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ダンジョン・ザ・チョイス

魔神スピリット

126.奴隷王の腕輪の力

 午前一時頃、十九人全員が“神秘の館”に集合し、屍のように眠りについた。

「もう……お昼前か」

 昼間の陽射しに当てられながら起きるの……気持ち悪い。

 早起きしないと、人生の半分を損した気分になる。

「……起きるか」

 頭、ボーッとするな。

 立ち上がり、装備セット機能で武装。

 今日は珍しく、誰とも一緒に寝ていない。

「……ザッカル、なんのようだ?」

 扉を開けると、首に黒い短剣を当てられた。

「気、抜きすぎなんじゃないのかい?」
「屋敷に、俺を殺そうとする人間は居ない」
「理屈で人を図らない方が良い」
「バカが着くくらい聡明な君が、この屋敷の人間を殺すはずがない」
「プッ! アハハハハハハハハハハハハハハ!! 俺が! 俺が聡明って! 変な奴!!」

 嘘を言ったつもりは無いのに。

「不可能だと分かっていても、クエストに挑み続けた。バカで聡明じゃなきゃ出来ない」

 ザッカルは毎日のように、たった一人でもネズミに挑み続けたという。

 全体から見れば微々たる数でも、将来の何兆匹を駆除してくれていたのか。

「愚直に諦めなかったザッカルを、俺は尊敬する」

「…………なるほど、こういう所か」
「ん?」

 ザッカルの顔が、赤くなっている気がする。

「ああ、コセ。俺をお前の仲間に入れてくれ。役に立って見せるぜ!」
「ああ、よろしく」

 俺様系の雰囲気に苦手意識はあるけれど、ザッカルは信用できると分かったから、俺から握手を求めた。

「へへ! それじゃあ、今日も張り切ってネズミ狩りと行きますか!」

「……へ?」


●●●


○戦士.Lv39になりました。指輪右プラス1になります。

「ネズミの大群を、嫌って程相手したけれど……まさかLvが上がるなんて」

 一匹一匹は弱いし、暫くは上がらないと思っていたのに。

「皆、疲れてるところ悪いけれど、急いでネズミ処理をしないといけない」

 遅い朝食を食べながら、メルシュが説明を始める。

「ネズミの数は一晩で四十三兆匹まで減ったけれど、コイツら全部駆除しないとクエストは終わらない。そして、昨日派手に暴れ回ったから、二十パーセントまで町の耐久値が下がってる」

「一日で十二パーセントも……ヤベーな」

 ザッカルの顔が青い。

「町の耐久値は、ネズミによって常に少しずつ下がっていく。派手な攻撃は使わずに急いで駆除しないと、クエストクリア前にゲームオーバー。雄が居なくなった事で攻撃性は下がってるけれど、逆に昼間は逃げるようになってしまってるから、駆除には時間が掛かると思う」

「最大の危機を脱しただけで、油断出来るような状態じゃないと」

 クエスト、もう終わった気分になってた。

「マスターの言うとおりだよ。夜と昼に分けて、ネズミ狩りを二十四時間継続する必要がある。突入組は、館を出ると迷路の中だから、引き続き迷路で。足止め組は、様子を見ながら少しずつ迷路での狩りを増やしていく。で、どうかな?」

「俺は最善だと思う」
「町には他の人間も居るのだろう? 協力を呼び掛けては?」

 俺が賛成すると、ルイーサが提案してきた。

「止めとけ、止めとけ。アイツらは危険だ。中には後ろから不意打ちしてくるような輩も居るし、お前らと比べたらなにもかも力不足。邪魔になる上に事情を説明する時間がもったいねー」
「そうだな。素早く動いて数を減らした方が、後々余裕も出来る。ネズミの減少と町の耐久値を見ながら、様子を見よう」

