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ダンジョン・ザ・チョイス

魔神スピリット

94.逃亡先

「こっちだ! 付いてこい!」

 メグミさんが、俺達を誘導しようとする!

 ――信頼して良い物だろうか?

 数日ぶりだというのに、不思議と珍しく名前を忘れなかった長身の茶髪のポニーテールの女性。

「またしても邪魔をするのか、この裏切り者が!!」

 男が叫ぶ。

 裏切り者ってどういう事だ?

 サトミさん達が一度は奴等と手を組んだけれど、なんらかの理由で見限ったという事なのか?

「”氷炎魔法”、アイスフレイムバレット!!」
「クソ!」

 ナオの魔法のおかげで、男の足止めに成功する。

「助かった、ナオ!」

 そう言いながら、なにかを後方に投げ付けるメグミさん。

 パン! という音と共に、濃い煙があっという間に広がっていく。

「ここからは黙って付いてこい」
「先に行け、ナオ」

 言われたとおり、姿勢を低くしてメグミさんの後を付いていく。
 メグミさん、ナオ、俺の順で。
 
「裏切り者が、原種と思われる男と一緒に逃げた!」
「原種だと!?」
「日本人に、まだ原種が残っていたのか!?」

 原種ってなんだよ。

 よく分からないけれど、人を絶滅危惧種みたいに言いやがって!

 まあ、異端な人間である自覚はあるけれどさ。

 それにしても、原種ってどっかで聞いたことがあるような……。

 煙の向こうの声が、遠ざかっていく。

 声だけでの判断だけれど、男女共に結構な数がおり、年齢もバラツキがあるようだ。

 日本語だけでなく、複数の言語が飛び交っている気もする。

 ――数分後、年季の入った木製の家……というより小屋が建ち並ぶ場所を進んでいると、やたら狭く、入り組んだ場所へと入っていくメグミさん。

 そのうちの一つのドアを開け、先に入るように促してきた。

 小屋の中には特に何も無く、わらが三分の二程敷き詰められている。

「メグミ、他の皆は?」
「シ、まだ喋るな」

 メグミさんが一部の藁をどけると、その下には枝と土と草で作られたと思われる蓋が。

 更にその蓋の下には、土を掘って作ったような階段がある。

 メグミさんが先に降りるように顎で指示してきたため、大人しく従う。

 奥には、階段同様に土を掘って作ったと思われる通路が広がっていた。

 最後に降りて来るメグミさんが蓋をしたため、ただでさえ暗かった通路が真っ暗に。

「少し待て。まだ喋るなよ」

 メグミさんがチョイスプレートを出現させた事で、少しだけ明るくなる。

 なにかを取り出したのか、チョイスプレートが消えると同時にメグミさんが手の中に緑色に淡く光る石を持っていた。

「他に光を発する物は出すな。敵だと間違われる」

 黙って頷く。

 いったい、この第六ステージではなにが起きているのか。

 数分間、入り組んだ道を進んでいると行き止まりに。

 チョイスプレートを操作し、鎧を外すメグミさん。

 よく見ると、人一人が身体を横向きにして、なんとか通れそうな通路が見えづらい場所にあり、メグミさんがそこに身体を捻じ込んでいく。

 俺も鎧を外し、メグミさんの後を追う。

 また入り組んだ通路を進んでいくと、灯りが見えてきた。

 灯りと言っても、とても弱いオレンジの光源が一つあるだけ。

 その空間には別れ道がいくつもあり、もはや迷路と言っても過言ではない。

 メグミさんが屈むと、下にはビッシリとタイル絵が敷き詰められていることに気付く。

「開けてくれ」
『レプティリアン』

 タイルの下から女の声?

「くそっ食らえ」

 メグミさんが苦笑しながらそう言うと、少し離れた空間に穴が開く。

 俺の”神秘の館”と同じ物か。

「来てくれ」

 メグミさんの案内の元、俺とナオはその先へと進む。


●●●


「戻って来ませんね……リアルハーレムのお方」

 ユイが、よく分からない呼称でご主人様を呼ぶ。

 昼食を食べ終え、ボス戦の打ち合わせが終わったにも関わらず、ご主人様は戻ってこない。

「第六ステージか……そういや、以前変な奴等が居たね」

 シレイアが、リビングに居る皆の前で、突然そう呟いた。

「変な奴等って?」
「前のマスターと一緒に第六ステージに辿り着いたとき、いきなり「レプティリアンか?」って聞かれてさ。その時は別になにも無かったんだけれど、結構な人数が組織だって動いていたみたいだったんだよね~」

 メルシュの尋ねに、神妙な面持ちで答えるシレイア。

「ご主人様が、なにかの事件に巻き込まれていると?」
「そいつらとは限らないが、まあ、可能性はあるだろうさ」

 ますます不安になってきた。

「案外、二人でお楽しみなだけかもよ♪」

 メルシュが空気を変えようとする。

「なん……だって!! 早く行こう! 今すぐ行こう!!」

 いきなりテンションが上がったユイさんにより、少しだけ不安が紛れた。

「フー。私、ご主人様が戻るまで料理を作ってます」

 少しは気が紛れるはず。

「私も手伝おう」
「では、僕も手伝います、お姉様」

 ジュリーもノーザンも、私と同じように不安なのだろう。

 ご主人様……メルシュの言うとうり、ナオと子作りしているだけなら良いのですが…………なんか、急に怒りが湧いてきた!


