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ダンジョン・ザ・チョイス

魔神スピリット

195.模造天使の楽園

「右の暗い道が”模造竜の寝所”、左の明るい方が”模造天使の楽園”だよ。パーティー別に行動しなきゃならないから気を付けてね」

 クリス達に色々話してしまった昼過ぎ、第十二ステージの攻略を進めるため、安全地帯の草原の中で改めて皆に説明し終える。

「……ハァー」

 やっちゃった……気を付けていたつもりだったのに。

「メルシュ。コセ様の世界に干渉してきた宇宙人の一つはアクァッホ。間違いないか?」

 ノーザンがやって来て、囁いた。

「たくさん居るうちの一つってだけだけれど、デルタの主流はアクァッホ由来の者が多いとされているわ」

 ため、認識違いを起こしている可能性もゼロじゃない。

 だから、私の想定通りに皆を動かせば上手くいくとは限らないんだよね。

「そうか……分かった」

 それだけ言い、去って行くノーザン。

 ……クリスやナオに問い詰められて話しちゃったのも、一つの導きなのかもしれないし。

 今回の件で、取り返しのつかない不和が発生しなければ良いけれど……これじゃ、私が低い周波数を発してしまうな。

「メルシュ」
「……マスター」

 コセに……頭を撫でられてる。

「なに、急に?」
「なんとなくだよ」

 マスターの撫で方……優しい。

「そろそろ私達も行きましょう。ご主人様、メルシュ」

 トゥスカが、気遣い気味に提案してきた。

 やっぱり、この二人は別格かもしれない。


◇◇◇


『起きろ、アルファ・ドラコニアン』

《アクァッホの末裔如きが、この俺に命令しているのか!!》

 真っ暗な部屋で、磁力によって繋がれている醜い蜥蜴男。

 姿を見せずに語るのは、奴等、ドラコニアンには念能力があるからだ。

『最強の戦士の種族、アルファ・ドラコニアン。ククククク! その中でも最下級の分際で、偉そうに。いったい、いつまで我々を餌だと考えているのだ?』

《貴様らに、餌以外の価値があるのか? 初耳だな》
『私の名はオッペンハイマー。部下の方から、ドラコニアンを使いたいと打診されてね』
《良いから餌を持って来いッ!! 十歳以下のガキの肉を!! これまで通り、俺達に献上するが良い!!》

『アハハハハハハハハ!! 幼子の需要は多岐に渡る。もうお前達の餌に回す分は無い。最近は、幼児を使った不老不死の研究が盛んでね』

《異星人から集めた技術を利用しておいて、まだそんな物すら作れていないのか? やはり下等種族だな!!》

『ククククク! 耳が痛いね~。そんなに生きた人間の肉が食いたいなら、私の部下に協力してやってくれないか? 上手くいけば、七歳の女の子を食べられるぞ』

《……ほお?》

 しょせん、低周波の中でしか生きられない野蛮な蜥蜴か。

『それも、その子はレプティリアンの王族、シーカーの血を引く雑種だ』

《ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!! 貴様、この俺に王族を食えと言っているのか?》

『下等種族との世代を重ねた雑種。なにか問題が?』

《良いだろう、乗ってやる! 今回だけだがな!!》
『彼女の傍には、ライトワーカーと思われる者達が複数居る。数人ほど始末してくれると助かるね』

《この俺に、あのくだらぬゲームに参加しろと? ククククク! 確かに、この世界の軍隊よりも戦い甲斐はあるかもな!》

 さすが最強の戦闘種族、食い付いたか。

『では、宜しくお願いしようか』

 拗れるようなら上下関係を分からせる必要があるかと思っていたが……面白い。

『さて、いったい何人死んでくれるかな?』


●●●


 トゥスカ、メルシュ、クマム、スーシャ、なぜかクリスと一緒に、六人で左の道、”模造天使の楽園”の方にやって来た。

 道は登りで、陽射しは淡く、晴れではあるけれどどこか鬱屈とした空気感。

 到底、楽園とは思えない。

「メルシュ。もしかして、アレが”模造天使”ですか?」
「そうだよ。一体一体が結構強いから、みんな気を付けてね」

 トゥスカがメルシュに尋ねる。

 道を示すかのごとく左右に乱立した柱のような台座の上に、頽れた有翼の石膏人間が。

「あれ、全部が敵なんですか?」

 クマムが尋ねてきたのが合図であったかのように、道側に向き合っていた天使達が立ち上がり……一斉にこちらを向いた!!