 ザッカルの頭ごなしの反対は、反感を生みやすい。
 だから、俺はそれとなく妥協案を示した。

 人をまとめるって……面倒くさい。

「……分かった」

 こうして、俺達のネズミ狩りの日々が始まった。

 
●●●


「飽きた」
「アヤナ……気持ちは分かるが」

 この町に来てから四日目、私は長い付き合いであるアヤナとアオイと一緒に行動していた。

 もうすぐ正午になるという時間に、迷路でネズミ狩りをして居る。

「お姉ちゃん、ネズミはまだ二十一兆も残ってる」
「耐久値は十四パーセントまで落ちた。ネズミが減った分耐久値の減りも緩やかになったが、討伐数も減ってきてる」

 気をぬきたくなるのは分かるが、今油断すると不測の事態に困るのは明白。

「お姉ちゃん、一匹10000G。10000Gだよ。お買い得だよ!」
「もう結構な数倒したし、クエスト終了後はお金持ち! グフフフフフフ!!」

 本当に金にがめつい。

 レプティリアンから隠れているとき、お金が減る一方だったから、その反動もあるのかもしれない。

「それに、このままだと食卓に並ぶお肉が全部ネズミだけになりかねないしな」
「げ!」
「そうだった……」

 町にはNPCが居ないため、食糧は買えず、手に入るのは討伐したスタンピードラットのドロップアイテム、”ネズミ肉”と“霜降りネズミ肉”のみ。

 ……まあ、ネズミ肉美味しいけれど。

 それに、家のコンソールを使えば、ネズミ肉をお金に変えてリストの中から好きな物を購入できる。

 カズマさんの家で私達はそうやって食いつないで来たのに、アヤナは完全に忘れているようだ。

「私達も、そのうち家を買いたいな」
「きっとどこかで買えるはずだから、メルシュに聞いてみましょう」
「お金いっぱいになるし」

 私達三人だけでも、いったいどれくらいの額になるのか。

「そろそろ持ち場に着くわよ」

 アヤナがメルシュの書いた地図を畳み、戦闘態勢を促してきた。


●●●


「凄い数だな」
「昨夜頑張って、誘導したかいがありますね」

 トゥスカと共に、部屋の中を見回していた。
 現在、この迷路で一番広い空間に、二十兆を越えるネズミが集まっている。

「ザッカルの薬のおかげだな」
「へへ、まあな」

 この部屋の出入り口にはネズミ避けの薬品が撒かれており、一網打尽にするため、逃げられないようにしているのだ。

「じゃあ、マスター。“奴隷王の腕輪”の能力を試そうか」

 そう声を掛けてきたのはシレイア。

 現在俺は、シレイア、トゥスカ、ザッカル、ノーザン、タマの六人でパーティーを組んでいる。

 なぜメルシュではなくシレイアなのかと言うと、これから始まる作戦のためだ。

「じゃあ、まずは俺から行く!」

 横穴からネズミの群れのど真ん中へと飛び降り――“滅剣ハルマゲドン”を振り下ろす!

「“終末の一撃”!!」

 TP・MPを半分使用し、一日一度だけ使用可能な黒の暴威を炸裂させた!

「トゥスカ!!」

 “連携装備”を持つ俺が、俺の奴隷であるトゥスカに投げ渡すことでトゥスカに装備権限が移る。

「”終末の一撃”!!」

 再び黒の暴威が放たれ、ネズミが大量爆殺。

「ノーザン!」
「お姉様!!」

 今度はノーザンが掴み取り、ネズミの密集地帯に飛び込む!

「“終末の一撃”!!」

 今度は、ノーザンが“滅剣ハルマゲドン”の能力を使用した。

 続けてザッカル、タマ、最後にシレイアが使用し、二十兆匹以上居たネズミのほとんどを始末する事に成功。

「上手くいったね」

 シレイアが、ハルマゲドンを担いで近付いてくる。

「タマ、ザッカル、ノーザン、危険に巻き込んで悪いな」

 “滅剣ハルマゲドン”を受け取り、その他から“奴隷王の腕輪”を外す。

「コセ様と文字通り運命共同体となるのならば、望むところです!」

 ノーザン、最近ますますガツガツ来るようになった気が……。

「パーティーリーダー専用装備で、身体能力補助効果のあるSランク装備。だが、本当の目玉はパーティーメンバーの疑似奴隷化」

 シレイアの発言に、寒気が走った。

 この腕輪の欠点は、装備した状態で俺が死んだ場合、奴隷状態のパーティーメンバー全員が死んでしまうこと。

 だが、そのデメリットを無視してでも、使いたくなるメリットが存在する。

「俺の“連携装備”みたいに、主従関係がある場合に有効な手段となる……か」

 “連携装備”は、俺が装備している物のみ、奴隷同士の手渡しでも所有権を変えられるよう。

 これにより、本来一人一日一度しか使えない“終末の一撃”を、パーティーメンバーで手渡しする事で連続発動を可能にした。

 強敵相手に、これ程有効な戦術はまずないだろう。

「お疲れ、シレイア」

 残っていたネズミを始末したメルシュが、無言でシレイアと代われと訴えている。

 チョイスプレートを操作し、ユイに隠れNPCのトレードを申し込み、無事メルシュが戻ってきた。

 今回の作戦、メルシュは武器を装備出来ないため、逆に武器の扱いに長けた隠れNPC、アマゾネスのシレイアと代わっていたのだ。
 
「これで、あと三兆匹を切ったよ。無茶したから、町の耐久値は七パーセントにまで下がったけれど」
「大丈夫なのかよ……それ」

 ザッカルが心配そうにしている横で、俺はLvを確認した。

○戦士.Lv40になりました。サブ職業セット機能解禁。

○戦士Lv41になりました。その他装備可能数が4になります。

 約二十兆匹分の経験値により、Lvが2も上がったか。

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