ダンジョン・ザ・チョイス
156.白人魚のスゥーシャ
「全部で4709400Gになります」
北東区画に到着した俺は、奴隷商館隣の服屋にて、海魚の港で手に入れた鯨骨の武器や油、髭など、鯨関連の物を全て売った。
「さすが、十倍での買い取りアップに加えて、指輪による一割アップ」
この水上都市では、鯨関連の物を本来の十倍の額で引き取ってくれるらしい。
「俺が、”鯨骨の大刀”を失っていなければな」
デスアーマーとの戦いの際、再生不可能なくらい破壊され、ロストしてしまっている。
「その分ファスティトカロンのドロップアイテムが高値で売れたんですから、良いじゃないですか」
トゥスカが励ましてくれる。
「だな」
気にしても仕方ない。
さっさと服屋を出て、奴隷商館に向かう。
始まりの村よりも、大分煌びやかだな。
「いらっしゃいませ、本日はどのような奴隷をお求めでしょうか?」
受付の身綺麗な美人が、当然のことのように尋ねてきた。
「人魚を」
「では、右へお進みください。詳しい条件設定は、担当の者へ申しつけてくださいませ」
始まりの村と同じパターンだな。
全員で右へ進むと、担当の人らしき女性が居た。
女性の左側には、豪奢な扉が。
「お求めの奴隷は男性でしょうか? それとも女性でしょうか?」
「「「「「女性で」」」」」
俺とヨシノ以外の五人がハモった。
ていうか、人魚って男も居るんだ!
「では、二階にご案内します。皆さん、赤い床の中にお入りください」
全員が入ると、床の赤い部分が競り上がっていく!
「到着しました。中に担当の者がおりますので、なんなりとお尋ねください」
エレベーターガールのお姉さんが手を向けた左側には、色が違うだけの同じ扉が。
中に入ると、半分水の入った巨大な水槽が並ぶ。
その水槽の中には、始まりの村の奴隷達が着ていた物に酷似した格好をしている、年頃の人魚がズラリと並んでいた。
下半身が魚の、同い年くらいの少女達。
また、気分が悪くなってきた。
「んで、どうやって選ぶんだ?」
「持っているスキルにバラツキがあるはずだから、スキルで選ぶって手もあるけれど……どうする、マスター?」
「どうするって……」
トゥスカの時みたいに、運命を感じられれば……いや、それはそれで困るような……。
「……なんだかな」
水槽の中の子達をよく見ると、こっちに嫌悪や侮蔑の目を向けていた。
獣人達の多くが助けてと行ってきたのとは、対照的な反応。
取り敢えず、部屋の中心に待機しているNPCの女性のところまで行こうとすると、右側の人魚と目が合った。
「死ね! クソ野郎!!」
凄い美人に、凄い剣幕で怒鳴られた。
しかも、それを皮切りに他の人魚も汚い言葉で罵倒してくるように。
「気持ちは分からなくはねーが、態度が悪すぎんだろ!」
「ちょっと、お仕置きが必要かな」
ザッカルとメルシュから不穏な気配が漂った時だった。
「黙れ」
――神代文字を九つ刻んだトゥスカが、一括した!!?
こ、怖い。
「ご主人様。そこの人魚を購入して戴けませんか? 殺せばなんらかのスキルカードが手に入るでしょう」
トゥスカの本気か冗談か分からないセリフが、ニッコリとした顔から紡がれた。
文字は消えたけれど……むしろ今の方が怖いかも。
ただ、おかげで人魚達が静かになった。
まさに、戦慄故の静寂。
「あ、あの……なぜ人魚を買いに来たのですか?」
店の奥の方から、女の子の声。
そちらに近付くと、人魚達の中でも一際小さく、髪や下半身が白い女の子が居た。
とても、可愛らしい人魚の子。
「このゲームを終わらせるために先へ進みたいんだが、それには人魚を仲間に入れないといけないらしいんだ」
目線を合わせ、彼女の様子を覗う。
「じゃあ、この世界の最深部まで行くんですね!」
なにか必死差を感じる。
決意を固めた、強い眼差し。
さっきの目付きの鋭い人魚と、その眼差しが被った。
「一緒に来るかい?」
「はい! お願いします!」
俺は、彼女を買うと決めた。
「俺はコセだ」
「私はスゥーシャと言います」
警戒はしているけれど、目的のために……って感じか。
「スゥーシャを買う」
直接買うと口にすると、変な味の薬を舌に塗られた気がした。
「その子はスキルが多いので、43000Gになります」
○奴隷スゥーシャを購入するために、43000G払いますか?
