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ダンジョン・ザ・チョイス

魔神スピリット

88.黄昏の目覚め

「ハアハア、ハアハア」
「危なかったですね、コセ様」

 濡れて重くなったナオを抱え、木製の橋が壊れる前に、なんとか石橋まで辿り着けた。

「ああ。でも……ここからだ」

 石橋の両端は洞窟の岩壁と繋がっており、その両端の岩が砕け、空洞が顕わに。


○特殊クエスト:ゴーレム群団を倒せ!


○コースによって貰える報酬が変化! 十秒以内に選ばないとランダム!

 100体コース 200体コース 500体コース

 
 聞いてはいたけれど、二百から一気に五百に増えるとか。

「行くぞ、ノーザン」
「後ろはお任せを、コセ様」

 鼻血を出して気絶しているナオを間に放置したまま、俺は500体コースを選択し、ノーザンに背中を預けた。


●●●


「アレが……坑道の主」

 ご主人様と別れたのち、メルシュと二人で歩いていると、鋭い岩が道の両端に埋め込まれている通路に出る。

 横も高さも、急に広くなった。
 天井は、暗くて見えない。

「来るよ」

 メルシュが見詰める先の地面が盛り上がり、巨大な鋭い岩が全貌を顕わにし、形を変えていく。

「人型に変形し終えた時がチャンスだから、よろしく」
「ええ」

 ダメージを与えたのが一人だけの場合、より良い報酬が得られるという隠し要素があるらしい。

『ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』

 通常のゴーレムよりも二回りは大きい、トゲトゲしい黒石のゴーレム!

 坑道の主、ヘルレイドゴーレム。

「アレを、魔法無しで倒さないといけないなんて」

 だからこそ、魔法による攻撃手段に頼らない私が選ばれた。

「ホロケウカムイ」

 サブ職業、”ホロケウカムイ”により身体能力を劇的に強化。

 チョイスプレートを操作し、を装備する!

「もうすぐ…………今!!」
「”瞬足”!」

 浮いた状態で形を変えていたヘルレイドゴーレムが、脚を地面に着いた瞬間を狙い、距離を詰める!


「終末の一撃!!」


 ご主人様が私に預けてくれた黒の巨剣から、TP・MPの半分を吸って生まれた暴威が放たれる!!

 ヘルレイドゴーレムが――砕け散った!

「来るよ!!」

 砕け散った岩から煙が吹き出し、ヘルレイドゴーレムの幻影を生み出す!

 ヘルレイドゴーレムの第二形態。

 魔法無しで倒した場合に出現する、特別な形態らしい。

『ゴアアアアアアアアア!!』
「”魔力砲”!!」

 ゴーレムの幻影を吹き飛ばすも、すぐに再生する。

 魔法以外のダメージを半分にするくせに、魔法を使って倒すと目当てのサブ職業が手に入らなくなる厄介な相手!

「”咎の転剣”、オミナスコントロールブーメラン!!」

 禍々しい気を纏った”咎の転剣”を操り、何度も何度も切り刻む!

 残り少ないTPで、削りきらないと。


●●●


 どうにかこうにか、トゥスカを一人で強敵と戦わせる状況を作れた。

 ヘルレイドゴーレムの第二形態がトゥスカの転剣を躱し、大剣のような腕を振るう!

「装備セット1に変更!」

 ”荒野の黄昏は色褪せない”と、”古生代の戦斧”を装備したトゥスカ。

 ようやく、あの橙色のブーメランを使ってきたか。

「頑張って、トゥスカ」 

 私達隠れNPCには発揮できない力を、引き出して見せなさい。


●●●


 MPは終末の一撃と”魔力砲”により、一度ゼロになっている。

 TPも、ほとんど残っていない。

 幻影の剣腕を、斧で受け止める!

「クッ! オミナススラッシャー!!」

 これでどう!?

 幻影を切り裂いたのを確認した瞬間、青い気が消失!?

「しまった!!」

 TPが十分の一以下になったため、ホロケウカムイが強制解除されたんだ!!