●●●


 空間の先にあったのは、”神秘の館”よりも数回り小さい木造の家。

 二階もあるようだ。

「メグミ……そいつが?」
「ああ、サトミ達が話していた男だ」

 黒髪サイドテールで輪っかを作っている、ベージュ色のローブを着た女の子が、不機嫌そうにこっちを見ていた。

 さっき、『レプティリアン』と言っていた人か。

「……使えるの、そいつ?」

 なんでこんなに偉そうなんだ、この女?

「多分、私よりも強いよ」

 メグミさんがフォローしてくれる。
 そう言えば、メグミさんの前で俺が戦ったのは、一つ目女の時が最後か。

「なら良いんだけれどさー」

 本当に偉そうだな。

「あんた、私の彼氏に随分偉そうじゃない! 名前とLvを教えなさいよ!」

 ナオが噛み付いてしまう。

「私はアヤナ。なにか文句でもあるわけ?」

 不思議なくらい高慢な女子だな。

「で、Lvは?」
「このアタシに名乗らせておいて、自分は名乗らないの? 教育のなってない女ね~」

 コイツ、俺の彼女をバカにしやがった!

「ぐぬぬ! 私はナオ!! Lvは25よ!!
「嘘でしょ!? なんでそんなに高いのよ!」

 急に目の色が変わったな。別にそんなに驚かなくても良いと思うんだけれど。

「あ、アンタは! アンタはLvなんなのよ!」
「俺?」

 この女よりは低いんでしょ? みたいな目で見られても。

 そう言えば、ゴーレムの坑道に入ってから確認してなかったな。

○戦士.Lv28に上がりました。装備セット機能がプラス1されます。

「第五ステージのダンジョンに入ってから、ようやくLvが上がったのか」

 怪魚の港での突発クエスト以来だ。

「ちょっと! 早く言いなさいよ!」

 この女と比べると、以前のナオの方が大分マシに思えるな。

「28」

「…………は?」

 突発クエストに遭遇したかどうかが生んだ差だと思うけれど、そこまでショックを受けなくても。

「戦士.Lv28だよ」
「……おかしいでしょう……あり得ないでしょう」
「で、アンタは?」

 ナオの追求。

「へ!!?」

 ナオは出会った頃Lv21だったけれど、スキルカード集めや、ゴーレム五百体のルートを進んだから、普通に進むよりも得た経験値に差が出ているはず。

「に、22よ……」
「本当か?」

 もの凄い視線を逸らされて言われたから、つい指摘してしまった。

「実は、彼女のLvは1なんだ」
「「へ?」」

 メグミさんの暴露に驚く俺達!

 ……Lv1のまま、ここまで辿り着くのは不可能。

「滞在ペナルティーか」
「ご名答。さすがだな。この村は三日に一度競馬に参加しないと、七十二時間ごとにLvが2下がるそうなんだ」

 競馬に参加……条件が緩いのかなんなのか。

 個人的には、賭け事なんてやりたくない。

「競馬に参加すれば良かっただろう。私は好きじゃないけれど」

 良かった、ナオは好きじゃないんだ。

「そんなの無理に決まってんでしょうが!」
「さっき襲ってきた奴等の数は約三十名。馬券売り場には朝から昼まで最低四人が見張っている。ちなみに、馬券販売は十一時までだ」

 なんだろう。競馬の話を聞いていると、緊迫していた空気が削られていく。

 あんまり賭け事の話しを聞いていると、感性が腐りそうだ。

「数とLvで負けてしまっているため、こうして逃げ隠れしているうちに太刀打ちするのが不可能になってしまうんだ」
「アイツら、馬券売り場だけじゃなくてダンジョンの出入り口も見張ってんのよ。逃げることも出来やしない!」

 アヤナが憤慨している。
 結束力と差別意識の強さは、あの短い接触時間でも充分に理解できた。

「結局、アイツらはなんなんだ?」
「それを説明する前に、会わせたい人達が居る。来てくれ」
「メグミ、アオイを見付けたら呼んできてくれる? 交代の時間はとっくに過ぎてるのに、まだ来ないのよ!」

 もしかして、俺達は八つ当たりされていたのか?

「分かった、もう少しだけ頼むよ」

 メグミさんに誘われるまま、俺とナオは家の中に入る。
 

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