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ダンジョン・ザ・チョイス

魔神スピリット

141.闇の勢力

 白く長い、両端が半円のテーブルの椅子に、仮面を付けたダンジョン・ザ・チョイスの管理者や関係者五十人以上が座る。

 私を含め、ほぼ全員がビジネススーツ姿。

『よく集まってくれた、諸君』

 テーブルの真ん中がせり上がり、私達の統括者、オッペンハイマーが姿を現す。

 同時に私達は立ち上がり、一斉に頭を下げた。

『おはよう。早速だが、第一の議題について話し合おう』

 一昨日の件か。

『神代文字を十二文字操る者が三人も現れた』

 にわかにザワつく管理者達。

 どうやら、知らなかった者もかなり居るよう。

『だが、この件で一時期離れていた視聴者達が戻ってきている。上からは、予算の増額をするからもっと盛り上げろとせっつかれているくらいだ。そこで、かねてより予定していたSSランク武器の追加を早めようと思う』

 大きな問題として取り上げるとばかり思っていたのに。

『更に突然だが、隠れNPCの配置数を増やす。五十ステージまでだった物を、七十ステージまで。つまり、二十体の隠れNPCを新規で追加する』

 ここに来て、隠れNPCの追加。

 今まで以上にプレイヤーが有利になる内容ばかり。

『それと、近々バウンティーハンターシステムも投入予定だ。その際は君達全員が調整する必要が出て来るので、明後日までにマニュアルを送る。各自、一週間以内に目を通しておくように』

 バウンティーハンターシステム。詳細は分からないけれど、プレイヤーにとって不利になる内容の可能性が高い。

『追加するシステムを先に語ってしまったが、実は君達にお願いがある』

 部屋から、一切の雑音が消えた。


『今注目の的であるコセとその仲間達を、全て殺せ』


 声が……本気だ。

『アテルという小僧と、裏切り者のデボラ達の方が危険なのでは?』

 湧いた疑問を投げかけた。

『実は、一昨日の件でコセ一派について色々調べさせて貰ったんだ』

 ――マズイ!!

『まずはコセ。彼の父方の家系だが、戦前に関してはまったくの不明。当時、僅かに生き残っていたサンカ共の子孫の可能性が出て来た』

 だとすると、彼も真の地球人の末裔である可能性が高いのか。

『続いてユイ。アテルとコセよりも早く、十二文字刻んだ女』

 セルゲイが執着していた少女。

『この女も、サンカの男系の血筋である可能性がある。神代文字を操るカオリの、腹違いの妹だ』

 確かに、剣でなんでもどうにかしてしまいそうなところが似ているな。

『それと、あの素敵なお……眼鏡の少女、ユリカ』

 今、なにか言い掛けたわよね。

『彼女の祖父は、万能細胞について高いレベルの研究成果を出していたが、デルタに研究データを渡すのを拒み、消去してしまった。家族の方に圧力を掛けたが死ぬまで従わなかった。孫とは直接関係ないが、優先して潰してほしいという依頼が来ている』

 科学技術のみで不老不死を実現させようとしているサイコパス集団から、相当嫌われているらしい。

『そしてジュリー。日本人の父とイギリス人の母との間に産まれたハーフ』

 来たか。

『両親は、なんとダンジョン・ザ・チョイスのオリジナル開発者だ』

 大きなザワつきが起こる。

『最後にルイーサ。両親はドイツ人だが、日本で育った。ただ……彼女は日本の孤児院から引き取られている。それと、遺伝的にも間違いなくドイツ人だ』

 日本の孤児院から、両親がドイツ人の子供をドイツ人夫婦が引き取った?

 そんな偶然があり得るの?

 ないとは言い切れないでしょうけれど……。

『何者かによって送り込まれた、面倒な存在の可能性もある』

 ドイツ人なら、あり得るかもしれない。

『というわけで、どういうわけか危険因子がコセという少年を中心に集まっているというわけだ』
『その少年は、ワンダラーなのかな?』

 ミステリアスであり、無邪気な少女らしい声のアンネが尋ねた。

『それを断定する材料はないが、彼の存在によって周囲の人間が影響を受けている兆候はある』
『つまり、アテルのように孤高の素質も持ってると。良いね、ヤバヤバだね!』

 アンネ……あの子の考えは読めない。

 あんなドギツイ突発クエストを発注しながら、神代文字に対応した武器を報酬に多く用意していた。

 いったい、どちらを潰したいのか。

『コセ一派に対しては、君達に与えている突発クエスト実行権の冷却期間を、最低で一週間までに短縮する』

 突発クエストは一度発動すると、クエストの難易度によって冷却期間を設けなければならない。

 どんなクエストでも、最低一ヶ月は開く物なのに。

 アテル達に対しても、ここまでではなかった。

『なんとしても、彼等をダンジョン・ザ・チョイスの最奥に近づけるな』

『神代文字に対応した武器を、ゲームから消し去れば良いのでは?』

 セルゲイが、珍しく下手に出る。

 相手がオッペンハイマーだからでしょうけれど。

『それは、システムの根幹に直接手を加える行為。我々にその権限は与えられていないし、上にその気は無い』

 ならばなぜ、文字に対応した武具をゲーム内に用意しているのか疑問に思うが、その辺は未だに謎だ。

 表向きにはゲームを盛り上げるための演出ということになっているが、半分の十二文字でもこの騒ぎよう。

 いったい誰が、なんのために神と交信するための神器をわざわざ用意したのか。

『ああ、そうそう。実は、コセ一派を特別扱いするのには、他に二つ理由がある』

 ――オッペンハイマーの言葉の圧が、ここからが本番だとでも言うように増す!

『一つは、視聴者を飽きさせないようにするため。皆も突発クエストを考えるときは、是非とも視聴者を意識してくれよ』

 実際に、人が化け物と戦う。

 誰かの脚本の上でなく、本当の心を剥き出しにして。

 生の人間の感情を嘲笑いながら、デルタの人間達は美酒を口にすることを好む。

 まるで……本物の地球人ではない自分達への劣等感を……誤魔化すように。

『そして、もう一つだが……先程言ったとおり、ジュリーはオリジナルのゲーム開発者の娘。ダンジョン・ザ・チョイスにもっとも詳しい人間の一人であり、ワイズマンは到達したステージの情報を知ることが出来る。この時点で、彼等がどれ程他者より優位な立場に居るか理解して貰えるだろう』

『ですが、彼女の他にもオリジナルをプレイしていた者は複数おりますし、ワイズマンを用意したのは我々ですよ?』

 好青年風のミハエルが意見する。

『無論だ。だが、彼等は第八ステージ時点で隠れNPCを三体も所有している。しかも、第八ステージのマクスウェルまでの六体全ての入手条件を満たしながら、僅か一ヶ月という短期間でだ』

『つまり……彼等は隠れNPCの入手法を全て知っている?』

『諸君、非常に残念なお知らせだ』

 これは……終わったわね。


『我々の中に、裏切り者が居る』



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