ダンジョン・ザ・チョイス
56.魔神・大猩々
婚姻の儀が終わった後、俺とトゥスカはその日一日をメシュ探しに注ぎ込んだが、結局は見付からなかった。
探せるだけ探した。心残りではあるけれど、見切りをつけないといけない。
そして、いよいよ第四ステージへと進む日がやって来た。
来たのだが……。
「なんで居るんです?」
「昨日頑張って、探索場をクリアしたからですよ~♪」
魔性の女パーティーが、なぜか先にボス扉の前に来ていたのだ。
昨日結婚した相手。
俺のせいではないけれど、低級の婚姻の指輪しか渡せなかったことを申し訳なく思ってしまう。
「最後にもう一度説明するよ。第三ステージのボスは、魔神・大猩々。ゴリラのような姿で、緑の雷と拳による攻撃が主体。弱点属性は風。有効武器は槌。危険攻撃は、拳から繰り出されるジャイアントスマッシュと鉄球攻撃。槌で素早く両腕を破壊すれば、危険攻撃を封じる事が出来るよ。ただし、一定時間経つと再生するから、時間を掛けないようにしてね」
メルシュの講義が終わる。
「じゃあ、俺達が先に行くな」
ボス扉に触れると、俺、トゥスカ、メルシュのクリア証明書、つまり許可証が出現。
許可証が燃え上がると、ボス部屋の扉が開いていく。
すぐそこに緑色の妖精が居るのだが、メルシュから情報が貰えるため、話す必要が無くなってしまった。
メルシュのおかげで3000G払って情報を聞く必要が無くなったのはありがたいが、なんだか妖精に申しわけない気分になる。
三人で中に入ると扉が閉まり、いつも通りの暗闇へ。
そして、魔神特有の、発光する石鎧を持つ巨大なゴリラが、緑光と雷を撒き散らしながら暗がりから現れた。
『ウーオ、ウオウオウオウオウオウオウオウオ、ウオッ!!』
立ち上がり、激しく胸を叩いて、再び拳を地面に打ち付ける魔神・大猩々。
「じゃあ、行って来るか!」
俺は“滅剣ハルマゲドン“を手に、大猩々へと駆ける!
「”暴風魔法”、サイクロン!」
『ウオーーーーーッ!!』
魔神・大猩々の動きが、メルシュのサイクロンにより、腕を振り上げた状態で止まる。
そこへ、”瞬足”で一気に接近!
「”終末の一撃”」
総TP・MPの半分を消費し、一日一回だけ繰り出せるという使いどころが難しい攻撃を、ボス相手に繰り出す!
Sランク武器とやらの威力、果たしてどの程度なのか。
『ウオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッッッッ…………』
――“滅剣ハルマゲドン“から黒の暴威が溢れ、弾け、魔神・大猩々の胸部分を中心に、全身を粉々に……破壊した!!?
「……本当かよ」
今まで、魔神が丸ごと消滅した光景なんて見たことないぞ!
○おめでとうございます。魔神・大猩々の討伐に成功しました。
「本当に倒したんだ」
呆気なさ過ぎて、実感が湧かない。
「だから言ったじゃん。一撃で倒せるって」
確かに、メルシュから事前に聞いてはいたけれど……。
○ボス撃破特典。以下から一つをお選びください。
★大猩々の石籠手 ★磁力のスキルカード
★大拳闘士のスキルカード ★大猩々の鉄球の指輪
「マスター、私は“磁力のスキルカード“を選択するね」
「俺は指輪を選べば良いんだったな」
「私は“大拳闘士“のスキルカードでしたね」
○これより、第四ステージの伝統の山村に転移します。
●●●
「パワークラッシュ!!」
槌使いのサブ職業によって使えるようになった、槌術で攻撃。魔神の左腕を破壊した。
名前にパチモンって付いている“パチモンのトールハンマー“だけれど、さすがはAランク武具。威力は大した物だ。
この武具、私が知らないアイテムなんだよね。
隠れNPC以外にも、オリジナルになかったアイテムやイベントが、かなり追加されている。
「”暴風魔法”、ダウンバースト!」
「”転剣の竜巻”!」
ユリカが魔法で、タマが“転剣狼の竜巻ブーメラン“による弱点属性で攻め立てていく!
