二人は、昨日と同じ場所で、今朝から文字の同時刻みに励んでいる。
マスターユリカは杖と翼に、トゥスカさんは転剣と斧に。
「マスターもトゥスカさんも、この短時間で成功させているではありませんか」
コセさんは、同時に三文字刻めるまでに数日掛かったのに。
「ご主人様というお手本が居たので」
「やっぱ、出来る物だって確信があると頑張れるわよね」
だからこそ、最初になにかを成し遂げる、成功させるという行為は称えられる。
メルシュから出来ると伝えられていたとはいえ、お手本が居ない状況で成功させたのは、偉業と言っても差し支えないでしょう。
「それにしても、コセは三つ同時に九文字使えるのよね? さすがに、アレは出来る気がしないは」
「文字の色が変わったときは、三つ全てに十二文字刻んでいたようでしたけれど」
「大丈夫ですよ。お二人なら、いずれ同じステージまで届くでしょう」
むしろ、男よりも女性の方が、資質がある傾向がありますから。
「それにしても、ユリカはいつの間にか九文字刻めるようになってるのね」
「アンタに負けたくないし、コセにも引き離されっぱなしじゃ面白くないからね」
「旦那様との昨夜の触れ合いで、良き境地を垣間見ましたか?」
「…………うん、まあ」
初々しいマスター、可愛らしいですね♡
「なんか……経験してから身体の隅々まで意識を巡らせやすくなったって言うか、その感覚を意識すると、自然と九文字行けたのよね。ユイが普段ボーッとしてるのって、そういう感覚を常に感じ取ってるからなのかな?」
房中術という概念の、根底にある物の一つですね。
まあ、悪用する宗教の方が多いようですけれど。
古来より、悪徳宗教で女性が性被害に合う理由に使われてしまっている。
「なるほど……あ、さっきよりもスムーズに出来ました。これなら、同時に六文字行けそう」
「ちょ、狡いわよ! ヒント教えなさい! ヒントを!」
仲が宜しいですね、お二人は。
「武具を自分の身体の一部と捉えると、文字の力を浸透させやすくなりました。これを応用すると……」
トゥスカさんの黒い脚甲に、文字の光が注がれていく。
さすが、コセさんにもっとも寵愛される女性ですね。
……チャンスがあったら、私もシレイアみたいに誘ってみようかしら?
「……いえ、やめておきましょう」
そんなことしたら、いずれコセさんを傷つけてしまうことになるでしょうから。
「あ、私も行けた!」
昨日とは比べ物にならない程の力を、“トリニティーダークロッド”に注いでいるマスター。
この二人の潜在能力は、私が想定していたよりもずっと高いのかもしれない。
夜の例の庭園で、リョウ達から聞いていたとおり、メルシュという少女が色々教えてくれる。
隠れNPCという奴らしいけれど、モブのNPCと違って本当に生きているようにしか見えない。
「あの……今日、ユウダイは?」
「マリナだっけ? マスターなら、昼間の訓練で疲れちゃったみたいで、今日は来ないよ」
「「残念」」
コトリとリョウが、同時に落胆する。
この二人、中身はほとんど一緒だろう。
「あの……私のことについてなにか……」
「まだ思い出せないみたいだよ」
アイツ!!
「言いたいことがあるなら、私から伝えようか?」
「いや、結構だ」
この私を忘れるなんて……絶対に許さん!!
「出来るだけそっちの攻略状況は知りたいし、攻略を休む日以外は情報交換したいんだけれど、基本この時間で構わない?」
「はい、大丈夫です!」
「オッケーだよー」
「毎回全員で来る必要はないから、各々のパーティーから最低一人でも大丈夫だからね」
段取りよく進めていくな、この子。
……それにしても、コセが複数の女に…………ハァー……都会が、アンタをそんな風に変えてしまったのか。
●●●
「……久しぶり、アヤちゃん」
「うん、久しぶり……サトミ」
メルシュちゃんが話している横で、アヤちゃんと話す。
今のパーティーメンバーが気を利かせてくれたようで、メグミちゃんとリンピョンちゃんを含めた四人だけで話せる。
「元気だった?」
「うん……まあ」
やっぱり、パーティーから抜けたことに負い目を感じてるのかしら?
