ダンジョン・ザ・チョイス
75.帳に煌めく燐光
戦闘が始まって、既に十分以上。どんどんキラーホエールマンの数が増えている。
これじゃあ、マスターの援護に入れない!
「メルシュ、雑魚共に俺の邪魔をさせるな」
マスターの、冷たくも真の通った言葉が私の焦りを吹き飛ばしてくれる!
「分かった! こっちは任せて!!」
”万雷魔法”でキラーホエールマンを駆逐していく。
そのうちの一体、デカい斧を持った奴に”万雷魔法”を防がれた。
「“古生代の戦斧”か」
装備しているだけで、古代の属性の無い攻撃によるダメージを五分の一にする、“古代の力”を有している珍しいS級低位の武器。
攻撃性能よりも特殊効果重視の武具。
それに、離れた位置にいる個体が右腕に浮かせているのは深海の盾。S級の“深海の盾の指輪”で出現させた物のはず。
他にも、微妙に遊泳速度が違う個体が居ることから、なんらかの能力強化装備をしているであろうと予測できる。
かなり厄介なクエストだけれど、これを乗り越えれば、この先で待ち構えている格上のプレーヤー相手にも有利になる!
考えようによっては、良いプレゼントを貰っていると言えちゃう。
「金剛の巨腕」
右手に連動する形で、ダイヤモンドの腕を出現させる。
『キルウゥゥェエエ!!』
振りかぶった斧を巨腕で受け止め、大猩々の鉄球を生み出し、“磁力”で反発させてキラーホエールマンのお腹に打ち込んだ。
“古代の力”で五分の一に出来るのは、あくまでスキルか武器の特殊効果による攻撃のみ。
だから、“磁力”で反発させただけの攻撃じゃダメージの減衰は発生しない!
もしかしたらジュリーは、こういった戦術が必要だと知っていたから、私と同じく“磁力”と“大猩々の鉄球の指輪”を装備しているのかも。
今度は“磁力”で鉄球を吸い寄せ、もう一度反発で打ち出す!
今度は頭蓋に叩き込んだからか、キラーホエールマンの動きが止まり、落下し始めて間もなく光へと変わった。
●●●
「”アクアスパーダ”……面倒な武器を」
柄だけの水属性の剣。
MPを使って刀身と刃を形成するため、魔法攻撃扱いになる。戦士の予備武器としてはかなり優秀なB級武器。
厄介なのが、刀身の形や硬度を自在に変えられるため、近接戦で武器の打ち合いにめっぽう強いって事。
今も、大刀で防ごうとした瞬間刃を柔らかくして通り過ぎ、すぐに刃を高質化して斬り込んできた。
そもそもが水だから、金属製の武器よりも軽いため、自然と剣速も速い!
「ウザったいね!」
”アクアスパーダ”を振り抜いた瞬間を狙って、その腕を大刀で切り裂く!
“鯨骨の大刀”のおかげで、コイツらの身体はスパスパ切れるよ。
「マスターから貰ってて良かったよ」
アタシが選んだのは銛だったからね。
“帰還”の効果で、先程放った”鯨骨の銛”が手元に戻ってくる。
「ほら、プレゼントだ! “大投槍術”、ハイパワージャベリン!!」
腕を切り落とした奴と、別の個体をまとめて貫いた。
●●●
「“刀剣術”、一刀両断!!」
シャチさんを……上段から切り捨てた。
『キルウウエエ!』
すぐに別のが接近してきた。それに……今度のは三つ叉の槍を構えている。
「“刀剣術”、撃打ち!」
私の上段斬りをトライデントで防ぐも、シャチさんの動きが止まった。
撃打ちは斬る技ではなく、ガードされたときに激しい衝撃で動きを止める技。
「“刀剣術”、介錯」
すかさず首を切り落とす。
さっき、ハーレム王が気になることを言っていたな。
「まともな人間が、本気で惚れた女以外とわざわざ性病になるような真似するかよ」
それはつまり、“最高級の婚姻の指輪”を着けているトゥスカさん、ジュリーさん、メルシュさん以外には手を出していないと言うこと!
私……てっきり、既に全員に手を出しているものだとばかり……。
ハーレム王が、たった三人にしか手を出していなかったなんて!
だけれど、本気で惚れた女以外には手を出さないというその姿勢は……むしろ好ましいです!
今はまだ王と呼ぶには早いかもしれないけれど、コセさんと一緒なら、生ハーレムの真髄を知る日が訪れるかもしれない!
