ダンジョン・ザ・チョイス
218.クリスティーナの告白と日本文化
「まずは、私からお話します」
朝食を終え、各々がコーヒーやお茶、食後のデザートを楽しんでいる場にて、クリスティーナが話し始める。
ちなみに、モモカはお腹いっぱいになったからか、俺の腕の中で眠ってしまった。
「クリスちゃん……昨日からやたら言葉が流暢になったわよね」
「そう言えば……」
サトミさんの指摘に、ナオ達が気付く。
「実は、あることが切っ掛けで、幼い頃からこっそり日本語を勉強していたのです。奴等に対抗……いえ、身を守れるかもと信じて」
「どういう意味だ?」
俺の疑問の言葉に、クリスが一度深呼吸して語り出す。
「私は、皆さんがデルタと呼ぶ集団に関連する一族の娘なのです」
空気が張り詰め、一部からは……特にザッカルとノーザンから強い殺気が放たれる。
「つまり、お前はデルタ側から送り込まれたスパイか」
ジュリーの向ける殺気は、ザッカル達よりも洗練されているかもしれない。
「それは違います。私はこのゲ-ムの存在を知りませんでしたし、そもそもデルタの存在を知ったのも偶然で、その事は家族にも隠していました」
「では、なぜわざわざ口調を変えた。自分を日本かぶれのアメリカ人だと思わせようとしたのではないのか? ルイーサみたいに」
「なぜそこで私を引き合いに出したんだ、フェルナンダ?」
「やっぱり、日本人かぶれだったの?」
「だと思ってた……予想通り」
「おい! アヤナにアオイも、そこそこ長い付き合いなんだから、いい加減信じろよ! 私は日本生まれの日本育ちだ!」
フェルナンダのボケのおかげで、空気が少し和らぐ。
「こっちの方がぁ、おしゃべりぃ楽々でぇす……ただ、日本語には力があり、低周波を好む存在、昨日現れたレプティリアンのような輩が嫌っているようなので、正しい発音を心掛けているのですよ」
そこで、レプティリアンが出て来るのか。
「そう言えば、レプティリアンの遺伝子がどうとか言ってたわね」
ユリカが尋ねる。
「日本ではあまり知られていないようですが、アメリカでは、レプティリアンの存在は公然の事実と捉えている者が少なくありません。そして、彼等には人間に擬態する能力があり、金髪碧目の白人がそうだという噂があったのです。私も、昨日までは半信半疑でしたが」
「それを言うのなら、人類のほぼ全てがなんらかの形で宇宙人の遺伝子を受け継いでいるけれどね」
まるでクリスを庇うように、メルシュが補足した。
「メルシュさん……」
「原種と呼ばれている者達ですら、地球の外から持ち込まれた遺伝子を百パーセント宿していないとは言えない……って言っても、前にこの話をした時に居なかった人も居るから、改めて話そうか」
メルシュの口から、改めて人類起源に関する話が簡単に語られていく。
★
「……なんか、気分悪くなってきた」
アヤナがゲンナリし始める。
「頑張れよ、お姉ちゃん」
「だってさー、知れば知るほど世の中のなにもかもが嫌になってくるんだけれど~……こんな事あり得るの?」
「小さな嘘はすぐバレるけれど、大きな嘘はバレない……って、よく言うでしょ」
メルシュが、どっかで聞いたことあるような言葉を口にした。
「食、音楽、薬、文化盗用のレッテル張りによる異文化の排除。考えれば考えるほど、世界のルールが人類を苦しめ、搾取するためにあると言って良いもんな」
日本人からすると、着物を着ただけで「それは文化盗用だ!!」と声高に叫ぶ人間の感性がよく分からないし。
「日本人は平均の周波数が高めだから、その文化に触れる人間が海外に増えるだけでも、奴等にとっては毒を空気中に散布されたような物なんだよ」
メルシュが言うように、文化に触れるだけで……なんて事があるのか?
外国人からすると、日本は異世界なんて話は聞いたことがあるけれど。
「そうは言うけれどさ……メルシュの話が本当なら、世界が宇宙人達によってとっくに支配されてるって事にならない?」
ユリカが、落ち込んだ様子で尋ねる。
「実行支配しているのは、たぶん地球人だよ。さっき話した、いわゆるダークワーカー達によってね。デルタそのものは基本地球人で構成されているはずだけれど、口出ししている宇宙人達は居るだろうね。低周波の住人は、知識はあっても自分達で物を作り出す技術力や、新しい物を生み出す発想力をほとんど失ってしまうから」
前々から思ってはいたが、メルシュを初めとする隠れNPCは、色々事情に詳しいよな。
トライアングルシステムからの知識なんだろうけれど、なんでデルタは、わざわざ自分達に不利になる情報をメルシュ達に与えているのか。
……ジュリーにデルタ側の協力者が居たように、奴等も一枚岩ではない……という事なのかな。
「それで、クリスはこれからどうするつもりなんだ?」
「なぜ私がこのゲ-ムに送り込まれたのか定かではありありませんが、成すべき事は一つです」
クリスが……真剣な目でこっちを見てる?
