ダンジョン・ザ・チョイス
211.アルファ・ドラコニアン
”泰然なる高潔の哮り”の砲身から撃ち出し、わざと武器で受けさせて、あらかじめ召喚していた”竜剣”で首を刎ねていく!
首は狙いづらいが、他が鎧で覆われていて仕留めづらいからな。
「マスター! リーダーらしき奴が出て来たよ!」
メルシュの声が聞こえた数秒後、突如背後に衝撃を感じて――――身体を吹き飛ぶされる!!?
「アイツの仕業か!」
管のような流線型のヘルメットを被った、一回り大きいリザードマン。
奴をさっさと始末して陣形を組み直さないと、命を落とす者が現れるかもしれない!
「”竜光砲”!!」
左腕の”ドラゴンの顎”から、総TPの半分を消費して光を撃ち出す!
「なに!?」
私の攻撃を、見えない壁で弾き飛ばした!?
「――な!?」
今度は身体が勝手に、奴に引き寄せられる!!
「”超竜撃”!!」
竜の意匠のある、コセのブラウンの大剣の一撃が異形のリザードマンに迫るも――すんでで防がれてしまう!
だが、おかげで私の身体に掛かっていた力から解放された!
それに、衝撃を全て抑え込むには一瞬遅かったようで、ヘルメットの一部が弾け……罅が入って割れ落ち…………ッ!!
《あーあ。汚染された空気を吸いたくなくて、わざわざ用意させたって言うのに。だが、この星の空気はだいぶマシだな》
「……アルファ……ドラコニアン…………」
なんで……コイツがこんな所に居るんだッッ!!?
●●●
ヘルメットが壊れて、リザードマンよりもトゲトゲしい蜥蜴顔を顕わにした瞬間――凄まじい怖気が襲ってきたッ!!?
《あーあ。汚染された空気を吸いたくなくて、わざわざ用意させたって言うのに。だが、この星の空気はだいぶマシだな》
「……アルファ……ドラコニアン…………」
わけの分からない発言が頭に直接響いたと思ったら……メグミさんが奴の名を口にした?
《貴様、見ただけで俺の正体に気付くとは……何者だ?》
「くッ!!」
いつも泰然としているメグミさんが……怯えている?
もしかして、メグミさんの前世に関係しているのか?
《そこのガキを食うために協力してやっただけだったが、面白い人間が居るな! ハハハハハハ!!》
コイツ! モモカを食い殺すつもりだったのか!!
「さ、させるか!」
クソ! 勝手に声が震える!
この世界に来てから、この症状が出たのは初めてだ。
《貴様らの肉に興味はない。汚染物質を大量に摂取した、腐りきった身体の貴様らにはな!》
「も、モモカを連れて逃げろ、コセ!! コイツは最強のレプティリアン種、アルファ・ドラコニアン!! シーカーが遺伝子操作で作り出した、宇宙最強の戦闘種族だ!!」
リザードマンのリーダーを倒さないとクエストを終われない状況なのに、逃げることを進言してくるメグミさん!?
それだけ、今のメグミさんは冷静な判断が出来るような状態じゃないということ!
なんとかみんな、パーティーメンバーごとに集まって、大量のパラディンリザードマンに対処してくれている。
今のうちに、俺とメグミさんでコイツを仕留めなければ!
《お前は地球人。それも、日本人とかいう原種の残りカスの一族か? なぜ我々について知っている!》
メグミさんに注意が向いているうちに、仕留める!
「装備セット1!」
神代文字をフルに生かすため、”サムシンググレートソード”と”偉大なる英雄の光剣”を手にし、光の刀身を生成!!
更に、二振りの剣に神代文字を三つずつ刻む!
《なる程。貴様が、奴が言っていたライトワーカーの一人か。再びライトワーカーの戦士と戦える日が来るとは! いつぞやの、日本で同胞を殺された借りを返してくれる!!》
「日本で?」
《奴等に邪魔されたせいで、俺達はたった数百人しか殺していないのに、同胞を何人も失ったのだ!! 腐りきった地球人の分際でな!!》
「――があぁぁああッッッ!!!」
咄嗟に剣を交差させて、見えない衝撃を防いだ!!