「いつか私に、もう一度ハーレム王と呼ばせてください!」
「……マスターはなにを言っているんだい?」
「私の……願望」
シレイアさんが凄く変な顔で私を一瞥すると、深いため息を吐いた。
……なんで?
●●●
「インフェルノ!」
『“法喰い”』
ユリカが放った紫の炎が、紅の槍に喰われる。
「アーマースティング!」
”針使い”のサブ職業を着けて、針術による鎧の防御無視攻撃を行う。
『ち!』
左腕の鉤爪で振り払われる。
警戒しているという事は、通用すると言うこと。
アレが、そんな演技が出来るような人間とは思えないしな。
『殺してやる! お前らだけは、どんな手を使ってでも!!』
「アンタにそんな事を言う権利なんて無い! “紅蓮円輪”!」
『させるか!』
「俺のセリフだよ!」
“武器隠しのマント”から“鯨骨の大刀“を抜き、ユリカに接近しようとした槍鎧を、手数で攻める!
“針術“を警戒し、俺を無視できない元槍の男。
『邪魔だーーッ! ”逢魔の波動”!!』
「“拒絶領域“!」
衝撃同士がぶつかり合うも、勝ったのは俺!
“逢魔の波動“の効果範囲は、“拒絶領域“よりも広い。
ならばゲームバランス的に、S級のスキルでもある“拒絶領域“の方が勝ると予想していた!
これも、メルシュ達が敵の情報を引き出してくれたおかげだ!
「“紅蓮魔法“、クリムゾンブラスター!!」
俺が頭を下げた瞬間、“拒絶領域“によって隙だらけになった所に、強化された紅蓮の熱線が直撃した!
『び、ビビらせやがって!』
鎧の胸部分が、一部溶けただけだと!?
「く! アーマースティング!」
『うぜんだよ!』
グレートソードが、槍で上に弾かれる!
「アーマースティング!」
『“塵壊爪“!』
――“鯨骨の大刀“が、三本の鉤爪によって斬られた。
しかも、砂のようになって消えてしまう!
『”逢魔の波動”!』
黒の衝撃によって吹き飛ばされ、ユリカを巻き込んで転がってしまう。
「すまん……」
「だ、大丈夫よ……」
『ククククク!』
すぐに立ち上がるも、槍甲冑は静かに笑いながら悠々と歩いていた。
こっちの攻撃がほとんど通じないと分かって、余裕を見せているな。
“滅剣ハルマゲドン“を使えれば。
『じっくり甚振って、手脚を刎ねて、おっぱい女を犯して、目を抉って、舌を抜いて、そしたら死ぬまで殴り続けてやるよ! その次はお前だぞ、大剣野郎!!』
「……アンタ、幾らなんでも異常よ」
ユリカが、槍甲冑を侮辱する。
『異常? 俺はな、こんなことお前ら日本人にしかしねーんだよ』
前にも日本人がどうのとか言っていたな、コイツ。
「どういう意味?」
『お前ら日本人になら、なにしたって許されるんだよーーッッ!! だって、パパがそう言っていたからッ!!』
コイツを歪めたのは親か。
『お前らは嘘つきで! 卑怯で! いつも後頭部を狙ってくる! だから許されるんだよ! 俺のやっていることは、普通の事なんだよ!! だから、ママと同じ事言うなよ!! 身体売ってる異常者のくせに!!』
「普通の人間なんて居るものか」
『ああ?』
「さっき俺は、まともって言葉を使ったけれど……根底を間違えていたよ」
言いたい事を分かりやすくしようとして、嫌いな言葉を使ってしまっていた。
「この世に、異常じゃない奴なんて居ない」
『俺は違うって言ってんだろうが! 異常なのは、お前ら日本人だけなんだよ!!』
槍甲冑が突っ込んでくる。
「人種なんて関係ない。自分の異常性を無視する人間が、より堕ちていくだけなんだよ! 今のお前のようにな!!」
――力が、グレートソードに吸われる!
“強者のグレートソード“の刀身、柄に近い部分に三つの文字が浮かび上がった!?
「なんだこれ?」
トロルと戦っていた時に似た、不思議な感覚。
『まずは脚だ!』
「“大剣術“、ハイパワーブレイド」
『――あ?』
槍甲冑の左腕が、紅の鉤爪ごと宙を舞った。
夕日が沈み、辺りが帳に包まれていく中、グレートソードから洩れる青い燐光が、俺の感覚を研ぎ澄ませていく。
「このくだらない戦いを、さっさと終わらせよう」
これ以上俺とユリカの人生を、コイツに割きたくないから。
これじゃあ、マスターの援護に入れない!