『ウオウオウオウオ!!』
大猩々は残っていた右手に鉄球を生み出し、ユリカに向かって投げ付けてきた!
「”拒絶領域”!」
ユリカのスキルで鉄球は弾かれるも、奴のスキル、”磁力”によって再び魔神・大猩々の右手に。
「“咎槍“、パワージャベリン!!」
タマが“投槍術“で放った黒の槍が右手に刺さり、鉄球を投げるのを失敗させた!
1
「”飛行魔法”、フライ!」
私は飛び上がり、大猩々の頭上へ!
「パワークラッシュ!! ”回転”!」
回転の勢いを利用し、魔神・大猩々の頭を黄金の槌で破壊。
「今だ!」
「”暴風魔法”、サイクロンカノン!!」
ユリカの魔法、暴風が凝縮された砲弾が大猩々に直撃。
『ウオーーーーーーーッ!!』
魔神・大猩々は光に帰った。
○ボス撃破特典。以下から一つをお選びください。
★大猩々の石籠手 ★磁力のスキルカード
★大拳闘士のスキルカード ★大猩々の鉄球の指輪
「どれを選べば良いんだろ?」
ユリカが悩んで居る。
「パーティーリーダーである私が選ぶ約束だよ?」
「分かってるわよ」
一種の独裁状態。あまり良くないと分かっていても、私は効率を優先する。
理由を説明出来ない以上、仕方がない。
「ユリカは指輪を選んで。タマは”磁力のスキルカード”を」
私は”大拳闘士のスキルカード”を選択。
この三つがあれば、この先暫くは安定して敵を倒せる。
特に“磁力“は、私の最終戦闘スタイルに必須のスキル。
選択を終えると、視界が光に包まれる。
★
視界が開けると、いつもの石の祭壇の上に立っていた。
祭壇を下った先には長いロープの橋があり、巨大な石柱へと続いている。
その石柱の上には村が築かれていると、私は知っていた。
「こうして実際に目にすると……圧巻だな」
私が目にしていたのは、お母さんが作った古いグラフィック映像だけ。
「全員無事か?」
コセが……声を掛けてきた。
ゲーム状のルールでとはいえ、私が結婚した相手。
「タマは大丈夫です」
「私も」
「ジュリーは?」
「だ、大丈夫……」
意識するな! 意識するな意識するな意識するな意識するな意識するな!
なんで顔が熱くなるの! なんで胸が苦しくなるの! 昨日までは割り切れていられたのに!
「じゃあ、村に行こうか」
「ええ……」
昔……このゲーム内で、本気で好きになった相手と結婚するのが夢だったのを思い出してしまった。
その結婚相手が、一度は本気で殺そうとした相手だなんて!
いや、お願いしたのは私だけれどさ!
……“最高級の婚姻の指輪“。
愛し合っている者同士の結婚でなければ、手に入れることが出来ないはずのアイテム。
オリジナルにそんなシステムは無かったから、“最高級の婚姻の指輪“がどの程度……あ、愛し合っていれば手に入る物なのかは分からないけれど……。
落ち着け。コセにはもう良い人が居るんだ。
コセが二股をするような男とは思えないし、私が意識する意味なんてこれっぽっちも無い!
無いったら無い!
そもそもアイツ、私のお腹に剣を突き刺したり、膝蹴りしてきたし!
仕掛けたのは私で、私も何度もコセを殴ったりしたけれど。
むしろ、どうして私は彼に嫌われていないんだ?