《さすがに勘が良いな! ライトワーカー!!》
――姿が一瞬で消えて――――背後に居るッ!!
「”拒絶領域”ッ!!」
恐怖がそうさせたのか、意識するよりも早くスキルを行使していた!
三文字だけじゃ、まるで太刀打ち出来ない!!
《この世界特有の力だったか? アクァッホごときが、面倒な法則を組み込んでくれた物だ。なら、俺も使わせて貰おう! 装備セット1》
「な!?」
赤い石の、無骨な片刃の大剣を手にした!!?
《食前運動と――行こうかぁぁッ!!》
――あっという間に距離を詰められて――――斬られ――
「”深淵盾術”――アビスバニッシュ!!」
ドラコニアンの剣を、メグミさんが弾いて後退させてくれた!!
「ありがとうございます、メグミさん!」
「礼はいいッ!! 気を抜くな!」
メグミさんの身体は……まだ震えていた。
《良いぞ! もっと俺を楽しませろ! 同族で殺し合う、野蛮で下等な地球人共!!》
「地球人同士が殺し合うように仕向けたのは、元を辿ればお前達だろうが!!」
《それが、我々が王族たるシーカーから受けた命だったのでな! だが、あんなにも容易く同族を殺せるようになるなど、地球人が元来野蛮でなければ説明がつかんだろう!》
「自分達は同族と戦争をすることはないから……とでも言いたげだな! 儀式と称して、同族を殺し合わせるくせに!」
《崇高なるシーカーが、勲をたてんとす儀式を愚弄するか、下等種族ごときが!!》
「地下に籠もって、支配した宇宙人や地球人を使って子供を貢がせている分際で……」
《随分こちらの事情に詳しいじゃないか……もしや貴様、シーカーの裏切り者の転生者か?》
メグミさんはかつて、自分はレプティリアンだったと言っていた。
「……さあな! 拒絶の腕ッ!!」
緑の左巨腕を出現させ、駆けるメグミさん!?
「”回転”ッ!!」
巨腕を回転させ、ドラコニアンに向かって打ち込む!!
「――ああああああああッッッッ!!!」
ドラコニアンが一瞬で回り込んで、横合いから背へと回し蹴りを叩き込みやがった!!
《前世がシーカーであろうと、遺伝子が劣等種ならば敬う必要もあるまい。愚かなる魂の旅を選択した間抜けよ!》
「お前ッ!!」
ビビってる場合じゃない! 立ち向かわなきゃ――全員殺されるッ!!
《引っ込んでいろ、ライトワーカー!!》
――また、身体が後ろに引っ張られるッ!!
「殺らせない……お前達とは違って……地球人にはまだ、可能性が残されているのだから!!」
メグミさんが、震えながらも猛々しく叫ぶ!
《我等レプティリアンを――愚弄するなぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!》
「――ガハぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!!」
メグミさんが……ゴミのように踏み付け――――
「――フざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」
”サムシンググレートソード”、”偉大なる英雄の光剣”、”偉大なる英雄の鎧”にそれぞれ九文字を刻み――見えない力を吹き飛ばして斬り掛かる!!
《なに?》
両手の剣を同時に振り下ろすも、見えない力を剣に集中して纏わせたようで、受け止められてしまう!!
「”二重武術”」
《チィ!!》
見失いそうになるほどの速度で移動し、距離を稼がれる。
《……良いだろう、先にお前から始末してやる》
「さっさとこの世から消えろ、ゴミ以下の劣等種」
激情と青い奔流に任せ口にしたのが、その言葉だった。
《……腐りきった肉体でゴミのように生きている――――奴隷風情がぁぁぁッッッ!! 舐めた口を利くなぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!!》
無神経な怒気をこれでもかと顕わにする、可能性が存在しない劣等種、アルファ・ドラコニアン。
《くたばれぇぇぇぇ!!》
「おおおおおッ!!」
武具に纏わせた神代の力と、宇宙最強の劣等種の力が――――ぶつかり合う。
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