ダンジョン・ザ・チョイス

魔神スピリット

205.エレクトリックメガイール

「みんな、狙ってたのが来そうだよ!」

 メルシュが警告を出す!

 さっきまで殆ど揺れることなど無かった雷が迸る泥の河が、次第に激しく水面を揺らしていく!


『――ギョエエエエエエエェェェェェェェェェェェェェェェッ!!』


 雷を迸らせる、見えているだけでも十メートルを超えるであろう巨大電気ウナギ

 雷属性で河を攻撃していると稀に登場するという、規格外のレアモンスターらしい

「”エレクトリックメガイール”。上位種も存在するけれど、それでもかなり厄介なモンスターだよ!」
「雷と水属性は効かない! 打ち合わせ通り、遠距離攻撃のみで戦って!」

 メルシュとジュリーの指示に従い、散開する!

「”飛王剣”!!」

 ”サムシンググレートソード”に神代文字を三文字刻み、斬撃を飛ばす!

『ギエエエエエエッッッ!!』

「纏っている雷のせいで、威力を削られているな」

 聞いてはいたけれど、予想よりもかなり厄介そうだ。

「”金星球”、”回転”!!」

 ジュリーの生み出した金属球が直撃するけれど、アレだけじゃ大したダメージには――

「”エレクトリックメガイール”の電気を吸収して、威力を増大させている?」
「雷に特化させた際の弱点も補える戦術……さすが、オリジナルのゲーム経験者か」

 ルイーサが感心している。

「”竜光砲”!!」
「「”魔力砲”!!」」

 メグミさんとトゥスカ、サトミさんによる高威力の砲撃が直撃する!

『ギョエエエエエエエエェェェェェェェェッッッ!!!』

「全員、防御して!!」

「”神代の盾”!」

 メルシュの合図にそれぞれが防御体勢を取ると、空中の広範囲に雷が迸る!
 
「”二重魔法”、”星屑魔法”――スターダストシュート!!」
「”悪穿ち”!!」
「”竜技”、ドラゴンブレス!!」
「”氷獄魔法”、コキュートスレイ!!」

 ユリカ、ザッカル、モモカ、リンピョンの攻撃が炸裂する!

「”飛剣・暗閃”!!」

 カナは、いつの間にかあの如何わしい格好になって、鎌を振るっていた。

「大きいけれど細長いし、結構動き回るから狙いを付けられないわね!」
「私じゃ役に立てなさそう」

 アヤナ、アオイ、フェルナンダ、ルイーサはなかなか攻撃に参加できずにいる。

 何気にあのパーティー、アヤナ以外は長距離攻撃手段が無いのか。

「”薔薇魔法”――ローズレーザー!!」
「”大弓術”――ハイパワーアロー!!」

 クリスの青薔薇からの光線と、シレイアの強弓が炸裂する!

「――”植物操作”!!」

 皆の攻撃でようやく河の片側に追い詰めたことで、ヨシノが能力で自生していた植物を操り、拘束することが出来た。

「全員離れて!! ”隕石魔法”――――コメット!!」

 発動から落下まで時間が掛かり、空のある野外でしか使用できない魔法を、メルシュが行使。

 使いどころの難しい最強クラスの威力を持つという魔法が、エレクトリックメガイールに直撃する!!


『――ギョアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!』


 異様にタフだった”エレクトリックメガイール”の身体は、僅かに海面から除く肉片以外……綺麗に消し飛んだ。

「魔神よりも厄介だったな」
「ちょっとタフ過ぎますね、ご主人様」

 あんなのが集団で襲ってきたら、文字の力を全開にしても勝てるかどうか。

「――なんだ、この感じ?」
「ご主人様……今のは」

 神代文字の奔流に似たなにかが、タマ達が居るはずの進行方向から感じた……気がする。


            ★


「オーイ!!」

 巨大電気ウナギ討伐からおよそ十分後、空中に居るタマとスゥーシャを発見。

「「あ」」

 二人がボーッとした様子でこちらを覗い……なんか、どっちも顔が赤い?

「二人とも、怪我は無いか? さっきコッチの方から凄い気配がしたけれど?」

「「それは…………ッ♡!!」」

 互いが顔を見合わせると、まるで初々しいカップルのように視線を背けた?

「なにかあったのですか?」

 トゥスカが何気なく尋ねる。

「「な、なにも無いです!!」」

 二人の拒絶感が凄い。

「フフフフフフ、なにかあったみたいね~♪」

 サトミさんがイヤラしい気を放っている。

「これは、夜通しで尋問せねばなりませんね、サトミ様!」
「ガールズトーク、ですねぇ! オケ、わたぁしも、参戦でっす!」
「……お前ら」

 メグミさん以外の、サトミパーティー御一行がノリノリだ。

 やっぱり、あのパーティーのメンバーはヤバいな。


            ★


「そっか。パイレーツは《日高見のケンシ》に取られちゃったか。入手条件が、レギオンメンバーだけで三体のエレクトリックメガイールを討伐するって物だったはずだけれど……やっぱり規格外だね」

 メルシュが賞賛している。

「というか、アテル達と一緒にいた人魚がスゥーシャのお姉さんだったとは」

 あの日、二人の眼差しが重なった理由が分かった気がする。

「姉さん達とお知り合いだったのですか?」
「お姉さんとはすれ違った程度だけれど、アテル達一派とは一度やり合った事もある」

 完敗だったけれど。

「マスター、そろそろスゥーシャとクマム、ついでにカナにも、例の話しをしとこうか?」

 メルシュが尋ねているのは、アテル達の目的について。

 その辺を話すと、俺達が観測者側に狙われている事まで話すことになるけれど……ま、いっか。三人とも信用できそうだし。

「そうだな……そうしよう」
「ご主人様達、どうやら来るようですよ」

 雷のエフェクトが発生している河が、盛り上がっていく!

「レアアイテムも欲しいし、当初の予定通りエレクトリックメガイールのマラソンはするよ、みんな!」

 ジュリーが指示を出す。

「あのタフな電気ウナギを、何度も討伐しなきゃいけないのか」

 ユリカがそう思うのももっともで、古生代モンスターと同じく、討伐するのが難しい部類のモンスターらしいからな。

 実際、かなり打たれ強かったからな。

「”電気ウナギのお肉”って、とっても美味しいらしいわよ? 鰻重に使われるウナギとは、肉質は全然違うらしいけれど」

 サトミさんが、急になにか言いだした。

「「「ゴクリ」」」

 ……なんか、生唾を飲み込む音が複数聞こえた気が。

『ギョエエエエエエエエェェェェェェェェッ!!』

 みんなの苛烈な攻撃により、さっきよりも早く……というかあっという間に倒される巨大電気ウナギ。

 みんな……食い意地張りすぎじゃないですかね。

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