『ゴオオオオオオ!!』

 再び復活し、逆の腕を振るって来るヘルレイドゴーレム!

「がああッ!!」

 ”逢魔転剣術”を使った直後からの振り下ろしだったため、”古生代の戦斧”で受けるしかなかった!

 ダメージが五分の一になるって聞いていたけれど、身体が軋みを上げている!

 ”跳躍”のスキルで無理矢理押し返し、空中で”荒野の黄昏は色褪せない”をキャッチ。

 どうする。TPがないと、大した攻撃手段が無い。

「自動回復するまで、逃げ回るしか」

 ご主人様との最高級の婚姻の指輪愛の証もあるから、TP・MPはすぐに回復するはず。

 暫くは、逃げに撤して回復を――黒の幻影の上半身が、膨張した!?

 刃状の幻影腕が振るわれ、地面が切り刻まれる!!

 攻撃範囲が広い。

 これじゃあ、いつまでも躱しきれない!

 二度目、三度目と躱していくうちに、皮膚を裂かれる数が増えていく。

 急に動きが止まったと思ったら、幻影が腕を振り上げ、地面を攻撃。石の破片をぶつけてきた!!

「ああああああああッッ!!」

 身体が転がっていく!

 痛みを頼りに、身体の状態を探る!

 左肩と右太股に、大きいのが一つずつ。
 複数箇所に小さいのが……。

 このままじゃ……ご主人様に会えなくなっちゃう!

「諦め……ない」

 斧を手放し、立ち上がる。

「ハア、ハア」

 幻影が動きを止め、縮んでいく。
 長時間膨張してはいられないのか。
 おかげで、命拾いした。

「ハイヒール」

 メルシュが傷を癒してくれる。

 でも、このままじゃダメだ。

「もっと、ご主人様のように」

 私の孤独を癒してくれた、唯一の人。
 私の心に寄り添ってくれた、慈悲深いお方。


「ずっと一緒に……居られるように!」


 ――ゾワリとした、大いなる自然が身体を吹き抜けていく感覚。

 TPが失われたような感覚と引き換えに、V字の”荒野の黄昏は色褪せない”の長い方の端に、青白い文字が三つ刻まれる!

「これは、ご主人様と同じ……」

 片腕を無くした状態でトロルと戦っていた時の、格好いいご主人様が起こした現象!

『ゴアアアアアアアアア!!』
「ハイパワーブーメラン」

 オレンジ色のV字ブーメランが、武術スキルの光を纏ってヘルレイドゴーレムの幻影を切り裂いた。

『ゴオア……アガアアアガオアアアアアアアア!!!』

 再生するも、様子がおかしい。

 再び膨張する黒の幻影。

 振るわれた腕を――今度は難なく避けられた。

 巨大で清涼な感覚が、心に吹き抜け続ける。

 一歩間違えれば、魂がどこかへと持っていかれそう。

 今私が私を保っていられるのは、ご主人様のおかげ。そう直感している自分が居る。

「爆裂脚」

 ”火喰い鳥の竜甲脚”から繰り出した爆発蹴りにより、幻影を吹き飛ばし、戻ってきた”荒野の黄昏は色褪せない”を手にする。

 何故か分かる。次の一撃で倒せると。

『ゴガアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!』


「”逢魔転剣術”、オミナススラッシャー」


 幻影が戦闘モーションに入った瞬間、災いの転剣を投げ放った。

 幻影が切り裂かれた瞬間、ようやく光となって散り始めるヘルレイドゴーレム。

「トゥスカ!!」

 その光景が見えた瞬間、一気に意識が遠退いていった。

「やりましたよ……ご主人様…………」


●●●


 さすが、コセが生涯のパートナーとして認めた唯一の女。

 私がデルタシステムとなったことで、失ってしまった力を操った。

 先に進めば進むほど、このゲームの不条理さは増し、ゲームバランスなんて関係なくプレーヤーの命を奪うようになっていく。

 今居る面子の中から、あと何人が神代文字を刻めるようになるのか。

 出来なければ、いずれは見捨てることになってしまう。

 その時は、私が悪役ヒールにならなければね。

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