激しく揺れる橋を、皆で渡り始める。
「そういえば、サトミ達は待たなくて良いのか?」
私達の後に、ボスに挑んでいるはず。
「待つ必要があるのか? ジュリー達とは同盟を結んでいるけれど、サトミさん達とは結んでいない」
「それもそうか……」
うん、やっぱり二股とか絶対しないは、コイツ。
少しずつ、伝統の山村が近付いてくる。
探せるだけ探した。心残りではあるけれど、見切りをつけないといけない。
そして、いよいよ第四ステージへと進む日がやって来た。
来たのだが……。
「なんで居るんです?」
「昨日頑張って、探索場をクリアしたからですよ~♪」
魔性の女パーティーが、なぜか先にボス扉の前に来ていたのだ。
昨日結婚した相手。
俺のせいではないけれど、低級の婚姻の指輪しか渡せなかったことを申し訳なく思ってしまう。
「最後にもう一度説明するよ。第三ステージのボスは、魔神・大猩々。ゴリラのような姿で、緑の雷と拳による攻撃が主体。弱点属性は風。有効武器は槌。危険攻撃は、拳から繰り出されるジャイアントスマッシュと鉄球攻撃。槌で素早く両腕を破壊すれば、危険攻撃を封じる事が出来るよ。ただし、一定時間経つと再生するから、時間を掛けないようにしてね」
メルシュの講義が終わる。
「じゃあ、俺達が先に行くな」
ボス扉に触れると、俺、トゥスカ、メルシュのクリア証明書、つまり許可証が出現。
許可証が燃え上がると、ボス部屋の扉が開いていく。
すぐそこに緑色の妖精が居るのだが、メルシュから情報が貰えるため、話す必要が無くなってしまった。
メルシュのおかげで3000G払って情報を聞く必要が無くなったのはありがたいが、なんだか妖精に申しわけない気分になる。
三人で中に入ると扉が閉まり、いつも通りの暗闇へ。
そして、魔神特有の、発光する石鎧を持つ巨大なゴリラが、緑光と雷を撒き散らしながら暗がりから現れた。
『ウーオ、ウオウオウオウオウオウオウオウオ、ウオッ!!』
立ち上がり、激しく胸を叩いて、再び拳を地面に打ち付ける魔神・大猩々。
「じゃあ、行って来るか!」
俺は“滅剣ハルマゲドン“を手に、大猩々へと駆ける!
「”暴風魔法”、サイクロン!」
『ウオーーーーーッ!!』
魔神・大猩々の動きが、メルシュのサイクロンにより、腕を振り上げた状態で止まる。
そこへ、”瞬足”で一気に接近!
「”終末の一撃”」
総TP・MPの半分を消費し、一日一回だけ繰り出せるという使いどころが難しい攻撃を、ボス相手に繰り出す!
Sランク武器とやらの威力、果たしてどの程度なのか。
『ウオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッッッッ…………』
――“滅剣ハルマゲドン“から黒の暴威が溢れ、弾け、魔神・大猩々の胸部分を中心に、全身を粉々に……破壊した!!?
「……本当かよ」
今まで、魔神が丸ごと消滅した光景なんて見たことないぞ!
○おめでとうございます。魔神・大猩々の討伐に成功しました。
「本当に倒したんだ」
呆気なさ過ぎて、実感が湧かない。
「だから言ったじゃん。一撃で倒せるって」
確かに、メルシュから事前に聞いてはいたけれど……。
○ボス撃破特典。以下から一つをお選びください。
★大猩々の石籠手 ★磁力のスキルカード
★大拳闘士のスキルカード ★大猩々の鉄球の指輪
「マスター、私は“磁力のスキルカード“を選択するね」
「俺は指輪を選べば良いんだったな」
「私は“大拳闘士“のスキルカードでしたね」
○これより、第四ステージの伝統の山村に転移します。
●●●
「パワークラッシュ!!」
槌使いのサブ職業によって使えるようになった、槌術で攻撃。魔神の左腕を破壊した。
名前にパチモンって付いている“パチモンのトールハンマー“だけれど、さすがはAランク武具。威力は大した物だ。
この武具、私が知らないアイテムなんだよね。
隠れNPC以外にも、オリジナルになかったアイテムやイベントが、かなり追加されている。
「”暴風魔法”、ダウンバースト!」
「”転剣の竜巻”!」
ユリカが魔法で、タマが“転剣狼の竜巻ブーメラン“による弱点属性で攻め立てていく!
