ダンジョン・ザ・チョイス
180.白面の巨剣使い
黒の槍の一振りにより、ソファーごと吹き飛ばされる!
「ハハハ! なんか動きが変だな。やっぱ、本当に具合が悪いのかよ?」
「さあな」
身体の重み、ますます酷くなってる。
メルシュの言うとおり、文字を無理に引き出すべきじゃなかったかもな。
「そろそろ終わらせて貰うぞ!!」
『相変わらず下卑た声だな、タケシ』
扉が開いて……紫のローブにフードを被った白仮面が現れた!?
「お前……キクル!!」
キクル……あの人が、モモカにローゼをくれたっていう……。
『レギオンメンバーを見掛けたから、必ず会えると思ってたぞ。レギオンリーダー』
「キクル……テメー!! 俺の恋人を殺しておいて、どの面下げて現れやがった!!」
『被害者面しないで貰おうか。俺が抜けると言った途端、後ろから刺し殺されそうになったから返り討ちにしたまでだ。文句があるなら、簡単に人を殺そうとするアバズレに言うんだな』
「お前ぇぇぇぇッッッ!!」
キクルって言う人の方が、共感が持てるな。
『さっさと来い。それとも、勝てぬと分かっているから無駄に吠えているのか?』
「黙れ!! “二連瞬足”!!」
ボス戦で手に入れられるスキルか。
「“紅蓮槍術”!!」
『バカが』
「ぐおッ!!?」
背後に蹴りを放ち、男を吹き飛ばすキクル。
『奇襲のチャンスだったにも関わらず、動きを止めてスキルを使うために声を出す。貴様は、リアリティーのある想像力が欠如しているのか?』
「う、上から目線で語るな! この人殺しが!!」
『お前が言うのか。会話するだけ無駄だな』
キクルが、背負っていた大剣に手を掛ける。
「なんだ、あの剣?」
妙に刀身部分が機械仕掛けで、刃も先端が二股になっており、横には付いていない幅広な巨剣!
「チックショー……チクショーぉぉぉぉぉぉ!!!」
『見苦しい』
あの重量級の巨剣を凄まじい速度で振り抜き、先端にしかない刃の部分で横から男を両断した!!
「クソ……野郎……ッ……」
光となって消える男。
『さて……お前はどうするか』
キクルが、こちらの様子を窺っている。
「二つだけ言わせてくれ」
『なんだ?』
「うちの子に貴重なアイテムを二つもくれて、感謝する。とても喜んでたよ」
『あの子の保護者というわけか。父親には見えんが……どうでも良いか』
気遣ってくれたのだろうか?
『それで、二つ目はなんだ?』
「その時、誰も礼を言わなかったそうだから、四人に代わって謝礼を述べさせて貰う。ありがとう」
『……ハハハハハハハハハハハハ!! こんな怪しい巨漢が急に現れたんだ、無理もないさ。気にせずとも結構だ』
話の分かる人のようだ。
「コセ!!」
「コセさん!!」
メグミさんとクマムが、部屋に飛び込んできた。
「お前、コセになにをした!」
「よせ! その人は敵じゃない」
『敵じゃないか……フフ、お前達のレギオンリーダーは誰だ?』
「俺だ」
どういうつもりでの質問かは分からないけれど、正直に答えておく。
『そうか……白い角の生えた女と、翠の人魚は見逃してくれ。俺のパーティーメンバーだ。多分な』
仲間は居ないと聞いていたけれど、あの後に組んだ者が?
それ以前に、角の生えた女って……まさか。
「こっちからは襲わないと誓おう」
『助かる』
背を向け、立ち去ろうとするキクル。
『久し振りに、高潔な人間と話せて嬉しかったよ。仲間に美人が多いのが、少しばかり妬ましいが』
そう言い残し、キクルは部屋を出て行った。
●●●
「“白骨火葬”!!」
白い煙のような炎をぶつけるも、妙に上半身が盛り上がっている、爪の生えた赤のアーマーには効かない!
「いい加減くたばれよ! 外国人!」
「一応、国籍は日本なんだが」
「嘘をつくな!」
私がハーフかもしれないって発想はないのか。
遺伝的には日本人じゃないけれど。
「ハアッ!!」
“ヴリルの聖剣”で、肩部分と連結している紅の爪を弾き返す!
「お前ら西洋人は、私達日本人をどいつもこいつも中国人や韓国人だと思いやがって!」
私は今、日本人なのに西洋人扱いされて殺されそうになっているんだが?
「そんな理由で殺されてたまるか!」
「私の両親を、中国人だと思い込んで殺しやがって!!」
「それは……」
そういう話しは、何度か耳にしたことがあったな。
アジア人を一括りに考えている西洋人は多いため、韓国人や中国人に悪い感情を抱くと、日本人もそうだと決めつけられて、最初は不当な扱いを受けたという例はよくあるらしい。
「筋が通らないな。お前こそ、私を西洋人で一括りにして、悪い物と決めつけている!」
日本の教育や社会に溢れている物が、国ごとの違いを生み出している面はあるだろう。
だが、日本人が凶悪犯罪を犯す事だってあるのも事実。
それに私は、遺伝子でその人間の善性の全てが決まるとは思えない!
人間は、一人一人違う魂を持つのだから!!
「だったら……私はどうすれば良いのよ!! 犯人は何年経っても捕まらないし! もう向こうの世界にも帰れない! ふざけんなぁぁぁッ!!」
攻撃が、どんどん苛烈になっていく!
「それでも! お前が私を否定するなら――私も、お前を否定しなきゃいけなくなる」
自分が支配されているなどと露にも思わぬ人間は、あまりにも多い。
そういう人間がこの世界に来ると、今度はこの世界の不条理に当てられ、残虐性に支配される。
「目を覚ませ!! そんな事に、人は囚われちゃいけないんだ!」
「良いから死ね――――西洋人」
自分の心が……冷え切ったのが分かった。
「残念だ」
「“逢魔爪術”、オミナススラッシュ!!」
「“光波衣”」
光波によりぶれて見えるスキルを発動し、攻撃を逸らすことに成功する。
「さらばだ、愚か者」
青の奔流に、以前よりも自然と身を任せられる。
「――嘘……だ、世界を植民地化しようとした……野蛮な……西洋人なんかに」
神代文字を九つ刻み、分厚い鎧ごと両断した。
「野蛮なのは、人類そのものだ――クッ!!」
また……意識を持っていかれそうにbhd3th3!
「ハアハア、ハアハア」
なんとか……踏みとどまれた。
……前に、コセとキスした記憶を思い出してだけれど。
…………ちょっと恥ずい。
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