ダンジョン・ザ・チョイス
119.作戦
俺を買った男三人は、クソヤローだった。
発情を隠そうともしないクソご主人様共に上下関係を分からせようと教育的指導をすると、あっさり服従した。
第二ステージクリア後に奴隷契約を解除させ、あり金を半分奪ってソイツらとは別れた。
三ヶ月前に第六ステージの競馬村まで進んだ俺は、レプティリアンとか言う奴等に襲われ反撃。
最初に襲ってきた奴を一人殺し、ろくに食料を揃えたり出来ないまま、ダンジョン前で見張りをしていたうちの一人も殺して、奴等の手から逃れた。
そして、ここ”石階段の町”へと辿り着いた。
少しゆっくりしようと考え、二週間が経過した頃、あれが……突発クエストが置きた。
ルールを聞いた俺は、増えた後の方が稼げると楽観的な空気を広げるケンジ達を無視し、一人でスタンピードラットを探した。
だが、一日目、二日間、三日目と見付からず、四日目に初めて階段を下りて探し、俺は横穴を発見した。
五日目に初めてスタンピードラットに遭遇。
初めて戦う敵、地形が地形だったのもあり、怪我を負っちまった俺は、二匹始末したあと逃げ帰った。
その夜、奴等は突如として襲ってきた。
辺りが暗くなった頃に現れ、不意打ちにより犠牲者が二人出る。
ようやく事の重大性に気付いた奴等はケンジ達を攻め、討伐に乗り出しやがる。
討伐は順調に進み、あっという間に残り三匹に。
気が抜けたのか、アイツらはまた討伐に参加しなくなった。
一匹一匹が弱く、討伐があっという間に進んだからだろう。
俺は一人でもどうにかしようとするが、ケンジ達に邪魔され、何度か死にかけた。
一対一じゃ勝てねーと思ってるのか、アイツらは姑息な手ばかり使って来やがる。
そして、九日目に異変は起こった。
夜に襲ってきた奴等は凶暴性が増し、一匹一匹の力が増していたのだ。
新たに三人の犠牲者が出て、無責任にも怖じ気づく奴等が出始める。
数が増えるほど奴等の凶暴性は増し、犠牲者は増え、討伐に参加する人間も減っていった。
少しは骨があると思っていた奴等まで、倒しても倒しても増える一方のネズミ共に絶望し、討伐を投げ出すか、自殺した。
二十日間以上、俺は一人でネズミを殺し続けている。
★
俺に関する話しをコイツらの屋敷の中で終え、トゥスカの男に視線を送る。
あんまし気骨ってものを感じないね、コイツからも。
「先に進むためにも、クエストを終わらせないといけないから、協力するのは構わない。一日で倍に増えるって言うのなら、早く動いた方が良いだろう。メルシュ」
薄緑の髪の小柄なガキが、前に出て来た。
「スタンピードラットは、数が増えると狂暴になる習性があるんだよ。だから、数が減れば減るほど弱体化するの」
「それで、秘策っていうのは?」
「突発クエストのルール説明には無いようだけれど、スタンピードラットにはボスが居て、唯一の雄って設定なんだよね」
雄が……一匹だけ?
「って事はまさか!!」
「その雄さえ仕留めれば、スタンピードラットは増殖しない」
そんな方法があったとは!
「どうやって雄を見付ける?」
「雄は赤くて、黄色の斑模様があるから、一目で分かるよ」
急に、希望が見えてきた!
「あの想像を絶する数から探せと?」
そうだった! 俺は一度も、そんな色の奴を見たことねーぞ!
「ボスは一番安全なところに居るはずだから、あの迷路の最深部なのは間違いないね。私の“英知の引き出し”で、迷路はバッチリだよ!」
コイツ、なんかスゲーな! よく分かんねーけど!
「でもよ、その最深部までどうやって行く? 派手な攻撃をすると、洞窟が崩れるぜ? 突発クエストの特別仕様とか言うののせいでな」
そのせいで、俺が借りてた家がボロボロにされちまった。
「スタンピードラットの習性を利用する。アイツらは夜行性だから、群れの半分が洞窟を出て襲ってくるんだよ」
「つまり、夜なら昼の半分を相手にすれば良いって事か」
それでも、とんでもない数を相手にしなきゃならねー。
「タイムリミットは夜明けまで。夜が明け始めると、狩に出ていたネズミ達が巣に戻るから、挟み打ちにあっちゃう。でも、一斉に全てのネズミが戻るわけじゃない」
「満腹になった奴から逃げていくみたいだったぜ」
何度かそれらしい行動を見掛けた。
「あの狭い洞窟内じゃろくな魔法は使えないし、戦士を中心にした潜入組と、襲ってきたネズミを相手にする足止め組に分ける必要があるね」
「なら、動くのは今夜だな。悪い、ナオ」
「だ、大丈夫、気にしないで!」
薄い青髪の女が、なにやら慌てていた。
●●●
「突入組は、万が一の時のために離れずに行動するように」
メルシュ以外の魔法使いは、足止め組に。
ジュリーの隠れNPCであるサキと投げ武器主体のリンピョン、モモカも足止め組に。
「おい! こんな良い武器、本当に貰って良いのか?」
巨躯の女獣人ザッカルが、レプティリアンを倒した際に手に入れた“ダークネイル”、Bランクを装着して尋ねて来た。
「使用する人間が居ないから、問題無い」
甲手系統の武器だが、甲手や鉤爪を使うユリカ達は要らないらしい。
Bランクで良い武器って言うことは、彼女はずっと、Cランク以下の武器で戦っていたのだろうか?