『ウオウオウオウオ!!』
大猩々は残っていた右手に鉄球を生み出し、ユリカに向かって投げ付けてきた!
「”拒絶領域”!」
ユリカのスキルで鉄球は弾かれるも、奴のスキル、”磁力”によって再び魔神・大猩々の右手に。
「“咎槍“、パワージャベリン!!」
タマが“投槍術“で放った黒の槍が右手に刺さり、鉄球を投げるのを失敗させた!
1
「”飛行魔法”、フライ!」
私は飛び上がり、大猩々の頭上へ!
「パワークラッシュ!! ”回転”!」
回転の勢いを利用し、魔神・大猩々の頭を黄金の槌で破壊。
「今だ!」
「”暴風魔法”、サイクロンカノン!!」
ユリカの魔法、暴風が凝縮された砲弾が大猩々に直撃。
『ウオーーーーーーーッ!!』
魔神・大猩々は光に帰った。
○ボス撃破特典。以下から一つをお選びください。
★大猩々の石籠手 ★磁力のスキルカード
★大拳闘士のスキルカード ★大猩々の鉄球の指輪
「どれを選べば良いんだろ?」
ユリカが悩んで居る。
「パーティーリーダーである私が選ぶ約束だよ?」
「分かってるわよ」
一種の独裁状態。あまり良くないと分かっていても、私は効率を優先する。
理由を説明出来ない以上、仕方がない。
「ユリカは指輪を選んで。タマは”磁力のスキルカード”を」
私は”大拳闘士のスキルカード”を選択。
この三つがあれば、この先暫くは安定して敵を倒せる。
特に“磁力“は、私の最終戦闘スタイルに必須のスキル。
選択を終えると、視界が光に包まれる。
★
視界が開けると、いつもの石の祭壇の上に立っていた。
祭壇を下った先には長いロープの橋があり、巨大な石柱へと続いている。
その石柱の上には村が築かれていると、私は知っていた。
「こうして実際に目にすると……圧巻だな」
私が目にしていたのは、お母さんが作った古いグラフィック映像だけ。
「全員無事か?」
コセが……声を掛けてきた。
ゲーム状のルールでとはいえ、私が結婚した相手。
「タマは大丈夫です」
「私も」
「ジュリーは?」
「だ、大丈夫……」
意識するな! 意識するな意識するな意識するな意識するな意識するな!
なんで顔が熱くなるの! なんで胸が苦しくなるの! 昨日までは割り切れていられたのに!
「じゃあ、村に行こうか」
「ええ……」
昔……このゲーム内で、本気で好きになった相手と結婚するのが夢だったのを思い出してしまった。
その結婚相手が、一度は本気で殺そうとした相手だなんて!
いや、お願いしたのは私だけれどさ!
……“最高級の婚姻の指輪“。
愛し合っている者同士の結婚でなければ、手に入れることが出来ないはずのアイテム。
オリジナルにそんなシステムは無かったから、“最高級の婚姻の指輪“がどの程度……あ、愛し合っていれば手に入る物なのかは分からないけれど……。
落ち着け。コセにはもう良い人が居るんだ。
コセが二股をするような男とは思えないし、私が意識する意味なんてこれっぽっちも無い!
無いったら無い!
そもそもアイツ、私のお腹に剣を突き刺したり、膝蹴りしてきたし!
仕掛けたのは私で、私も何度もコセを殴ったりしたけれど。
むしろ、どうして私は彼に嫌われていないんだ?
激しく揺れる橋を、皆で渡り始める。
「そういえば、サトミ達は待たなくて良いのか?」
私達の後に、ボスに挑んでいるはず。
「待つ必要があるのか? ジュリー達とは同盟を結んでいるけれど、サトミさん達とは結んでいない」
「それもそうか……」
うん、やっぱり二股とか絶対しないは、コイツ。
少しずつ、伝統の山村が近付いてくる。
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