なんか懐かしいな。
名前と写真の顔を確認し、俺はYESを押した。
●●●
「あの……好きなのを選んで良いんですか?」
「自分が一番気に入ったのを選んで大丈夫ですよ」
黒い髪の綺麗な獣人女性、トゥスカさんにそう言われる。
コセという人に買われたあと、隣の服屋に跳ばされ、身綺麗にされたのち、服を購入するように言われた。
でも、どう選べば良いんだろう?
あんまり高いの買って、ひんしゅく買ったりしないかな……。
「出来るだけ性能が良くて、自分の戦闘スタイルにあったのにすれば良いんですよ。値段は気にしなくて大丈夫なので」
メルシュという、私と同じくらい小っちゃい人が理路整然と語る。
……格好いい!
「じゃ、じゃあ、コレを!」
かなり高いけれど、一目でデザインが気に入った物を、思い切って選んだ!
「”清純人魚のスカートビキニ”、Aランク。550000Gか」
「へ?」
メルシュさんの言葉に驚く。
値段が高いって言うのもそうだけれど、私より服の方が高いって……それも十倍以上…………。
「どうなの、メルシュ?」
「人魚の服は人魚専用だし、滅多に手に入らないから、ここでAランクを購入しておくのは懸命な判断かも」
「あの……買って戴けるんですか?」
私より十倍以上も高い服を?
「スゥーシャ、私達は本気でこのゲームを終わらせるつもりです。だから、装備を調えるのにお金を惜しむ必要はありません」
「一度、相談はして欲しいけれどね」
「ありがとうございます!」
どうなるかと思ったけれど、一応良い人達みたい。
……必ず、あの人に追い付かなきゃ。
北東区画に到着した俺は、奴隷商館隣の服屋にて、海魚の港で手に入れた鯨骨の武器や油、髭など、鯨関連の物を全て売った。
「さすが、十倍での買い取りアップに加えて、指輪による一割アップ」
この水上都市では、鯨関連の物を本来の十倍の額で引き取ってくれるらしい。
「俺が、”鯨骨の大刀”を失っていなければな」
デスアーマーとの戦いの際、再生不可能なくらい破壊され、ロストしてしまっている。
「その分ファスティトカロンのドロップアイテムが高値で売れたんですから、良いじゃないですか」
トゥスカが励ましてくれる。
「だな」
気にしても仕方ない。
さっさと服屋を出て、奴隷商館に向かう。
始まりの村よりも、大分煌びやかだな。
「いらっしゃいませ、本日はどのような奴隷をお求めでしょうか?」
受付の身綺麗な美人が、当然のことのように尋ねてきた。
「人魚を」
「では、右へお進みください。詳しい条件設定は、担当の者へ申しつけてくださいませ」
始まりの村と同じパターンだな。
全員で右へ進むと、担当の人らしき女性が居た。
女性の左側には、豪奢な扉が。
「お求めの奴隷は男性でしょうか? それとも女性でしょうか?」
「「「「「女性で」」」」」
俺とヨシノ以外の五人がハモった。
ていうか、人魚って男も居るんだ!
「では、二階にご案内します。皆さん、赤い床の中にお入りください」
全員が入ると、床の赤い部分が競り上がっていく!