「ご主人様、もうすぐ日が暮れます」
トゥスカの言葉に、町の外を見詰める。
見えるのは、どこまでも続く雲海と空。
そして、沈み掛けた太陽。
昼ご飯を早めに食べて、睡眠を取り、軽めの夕食を口に入れ、準備は整えた。
「コセ、気を付けてね」
モモカが心配してくれる。
抱え上げ、肩に乗せてあげると喜ぶモモカ。
「モモカこそ、家に居て良いんだぞ」
Lvが高くても、乱戦状態になればなにが起きるか分からない。
出来れば、家でジッとしていて欲しい。
「コセ達のために、いっぱいネズミさん達を殺してあげる!」
この子……怖い。
Lvで言うと、一番強いのモモカなんだよな。
「頼りにしてるぞ。でも、モモカが無事で居てくれないと、俺は泣いちゃうからな」
「分かった! 絶対にコセを泣かせない!」
無理するなよとか、怪我には気を付けろとか言いたかったけれど、それだとまるで自分が必要とされていないと感じてしまうと思い、止めた。
モモカに、大人のエゴを押しつけるような真似はしたくなかった。
「子煩悩な父親だな」
「「父親じゃない!」」
俺とモモカが同時に、ザッカルに反論する。
俺にとって、モモカは可愛い妹みたいな存在だ。
まあ、娘でも良いけれど。
「コセは、大っきくなったら私と結婚するんだもん! だから、コセは私の旦那様だもん!」
「へ?」
なにそれ? 嬉しいけれど、凄い複雑な気分。
「……ロリコンだったのか」
「違う」
必死に反論しようとすると、日が沈み、一気に帳が落ちてくる。
「来ました、ご主人様」
夥しい数の巨大白ネズミが、町の上部へと流れ込んできた。
発情を隠そうともしないクソご主人様共に上下関係を分からせようと教育的指導をすると、あっさり服従した。
第二ステージクリア後に奴隷契約を解除させ、あり金を半分奪ってソイツらとは別れた。
三ヶ月前に第六ステージの競馬村まで進んだ俺は、レプティリアンとか言う奴等に襲われ反撃。
最初に襲ってきた奴を一人殺し、ろくに食料を揃えたり出来ないまま、ダンジョン前で見張りをしていたうちの一人も殺して、奴等の手から逃れた。
そして、ここ”石階段の町”へと辿り着いた。
少しゆっくりしようと考え、二週間が経過した頃、あれが……突発クエストが置きた。
ルールを聞いた俺は、増えた後の方が稼げると楽観的な空気を広げるケンジ達を無視し、一人でスタンピードラットを探した。
だが、一日目、二日間、三日目と見付からず、四日目に初めて階段を下りて探し、俺は横穴を発見した。
五日目に初めてスタンピードラットに遭遇。
初めて戦う敵、地形が地形だったのもあり、怪我を負っちまった俺は、二匹始末したあと逃げ帰った。
その夜、奴等は突如として襲ってきた。
辺りが暗くなった頃に現れ、不意打ちにより犠牲者が二人出る。
ようやく事の重大性に気付いた奴等はケンジ達を攻め、討伐に乗り出しやがる。
討伐は順調に進み、あっという間に残り三匹に。
気が抜けたのか、アイツらはまた討伐に参加しなくなった。
一匹一匹が弱く、討伐があっという間に進んだからだろう。
俺は一人でもどうにかしようとするが、ケンジ達に邪魔され、何度か死にかけた。
一対一じゃ勝てねーと思ってるのか、アイツらは姑息な手ばかり使って来やがる。
そして、九日目に異変は起こった。
夜に襲ってきた奴等は凶暴性が増し、一匹一匹の力が増していたのだ。
新たに三人の犠牲者が出て、無責任にも怖じ気づく奴等が出始める。
数が増えるほど奴等の凶暴性は増し、犠牲者は増え、討伐に参加する人間も減っていった。
少しは骨があると思っていた奴等まで、倒しても倒しても増える一方のネズミ共に絶望し、討伐を投げ出すか、自殺した。
二十日間以上、俺は一人でネズミを殺し続けている。
★
俺に関する話しをコイツらの屋敷の中で終え、トゥスカの男に視線を送る。
あんまし気骨ってものを感じないね、コイツからも。
「先に進むためにも、クエストを終わらせないといけないから、協力するのは構わない。一日で倍に増えるって言うのなら、早く動いた方が良いだろう。メルシュ」
薄緑の髪の小柄なガキが、前に出て来た。
「スタンピードラットは、数が増えると狂暴になる習性があるんだよ。だから、数が減れば減るほど弱体化するの」
「それで、秘策っていうのは?」
「突発クエストのルール説明には無いようだけれど、スタンピードラットにはボスが居て、唯一の雄って設定なんだよね」
雄が……一匹だけ?
