ダンジョン・ザ・チョイス
173.偉大なる英雄の光剣
サタちゃん、大きくなったな~。
高さ四メートル。魔神・爪虎は十メートルくらいだけれど、前傾姿勢になっている今なら同じくらいの高さ。
だからこそ、押さえ込めている。
『ガアアアアアアアアアアアアッッ!!!』
『暴れるでない!』
黒ピカが、その曲刀を魔神の頭に振り下ろす。
「“鞭打ち強化“!」
サキが黒ピカに鞭を叩き付け、能力を強化していく!
『姫に我が武勇を誇るため、貴様には礎となって貰うぞ!』
アイツ、モンスターのくせに我が強すぎる!!
「貴方があんまりモモカちゃんに構うと、テイマーである私まで嫌われかねないんだけれど」
『ん? 意味が判らぬのだが?』
ダメだ、アイツ。嫌われている自覚がない。
「集中しなさい!」
私達は二人しか居ないんだから!
「“避雷針“、“天雷魔法“、サンダラスヘブン!」
“避雷針の魔光剣“に、天の雷を宿す!!
「“雷光斬“!!」
天雷の斬撃を飛ばし、横から両断!
『グアアアアアアアアッッッ!!!』
サタちゃんに当たらないように気を遣ったからか、思ったより浅い!
『ぬお!!?』
『ガウ!!?』
黒ピカとサタちゃんが、力尽くで弾かれる!
『ガアアアアアアアアアッッ!!』
爪虎が跳び上がり――両手両脚から同時に斬撃を飛ばしてきた!?
そんな攻撃パターン、私は知らない!
メルシュが言及しなかった辺り、ボス戦開始後に書き換えられた?
「“明星の翼“!」
“明星の遣いの嘆き“を背から出現させ、飛び上がりながら回避!
「“魔力砲“!」
『ガアアア!!』
魔神が降り立った直後、私の光線とサタちゃんのドラゴンブレスが直撃!!
『グガアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!』
“雷光斬“を決めた腹部部分から、徐々に崩壊していく!
「バインドウィップ!!」
サキの鞭が、逃げようとした爪虎の左脚に絡み付き、動きを封じる!
「フレー! フレー! サーターちゃん!! 押せ押せ押せ押せサーターちゃん!!」
サキの“応援“のスキルにより、サタちゃんの能力が強化された!
ただ……何度も左腕を突き上げるサキの姿に、緊張感が削がれる。
「ぶっ飛ばせー、サーターちゃん! 殺れ殺れ殺れ殺れサーターちゃん!!」
本当に緊張感が削がれる……悪い意味で。
『ガアアアァァァァ……ァァ…………』
「フー」
サキの”応援”で強化されたサタちゃんのブレスにより、魔神・爪虎は消滅した。
○おめでとうございます。魔神・爪虎の討伐に成功しました。
「ようやく終わった」
○ボス撃破特典。以下から一つをお選びください。
★大爪術のスキルカード ★斬爪拳使いのサブ職業
★二連瞬足のスキルカード ★爪虎の爪甲
★裂光爪のスキルカード
爪に類する武器を使っていなければ、無難なのは“二連瞬足“だけれど……瞬足系スキルは色々あるから、他の瞬足系と組み合わせた方が良い。
“二連瞬足“だと、必ず二回”瞬足”を発動しなければならないし。
「鉤爪を使うユリカやザッカル、モモカのために別のを選ぶか」
それにしても……“裂光爪“なんてスキル、私は知らないぞ。
○これより、第十一ステージの古城遺跡に転移します。
●●●
「ご主人様、本当にお一人で?」
「ああ」
“サムシンググレートソード“と“偉大なる英雄の短剣“を抜き、魔神・爪虎へと近付いていく。
「修行の成果を見るには、ちょうど良い相手だからね」
「俺の夫なら、それくらいはやって見せてくれねーとな!」
この前から、ザッカルの豪快さが可愛く見えるから不思議だ。
「危なくなったら頼む……さてと」
“サムシンググレートソード“と“偉大なる英雄の短剣“に、神代文字を三文字ずつ刻む。
「うん、安定してるね」
俺がメルシュ達、隠れNPC監修の元で行っていた特訓。
それは、神代文字を複数の武具に同時に刻むこと。
「やっぱり、一つの武具に六文字刻むより、二つの武具に三つずつ刻む方が難しいな」
最近になって、ようやく戦いながらでも維持できるようになった。
と言っても、まだ訓練でしか試していない。
『グオオオオオオオオッ!!』
両手の爪甲で前をガードしながら、左右に低く跳躍して距離を詰めてくる魔神・爪虎。
「“竜剣“」
金の刃と青緑の刀身を持つ大剣を出現させ、飛ばす!
