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ダンジョン・ザ・チョイス

魔神スピリット

127.気持ちワリー

 二十兆匹のネズミ狩りを終えた後は、地道な作業が二日続いた。

 ちなみに、俺とトゥスカ、モモカはLvが高いため参加しないようジュリーとユリカに厳命された。

 ジュリー、タマ、ユリカは皆よりLvが低いから……焦ってるのかも。

 サキと四人でパーティーを組んで、メルシュの案内の元、積極的にネズミ狩りをしているようだ。

「本当に行くのか?」

 嫌そうな目を向けてくるザッカルと、トゥスカと共に石の階段を登っていく。

 このステージの生き残りが集まっているという場所に行くのが、ザッカルは本気で嫌らしい。

「ちょっと、ダンジョン入り口の下見に行くだけだから」

 本当の目的は、危険因子の排除。

 いざ第七ステージのダンジョンに挑もうとして、奇襲を受けるのは困る。

 こっちにはまだ幼いモモカが居るため、出来れば人殺しを見せたくないし。

 ザッカルの話しだと、厄介な事になる可能性が高いから尚更。

「……ヒデーな、こりゃ」

 石階段を登り終えると、ザッカルの呟きが耳に届く。

 家々はボロボロで、ほとんど原型を留めておらず、地面もそこら中穴だらけ。

「ここに、生き残りが集まってるんだよな?」
「最後にここに来たのは一ヶ月近く前だからな。あれからどうなったのやら」

「ザッカル……さん?」

 男が岩の影から現れた。異様な程に痩せた男が。

「お前……トモヤか!?」

 ヨロヨロと歩く男を支え、ゆっくり座らせるザッカル。

「他の奴は?」
「二人は、奥で眠ってます。俺のパーティーで生き残ったのは……それで全員です」

 盛大な腹の音が響く。

「食え」
「ネズミの肉……ですか?」
「ん? ああ、そうだ」
「す、すんません……ネズミは……奴等に人が食い殺されるのを見てから、ダメに……」

 ネズミくらいしか食糧が手に入らないのに、唯一供給出来る食い物が喉を通らない。

 痩せるわけだ。

「お前ら以外の生き残りは?」
「ダンジョンの入り口に……集まってます」

 男に近づいて皿を出し、食べ物を盛って差し出す。

「食え」
「すんません……俺なんかに…………すんませんッ!」

 男は手掴みで、泣きながら肉や握り飯を頬張る。

 その間に、二皿分同じのを用意。

「これ、仲間に」
「ありがとうございます! ありがとうございます!!」

 元々どういう人間なのかは分からないけれど、この感謝は心からの物なのだろう。

 男が皿を持って立ち上がると、去ろうとして動きを止めた。

「ザッカルさん……ダンジョン前に集まっている奴等のリーダーは……ケンジです。それじゃあ、恩に着ます!」

 トモヤというのが去って行くのを見届けると、ザッカルが歩き出す。

「さっきのは、クエスト発生後に一時期組んでたパーティーのリーダーだ。以前は太ってるくらいだったが……」

「彼等は……諦めたのか」
「他の奴等よりは粘ってたけれどな……ありがとよ、コセ。飯を分けてくれて」
「ザッカルが恩を感じているようだったから」

 さすがに不憫に見えたのもあるけれど、ザッカルは彼を認めているようだった。

 ただ……ネズミが食えないとなると、クエストが終わるまで食べ物が無い。

 ……ちょっと、失敗したかもしれない。

 一見不幸に見えることが将来の不幸を遠ざけたりするように、善行のつもりが不幸を呼び込むことにもなりかねないのだから。

「居た」

 ザッカルの向かう先に、十数人のグループ。

 ダンジョン入り口の洞窟を背に、たむろっていた。
 そのダンジョンは、入れないように入り口が、半透明な六角形が連なった壁で覆われている。

 健康そうなのが四人。
 それ以外は、さっきの男程じゃないが痩せ細っていた。

 明らかな格差が、目の前のグループには見て取れる。

「よう、ザッカル! 俺の仲間を殺してくれた女が、なにしに来やがった!!」

 黒いターバンのような物を被った、チャラそうな男が大仰に腕を広げ、妙なステップを刻みながら近付いてくる。

 アイツがケンジか。

「罠に掛かって勝手にくたばったんだろうが。盗人の分際で、偉そうにすんじゃねぇよ」

 軽い感じで挑発するザッカルだが、尻尾は怖いくらいに逆立っている。

「……他の奴等、随分痩せてるな」
「仕方ねーだろ。俺のパーティーが、コイツらを夜な夜なネズミ共から守ってやってんだ。コイツらが育てた物を優先して食うのは、当然の権利だぜ」
「そうかよ。別にテメーらがどうなろうが知ったこっちゃねー。今日はちょっと顔を見に来てやっただけだ。じゃあな」
「ちょっと待てよ」

 ザッカルが帰ろうとすると、手振りで囲むように指示を出すケンジ。
 
「食い物と武器を置いていけ。そしたら見逃してやるよ」

 凄い。本当に三下みたいな事を言いやがった、コイツ!

 痩せた者達も包囲に参加し、ギラついた目を向けていた。

 あの男と一緒にずっと行動していたような人間なら、悪い意味で同調していてもおかしくないか。

「どうする、コセ?」
「向かってくるなら、死んでも文句は言えないだろう」
「さすがだね」

 ザッカルは野蛮だな。

「たった三人で、俺達に勝てるわけねーだろ。おい、そこの獣女は殺すなよ! 俺のあとにヤらせてやるからよ!」
「へへへへ、久しぶりの新しい女だ」
「あの獣人、ザッカルと違ってエロいぜ!」

 今、聞き捨てならないセリフが次々と聞こえてきた。

「気持ちの悪い男共」

 トゥスカの侮蔑の言葉。

「ここに居る女とはヤリ飽きてさ。どうせ死ぬんだ。タップリ楽しもうぜ!」
 
「バカが!! お前ら、ネズミの数を把握してねーのか! もう数百匹しか残ってねーだろうが!!」
「は?」

 ザッカルの言うとおり、まったく気付いていないらしい。

「あの数が、どうにかなるわけねーだろ!! ざけんじゃねーよ!」

 男が叫んだ瞬間、ダンジョン入り口を塞いでいた半透明な壁が消えていく。

「へ?」
「なんで?」

 その時、突然チョイスプレートが出現。

○突発クエストクリアです! おめでとうございます!!

○報酬として、討伐したスタンピードラット一体につき10000Gを差し上げます!!

 見る見る、チョイスプレートに表示されたお金の数値が増えていく。

「うそ……絶対に助からないと思ってたから……身体を許したのに……なんで助かっちゃうのよ……」

 女の一人が短剣を構え――ザッカルに突撃した!?

「諦めたくせに、被害者面すんな!!」

 ザッカルの鉤爪は女の喉を貫き、反対の手でその胸を突き刺す。

「気持っち悪い女!」

 ザッカルの、心の底からの唾棄の叫び。

「お前ら、今すぐダンジョンの中に消えろ!! じゃなきゃ……全員ぶっ殺す!!!」

 ザッカルの叫びに、ダンジョンに向かって逃げ出す者も居れば、明後日の方向へ駆け出す者も居る。

「おい、逃げるんじゃねぇ!! クソ!」

 形勢不利を悟ったようで、ケンジのパーティーメンバーは全員ダンジョンに飛び込んだ。

「クソ……本当に気持ちワリー……」

 天を仰ぐザッカルの呟きが誰に向けられた物なのかは……俺にも分からなかった。

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