「バチカンにある物に、雰囲気が似てまぁすね」

 クリスが薔薇の剣を抜く。

「これ以上進めば、一斉に襲い掛かってくるよ」
「魔法に強いモンスターなんだよな? なら、俺が一人で出よう」
「ご主人様、またですか?」

 トゥスカが、咎めるような視線を向けてくる。

「ちょ、ちょっとだけだから。文字の同時使用を色々試したいんだ」

「……ちょっとだけですよ」

「フフフフ。トゥスカさんて、コセさんの事になると人が変わりますね」
「なんだか羨ましいです」

 スーシャとクマムにからかわれ、うっすらと頬を赤くするトゥスカ。

 俺の最愛の奥さんは、本当に可愛いなぁ~。

「危なくなったら頼んだ」
「フン! 私のご主人様なんですから、一人で片付けちゃってください」

 久し振りにいじけたな。

「はいはい」

 トゥスカの頭を軽く撫で、ついでに気落ちしているメルシュの頭ももう一度。

「たらしだなー、私のマスターは」
「俺と結婚したのが運の尽きだ」

 トゥスカも、メルシュも、ユリカも、ジュリーも、ナオも、ユイも、ザッカルも、ノーザンも、絶対に俺から……心を離れさせない。

「結婚したのが運の尽き……はぅ♡」
「やっぱり、私達も狙われてる……」

 スーシャとクマムも、少し顔が赤くなった? ……なぜ?

「じゃ、じゃあ行ってくる」

 ”サムシンググレートソード”だけを手に、”模造天使”の領域に歩み居る。

 ――石膏の天使達が、軍隊を連想させる一糸乱れぬ動きで抜剣し、飛び上がった!!

「”紫雲”」

 ”紫雲猿の靴”の効果で、空中を踏み付けるように靴底から雲を出し、空を駆ける!

「”神代の剣”」

 文字を三つ刻み、青い光を剣に纏わせ、向かってきた模造天使達の剣を弾き飛ばす!

 空中で”跳躍”し、背後に回り込んで胴体を刎ねた!

 翼で飛行しているわけではないからこそ出来る、空中でのアクロバティックな動き。

「試すのは、もう少し数を減らしてからにするか――”飛王剣”!!」

 TPを消費し、”飛剣”の上位スキルであるSランクスキルの斬撃を放って、二体の天使を両断!

 特殊レギオン戦の戦利品分配で、俺が唯一手に入れた物。

 総TPの十分の一を消費して放つため、TP量が増えればその分威力が上がる斬撃。

 逆に言えば、連続して放てる回数はLvが上がっても限られる。

「来た」

 ”模造天使”の一体が、胴薙を放ってきてくれた!


 ――――結構痛いけれど……上手くいったようだ。

 俺の鎧に斬り掛かった天使の剣が、折れた事で確信する。

「実戦での”……成功だ!」

 胸元の真ん中に、三文字が刻まれている。

 鎧も文字対応だと聞いて、武器と一緒に刻む訓練を積んでいた。

 剣二本に同時に刻むのは感覚が似ているからやりやすかったけれど、斬るための剣と守るための鎧ではイメージが違うため、両立するのが難しかったのだ。

 訓練ではなんとか成功し、後は実戦で使えるのか確かめるだけだったが。

「今度は、長時間この状態を維持できるか試させて貰おうか!」

 十体以上居る”模造天使”に、積極的に仕掛ける!

 鎧の腕甲部分で剣を受け、大剣をその胸に刻み込み、背後からの突きを跳んで躱し、突き刺して来た天使を盾にするようにその背に隠れ、”拒絶領域”で数体纏めて吹き飛ばす!

 更に”偉大なる英雄の光剣”も抜き、MPで光の刃を生成して文字を三文字刻む。

 やっぱり、実戦の方が勢いで出来ることが多いな。

 訓練ではほとんど上手くいかなかった、神代文字の――三つ同時刻みがすんなりと出来た。

『コォォォーーー!!』

 奇声を発したと思ったら、剣に白い光を纏わせ、更に光属性の魔法まで放って来る天使の模造品共!

「はああああああああッ!!」

 鎧の文字を強く意識し、青い光を全身に纏わせて魔法に耐える!

 光纏う剣を神代の力を帯びた剣で弾き返し、隙を晒した奴から瞬時に両断していく!!

 ――天使の剣が俺の剣と打ち合う瞬間に炸裂し、吹き飛ばされるも、すぐに体勢を立て直してX字に切り裂いた。

「……終わったか」

 気付けば、二十四体の”模造天使”全てが沈黙していた。

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