「アヤちゃん……私達のところに戻ってくる?」
「……ごめん。私はもう、リョウ達と一緒に行くって決めたから。たとえサトミ達に追い付いても……サトミのパーティーには戻れない」
「……そっか」
なんとなく、昨日の様子を見てて分かった。
なにがあったのか分からないけれど、アヤちゃんは私達に追い付くためじゃなくて、リョウさん達の力になるために行動を共にしているんだって。
「もし私達に追い付いたら、その時はまた一緒にご飯でも食べましょう」
「うん、サトミのご飯は美味しいもんね!」
「アヤさんは下手でしたしね」
「面倒くさいとか言って、全然手伝おうとしなかったよな」
「リンピョンもメグミも、シーッ! リョウに聞かれたらどうすんのよ!」
「……へー」
「ああ、やっぱりそうなんですか」
「予想通りだったわね♪」
やっぱりアヤちゃん、リョウさんに惚の字だったのね~!
「そ、そういうサトミはどうなったのよ! まあ、アンタのことだから、もうとっくに付き合ってるんでしょうけれど」
「…………」
「へ? どうしたの、サトミ?」
「聞いてやるな、アヤ」
「相変わらずデリカシー無いですね、アヤさんは」
「……へ? あの、先輩、後輩、同級生、年齢、性別に関係なく告られまくっていたサトミが、まだ口説き落とせてないの?」
「アヤちゃん――そろそろ怒るわよ?」
「ヒッ!! ご、ごめん!」
アヤちゃんのせいで、心の傷が広がっちゃったじゃない! もう!!
「そう言えば、カズマさん達は元気? ルイーサちゃん達に、聞いてきて欲しいって頼まれたんだけれど」
「それがね……アンタ達が居なくなってから一週間くらいしたあと……めでたく五人目が産まれたわよ!」
「「「本当に!!?」」」
そっか……カズマさん達、元気でやってるのね。
●●●
「ハアハア、ハアハア……神代文字を同時って……滅茶苦茶キツいんだけれど!」
「地味に、ご主人様が凄いことしてたって分かりました」
新たな神代文字対応武具を手にした二人は、昨日と同じ場所で、今朝から文字の同時刻みに励んでいる。
マスターユリカは杖と翼に、トゥスカさんは転剣と斧に。
「マスターもトゥスカさんも、この短時間で成功させているではありませんか」
コセさんは、同時に三文字刻めるまでに数日掛かったのに。
「ご主人様というお手本が居たので」
「やっぱ、出来る物だって確信があると頑張れるわよね」
だからこそ、最初になにかを成し遂げる、成功させるという行為は称えられる。
メルシュから出来ると伝えられていたとはいえ、お手本が居ない状況で成功させたのは、偉業と言っても差し支えないでしょう。
「それにしても、コセは三つ同時に九文字使えるのよね? さすがに、アレは出来る気がしないは」
「文字の色が変わったときは、三つ全てに十二文字刻んでいたようでしたけれど」
「大丈夫ですよ。お二人なら、いずれ同じステージまで届くでしょう」
むしろ、男よりも女性の方が、資質がある傾向がありますから。
「それにしても、ユリカはいつの間にか九文字刻めるようになってるのね」
「アンタに負けたくないし、コセにも引き離されっぱなしじゃ面白くないからね」
「旦那様との昨夜の触れ合いで、良き境地を垣間見ましたか?」
「…………うん、まあ」
初々しいマスター、可愛らしいですね♡
「なんか……経験してから身体の隅々まで意識を巡らせやすくなったって言うか、その感覚を意識すると、自然と九文字行けたのよね。ユイが普段ボーッとしてるのって、そういう感覚を常に感じ取ってるからなのかな?」
房中術という概念の、根底にある物の一つですね。
まあ、悪用する宗教の方が多いようですけれど。
古来より、悪徳宗教で女性が性被害に合う理由に使われてしまっている。
「なるほど……あ、さっきよりもスムーズに出来ました。これなら、同時に六文字行けそう」
「ちょ、狡いわよ! ヒント教えなさい! ヒントを!」
仲が宜しいですね、お二人は。
「武具を自分の身体の一部と捉えると、文字の力を浸透させやすくなりました。これを応用すると……」
トゥスカさんの黒い脚甲に、文字の光が注がれていく。
さすが、コセさんにもっとも寵愛される女性ですね。
……チャンスがあったら、私もシレイアみたいに誘ってみようかしら?
「……いえ、やめておきましょう」
そんなことしたら、いずれコセさんを傷つけてしまうことになるでしょうから。
「あ、私も行けた!」
昨日とは比べ物にならない程の力を、“トリニティーダークロッド”に注いでいるマスター。
この二人の潜在能力は、私が想定していたよりもずっと高いのかもしれない。
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