「メルシュ、雑魚共に俺の邪魔をさせるな」
マスターの、冷たくも真の通った言葉が私の焦りを吹き飛ばしてくれる!
「分かった! こっちは任せて!!」
”万雷魔法”でキラーホエールマンを駆逐していく。
そのうちの一体、デカい斧を持った奴に”万雷魔法”を防がれた。
「“古生代の戦斧”か」
装備しているだけで、古代の属性の無い攻撃によるダメージを五分の一にする、“古代の力”を有している珍しいS級低位の武器。
攻撃性能よりも特殊効果重視の武具。
それに、離れた位置にいる個体が右腕に浮かせているのは深海の盾。S級の“深海の盾の指輪”で出現させた物のはず。
他にも、微妙に遊泳速度が違う個体が居ることから、なんらかの能力強化装備をしているであろうと予測できる。
かなり厄介なクエストだけれど、これを乗り越えれば、この先で待ち構えている格上のプレーヤー相手にも有利になる!
考えようによっては、良いプレゼントを貰っていると言えちゃう。
「金剛の巨腕」
右手に連動する形で、ダイヤモンドの腕を出現させる。
『キルウゥゥェエエ!!』
振りかぶった斧を巨腕で受け止め、大猩々の鉄球を生み出し、“磁力”で反発させてキラーホエールマンのお腹に打ち込んだ。
“古代の力”で五分の一に出来るのは、あくまでスキルか武器の特殊効果による攻撃のみ。
だから、“磁力”で反発させただけの攻撃じゃダメージの減衰は発生しない!
もしかしたらジュリーは、こういった戦術が必要だと知っていたから、私と同じく“磁力”と“大猩々の鉄球の指輪”を装備しているのかも。
今度は“磁力”で鉄球を吸い寄せ、もう一度反発で打ち出す!
今度は頭蓋に叩き込んだからか、キラーホエールマンの動きが止まり、落下し始めて間もなく光へと変わった。
●●●
「”アクアスパーダ”……面倒な武器を」
柄だけの水属性の剣。
MPを使って刀身と刃を形成するため、魔法攻撃扱いになる。戦士の予備武器としてはかなり優秀なB級武器。
厄介なのが、刀身の形や硬度を自在に変えられるため、近接戦で武器の打ち合いにめっぽう強いって事。
今も、大刀で防ごうとした瞬間刃を柔らかくして通り過ぎ、すぐに刃を高質化して斬り込んできた。
そもそもが水だから、金属製の武器よりも軽いため、自然と剣速も速い!
「ウザったいね!」
”アクアスパーダ”を振り抜いた瞬間を狙って、その腕を大刀で切り裂く!
“鯨骨の大刀”のおかげで、コイツらの身体はスパスパ切れるよ。
「マスターから貰ってて良かったよ」
アタシが選んだのは銛だったからね。
“帰還”の効果で、先程放った”鯨骨の銛”が手元に戻ってくる。
「ほら、プレゼントだ! “大投槍術”、ハイパワージャベリン!!」
腕を切り落とした奴と、別の個体をまとめて貫いた。
●●●
「“刀剣術”、一刀両断!!」
シャチさんを……上段から切り捨てた。
『キルウウエエ!』
すぐに別のが接近してきた。それに……今度のは三つ叉の槍を構えている。
「“刀剣術”、撃打ち!」
私の上段斬りをトライデントで防ぐも、シャチさんの動きが止まった。
撃打ちは斬る技ではなく、ガードされたときに激しい衝撃で動きを止める技。
「“刀剣術”、介錯」
すかさず首を切り落とす。
さっき、ハーレム王が気になることを言っていたな。
「まともな人間が、本気で惚れた女以外とわざわざ性病になるような真似するかよ」
それはつまり、“最高級の婚姻の指輪”を着けているトゥスカさん、ジュリーさん、メルシュさん以外には手を出していないと言うこと!
私……てっきり、既に全員に手を出しているものだとばかり……。
ハーレム王が、たった三人にしか手を出していなかったなんて!
だけれど、本気で惚れた女以外には手を出さないというその姿勢は……むしろ好ましいです!
今はまだ王と呼ぶには早いかもしれないけれど、コセさんと一緒なら、生ハーレムの真髄を知る日が訪れるかもしれない!
