ダンジョン・ザ・チョイス
210.突発クエスト・地上へと這い出る者共を討伐せよ
若干の愉悦混じりの、男の声が響く。
『突発クエストは、地上へと這い出る者共を討伐せよだ。リーダーに率いられたパラディンリザードマンの軍勢、四百体を相手にしてもらう』
「パラディンリザードマン!? 五十ステージより後に出て来るモンスターだぞ!」
ジュリーが焦っている? それだけ厄介なモンスターということか。
『リーダーが倒されればクエストはクリア。だが、それまでにパラディンリザードマンを全滅させれば、オールランクアップジュエルを40個プレゼントさせて貰う』
「オールランクアップジュエル……どの装備アイテムでもランクアップさせられる希少アイテム。随分大盤振る舞いだね……」
メルシュの顔が険しくなる。
報酬が良いって事は……厄介な仕掛けがありそうだな。
『君達が村の中心地に辿り着いたとき、クエストは開始される。ちなみに、魔法の家に戻るのも建物の中に入るのも、クエストを終えるまで不可能だ』
猶予を与えているようで、全然与えていない。
クエストに挑まなければろくに休むことも出来ないし、せいぜい出来るのは、装備を見直すか心の準備をしておくくらいか。
「各々のパーティーリーダーは、準備が出来たら教えてくれ」
「コセ……」
モモカが手を引いてきた?
「どうした?」
「……オシッコ」
脚をモジモジさせている。
「ボス戦の前に行かなかったのか?」
「行ったけど……」
小さいうちは、身体に溜められる量が少ないもんな。
「……やっぱりペドファイル」
「お前、ちょっと黙ってろ」
「ご、ごめんなさぁい……コセさん恐いでぇす」
クリスめ……俺を嫌っていないのは分かるが、謂われのない発言をしないで欲しい!
「モモカ、これを使って」
トゥスカが、外からは見えない簡易トイレを用意してくれる。
魔法の家を手にしてからはあまりお世話にならなくなった、低級のチケットで交換できるトイレ。
そう言えば、低級のチケットは貯まる一方だな……あり過ぎて困るという事もないけれど。
「他人に尿意を訴えるなんて、モモカはまだまだエレガントなレディーには程遠いわね」
「幼い子にオシッコを我慢させようとするなよ。下手したら死にかねないくらい身体に悪いんだから」
ローゼの発言にツッコんでくれるマリア。
俺が言ったらまたペドファイルとか言われそうだから、マリアには感謝だな。
……尿意や便意で誰かにからかわれたりすると、恥ずかしさで無理に身体に我慢させて、便秘体質になったり、最悪尿の我慢のしすぎで膀胱が破裂したり、便を詰まらせて死ぬことだってある。
便通が悪くなれば鬱を誘発し、免疫能力の低下による感染症リスクも増加。
他人にストレスやトラウマを与えるという行為は、世間的な認識よりもずっと重い。
★
モモカが用を足し終える頃には、全員の準備が完了。
村の、荒れた土地の中央へと向かう。
「パラディンリザードマンは”思念障壁”というスキルを持っていて、一度だけ武術、魔法による攻撃を完全に防ぐから注意して」
メルシュから説明を受けながら移動していると、機械的な女性の声が響いた。
『突発クエストを開始します』
集まったのは俺達だけ……やっぱり、この貧村に他のプレーヤーはいないんだな。
つまり、今回も俺達のレギオンが狙い撃ちにされたわけだ。
もしかしたら、スゥーシャの姉に挨拶出来るかもと思っていたのだけれど。
「来たようです」
ノーザンの声が合図であったかのように、村の周りの穴から青黒い肌のリザードマンタイプのモンスターが這い出てくる。
ただし、第一ステージなどで遭遇したリザードマンより一回り大きく、金の装飾の入った銀の鎧を身に着けていた。
手にしている武器もバラバラで、同じ戦い方が通用するほど甘くはなさそうだ。
「予定通り乱戦は避け、この場所を防衛拠点と考えて対処! パーティーメンバーごとにまとまって行動しろ!」
這い出てきたパラディンリザードマンから駆け出し、攻撃を仕掛けてくる。
「接近される前に一撃いれて、無効能力を消費させて! ”万雷魔法”、トワイライトスプランター!!」
「”氷獄魔法”、コキュートス!!」
「”颶風魔法”、ストームダウンバースト!!」
「”混沌魔法”、カオススター!!」
「”煉獄魔法”、インフェルノ!!」
「”光線魔法”、アトミックシャワー!!」
「”氷炎魔法”、アイスフレイムバレット!!」
ジュリーの魔法を皮切りに、リンピョン、サトミ、メルシュ、ユリカ、アヤナ、ナオの魔法が放たれ、障壁をわざと展開させる。
たまたま二種の魔法を浴びた個体もいたが、倒せたモンスターは一体も居ない。
「”飛王剣”!!」
先頭のパラディンリザードマンにぶつけるも、ブラウンの大斧で防がれてしまう!
思っていた以上に手強そうだ!
「”逢魔転剣術”、オミナスブーメラン!!」
トゥスカが”荒野の黄昏の目覚め”を投げるも、リザードマン二体に受け止められる。
「”回転術”――ハイパワーローリング!!」
橙のV字ブーメランを高速回転させ、威力を増強させた!?
メルシュが言っていた、”回転術”と”転剣術”を組み合わせた強化方法って奴か!
逢魔の暴威と組み合わせたのもあり、二体のパラディンリザードマンが両断され、光に還っていく。
「予想よりも強いぞ、コイツら!」
黒い剣槍である”巨悪を穿て”と”レーザーソード”を同時に振るって、パラディンリザードマンを確実に葬っていくザッカル。
「”禍鎌切”!!」
ザッカルを狙って攻撃モーションに入ったリザードマンの首を、カナが的確に狙って切り裂いた。
「サンキュー、カナ!」
「どう致しまして!」
意外と息が合ってるな、この二人。
「思考ルーチンが想定よりも優秀だ! 初撃は確実に防がれると思え!」
”精霊魔法”でウンディーネを呼び出し、黒い短剣を手に戦っているフェルナンダが、注意を呼びかけてきた。
俺も、”サムシンググレートソード”と”グレイトドラゴンキャリバー”で迎撃していく!
持久戦になりそうな以上、文字の力に頼りすぎるわけにもいかないけれど……追い詰められる前に、俺だけ力を使って数を減らすというのも手か。
「マスター! リーダーらしき奴が出て来たよ!」
メルシュの言葉に周囲を窺うと、機械的なヘルメットを付けた、赤黒い体表の……リザードマン?
リザードマンにしては他の個体よりも筋骨隆々で、硬そうな鱗に覆われ、姿勢というか……基本的な骨格そのものが違うような。
――ヘルメットのリザードマンが跳躍し、円陣の中央に飛び込まれ――――全員の身体が、勝手に投げ飛ばされた!!?
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