“竜剣“を避けようと狙い通りの方へ飛んだため、腕を交差させる!
「“二刀流剣術“、クロススラッシャー!!」
X字の斬撃を爪甲で防がれるも、一部削った上に動きを止められた。
『ガアアアアッ!!』
もう斬撃を飛ばしてきた!?
HP半分以下でじゃないのか?
「”神代の盾”! “瞬足“!」
“サムシンググレートソード“に青の盾を形成し、両腕から発せられた斬撃に、“瞬足“の勢いのままぶつかる!
「“竜剣術“、ドラゴンストライク!!」
跳躍しながら、短剣を額に突き刺す!
「ドラゴンブレイク!!」
魔神の頭が吹き飛ぶ。
二つの武器に文字を三文字ずつ維持するのは難しいけれど、一つの武器に六文字宿すよりも、あの奔流による負荷が少ない。
『ガアアアアアアアッ!!』
頭が無いのに、どうやって咆哮を上げているんだか。
――大剣と短剣にそれぞれ六文字刻み、魔神の両爪と幾重にも交差させる!
『ガアッ!!?』
打ち合うたびに爪が削れ、ボロボロに。
「短剣だと、打ち合い辛いな」
“偉大なる英雄の短剣“を、大剣みたいに振るえれば――
「へ?」
神代文字が強く輝き――――短剣の形状が変わった!?
刃のない、まるでザッカルの“レーザーソード“のような……。
この形状、お爺ちゃんの家で見たウメガイに似ている?
『ガアアアアアアアアッッッ!!!』
魔神の両爪に、橙色の光の爪が灯った!?
「――“神代の光刃“」
“偉大なる英雄の光剣“を変形させ、青いガラスのような、両刃の刀身を形成。”サムシンググレートソード”に近い形状になる。
――再び、爪と剣の応酬。
これなら……もう少し行けそうだな。
両方の剣に――――九文字刻む!
「ちょ、マスター!!?」
青の光刃を伸ばし――振り下ろす!!
『がオオオオオオオオオッッッ!!!?』
光の爪に止められるも、拮抗は一瞬。
「ハアアアアアアアアアアアアッッッ!!」
――両腕をぶった切り、すかさず切り刻む!
『ガ……ァァ……』
バラバラになった魔神・爪虎が、光になって消えていく。
「く!」
ヤバい! 枷が全部外れ――
「ご主人様!」
――トゥスカにキスされた!
「じゃ、俺も」
今度は強引に、ザッカルに唇を奪われる!
「随分無茶しましたね、マスター。訓練では、同時に九文字どころか六文字すら出来なかったのに……実戦でいきなり九文字刻むなんて」
「メルシュ……怒ってる?」
こんなに素の感情を剥き出しにしているの、ベッドの中以外では初めてかも。
「ボケーッとして、どうやらまだ正気に戻っていないようですね」
「いや、そんなこッ!!?」
押し倒されて、舌が口の中に!!
……暫く、このままされるがままでいよう。
文字を引き出した影響か、身体も重いし。
メルシュの舌……気持ち良い。
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