「到着しました。中に担当の者がおりますので、なんなりとお尋ねください」
エレベーターガールのお姉さんが手を向けた左側には、色が違うだけの同じ扉が。
中に入ると、半分水の入った巨大な水槽が並ぶ。
その水槽の中には、始まりの村の奴隷達が着ていた物に酷似した格好をしている、年頃の人魚がズラリと並んでいた。
下半身が魚の、同い年くらいの少女達。
また、気分が悪くなってきた。
「んで、どうやって選ぶんだ?」
「持っているスキルにバラツキがあるはずだから、スキルで選ぶって手もあるけれど……どうする、マスター?」
「どうするって……」
トゥスカの時みたいに、運命を感じられれば……いや、それはそれで困るような……。
「……なんだかな」
水槽の中の子達をよく見ると、こっちに嫌悪や侮蔑の目を向けていた。
獣人達の多くが助けてと行ってきたのとは、対照的な反応。
取り敢えず、部屋の中心に待機しているNPCの女性のところまで行こうとすると、右側の人魚と目が合った。
「死ね! クソ野郎!!」
凄い美人に、凄い剣幕で怒鳴られた。
しかも、それを皮切りに他の人魚も汚い言葉で罵倒してくるように。
「気持ちは分からなくはねーが、態度が悪すぎんだろ!」
「ちょっと、お仕置きが必要かな」
ザッカルとメルシュから不穏な気配が漂った時だった。
「黙れ」
――神代文字を九つ刻んだトゥスカが、一括した!!?
こ、怖い。
「ご主人様。そこの人魚を購入して戴けませんか? 殺せばなんらかのスキルカードが手に入るでしょう」
トゥスカの本気か冗談か分からないセリフが、ニッコリとした顔から紡がれた。
文字は消えたけれど……むしろ今の方が怖いかも。
ただ、おかげで人魚達が静かになった。
まさに、戦慄故の静寂。
「あ、あの……なぜ人魚を買いに来たのですか?」
店の奥の方から、女の子の声。
そちらに近付くと、人魚達の中でも一際小さく、髪や下半身が白い女の子が居た。
とても、可愛らしい人魚の子。
「このゲームを終わらせるために先へ進みたいんだが、それには人魚を仲間に入れないといけないらしいんだ」
目線を合わせ、彼女の様子を覗う。
「じゃあ、この世界の最深部まで行くんですね!」
なにか必死差を感じる。
決意を固めた、強い眼差し。
さっきの目付きの鋭い人魚と、その眼差しが被った。
「一緒に来るかい?」
「はい! お願いします!」
俺は、彼女を買うと決めた。
「俺はコセだ」
「私はスゥーシャと言います」
警戒はしているけれど、目的のために……って感じか。
「スゥーシャを買う」
直接買うと口にすると、変な味の薬を舌に塗られた気がした。
「その子はスキルが多いので、43000Gになります」
○奴隷スゥーシャを購入するために、43000G払いますか?
なんか懐かしいな。
名前と写真の顔を確認し、俺はYESを押した。
●●●
「あの……好きなのを選んで良いんですか?」
「自分が一番気に入ったのを選んで大丈夫ですよ」
黒い髪の綺麗な獣人女性、トゥスカさんにそう言われる。
コセという人に買われたあと、隣の服屋に跳ばされ、身綺麗にされたのち、服を購入するように言われた。
でも、どう選べば良いんだろう?
あんまり高いの買って、ひんしゅく買ったりしないかな……。
「出来るだけ性能が良くて、自分の戦闘スタイルにあったのにすれば良いんですよ。値段は気にしなくて大丈夫なので」
メルシュという、私と同じくらい小っちゃい人が理路整然と語る。
……格好いい!
「じゃ、じゃあ、コレを!」
かなり高いけれど、一目でデザインが気に入った物を、思い切って選んだ!
「”清純人魚のスカートビキニ”、Aランク。550000Gか」
「へ?」
メルシュさんの言葉に驚く。
値段が高いって言うのもそうだけれど、私より服の方が高いって……それも十倍以上…………。
「どうなの、メルシュ?」
「人魚の服は人魚専用だし、滅多に手に入らないから、ここでAランクを購入しておくのは懸命な判断かも」
「あの……買って戴けるんですか?」
私より十倍以上も高い服を?
「スゥーシャ、私達は本気でこのゲームを終わらせるつもりです。だから、装備を調えるのにお金を惜しむ必要はありません」
「一度、相談はして欲しいけれどね」
「ありがとうございます!」
どうなるかと思ったけれど、一応良い人達みたい。
……必ず、あの人に追い付かなきゃ。
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