「コセさんを守り、このゲ-ムの終点まで送り届けます……この命を賭してでも」
――クリスの告白に、胸が高鳴ってしまった!!
これ、性別が逆だったら絶対惚れてるだろう。
「……なら、クリスさんは僕の同士です。よろしくお願いします」
ノーザンが席を立ち、わざわざ握手を求めた?
「ありがとうございます、ノーザン!」
……不穏な気配を感じるのは、俺だけだろうか。
「ハァー……コセは、クリスをどう思うの?」
ジュリーが困り顔で尋ねてきた。
「まあ、良いんじゃないか。これまで通り一緒に行動しても」
個人的には、あんまり好きじゃないけれど。
「……なんか軽すぎない?」
「なんとなく、クリスは信じても良いと思えるんだよ」
それで良いと、心から自然に思える。
やっぱり、昨日までの自分とは違う気がするな。
「ありがとうございます、コセさん!」
クリスが笑顔で礼を述べた。
「次ペドファイル呼ばわりしたら、絶対に許さんけどな」
「それは、日本のお笑いでいうフリという奴ですかぁ?」
「違う」
そもそも俺、基本的にお笑い芸人とかお笑い番組嫌いだし。
テレビだからって、人として許される範囲の度を超えている事がしょっちゅうだから。
あんな風に他人を辱めて貶めてでしか笑いを取れないなら、そんな業界はさっさと滅べば良い。
……昨日までなら、こんなにハッキリ無くなれば良いなんて思わなかったはずなのに……。
「お笑い番組……フ! あんな虐め助長集団、みんな死ねば良いのよ」
カナさん、いったいなにがあったの? 前髪で唇以外見えないから、余計に恐いんだけれど。
呪詛で誰かを呪い殺せてしまいそうで、本当におっかないぞ!
「クリスの話しはこれで終わりだな……なら、次は私が話ても良いかな」
「ああ……頼む」
メグミが声をあげると、ルイーサの促す言葉が……固い声で発せられた。
朝食を終え、各々がコーヒーやお茶、食後のデザートを楽しんでいる場にて、クリスティーナが話し始める。
ちなみに、モモカはお腹いっぱいになったからか、俺の腕の中で眠ってしまった。
「クリスちゃん……昨日からやたら言葉が流暢になったわよね」
「そう言えば……」
サトミさんの指摘に、ナオ達が気付く。
「実は、あることが切っ掛けで、幼い頃からこっそり日本語を勉強していたのです。奴等に対抗……いえ、身を守れるかもと信じて」
「どういう意味だ?」
俺の疑問の言葉に、クリスが一度深呼吸して語り出す。
「私は、皆さんがデルタと呼ぶ集団に関連する一族の娘なのです」
空気が張り詰め、一部からは……特にザッカルとノーザンから強い殺気が放たれる。
「つまり、お前はデルタ側から送り込まれたスパイか」
ジュリーの向ける殺気は、ザッカル達よりも洗練されているかもしれない。
「それは違います。私はこのゲ-ムの存在を知りませんでしたし、そもそもデルタの存在を知ったのも偶然で、その事は家族にも隠していました」
「では、なぜわざわざ口調を変えた。自分を日本かぶれのアメリカ人だと思わせようとしたのではないのか? ルイーサみたいに」
「なぜそこで私を引き合いに出したんだ、フェルナンダ?」
「やっぱり、日本人かぶれだったの?」
「だと思ってた……予想通り」
「おい! アヤナにアオイも、そこそこ長い付き合いなんだから、いい加減信じろよ! 私は日本生まれの日本育ちだ!」
フェルナンダのボケのおかげで、空気が少し和らぐ。
「こっちの方がぁ、おしゃべりぃ楽々でぇす……ただ、日本語には力があり、低周波を好む存在、昨日現れたレプティリアンのような輩が嫌っているようなので、正しい発音を心掛けているのですよ」
そこで、レプティリアンが出て来るのか。
「そう言えば、レプティリアンの遺伝子がどうとか言ってたわね」
ユリカが尋ねる。
「日本ではあまり知られていないようですが、アメリカでは、レプティリアンの存在は公然の事実と捉えている者が少なくありません。そして、彼等には人間に擬態する能力があり、金髪碧目の白人がそうだという噂があったのです。私も、昨日までは半信半疑でしたが」
「それを言うのなら、人類のほぼ全てがなんらかの形で宇宙人の遺伝子を受け継いでいるけれどね」
まるでクリスを庇うように、メルシュが補足した。
「メルシュさん……」