「いつか私に、もう一度ハーレム王と呼ばせてください!」
「……マスターはなにを言っているんだい?」
「私の……願望」
シレイアさんが凄く変な顔で私を一瞥すると、深いため息を吐いた。
……なんで?
●●●
「インフェルノ!」
『“法喰い”』
ユリカが放った紫の炎が、紅の槍に喰われる。
「アーマースティング!」
”針使い”のサブ職業を着けて、針術による鎧の防御無視攻撃を行う。
『ち!』
左腕の鉤爪で振り払われる。
警戒しているという事は、通用すると言うこと。
アレが、そんな演技が出来るような人間とは思えないしな。
『殺してやる! お前らだけは、どんな手を使ってでも!!』
「アンタにそんな事を言う権利なんて無い! “紅蓮円輪”!」
『させるか!』
「俺のセリフだよ!」
“武器隠しのマント”から“鯨骨の大刀“を抜き、ユリカに接近しようとした槍鎧を、手数で攻める!
“針術“を警戒し、俺を無視できない元槍の男。
『邪魔だーーッ! ”逢魔の波動”!!』
「“拒絶領域“!」
衝撃同士がぶつかり合うも、勝ったのは俺!
“逢魔の波動“の効果範囲は、“拒絶領域“よりも広い。
ならばゲームバランス的に、S級のスキルでもある“拒絶領域“の方が勝ると予想していた!
これも、メルシュ達が敵の情報を引き出してくれたおかげだ!
「“紅蓮魔法“、クリムゾンブラスター!!」
俺が頭を下げた瞬間、“拒絶領域“によって隙だらけになった所に、強化された紅蓮の熱線が直撃した!
『び、ビビらせやがって!』
鎧の胸部分が、一部溶けただけだと!?
「く! アーマースティング!」
『うぜんだよ!』
グレートソードが、槍で上に弾かれる!
「アーマースティング!」
『“塵壊爪“!』
――“鯨骨の大刀“が、三本の鉤爪によって斬られた。
しかも、砂のようになって消えてしまう!
『”逢魔の波動”!』
黒の衝撃によって吹き飛ばされ、ユリカを巻き込んで転がってしまう。
「すまん……」
「だ、大丈夫よ……」
『ククククク!』
すぐに立ち上がるも、槍甲冑は静かに笑いながら悠々と歩いていた。
こっちの攻撃がほとんど通じないと分かって、余裕を見せているな。
“滅剣ハルマゲドン“を使えれば。
『じっくり甚振って、手脚を刎ねて、おっぱい女を犯して、目を抉って、舌を抜いて、そしたら死ぬまで殴り続けてやるよ! その次はお前だぞ、大剣野郎!!』
「……アンタ、幾らなんでも異常よ」
ユリカが、槍甲冑を侮辱する。
『異常? 俺はな、こんなことお前ら日本人にしかしねーんだよ』
前にも日本人がどうのとか言っていたな、コイツ。
「どういう意味?」
『お前ら日本人になら、なにしたって許されるんだよーーッッ!! だって、パパがそう言っていたからッ!!』
コイツを歪めたのは親か。
『お前らは嘘つきで! 卑怯で! いつも後頭部を狙ってくる! だから許されるんだよ! 俺のやっていることは、普通の事なんだよ!! だから、ママと同じ事言うなよ!! 身体売ってる異常者のくせに!!』
「普通の人間なんて居るものか」
『ああ?』
「さっき俺は、まともって言葉を使ったけれど……根底を間違えていたよ」
言いたい事を分かりやすくしようとして、嫌いな言葉を使ってしまっていた。
「この世に、異常じゃない奴なんて居ない」
『俺は違うって言ってんだろうが! 異常なのは、お前ら日本人だけなんだよ!!』
槍甲冑が突っ込んでくる。
「人種なんて関係ない。自分の異常性を無視する人間が、より堕ちていくだけなんだよ! 今のお前のようにな!!」
――力が、グレートソードに吸われる!
“強者のグレートソード“の刀身、柄に近い部分に三つの文字が浮かび上がった!?
「なんだこれ?」
トロルと戦っていた時に似た、不思議な感覚。
『まずは脚だ!』
「“大剣術“、ハイパワーブレイド」
『――あ?』
槍甲冑の左腕が、紅の鉤爪ごと宙を舞った。
夕日が沈み、辺りが帳に包まれていく中、グレートソードから洩れる青い燐光が、俺の感覚を研ぎ澄ませていく。
「このくだらない戦いを、さっさと終わらせよう」
これ以上俺とユリカの人生を、コイツに割きたくないから。
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