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ダンジョン・ザ・チョイス

魔神スピリット

138.強くなるために

「シレイア、私達に神代文字の扱い方を教えて欲しい」

 メルシュ達がSランクスキルを手に入れに出掛けたあと、私はタマとユリカと一緒にシレイアの元を訪れた。

「どうしたんだい、急に?」

 困ったように首を傾げるシレイア。

「昨日襲ってきた奴等は強かった。文字を使えなければどうにもならない」

 神代文字なんてシステム、私は知らない。

 ゲーム開発者の両親の娘である私が知らない以上、本来は存在しないシステムのはず。

 レプティリアンとの戦いの時のコセを見ていれば、アレがゲームバランスを崩壊させるほどの力を有しているのは明白。

「……教えてどうこうなるものじゃないよ、アレは。まあ、ちょっとしたサポートくらいなら出来ないこともないけれどさ」
「それでも良いんです! なにをしたら良いのか分からないより、よっぽどマシです!」
「このまま、トゥスカ達に差を付けられるなんてまっぴらごめんよ!」

 タマもユリカも、焦りを感じている様子。

「まあ、文字を刻める人間が多いに超したことはないし、この村はちょうど良いかもね。でも、大したことはしてやれないよ。計算式教えて出来るようになるのとは、訳が違うんだからね」

 だからこそ、自分ではどうしたら良いのか検討もつかない。

 あらかじめ用意されている手順を踏めば、目的を遂げられるゲームとは違うのだから。

 昨日までは、この世界をゲーム通りにやれば上手くいくと思っていた。

 ダンジョン・ザ・チョイスが好きで、誰よりもプレイし続けた私ならって。

「でも、アンタらは運が良いよ。良い見本が傍に居るんだからね」
「コセのこと?」

 ユリカがそう尋ねた。

「ああ、アイツを理解しようとすれば、自然と引っ張られるだろうさ。そのための取っ掛かり、切っ掛けをアタシが提供してやるよ」

 入り口に立てた。そういう安心感が芽生える。

「まずは村に出るぞ。んで、一言も喋らずにアタシに着いて来な。良いかい、絶対に喋るんじゃないよ」

 喋らないのが訓練なのか?


◇◇◇


『どうする……どうする……』

 まさかコセ様が、コセが十二文字も引き出すなんて!!

『まずい……このままでは』

 彼をゲームに誘った私が、責任を取らされることに……。

『アルバート君、ちょっと良いかな?』

 ――――向こうとこちらの狭間にある私の管理室に、私と似たような仮面を着けた背広の男が現れる!

『オッペン……ハイマー様』

 ダンジョン・ザ・チョイスの、管理統括者。

 つまり、私の直属の上司。

『私を……罰しに来たのですか?』
『勘違いしないでくれ、アルバート。明日、緊急で会議を開くことにした。大事な会議を思い込みでボイコットするのではないかと心配になってね、わざわざ尋ねてきたのさ』

『そこで、私を処刑するつもりなのでしょう?』
『落ち着きたまえ、アルバート君。十二文字引き出したあの二人は脅威だが、元々このゲームは、彼等のような人間を始末する事を、我々デルタが楽しむために存在するのだぞ?』

 確かに、元々そうではあるが……。

『それに、しょせん十二文字。まだ半分だ。むしろ、十二文字刻んだ者が同時期に三人も現れるなど初のこと。今このダンジョン・ザ・チョイスは、かつてないほど同胞達の注目の的なのだ』

『……三人?』
『気付いていなかったのか。君推しのコセと共に行動している、ユイという少女だよ』

 セルゲイのお気に入りだった子ですか。

『明日の会議は、更にゲームを盛り上げるためのものだ。管理者は全員参加してもらう。少々面白い事実も判明したしね』

『面白い事実?』

『明日を楽しみにしていてくれたまえ、アルバート君』

 その言葉を最後に、オッペンハイマーの姿は消えた。


●●●


「誰も居ないな」
「……うん」

 黒昼の村を、モモカと手を繋ぎながらトゥスカ、サキ、馬くらいの大きさに成長したサタンドレイクのサタちゃんと一緒に散策していた。

 一番の目的は、モモカの両親を探すこと。

 居ないとは思いながらも、メシュの事も探していた。

「本当に……NPC以外の人間は居ないようですね」

 トゥスカの背にしがみつきながら、テイマーの隠れNPCのサキが呟く。

 彼女の怖がり方、なんか嘘くさいんだよな。

 設定通りに振る舞っている感じだ。

「メルシュから聞いていたのはここですね」

 トゥスカが見付けてくれたのは、黒塗りの怪しい家。

「いらっしゃい。あら、ご夫婦なのね」

 家を訪ねると、優しげな老婆が顔を出す。

「お祝いに、これをどうぞ」

 老婆が差し出してきた指先に光が集まり、指輪に変化する。

「あらあら、とっても仲の良い貴方たちに、神様がご褒美をくれたみたいね」

○栄光の魔女より、“夜鷹の指輪”がプレゼントされました。

「サキ、これは?」
「さすが、“最高級の婚姻の指輪”の夫婦。良い物が貰えましたね。剣や盾の指輪のように、腕に連動させられる鳥を呼び出せます。装備者は空も飛べるSランクです」
「手に入るのはランダムという話しでしたが、良い物を戴けたようですね」
「そうだな」

 夫婦でここを訪れた場合に起こるイベントで、婚姻の指輪のランクによってC、A、Sのいずれかになるらしい。

 ちなみに、俺が他の妻と訪れても、もう二度とこのイベントは発生しないそうだ。

「なんか、他の皆に申し訳ないな」
「コセ、行こ」

 モモカが無表情でお願いしてきた。

 早く、両親に会いたいんだろうな。

「だな。行こう」
「……うん」

 用を済ませながら、夜よりも暗い村を半日歩き回ったが、モモカの両親は見付からなかった。


●●●


「アテル、第九ステージではレギオンを組む必要があるけれど、どうするつもり?」

 このゲームのオリジナルをプレイしたことがあるというサキさんが、休憩中に尋ねてきた。

「最低でも十五人必要でしたね」

 僕等は十三人。あと二人足りない。

「次の隠れNPCは入手しないんでしょう?」
「第九ステージの隠れNPCはドライアド。能力はあまり覚えていませんが、隠れNPCの中では最弱クラスだったはず。なので入手方法も覚えていません」

 そう言うのは、僕をこの世界に送り込んだ張本人であるデボラさん。

 二人の持つ情報を元に、僕等はゲームの攻略を進めてきた。

「貴女の情報、イマイチ宛てにならないのよ。アシュリーの時だって進む方向が逆だったし、テイマーの時はルート間違えるし」
「ほ、本当に重要な隠れNPCは覚えています! ワイズマンとペルソナだけは、完璧に頭に入れておきましたから!」
「紙に書いておけば良かったのに」
「向こうから持ち込んだ物はチョイスプレートに入れられないから……途中で落としたのです」

「「へ?」」

 その話しは初耳なんだけれど?

「デボラって……偉そうな割にドジよね」
「なッ!?」

 デボラさんが癇癪起こすと面倒だから、煽らないで欲しいんだけれどな、サキさん。

「……彼は今頃、どうしてるのかな?」

 僕が唯一、人間だと思えた男。

「次に会うのが楽しみだよ」

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