「原種と呼ばれている者達ですら、地球の外から持ち込まれた遺伝子を百パーセント宿していないとは言えない……って言っても、前にこの話をした時に居なかった人も居るから、改めて話そうか」
メルシュの口から、改めて人類起源に関する話が簡単に語られていく。
★
「……なんか、気分悪くなってきた」
アヤナがゲンナリし始める。
「頑張れよ、お姉ちゃん」
「だってさー、知れば知るほど世の中のなにもかもが嫌になってくるんだけれど~……こんな事あり得るの?」
「小さな嘘はすぐバレるけれど、大きな嘘はバレない……って、よく言うでしょ」
メルシュが、どっかで聞いたことあるような言葉を口にした。
「食、音楽、薬、文化盗用のレッテル張りによる異文化の排除。考えれば考えるほど、世界のルールが人類を苦しめ、搾取するためにあると言って良いもんな」
日本人からすると、着物を着ただけで「それは文化盗用だ!!」と声高に叫ぶ人間の感性がよく分からないし。
「日本人は平均の周波数が高めだから、その文化に触れる人間が海外に増えるだけでも、奴等にとっては毒を空気中に散布されたような物なんだよ」
メルシュが言うように、文化に触れるだけで……なんて事があるのか?
外国人からすると、日本は異世界なんて話は聞いたことがあるけれど。
「そうは言うけれどさ……メルシュの話が本当なら、世界が宇宙人達によってとっくに支配されてるって事にならない?」
ユリカが、落ち込んだ様子で尋ねる。
「実行支配しているのは、たぶん地球人だよ。さっき話した、いわゆるダークワーカー達によってね。デルタそのものは基本地球人で構成されているはずだけれど、口出ししている宇宙人達は居るだろうね。低周波の住人は、知識はあっても自分達で物を作り出す技術力や、新しい物を生み出す発想力をほとんど失ってしまうから」
前々から思ってはいたが、メルシュを初めとする隠れNPCは、色々事情に詳しいよな。
トライアングルシステムからの知識なんだろうけれど、なんでデルタは、わざわざ自分達に不利になる情報をメルシュ達に与えているのか。
……ジュリーにデルタ側の協力者が居たように、奴等も一枚岩ではない……という事なのかな。
「それで、クリスはこれからどうするつもりなんだ?」
「なぜ私がこのゲ-ムに送り込まれたのか定かではありありませんが、成すべき事は一つです」
クリスが……真剣な目でこっちを見てる?
「コセさんを守り、このゲ-ムの終点まで送り届けます……この命を賭してでも」
――クリスの告白に、胸が高鳴ってしまった!!
これ、性別が逆だったら絶対惚れてるだろう。
「……なら、クリスさんは僕の同士です。よろしくお願いします」
ノーザンが席を立ち、わざわざ握手を求めた?
「ありがとうございます、ノーザン!」
……不穏な気配を感じるのは、俺だけだろうか。
「ハァー……コセは、クリスをどう思うの?」
ジュリーが困り顔で尋ねてきた。
「まあ、良いんじゃないか。これまで通り一緒に行動しても」
個人的には、あんまり好きじゃないけれど。
「……なんか軽すぎない?」
「なんとなく、クリスは信じても良いと思えるんだよ」
それで良いと、心から自然に思える。
やっぱり、昨日までの自分とは違う気がするな。
「ありがとうございます、コセさん!」
クリスが笑顔で礼を述べた。
「次ペドファイル呼ばわりしたら、絶対に許さんけどな」
「それは、日本のお笑いでいうフリという奴ですかぁ?」
「違う」
そもそも俺、基本的にお笑い芸人とかお笑い番組嫌いだし。
テレビだからって、人として許される範囲の度を超えている事がしょっちゅうだから。
あんな風に他人を辱めて貶めてでしか笑いを取れないなら、そんな業界はさっさと滅べば良い。
……昨日までなら、こんなにハッキリ無くなれば良いなんて思わなかったはずなのに……。
「お笑い番組……フ! あんな虐め助長集団、みんな死ねば良いのよ」
カナさん、いったいなにがあったの? 前髪で唇以外見えないから、余計に恐いんだけれど。
呪詛で誰かを呪い殺せてしまいそうで、本当におっかないぞ!
「クリスの話しはこれで終わりだな……なら、次は私が話ても良いかな」
「ああ……頼む」
メグミが声をあげると、ルイーサの促す言葉が……固い声で発せられた。
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