「って事はまさか!!」
「その雄さえ仕留めれば、スタンピードラットは増殖しない」
そんな方法があったとは!
「どうやって雄を見付ける?」
「雄は赤くて、黄色の斑模様があるから、一目で分かるよ」
急に、希望が見えてきた!
「あの想像を絶する数から探せと?」
そうだった! 俺は一度も、そんな色の奴を見たことねーぞ!
「ボスは一番安全なところに居るはずだから、あの迷路の最深部なのは間違いないね。私の“英知の引き出し”で、迷路はバッチリだよ!」
コイツ、なんかスゲーな! よく分かんねーけど!
「でもよ、その最深部までどうやって行く? 派手な攻撃をすると、洞窟が崩れるぜ? 突発クエストの特別仕様とか言うののせいでな」
そのせいで、俺が借りてた家がボロボロにされちまった。
「スタンピードラットの習性を利用する。アイツらは夜行性だから、群れの半分が洞窟を出て襲ってくるんだよ」
「つまり、夜なら昼の半分を相手にすれば良いって事か」
それでも、とんでもない数を相手にしなきゃならねー。
「タイムリミットは夜明けまで。夜が明け始めると、狩に出ていたネズミ達が巣に戻るから、挟み打ちにあっちゃう。でも、一斉に全てのネズミが戻るわけじゃない」
「満腹になった奴から逃げていくみたいだったぜ」
何度かそれらしい行動を見掛けた。
「あの狭い洞窟内じゃろくな魔法は使えないし、戦士を中心にした潜入組と、襲ってきたネズミを相手にする足止め組に分ける必要があるね」
「なら、動くのは今夜だな。悪い、ナオ」
「だ、大丈夫、気にしないで!」
薄い青髪の女が、なにやら慌てていた。
●●●
「突入組は、万が一の時のために離れずに行動するように」
メルシュ以外の魔法使いは、足止め組に。
ジュリーの隠れNPCであるサキと投げ武器主体のリンピョン、モモカも足止め組に。
「おい! こんな良い武器、本当に貰って良いのか?」
巨躯の女獣人ザッカルが、レプティリアンを倒した際に手に入れた“ダークネイル”、Bランクを装着して尋ねて来た。
「使用する人間が居ないから、問題無い」
甲手系統の武器だが、甲手や鉤爪を使うユリカ達は要らないらしい。
Bランクで良い武器って言うことは、彼女はずっと、Cランク以下の武器で戦っていたのだろうか?
「ご主人様、もうすぐ日が暮れます」
トゥスカの言葉に、町の外を見詰める。
見えるのは、どこまでも続く雲海と空。
そして、沈み掛けた太陽。
昼ご飯を早めに食べて、睡眠を取り、軽めの夕食を口に入れ、準備は整えた。
「コセ、気を付けてね」
モモカが心配してくれる。
抱え上げ、肩に乗せてあげると喜ぶモモカ。
「モモカこそ、家に居て良いんだぞ」
Lvが高くても、乱戦状態になればなにが起きるか分からない。
出来れば、家でジッとしていて欲しい。
「コセ達のために、いっぱいネズミさん達を殺してあげる!」
この子……怖い。
Lvで言うと、一番強いのモモカなんだよな。
「頼りにしてるぞ。でも、モモカが無事で居てくれないと、俺は泣いちゃうからな」
「分かった! 絶対にコセを泣かせない!」
無理するなよとか、怪我には気を付けろとか言いたかったけれど、それだとまるで自分が必要とされていないと感じてしまうと思い、止めた。
モモカに、大人のエゴを押しつけるような真似はしたくなかった。
「子煩悩な父親だな」
「「父親じゃない!」」
俺とモモカが同時に、ザッカルに反論する。
俺にとって、モモカは可愛い妹みたいな存在だ。
まあ、娘でも良いけれど。
「コセは、大っきくなったら私と結婚するんだもん! だから、コセは私の旦那様だもん!」
「へ?」
なにそれ? 嬉しいけれど、凄い複雑な気分。
「……ロリコンだったのか」
「違う」
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