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ダンジョン・ザ・チョイス

魔神スピリット

146.白猫の敗北と黒ピカ誕生

「なんで私……こんなにダメなんだろう?」

 今度は耐えよう。耐えよう耐えよう耐えよう耐えよう耐えよう耐えよう耐えようって思って……出来なかった。

 シレイアさんやモモカちゃんも付き合ってくれたのに……心が軋みを上げて、私を守るように身体と魂が涙を流させた。

 部屋のベッドの上で膝を抱えて、抜け道のない迷路に思考が入り込んだかのよう。

「……コセ様」

 自分の部屋から出て、廊下を見渡す。

 この神秘の館がある空間でも、黒昼村と同じで昼も暗い。

 むしろ、月明かりに照らされ、星が見える今の方が明るいくらい。

 誰も居ない、とても静かな広い廊下。

 教会の静謐さと闇の悍ましさが入り交じり、どちらと捉えるべきか、私の頭では判断がつかない。

 恐れと信仰心を抱きながら、私はコセ様の寝室へと向かう。

 ジュリー様に買われた日、自分がどんな目に会うのかとっても不安だった。

 私が考えていたような怖いことはされず、ジュリー様は丁寧に、優しく接してくれた。

 僅かにだけれど、悲しんでおられるように見えた。

 どこか、私達が奴隷となっていることに罪悪感を感じているようにも。

 その日の夜、私とジュリー様が寝静まった夜、女性の淫らな声が聞こえてきた。

 軽蔑したい感情とは裏腹に、私は行為の様子に対して安心感を覚えた。

 ああ……この女の人、良い恋をしているんだろうなって……幸せそうに異性を求めている女の人の様子に、幸福を感じた。

 この世界にも、幸せは残ってるんだって。

 きっとデルタ様は、それを私に教えるためにこのような苦難を用意されたのだと理解できたから。って……その時は、そう思っていた。

 あの時は、まさかその相手がコセ様とトゥスカさんだなんて思わなかったけれど。

 コセ様の寝室前に辿り着く。

 そう言えば、昔は一人で夜トイレに行けなかったっけ。

「トゥスカさん、なんか今日……強引じゃないか?」
「理由、分かってますよね?」
「……多分」

 二人の会話が、微かに聞こえる。

「他の女に手を出しても良いって言っておきながら……最近どんどん増えていくから、嫉妬しちゃってます」
「……ゴメンよ」
「良いんです。最初は、遊びなら良いって言いましたけれど、遊びで関係を持つような人はろくでもないって……気付いてましたから」

 トゥスカさん……以前は私に、コセ様に本気になれって。

「ご主人様のおかげで、私は幸せです。でも、ご主人様なら、他の女も幸せに出来る。だから、これからも他の女に真摯に向き合って、愛してあげてください」
「なんで……そんな風に思えるんだ?」

 私にも、理解できない。

 コセ様がトゥスカさんを買ったとき、私はコセ様を見ていた。

 私も一緒になって、助けて欲しいと強請って……。

 次第に苦しみだしたコセ様は、一点を見詰めていた。

 希望を見出したように、自分で自分の身体に土を付けていた変な女性を……一人だけ強請らなかった女性を見ていた。

 もし、コセ様があの時私を選んでくれてたら……時折、そう考えてしまう自分が居るのに。

 私だったら、独り占めしたいのに!!


「ご主人様以外の人と結ばれたら、その女は絶対に不幸になるって分かってたら……助けたくなるじゃないですか」


 へ?

「持ち上げすぎだろ」
「今のは極端な言い方をしましたけれど……もし一対一の結婚でも、タマやノーザンが選んだ男が酷い人間だったなら……私は、皆ご主人様と結ばれて欲しいです」

 ――勝てないって思った。

「女なら誰でも良いわけじゃありませんよ。ご主人様をちゃんと愛せる女じゃなきゃ……私は許しません」

 愛……私は、コセ様を愛せているのでしょうか?

 ……分からない。もう、なにも分からない。

 私は、自分の部屋へと戻ることにした。

 いつの間にか、暗闇への恐怖は消えていた。


●●●


「”精霊魔法”、ウンディーネ!」

 フェルナンダの能力や、七人が手に入れたスキルや新装備を、神秘の館で試していく。

「ほらほら、どうした!」

 女性のシルエットの水が、高速の水を鞭のように飛ばして来るため、”サムシンググレートソード”で防ぐ!

「調子に乗るな」

 強化されたグレートソードに文字を三つ刻み、水を切り払いながらウンディーネに接近!

「”魔斬り”!」

 水の艶めかしい女性を切り裂き、消し去る。

「……やるではないか」

 フェルナンダが、どこか畏怖混じりに褒めてくれる。

「……なんか、今までよりも文字を刻みやすい」

 とても自然に、三文字刻めた。

 意識し、六文字刻んでみる。

「少し……抵抗を感じるな」

 それでも、以前よりだいぶ六文字にしやすくなってる。

「――来い」

 九文字までは、なんとか刻めた。

「どう、マスター? 十二文字いけそう?」
「いや……無理せずに出せるのは、九文字までだな……」

 九文字まで刻むと、あの奔流が呑み込もうとする感覚が強くなる。

 無理に十二文字引き出そうとすると、暴走しかねない気がする。

「これなら、あの特訓をしても良いんじゃないかい、メルシュ」

「あの特訓?」

 シレイアの突然の言葉に内心で首を傾げた時、野太いオッサンの声が聞こえてきた。

『おおおおおおお!! なんというめんこい子だ!! お主、名をなんと言うのだ?』

 昨日、サキがテイムしたっていうエレメンタルガーディアンか。

「……モモカ」

 どうやらあのモンスターも、モモカの可愛さにメロメロらしい。

『我が名はアーサー! モモカ姫よ、我は姫の守護者となろう!!』

 テイムしたサキより、モモカを優先しそうな勢いだな。

「……うざ」


『ノォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッッッッ!!!?』


 頽れる黒の騎士。

 モモカの気持ちが、俺には良く分かる。

「アーサーっていうのも、なんか嫌!」
『で、では、我はなんと名乗れば良いのだ?』

「……黒ピカ?」
『黒ピカ!?』
「――よし!!」

 なんか、ジュリーがいきなり声を張り上げて拳を握ったんですけれど?

「黒くてピカピカしてるから黒ピカ……ダメ?」

『…………よ、よい名前だな! ワハハハハハハハハハハハッ!! 気に入ったぞ!! 今日から我の名は、黒ピカだ!!』

 あ、良いんだ。無理しているようにも見えるけれど。

「アイツ、昨日は変な名前付けるなって豪語してたくせに……」
「ほとんどジュリーと同じ名前……」

 アオイとアヤナが、まるでゴミを見るような目で黒ピカを見ていた。

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