ダンジョン・ザ・チョイス
175.突発クエスト・特殊レギオン戦
光に包まれたと思ったら、暗い室内に?
青黒い壁に、赤黒い絨毯やソファーが置かれている。
身体は、転送される直前の姿勢のまま硬直し、微動だにしない。
よく見ると、俺以外に二人の人間が居た。
さっきの、レギオン《攻略中毒》の小太りなメンバー一人に、見覚えのない軽鎧を着た細身の男が一人。
『突発クエストに関するルールを説明する』
突然聞こえてきた、さっきの気取った男の声!
『これから行われるは、特殊ルールのレギオン戦。古城遺跡の城内部で、百二十七人による殺し合いをしてもらう』
ここは、さっき橋から見えていた古城内部か。
『これはレギオン対抗戦でもあるため、同じレギオンメンバー同士で争う必要は無い。殺したい相手がいるのなら、別に止めはしないがね』
仲間割れを煽ってくるか。
『この突発クエストを終わらせる方法は、屋上部分に囚われている隠れNPC、クリスティーナ嬢の救出だ』
「隠れNPC……だと?」
第十一ステージの隠れNPCはバロンであり、既に何者かが手に入れていたはず。
『隠れNPCとは、固有のスキルを複数所持する強力なNPCだ。本来は各ステージごとに用意された隠し要素なのだが、このクエストのために用意された新たな隠れNPC、”薔薇騎士”を手に入れることが出来る』
「クリスティーナという名前からして、欧州系の女子のようですな。ござる氏が好きそうです」
《攻略中毒》の男が、なにか言っている。
『隠れNPCは一人一体しか所持出来ず、未契約の者でないと手にすることは出来ないが、所有者については、後からレギオン内で決めてくれたまえ。契約出来るのは本来は異世界人だけだが、彼女は特別に誰とでも契約出来る仕様になっている』
薔薇騎士の隠れNPCで、名前はクリスティーナか。
どの種族の人間とでも契約出来るそうだが、パーティー内に隠れNPCは一人という制約はどうなるんだ?
その制約がある限り、俺達にとってはむしろデメリット。
隠れNPCが六体になってしまうと、パーティーを六つに分けなければならなくなるのだから。
『それと、彼女が囚われている野外に出るには、三十の鍵が必要だ』
――猛烈に嫌な予感がしてきた!
このクエストを、わざわざレギオン戦と言った意味。
『鍵の入手方法は、他のレギオン、パーティーメンバー以外の人間を殺した際のドロップだ。レギオンリーダーからは三つ、幹部からは二つ、それ以外からは一つずつ手に入る。レギオンメンバー同士で鍵を集めれば、中央階段から屋上に出られるよ』
つまり、突発クエストを終わらせるには、最低でも十人は殺さないといけない。
どれだけのレギオンが参加しているのかは分からないが、参加人数からしてレギオンリーダーは十人も居ないだろう。
不幸中の幸いと呼ぶには醜悪だが、レギオン戦なら死んでも死ぬわけじゃない。
だからと言って殺される気は無いが、少しは安心できる。
『ちなみに、今回の特殊レギオン戦で死亡した場合、本当に死ぬから。精々、死ぬ気で頑張りたまえ。ああ、それと……レギオンリーダーが死んでも失格にはならないから、そこは安心してくれ』
……何一つ安心なんて出来ない!
『では、カウント後に特殊レギオン戦の開幕だ。5、4、3、2、1、0!』
――身体が動く!
「パワーハンマー!」
小太りな男が、開始と同時に大鎚を振りかぶって襲ってきた!!
――身体が!? 神代文字を無理に引き出した反動か!
気付いてしまったために、“不意打ち無効“も発動しない!
「デブがうぜぇ!!」
「ガッぅふっっ!?」
小太りの男の首を――黒い槍が貫いた。
「わ、私も……ここでGOか……だが、もう一度…………」
派手に血を噴出し、倒れると……光となって消える。
「へー、今のデブは幹部だったのか。じゃあ、あと28だな」
なんの感情の起伏もなく、一人の人間を殺した槍使い。
……全力で動くと、むしろ身体が反射的に強張る。
手を抜くくらいの感覚で動いた方が良い。
「武器変更、”シュバルツ・フェー”……助けてくれたわけじゃないよな?」
暫く、神代文字は使わない方が良いだろう。
“サムシンググレートソード“から、黒銀の剣に持ち替えておく。
「当たり前だろう。見苦しい奴から片付けただけさ。それに……」
槍が消え、男の手に戻る。
「お前、調子悪そうだしな。クックック!」
抜け目の無い男だ。
「良かったよ。殺すのを躊躇わずに済みそうで」
「うるせー。こっちは数日前に、女殺されてイライラしっぱなしなんだ! 隠れNPCって奴は女みたいだからな。俺が手に入れてやる!」
気持ちの悪い奴。
●●●
「君、カワウィーネーでござる!」
眼帯を付けた刀剣使いが、斬り掛かってくる!
「君を屈服させて、拙者の家に招待してあげるでござるよ!」
突発クエスト中に、なにを言っている!
「気持ち悪い!」
“避雷針の魔光剣“で、日本刀を切り払う!
厄介なボス戦直後に、バトルロイヤル風のレギオン戦を強制されるなんて!
植物が生い茂る城の中庭で、少しずつ追い詰められていく!
「クッ!」
近くでルイーサが戦っているため、派手に魔法を放つわけにもいかない!
そのルイーサはというと、紅の鎧と鉤爪が一体化した“アシストクローアーマー“を纏った女と戦っていた。
攻防一体であり、膂力を大きく強化するため、近接戦闘に持ち込まれると崩しづらい!
知識の無いルイーサには、荷が重いはず。
「もっとこっちを見てほしいでござる~! 綺麗な碧眼に、もっと拙者を写し込んで欲しいでござる~!!」
「気持ち悪い!! 金星球!」
「ぬお!?」
黄金の鉄球は刀剣で防がれて躱されたけれど、間合いを開けるのに成功!
「“魔光斬“!」
「“飛剣“!」
斬撃同士がぶつかり、相殺された。
「拙者、あんまり難易度の高いゲームは……好きじゃないでござる!!」
男の空気感が、一変した!?
……私も、覚悟を決めなきゃ。
――人を殺す覚悟を。
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